ガンプライブ! ~School Gunpla Project~ 作:Qooオレンジ
[[園田さん。大丈夫?初めてだと酔ったりする人も居るんだけど…。]]
レンタルしたジム・スナイパーⅡをスキャニングし、そのデータを登録したGPベースをガンプラバトルシミュレーターのコクピットに接続した私は、初めての発進を無事に終え(穗乃果は見事に頭から着地していましたね…。)、今は目の前に広がる広大な大地に目を奪われていました。
その光景はとてもゲームとは思えない景色で、私が乗り込むこのジム・スナイパーⅡのコクピットを開けば荒野に吹く暑い風と眩い太陽の光を肌で感じられると錯覚すら覚える光景でした。
[[園田さん?大丈夫?具合悪い?無理してない?]]
「あっ…!ごめんなさい!鳴神君!ちゃんと聞こえてます!大丈夫です。特に酔ったりはしていません。ただ…。」
[[ただ?]]
「ただ…、凄いなって思って…。」
[[あぁ…。うん、そうだよね。ヤジマ驚異の技術力ってヤツだね。流石はニルスさんってとこだよホントに。あぁごめん、何でもないよ。]]
ニルスさん?誰でしょうか?ヤジマと言うのは確かこのガンプラバトルシミュレーターを提供している会社でしたね。他にも医療用ナノマシンやIFS、各種AI技術。他にも様々な核心的な技術もヤジマ・コーポレーションが開発し発表した物でしたね。
[[うん、初めてガンプラバトルする人はさ、ほとんど同じ反応するよ。この光景はとてもゲームとは思えないーってね。]]
「はい。私も正直に言いますと所詮はただのゲームだと嘗めていました。ですがこれは……。」
[[だね。まぁこの光景にもそのうち慣れるよ。今日のフィールドはご覧の通りの殺風景な荒野だけどさ、中には花畑とか桜並木とかの綺麗なフィールドもあるし、もっと驚くようなフィールドもあるからね。楽しみにしててよ。]]
「はぁ…。本当に色々と凄いですね、ガンプラバトルは…。」
[[っと。それよりも今は先行した高坂さん達に合流しよう。南さんは結構やり込んでるっぽいから心配無さそうだけど、高坂さんは危なっかしいからね。サポートAIがある程度は補助してくれてるのに頭から着地って久し振りに見たよ。今日始めたばかりの園田さんよりもヤバいって、なんかホントに高坂さんらしいっちゃらしいけどね。で?園田さんは操作大丈夫そう?基本的にはIFSでの操作になるし、サポートAIが優秀だから特に難しい事はないと思うけど、園田さんのジム・スナイパーⅡには狙撃用のスコープモードがあるからさ。さっき一応説明したけど改めてスコープモードの方は大丈夫そう?]]
ガンプラバトルを始める直前に少しの時間でしたが私は鳴神君とことりから、簡易コクピットで簡単な操作レクチャーを受けていました。
IFS……ヤジマ・コーポレーションが医療用ナノマシンと共に発表したイメージ・フィードバック・システムによる医療用ナノマシンを介した操作システムと最新鋭の汎用サポートAIシステム。この二つによってガンプラバトル初心者の私でも問題なく自分のイメージ通りに機体を動かす事が出来ました。
どちらかのシステムが無ければ、私も発進後の着地に失敗していたのでしょうか?……穗乃果のように頭から、と言うのは嫌ですね。
ちなみに操縦者がパニックを起こしたとサポートAIまたはガンプラバトルシミュレーターのマザーシステムが判断した場合には安全装置が作動して機体が一時的に停止するスタン状態になる仕組みだそうです。
また、ガンプラバトル熟練者やトップランカーの人達になると、このサポートAIも自分専用に改良された特別な物を使用する事も出来るそうです。
「はい、大丈夫です。問題ありません。スコープモードも弓を射るときの感覚に何処と無く似ているようなので…。」
[[ふーん…。流石は弓道部のエースってとこか。武道経験者は慣れるのが早いよ。]]
「そんなことは…。」
そんな会話を交わしながら、私と鳴神君は先に行ってしまった穗乃果と、穗乃果をフォローするために追って行ったことりを追いかけます。
コクピットのモニターの端にに写し出されたレーダー上では、穗乃果とことりの機体を示す青い2つの光点の周囲に、敵機を示す赤い光点が12程表示されています。どうやら既に二人は敵と遭遇して戦闘が開始されているようです。
鳴神君の説明では穗乃果達が今戦っているのはAI操作による無人機で、昨日始めたばかりの穗乃果は兎も角、それなりの経験があることりなら一人で十分に対処可能な相手だそうです。
レーダーを確認し終えた私はジム・スナイパーⅡの頭部を少し横に動かし、私の隣を並走する薄い緑色をした一つ目の機体を見つめます。ジム・スナイパーⅡのカメラ越しに私の目に写るその機体は、ザクⅡF2型と呼ばれる機体だと鳴神君がバトル開始前に教えてくれました。
まぁ、その時ことりと二人で機体についてよく分からない言葉の羅列で猛烈に説明し始めたときは正直少し引いてしまいましたが…。
二人の話を簡単にまとめると、鳴神君のザクと言う機体はガンダムと言うアニメのやられ役?と言う事ですが、鳴神君はどうしてそんな機体を選んで使っているのでしょうか?
ことりや穗乃果が使う主役機のガンダムと呼ばれる機体の方がかっこよくて、男の子は好きそうですが?鳴神君はそうでは無いのでしょうか?
[[園田さん!前!高坂さん達が見えて来たよ!]]
そんな事をふと考えていた私の耳に、通信越しで鳴神君の声が響きます。
その声に釣られて正面を確認すると、先行していた穗乃果とことりの機体が濃い緑色をしたずんぐりとした何処か愛嬌のある機体と戦闘していました。
どうやら穗乃果が突出し過ぎていて、ことりの射線に出てしまい攻撃の邪魔をしているようですね。
鳴神君とことりの事前の説明では、ことりのウィングガンダムと言う機体が装備するバスターライフルは高い火力で敵機を凪ぎ払うのが得意との事でしたが、あれでは折角の火力もその威力を発揮できないではないてすか!
あぁもう!穗乃果は!全くもって相変わらず周りも見ないで走り出すんですから!後でお説教です!
穗乃果!覚えてなさいよ!
[[ありゃ…。高坂さんが邪魔で南さんはバスターライフル使えてないのか…。高坂さんも下がる気は無いっぽいし…。それでもマシンキャノンだけで高坂さんを援護し続けてるってのは中々にヤるな南さんも。っと!援護にはここら辺がいい位置か…。園田さん。ここから二人に援護射撃したいんだけど、この距離から高坂さん達に当てないで狙い撃てる自信はある?高坂さんの近くの敵機じゃなくていいんだ。とりあえずは敵機の注意を少しこちらに引き付けたくもあるからね。]]
「はい、動きが然程速くはないので恐らくは問題ないと思います。この距離からならばスコープモードを使えば狙撃も可能かと…。もっとも!何処かの!周りも見ないで!いつも!いつも!一人で!先走っている!穗乃果が!いきなり射線に割り込んだ来たら!思わずイラっとして後ろから撃ち抜いてしまうかもしれませんが!」
[[こわっ!園田さんなんか怖いよ!ってまぁそこら辺は任せるよ。高坂さんを狙うのも狙撃で援護するのも。俺のザク、今日はストレージの中にも遠距離用の装備が無いから園田さんがスコープモードを起動したらそちらの護衛に入るからさ。園田さんの周りには一切近付けさせないから、周囲を気にしないで思う存分に撃ちまくって。]]
「はい。わかりました!では早速…。スコープモードを起動!機体の火器管制システムを狙撃戦用に移行してください!」
<ready>
私は音声入力による指示で機体のサポートAIにスコープモードの起動を命じます。サポートAIの電子音声が短く“了解”と答えると同時に、私のジム・スナイパーⅡの頭部に搭載されているスコープバイザーがカメラアイを覆うように起動し、機体のシステムも狙撃戦闘用のそれに移り変わります。モニターにはスコープバイザーにより拡大された映像が写し出されたのを確認すると、私は機体の右手に握られていたスナイパーライフルを水平に構え静かに狙いを定め始めます。
やがて私の精神は弓を射る時と同じすぅーとした独特の感覚と共に狙いが研ぎ澄まされて行くのを感じました。
集中した精神の中で、モニターに写し出されたターゲットサイトの中央に敵の姿を捉えた私は、躊躇い無く右手に握られたスナイパーライフルの引き金を引きます。
その瞬間、パシュっと軽い音を響かせながら、スナイパーライフルの銃口から薄いピンク色の光が発射され、ただ真っ直ぐに狙い定めた敵機へと向かっていきました。
ほんの少しの間を置いて、私が放ったその光は敵機を貫き、その直後には激しい爆発を巻き起こしました。
[[おお!お見事!自分で狙撃しろとかなんとか言っておいてなんだけど、初めてで、しかも狙撃で一撃とか園田さん凄いよ!]]
「あ…あの…、ありがとうございます!」
後で聞いた話ですが、私が初めて撃墜したこの機体はハイ・モックと言う機体で、ガンプラバトル界のやられ役としてゆるキャラ的な人気のある機体だったそうです。
後日私もガンプラコーナーでハイ・モックを見付けた時にはその値段の安さと愛嬌のある容姿から思わず買ってしまいました…。3体も…。
[[っと!釣れた!高坂さん達のとこから4機こっちに来るよ!でさ、折角なんだから園田さん次はマシンガンとビームサベールで近距離戦闘ヤってみよう!遠距離狙撃は流石の腕前だから問題無いしさ。次は近接戦闘の練習だよ!前衛の3機は俺が片付けるから残り1機は園田さんがヤってみて!大丈夫!危なかったらすぐに助けるから思い切って逝ってみよー!]]
っつ!確かにレーダーには穗乃果達の所から私達の所に向かう赤い光点が4つ確認できます。
「はい!やってみます!」
私は鳴神君に答えると右手に握られていたスナイパーライフルを武装領域(ウェポン・ストレージ)に帰還させ、新たにマシンガンを選択し呼び出します。
この武装領域ですが、ガンプラバトルのマザーシステムがガンプラの完成度等により設定する機体容量を使用して、機体に搭載された武器以外でも、武装領域に予め登録していれば、手持ちでなくても自由に武器等を呼び出し使用する事の出来るシステムだそうです。
ただこの武器の召還と返還には少し時間が掛かる為、乱戦や1体1の状況、特に接近戦の際には大きなスキになるそうです。中には機体容量のほとんどを使用した凄い爆弾を一つだけ武装領域に登録して特効してくる変わった人も居るそうです。
………割と少なくない数の人が……。
[[さて…。喰い散らかしますか!]]
鳴神君はその声と共にザクの背部のバーニアと呼ばれる推進装置を短く2度点火しその勢いを利用し一気に踏み込むと再びバーニアを点火させ凄いスピードで駆け抜け出しました。
そしてそのスピードを維持したまま一瞬のうちに2機の敵機の懐に潜り込むと、鳴神君はザクの右手に持つ刃の部分が赤熱化した片手斧で2体をすれ違いざまに切り裂き、そこからさらに一歩踏み込みむと、左手に持つマシンガンの銃口を残り1体のコクピットへと押し付け零距離から数発発砲し敵機を撃ち抜ぬきました。こうして鳴神君は私の目の前であっという間に3機の敵機を撃墜してしまいました。
その動きは今日始めたばかりの初心者である私が見ても、実に素晴らしい洗練された動きでした。
[[レンタルガンプラでクイックブーストはキツいなぁ…。まぁレンタルガンプラじゃこんなもんが限界か……。っと、ほら!園田さん!予定通りそっちに1体行ったよ!]]
鳴神君の見事な操縦に少しの間見惚れていた私でしたが、その声に反応してこちらに向かってくる敵機へと意識を向けます。
「はい!」
私は先程までスナイパーライフルが握られていた右手に新たに握られたマシンガンを構え、私に向かって来る敵機へとターゲットサイトを合わせ引き金を引きます。
その瞬間、左手に構えたマシンガンからはけたたましい音と共に大量の銃弾が吐き出され、狙い定めた敵機へと殺到していきました。
やがてレーダー上の敵機の光点が消えたのを確認した私は引き金から手を離します。そして激しい銃撃による砂ぼこりが収まると、そこには、大量の銃弾によってボロボロになった敵機が横たわっていたのでした。
[[上出来!上出来!まぁちょっと撃ち過ぎで弾が勿体無かったけど初めてなら上出来だよ!向かってくる敵機に怯まずにトリガーを引けるなんてスゴいよ!]]
今さらになって心臓の鼓動が激しく脈打ちます。初めての戦闘で私は軽い興奮と戸惑いを感じましたが、それ以上に私の心はただ“楽しい”と言う感情に支配されていました。
「これが…ガンプラバトル…。」
幼馴染みに誘われ、少し仲良くなったクラスメイトと共に始めたガンプラバトルが、私の後の人生に大きな影響を与えるなんて、この頃の私は全く知りもしませんでした。
そして、このすぐ後に恐るべき強敵が迫っていた事も…。