ガンプライブ! ~School Gunpla Project~ 作:Qooオレンジ
プロローグ「ある日の独白」
「あーったく…今日もクソつまんねぇーなぁ…。」
4月。
街が桜色に溢れる始まりの季節。
新入生達の入学式から数日たったある日の放課後の屋上で、俺は桜の花びらたちが舞い踊る青い空を何となく眺める。
自分の名前と同じ青い空をただぼーっと見上げながら、俺…“鳴神 青空(なるかみ そら)”は、ぼやきのような呟きと共に、右手に持つ缶の中に僅かに残っていたコーヒーを飲み干す。
口内にコーヒー特有の苦味と酸味を感じながら、俺は不意にかつて胸を焦がしたあの熱い戦いの日々を思い出し、今の己の日常と照らし合わせるように現状の自分へと思いを巡らす。
怠惰で刺激のない毎日。
何の面白味も無い、何も変わらない、ありきたりなつまらないだけの日常の連続。
わかってるさ…。
今の俺じゃ何をやってもつまらないだけだって事は………。
まるで年下のような外見をした可愛い先輩が対価として差し出したそのか細い身体を、欲望の赴くままに貪って汚してみても、心が満たされるのは快楽に身を任せる一時だけ。
その後に残されるのはさっき飲み干したコーヒーと同じ苦味を伴う嫌な感情。
わかってる…。
何をやれば、このつまらない日常を終わらせる事が出来るのかは…。
そう…。
わかってる…。
あの日からずっと、この胸の奥底で燻ってる感情の正体も。
わかってる…。
どうすれば再び燃えるような熱い情熱を蘇らせる事が出来るのかも…。
「はぁ…さっさと帰ってガンプラでも造るか…。」
今でもガンプラを造る事は大好きだ。
ガンプラを造ってる時はあの頃のように心の底から楽しんでる俺が確かにそこには居る。
でも…それでも…俺は“その先”に踏み出せないでいる。
何の為にガンプラを造るのか。
ただ飾るだけ?
違う。
戦う為に。
もう一度あの凄い人達と共に、夢と希望に華々しく彩られた世界の舞台で競い合うために。
そしてまた…“一番”になる為に。
俺はガンプラバトルが大好きだ。
俺はガンプラバトルが怖い。
あの日、ガンダム的に言えば“世界の悪意”ってヤツに晒されたあの日。
公式戦に出る事を止めてから、いや…逃げてから…か。
そう。
逃げてから……俺の心の中ではずっと、この相反する二つの感情が、行き場もなく胸の奥底でずっと燻り続け
ている。
「それともまたにこちゃん相手に軽くバトってから帰るかな?バトルのあとはもれなく“ご褒美”も待ってるし。」
燻ってる日常。
いつもの日常。
変わらない日常。
逃げ出した日常。
戻りたい日常。
戻れない日常。
「バトロイでもいいけどこの時間だと微妙そうだし…。どちらにしろこの辺の野良バトルじゃにこちゃんが一番強いからなぁ。うっし!やっぱり今日も軽くにこちゃんに遊んで貰うかな?」
俺は自分の中の感情を誤魔化す為に、ここ数年で慣れてしまった苦笑いと共にそんな呟きを一つこぼすと、先程飲み干したコーヒーの空缶をゴミ箱目掛けて放り投げながら、講堂裏のガンプラバトル部の部室へと歩き出す。
そこに居るであろう夢を追い続ける孤独な先輩との楽しい一時に思いを馳せながら…。
「今日は何使うかなぁ。やっぱここは定番のザクかなぁ?ガンダムタイプは意地でも使いたくねぇーし。」
この時の俺はまだ知らない。
1週間後に知らされる学校の廃校を機に、愛すべき9人の女神達と共に、再びガンプラバトルの表舞台…高校生ガンプラバトル選手権大会“ガンプライブ”へと出場する事を。
熱く激しく駆け抜けたあの頃を超える、騒がしくも楽しい毎日が始まる事を。
一生忘れる事が出来ない最高の1年が始まる事を。
そう。
まだ俺は知らない。
これはかつて最年少でガンプラバトル界の頂点に立った一人のガンプラファイターと9人の女神達の物語。
ガンプライブ! ~School Gunpla Project~
俺と彼女達の最高の1年が、今…始まる。
さぁ!ガンプラバトルを始めよう!