ガンプライブ! ~School Gunpla Project~   作:Qooオレンジ

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皆様。本日もご覧いただきありがとうございます。

久しぶりにガンプラ(ジムスナⅡ)を作っていたらスナイパーライフルの先端を思いっきり折ってしまったQooオレンジでございます。
ヤっちまったぜ。


今回はにこちゃんsideの21回目となります。
魔女さんの実験によりにこちゃんが見た悪夢とは…。

それでは 第7話A「無冠の女王」そのにじゅういち 始まります。
























第7話A「無冠の女王」そのにじゅういち

くらい。

 

くらい。

 

ただひたすらにくらい。

 

くらくてくらくて、どこまでもくらくて。

 

どうしてこんなにくらいの?

 

そもそもわたしはどうしてこんなにくらいばしょにいるの?

 

わたしはさっきまでたたかっていたはずじゃ…?

 

ん?

 

たたかう?

 

あれ?

 

わたし…どうしてるたたかっていたんだっ

け?

 

だれとたたかっていたんだっけ?

 

なにとたたかっていたんだっけ?

 

わかない…。

 

おもいだせない…。

 

ナニも…。

 

ってかそもそもここはどこなの?

 

このくらいばしょはどこ?

 

ここは…ここは……

 

「っ…まぶ…しい……」

 

私がどこまでもくらくくらく、気が滅入るような場所で自問自答を続けていると、急に視界が拓けてまぶしい光が目に飛び込んできたわ。

 

しばらくはまぶしくて周りの様子が把握できなかったけど、少し待って飛び込んできた光のまぶしさに目がなれて来ると、次第にここが何処なのかハッキリとわかったの。

 

私が居たのは見慣れた商店街。

 

音ノ木坂商店街。

 

いつも私が買い物に来ている場所。

 

小さな頃から見慣れた、そして通いなれた近所の商店街。

 

でも見慣れたはずのその商店街は、いつもとは違った有り様だったわ。

 

崩れ落ちた建物。

 

ナニかが焼ける不快な臭い。

 

レンガが敷き詰められている道に広がる赤黒い染み。

 

誰かが泣き叫ぶ声。

 

誰かが誰かを呼ぶ悲痛な声。

 

苦しげに助けを呼ぶ誰かの声。

 

見慣れたはずの商店街。

 

けでその見慣れたはずの商店街は…阿鼻叫喚の地獄絵図へと豹変していたわ。

 

「ナニよ…コレ……。」

 

私は見慣れたこの商店街で一体ナニが起こったのか、これっぽっちも理解できなかったわ。

 

辺り一面に広がるのは濃厚な死の光景。

 

さっきから鼻をくすぐるこの不快な臭いは…ヒトの焼ける臭い。

 

きれいに敷き詰められているレンガに広がっているこの赤黒いモノは…きっと誰かの血。

 

イタイ、イタイと泣き叫ぶ声は、建物に押し潰されて命の炎が少しずつ消えて行っている小さな子供の声。

 

その側で必死に誰かの名前を呼ぶのは、死にゆく我が子を助けようと必死になって瓦礫をかき分ける誰かのお母さんの声。

 

私は走り出す。

 

この目の前の光景から逃げるために。

 

この目の前の…死の光景から逃げるために。

 

走る。

 

走る。

 

走る。

 

ヒトの焼ける臭いから逃げるために。

 

走る。

 

走る。

 

走る。

 

ヒトの押し潰される音から逃げるために。

 

走る。

 

走る。

 

走る。

 

大切な人たちの無事を確かめるために。

 

私は走る。

 

家族を。

 

愛する人を。

 

友達を。

 

仲間を。

 

みんなを探すために。

 

全力で走る。

 

走る。

 

走る。

 

走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って走って、ただひたすらに変わり果てた音ノ木坂の街を走って。

 

私がたどり着いたのは商店街と同じように崩れ落ちた学校…音ノ木坂学院だったわ。

 

私が無惨に崩れ落ちた校舎を呆然と見つめていると、不意に視界の端に無事な建物があることに気付いたの。

 

視界の端に写った無事な建物…それは音ノ木坂学院の体育館。

 

私は熱にうなされるようにふらふらとした足取りで、まるでナニかに導かれるように無事な体育館へと歩いて行ったわ。

 

途中、地面に転がる消炭のように真っ黒なヒトのカタチをしたナニかにつまずいて何度も転びそうになりながらも、なんとか体育館へたどり着いた私は、重い重い体育館のトビラを開いて中へと入ったの。

 

トビラの向こう側にあったのは、いつもの見慣れた体育館…ではなく、床に所せましと置かれた白いシーツがかけられたナニかだったわ。

 

なんだろう?

 

私はそう思って、白いシーツがかけられたナニかへとゆっくりと近づいて…

 

「えっ…?」

 

そっと白いシーツをめくると、そこにあったのは私の大事な大事な末の弟、矢澤 虎太朗だったわ。

 

床に横たわる虎太朗の身体のあちこちには穴が開き、どす黒い液体がドロドロと流れていて…

 

「なん…で……」

 

一目見て床に横たわる虎太朗はもう生きてはいない。

 

そう理解できたわ。

 

「こた…ろー…?ねぇ…こたろう…?」

 

そっとその小さな頬に手を当てると、その頬には子供特有の温かさはもうなくて…まるで氷のように冷たくなっていて…。

 

冷たくなった虎太朗をそっと撫でながら、私は私の大事な弟がもうこの世にはいない事を感じてしまったの。

 

“死”

 

それを理解した瞬間、吐き気が込み上げてきて思わずその場で戻しそうになったけど、ここで戻したら虎太朗にかかっちゃう。

 

そう思い、私はなんとか吐き気を堪(こら)えて立ち上がったわ。

 

でも…胃の底から込み上げてくる吐き気はなんとか耐えれたけど、瞳の奥から溢れ出る涙は耐えることはできなかったの。

 

私の両の瞳からは止めどなく涙が溢れ出て、自然と床に水溜まりを作っていたわ。

 

そんなとき、どこからともなく一陣の風が体育館の中へと吹き込んできたの。

 

その風は体育館の床に所せましと敷き詰めるように置かれていた白いシーツを一斉に吹き飛ばしていって…。

 

「ぅぁ…ぁ……ぁぁ…」

 

白いシーツがなくなった体育館の床。

 

そこにあったのは見渡す限りの死体。

 

それも全て私のよく知る人たちの死体。

 

ママ。

 

こころ。

 

ここあ。

 

絵里、希、穂乃果、海未、花陽、真姫、凛。

 

学校のみんな。

 

商店街のみんな。

 

私のよく知るみんな。

 

私のよく知る沢山の人たち。

 

そんなみんなの死体。

 

穴が開いたり、首がおかしな方向に曲がっていたり、手足がなかったり…。

 

「ぁ…ぁ…………」

 

体育館にところせましと敷き詰められた死体。

 

私はその光景に耐えきれずに体育館の外へ走り出そうとして…

 

「きゃっ?!」

 

ナニかにつまずいて転んでしまったわ。

 

「いたい…」

 

痛い。

 

痛いってことはこれは夢じゃない?

 

そんなことを思っていると、視界にさっき私がつまずいたナニかが目に入ってきて…

 

「えっ…?」

 

そこに転がっていたのは…

 

「そ……ら…………?」

 

無造作に転がるそらのカタチをしたナニかを見たそのとき、私の心は黒く黒く染まって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<……スター……マ………マス………>

 

もうどうでもいい。

 

こんなせかいにみれんはない。

 

このまましずんじゃって、そのまま…

 

<カウンタープログラム作動!マスター!起きて下さい!!!マスター!!!!!>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ウズ…メ…?あ、あれ?ここって…ガンプラバトルシミュレーターの…筐体の中…?」

 

<マスター!よかった!マイスターからお預かりしていたハッキング用のカウンタープログラムが効いたようですね!>

 

ハッキング?

 

カウンタープログラム?

 

ウズメはナニを言ってるの?

 

それよりも…

 

「ねぇ…体育館は?みんなの死体は?」

 

そう。

 

見渡す限りの死体。

 

私の見知った人たちの死体。

 

足元に転がるそらの死体。

 

むせかえるような狂おしいまでの死の香り。

 

あの日と同じ…パパが死んじゃった日と同じ死の光景。

 

こわい、こわい、とてもこわい光景。

 

あれは…

 

[[あらぁん?うっふふ♪やっぱりぃワタクシとおなじぃよぉにぃボッチ歴のぉながぁ~いヤザワニコさぁんにわぁ、“恐怖”に対するぅ耐性がぁおありぃでしたわぁねぇ♪]]

 

<<はい。ヤザワニコ様が意識を引き戻した切っ掛けは、お姉様の因子が組み込まれたあのサポートAIの働きかけの様ですが…。ヤザワニコ様に再度MHプログラムを使用いたしますか?>>

 

[[そのぉ必要ありませんわぁ。ヤザワニコさぁんにぃわぁそこまでぇ期待わぁしてぇおりませぇんでしたぁのでぇ、ある程度のぉデータさぇ取れればぁどうでもぉいいですからぁ。]]

 

“恐怖”に対する耐性?

 

データ?

 

コイツ…マジでナニ言ってんの?

 

[[うふ♪ヤザワニコさぁんったらぁ“コイツ、ナニ言っての?”ってお顔ですわぁねぇ♪]]

 

「は?か、顔って…」

 

キ○ガイ女と通信は繋がってるけど、サウンドオンリーでこっちの顔とかは見れないハズよね?

 

それなのに顔って…

 

[[説明してぇ差し上げぇましょうかぁ?]]

 

ダメだ。

 

さっきからナニが起こってるのか、ナニを言ってやがるか、まったく理解が追いついてないわ。

 

でも…なんとなく…

 

「………その“説明”は“ナニ”についての説明?サウンドオンリーでの通信でこっちの顔を見れているってこと?データがどうとか言ってたこと?それとも……さっきのイヤな光景のこと?」

 

そう。

 

なんとなく…なんとなくだけど、わかったような気がする。

 

さっきのイヤな光景…アレは説明されるまでもなく、目の前のコイツが…キ○ガイ女が見せた幻なんだって。

 

どうして私がそう思ったのかわからないけど、この女は…

 

[[…あっはは♪やっぱりぃヤザワニコさぁんわぁ面白いですわぁ♪伊達にあの人のぉ“楔”にぃなってぇ、そちらぁ側にぃ引き留めぇてぇいるワケでわぁありませんわぁ♪]]

 

この女は確実にヤバいわ。

 

「伊達でも酔狂でもどーでもいいってのよ!!!アンタがナニをしたのか!アンタがナニをしたいのか!よくわかんないけど!とりあえずは頭にきたからブッコロス!!!そうすればナニもかも終わりよ!!!“ヤサカニノマガタマ”!全基…」

 

[[できるぅかぁどぉかわぁ甚(はなは)だ疑問ですがぁ、まぁブッコロスのわぁ別にぃ構いませんよぉ?ですがぁよろしいのですかぁ?ミナミコトリさぁんを放ってぇ置いてもぉ?]]

 

いくら考えてもどーせわかんないことはわかんない。

 

だからとりあえずは目の前のいけすかないキ○ガイ女をぶっ殺してヤろうと、私は“ヤサカニノマガタマ”を全基射出しようとしたんだけど、そんな私にキ○ガイ女はミナミコトリは放って置いてもいいのか?って言ってきやがったわ。

 

は?

 

なんでここで南 ことり?

 

そう言えばちゅん♪ちゅん♪うるさいくらいに囀ずってた南 ことりがなんかさっきからムダに静かだけど、あのクソ鳥娘がどうしたってのよ?

 

そう思った私はサブモニターに映る南 ことりを横目でチラッと見ると、そこには両目を見開き止めどなく涙を流しながら、ナニかをぶつぶつと呟いている見るからにヤバい状態のクソ鳥娘が映し出されていたの。

 

「なっ?!」

 

[[うふふふふふ♪あちらわぁヤザワニコさぁんのぉよぉにぃわぁいかなかったぁみたいですわぁねぇ♪ほぉらぁ♪もぉすぐぅ堕ちちゃいますわぁよぉ♪あと少しぃ♪あと少しぃですわぁ♪]]

 

ほっんと!ナニがどーなってんのよ!!!

 

ナニよ!アレは!

 

アレじゃまるでヤバいクスリとかキメて逝っちゃってるヤツみたいじゃない!

 

ヤバい!ヤバい!ヤバい!!!

 

とにかく早くなんとかしないと絶対にまずいわ!

 

でもあんなの一体どうすればいいってのよ!

 

普通はあんなヤバい状態になってるなら、マザーシステムがバイタルエラー判定を下して強制退場になるのハズなのに!

 

けどあきらかにヤバいのにそんな素振りすらないし!

 

筐体の強制開閉ボタンも作動しないし!

 

変なヤツは乱入して来やがるし!

 

おまけきその変なキ○ガイ女はおかしな幻?を見せて来やがるし!!!

 

あー!もう!こっちはちゃんとプレイ料金払ってガンプラバトルシミュレーターで遊んでるんだからマザーシステムは料金分はちゃんと仕事しなさいよね!!!

 

って!マザーシステムに文句言ってる場じゃないし!

 

そんなこと言ってるよりも早く南 ことりをなんとかしないと!

 

あのままじゃ下手すりゃ廃人になるわよ!

 

けどなんとかってしないとって言ってもマジでどうすればいいのよ!

 

ってかもしかして私も変な幻見ている間、今の南 ことりみたいにヤバい感じで逝っちゃってたの?!

 

うっわぁ~…恋する乙女としてはぶっちゃけあんな目を見開いて涙垂れ流しとか絶対に見られたくない感じの顔だわー。

 

ほんと、あのヤバい幻?から戻ってこれてよかっ…た…ん?

 

そう言えば…私はどうしてあのヤバい幻?を見ていた状態から復帰できたの?

 

確かあのときは…体育館の床に敷き詰められたイヤになるくらいに大量の見知った人たちの死体から逃げ出して、その途中でそらの死体につまずいて…。

 

そこで心が折れそうになって…。

 

それから…誰かの声が聞こえて…。

 

あの声…誰の声だっけ?

 

あの声は…そう…ウズメの声…。

 

確かウズメが……っ!

 

そうよ!

 

ウズメよ!!!

 

ウズメがマイスター…つまりそらからなんかカウンタープログラムとかぶっちゃけワケのわかんないモノを預かってたとかなんとか言って、それを使った…のよね?

 

ならそれを南 ことりにも使えばいいのよ!

 

どうすれば使えるのかはわかんないけど、ウズメが使ったならウズメに頼めば使えるわよね?

 

そうと決まれば…!

 

「ウズメ!さっきアンタが言ってたカウンタープログラムとかってヤツ!ソイツを南 ことりにも使いなさい!急いで!はりー!はりー!はりー!はりー!」

 

ウズメに丸投げよ!

 

<アレはマイスターがマスター用に特別に調整したプログラムですので、ミナミコトリ様に使用するのは…>

 

私のナイスアイデアをウズメに丸投げして万事解決!だと思ったら、ウズメに南 ことりにプログラムを使うのは…とか反対されちゃったわ。

 

んー。

 

たぶん私用に調整したモノだから南 ことりには効かないってことなんだろうけど、そんなことこの際そこら辺に放り投げちゃえばいいのよ!

 

無理を通して道理をぶち抜け!

 

成せば成る!成さねば成らぬホトトギス!

 

私も南 ことりもおんなじ人間(南 ことりって鳥類じゃないわよね?)何だから問題ナッシングよ!

 

ってなわけで!

 

「何でもいいから急ぎなさい!!!」

 

私はウズメの言葉を遮ってもう一度指示を飛ばしたわ。

 

<……了解しました。これよりミナミコトリ様にカウンタープログラムを使用いたします。>

 

ウズメはやや不服そうみたいだけど、私の指示に従ってカウンタープログラム?とかってヤツを南 ことりに使ってくれたの。

 

「それでいいのよ!」

 

実際、ナニがどうなってるのかワケのわかんないこの状況で、カウンタープログラムとかって同じくワケのわかんないモノがどう作用するかなんて私にはやっぱりわかんないわ。

 

でもやれることはやんなきゃ!

 

そう!

 

ヤれることを!

 

「とりあえずキ○ガイ女を今度こそブッコロス!!!行くわよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だにヤバい感じで涙を流し続ける南 ことりを気にしながらも始まった私とキ○ガイ女との戦闘。

 

私はキ○ガイ女なんてサクッと片付けてヤる!って思って、“ヤサカニノマガタマ”での全方位攻撃で回避先を潰してから、必中のつもりでトリケロス改Ⅱに内蔵しているビームライフルを放ったんだけど…

 

[[あ~らぁ♪よっとぉ♪ですわぁ♪]]

 

キ○ガイ女の操る真っ黒い4本腕のハイ・モックは、必中のつもりで放ったこっちの一撃を簡単に避けやがったのよ。

 

しかもなんかあのキ○ガイ女!

 

イラつくこと言いながら避けやがるし!

 

「チッ!4本腕なんてムダに重そうなモン付けてるクセに意外に速いし!!!」

 

キ○ガイ女の操るハイ・モック…デカい腕を4本もぶら下げてるクセにさっきから“ヤサカニノマガタマ”のオールレンジ攻撃も私の禍にこから放つ攻撃もひらひらと避けまくりやがってるのよね。

 

合計6基の“ヤサカニノマガタマ”から断続的に放たれるビームの数ってかなり多いハズなのに、それが1発も当たんないとかほんとイラつく!

 

こんなに当たんないのってそらのバカとバトルしている時くらいなモンだわ。

 

あのバカ以外とのバトルで“ヤサカニノマガタマ”のオールレンジ攻撃を全部避けられたことなんてないのに…。

 

これって機体性能…だけじゃないわよね。

 

たぶんあのキ○ガイ女……めちゃくちゃ認めたくはないけど頭のネジが全部抜け落ちてるような腐れクソキ○ガイのクセにガンプラバトルの腕前はかなりのモノってことね。

 

使っている機体がザコ代表のハイ・モックを改造したヤツだから、正直言って“所詮はハイ・モック”って思って完璧に舐めてたわ。

 

そう言えばここまであのキ○ガイ女が使ってるハイ・モックがどんなヤツなのか、ちゃんと言ってなかったわね。

 

バトル真っ最中でにこにーちょーっと忙しいけど、特別に教えてあげるわ。

 

五体投地で這いつくばって感謝しなさいよね!

 

それでね?

 

あのキ○ガイ女の操るハイ・モック…色は光を一切反射しない艶消しの黒。

 

真っ黒なカラーリングの中で、頭部のモノアイだけが不気味に紫色に光っているわ。

 

左右の肩の本来は3mm穴のジョイントがある部分からは、それぞれもう一組腕が生えてるのよ。

 

この合計4本ある腕は4本共、普通のハイ・モックのモノよりも気持ち悪いくらいに長いのよね。

 

特に肩から生えてるもう一組の腕は、ベース機になっているハイ・モックの全長よりも長いんじゃないかしら?

 

あの長い腕…アレってたぶんハイ・ゴックとかカプルとかの腕を弄って造ったモノだと思うんだけど…。

 

腕の先端に取り付けられている爪がそれっぽいのよね。

 

[[あははぁ♪ほらぁ♪ほらぁ♪ヤザワニコさぁん♪よそ見してぇおりまぁすぅとぉ、ワタクシをブッコロス前にぃ逆にぃワタクシにぃブッコロサレてぇ死んでぇしまいまぁすわぁよぉ♪そぉーれぇ♪]]

 

っと!

 

「あっぶな!」

 

にこにー様がサービス精神溢れるキ○ガイ女ハイ・モックの説明とかしてたら、危なく接近してきて振り下ろされた4本腕の先端に付いてある爪で切り裂かれるとこだったわ!

 

ってか今の空中をぬるっと滑るように移動してきたあの動き…アレってGNドライヴ搭載機特有の動きよね?

 

ならあのハイ・モックの改造機にはGNドライヴが付いてるってこと?

 

どんな方法を使ってるのか知らないけど、GN粒子が放出されてないから今まで気づけなかったわ。

 

でもあのキ○ガイ女のハイ・モック…こっちの攻撃を避けるときは普通に機体のあちこちに取り付けてある姿勢制御スラスターを使ってたわねよね?

 

んー…考えられるのはGNドライヴと通常のスラスターのハイブリッドってとこかしら?

 

まぁ例えGNドライヴと通常のスラスターのハイブリッドだとしても…

 

「ヤることは変わんないってのよ!!!はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

にこにー様の優しさ溢れる説明のせいで発生した僅かなスキを見逃さずに、禍にこを切り裂こうと接近してきたキ○ガイ女のハイ・モックの4連撃をうまく避けきった私は、反撃とばかりに肩から生える副腕を振り抜いた状態のキ○ガイ女のハイ・モックへとビームサーベルを展開して斬りかかるわ。

 

気合いを入れての一閃。

 

狙いは副腕の付け根!

 

[[あはぁん♪]]

 

トリケロス改Ⅱから伸びるビーム刃は狙い通りにキ○ガイ女が操る黒い4本腕ハイ・モックの右肩の副腕の付け根へと振り下ろされたわ。

 

けど…

 

[[せっかくぅがんばったぁのにぃざぁんねぇん♪むねぇん♪ですわぁ♪うっふふ♪この子のぉ関節わぁデータ上でぇランクA程度のぉ装甲値を確保させぇてぇますぅのぉ♪]]

 

副腕の付け根へと直撃したビームサーベルの刃は、ジョイント部分を斬り裂くことはできなかったの。

 

キ○ガイ女がデータ上で装甲値を確保とか何とかまたワケのわからないことを言ってる中で、私はスラスターを逆噴射させて機体を一度下がらせるわ。

 

多少硬い程度の装甲なら簡単に斬り裂けるBランクくらいの攻撃力がある禍にこのビームサーベルで斬り裂けないってことは、あのキ○ガイ女のハイ・モックはかなりの装甲強度ってことになるわね。

 

こっちの攻撃を避けまくってたから機動性を上げて、その代償に装甲を削ってるって思ってたけど、クソ忌々しいことに装甲もかなり厚いってことか…。

 

うん。

 

小回りが利いて硬いとかぶっちゃけめんどくさ。

 

面倒だけど…

 

「それ以上にイラつくからやっぱりブッコロス!!!」

 

[[んふふ♪ (あの人に…ナルカミに勝てないなら、アンタが私に単機で挑んで勝つとか無理だろうけどね) まぁどぉでもぉいいですわぁ♪でもぉ…よろしいのぉですかぁ?]]

 

「ナニがよろしいってのよ!!!ぜりぁぁぁぁ!!!」

 

甘ったるい話し方にイライラしながら、も私はもう一度副腕のジョイント部分へ向けてビームサーベルを振り下ろすわ。

 

例え一撃で斬り落とせなくても、何度か攻撃しているうちに累積ダメージで装甲に負荷をかけることで攻撃を通せるかもしれないからね。

 

そんな私の一撃を、キ○ガイ女は今度は避ける素振りすら見せずに、まともに喰らったんだけど…

 

[[あぁん♪お話しぃのぉ途中でぇ攻撃なんてぇ卑怯ですわぁ♪まぁ効きはしませぇんけどぉ♪]]

 

やっぱり2発程度当てただけじゃダメ、か。

 

「チッ!やっぱり通常武装でチクチク累積ダメージ狙いじゃダメみたいね!ほんとキ○ガイ女のクセに面倒な!」

 

このまま累積ダメージでジョイント部分の装甲に負荷をかけていけば、いつかはあの副腕を斬り落とせるかもしれないけど、ちょっとどころじゃなく時間がかかっちゃうわ。

 

ならどうする?

 

決まってるわ。

 

切り札を切るだけよ!

 

[[やれぇやれぇ、ですわぁ。それでぇ?もう一度言いますがぁよろしぃのぉですかぁ?]]

 

私が内心で切り札の“クサナギノツルギ”の投入を決めていると、キ○ガイ女はまたこっちに“よろしいのですか?”って言ってきたわ。

 

私はキ○ガイ女のその問いかけに…

 

「たがらさっきはからナニがよろしいってのよ!!!」

 

って答えたの。

 

質問に質問で返すのは礼儀的にアレだけど、相手は頭のイカれたキ○ガイ女。

 

礼儀とかそんなのどーでもいいってのよ!

 

キ○ガイ女は私の質問返しに…

 

[[ミナミコトリさぁん。]]

 

って答えたのよ。

 

は?

 

南 ことり?

 

なんで南 ことりの名前ががこのタイミングで出てくるの?

 

南 ことりならウズメに任せてあるから問題ない…ハズ…なんたけど…?

 

[[なにぃやらぁヤザワニコさぁんのぉサポートAIさぁんがぁヤっていまぁすぅがぁ、意味ありませぇんわぁ♪うっふふ♪彼女…もうすぐ堕ちますわよぉ?]]

 

私のサポートAI…ウズメがヤってることが意味ない?

 

それに堕ちる?

 

それって…

 

「なんのことよ!!!」

 

もう今回は何回も何回も言ってるけど、やっぱりこのキ○ガイ女の言ってることはこれっぽっちもわかんないってのよ!

 

私がバカなの?!違うわよね?絶対に違うわよね?!

 

イミワカンナイのはこのキ○ガイ女がキ○ガイだからよね?!

 

私が頬をひくひくさせながら真姫的イミワカンナイ状態になっていると…

 

[[んふ♪大変なぁことぉにぃなるぅ♪ってぇことぉですわぁ♪そぉ……黒の底に堕ちてミナミコトリさぁんの人格わぁもう2度と目覚めない…ですわぁ♪]]

 

キ○ガイ女はそんなことを言ってきたの。

 

「2度と…目覚めない…?はぁ?!んなワケ!」

 

堕ちたら2度と目覚めない?

 

安心安全が売りのヤジマ・コーポレーションが提供するガンプラバトルシミュレーターで、2度と目覚めないとかあり得ないし!

 

そんなこと聞いたこともないわよ!

 

2度と目覚めなくなるとかそれって何のデスゲームよ!

 

[[ありますわぁ。まぁ信じるもぉ信じないもぉ、ヤザワニコさぁん次第ですけぇどぉ。ワタクシわぁヤザワニコさぁんがぁ先程のぉワタクシのぉ言葉を信じずぅにぃ、ミナミコトリさぁんを見捨ててぇ、悲しい結末にぃなってぇもぉ構いませぇんわぁ♪むしろそっちの方がワタクシ的にわぁたのしぃ結末ですぅしぃ♪]]

 

あの子を見捨てて悲しい結末…ねぇ……。

 

2度と目覚めないだなんてそんなふざけたことは絶対に無いとは思うわ。

 

思うけど……もしも……もしも万が一、そんなことがあったりしたら………。

 

確かに南 ことりは人のこと散々に貧乳だの無乳だの生意気なこといいやがってバカにしてくれたわ。

 

でもね?

 

私はもうあの子を認めたのよ。

 

必死に羽ばたこうと足掻き始めたあの子を。

 

私は認めの。

 

認めた以上、あの子はもう私の仲間なのよ。

 

だから…

 

「ふん!この大銀河宇宙No.1超絶美少女スクールファイターの世界のヤザワなにこにー様が“仲間”を見捨てたりなんてするもんですか!!!ゴルゥラァァァァ!!!このド腐れキチキチグレートキ○ガイおんなぁぁぁぁぁ!!!!!!南 ことりをさっさと起こしなさい!!!もしくは起こす方法を教えやがれってのよ!!!!!」

 

例えワケのわからない状況でも、私は絶対に見捨てたりしない。

 

仲間を!

 

[[“仲間”…ですかぁ…うっふふふふふふ♪あはははははははは♪♪♪そぉんなぁことぉ聞いてしまったらぁ♪ワタクシとしましてぇわぁ……“イ♪ヤ♪”とぉ、お答えするぅしかぁありませんぇんわぁ♪あはははははははは♪♪♪あははははははははははははははは♪♪♪♪♪せいぜぇい大事なぁ大事なぁ“お仲間”さぁんのぉココロがぁ、壊れてぇ砕けてぇバラバラにぃなってぇ♪モノ言わぬワタクシのぉ“お人形”にぃなるのぉ見ていればぁいいのぉですわぁ♪♪♪♪♪♪♪]]

 

「はん!じょーとーよ!!!なら!!!思いっきりデカい声だしてあの鳥娘の目を覚ましてやるわ!!!」

 

[[あのぉ?ヤザワニコさぁんわぁバカですかぁ?デカい声程度で今のミナミコトリさぁんがぁ…]]

 

起きないって言いたいんでしょ?

 

でもね……気合いと根性があれば何でもできんのよ!!!

 

気合いがあればなんでもできる!

 

おまけに根性まで付けは絶対無敵よ!

 

うっしゃ!おらぁ!いっくわよぉぉぉぉぉぉ!!!!!

 

せーのぉ!

 

「ゴルゥラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!目ぇぇぇぇぇぇぇ!!!覚ませぇぇぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!こぉんのぉぉぉぉぉ!!!!!!プッツンクソ鳥娘ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、無事に南 ことりは目を覚まして前回のことり回に繋がるってわけね。

 

は?

 

いきなり割愛し過ぎ?

 

しょーがないでしょ!もう尺が無いんだから!

 

ってかこんな呑気にメタいこと言ってる尺も無いのよ!

 

てなワケで♪

 

んじゃ、まぁ…

 

「“クサナギノツルギ”!全力!全開で!クソキ○ガイを…ぶ!ち!ぬ!っけぇぇぇぇ!!!!」

 

キ○ガイ退治と洒落込みますか♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様。本日もご覧いただきましてありがとうございました。

そんなこんなで目覚めたことりさん。。
次回はいよいよ頼れる増援を迎えて魔女さんとの戦闘も決着となります。
本気を出した魔女さんとやっぱり本気を出した主人公。
本気と本気がぶつかり合い……結末は思いよらぬ方向へ…。
とりあえずは先に謝っておきます。
ごめんなさい。



次回本編更新はいつも通り月曜日のお昼頃を予定しております。
頭に来て始めた短編シリーズの更新は金曜日のお昼頃を予定しております。
お時間よろしければご覧下さいませ。

それでは改めまして、本日もご覧いただきまして、本当にありがとうございました。
皆様のご意見、ご感想、または質問などもお待ちしております。
どうかお気軽にお声掛け下さい

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