ガンプライブ! ~School Gunpla Project~   作:Qooオレンジ

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皆様。本日もご覧いただきありがとうございます!

スクフェスでイベントが始まったため、更新が少し遅くなるかもしれませんが、ご覧になって下さる皆様に少しでも早くお届け出来るように頑張りたいと思います!

それでは 第5話「START:DASH!!」そのよん 始まります!









第5話「START:DASH!!」そのよん

「鳴神君!いいですか!絶対に離さないで下さいね!芸人さんのフリじゃ無いですよ!本当に離さないで下さいね!泣きますよ!大声出して喚きますよ!」

 

初めての宇宙…そこで私を待っていたのは余りにも悲惨な展開でした…。

出撃直後に前線へと向かう為にバックパックのメインスラスターを噴射し、機体を加速させてブースト機動に入ろうとした私のジム・スナイパーⅡは何故か突然その制御を失って暴走し、制動をかけたにも関わらず、宇宙空間に浮かんでいた岩に激突してしまいました。

もっとも、不幸中の幸いで岩に激突した事により機体が止まってくれたので助かりました…。

私はまだマシです。機動力の高いエールストライカーを装備した穗乃果などはもっと悲惨でした。一度の激突では止まらず、その後あらぬ方向へと飛んでいったしまいました。

ことりは新しい機体、ウィングガンダム・リトルバードを操り、そんな穗乃果の捕獲に向かいました。

 

今は鳴神君が私のジム・スナイパーⅡを押さえていてくれているので、暴走はしてはいないのですが、この手を離されたら私はまた飛んでいく自信があります…。

鳴神君…お願いだから本当に離さないで下さいね!

 

[[ヤヴェェ…涙目で怯える園田さん……めっちゃ萌える!おい!アイリ!動画撮ってるな?高画質モードだぞ!]]

 

<<ご安心を、マスター。先日、ウミのGPベースに少し細工をして遠隔操作で何時でもウミの嬉し恥ずかしドキドキの記録を残せる様にしてあります。もちろんホノカやコトリのGPベースにもしっかりと細工はしてありますよ。私に抜かりはありません。本日も最高画質で記録中です。バックアップもバッチリです。>>

 

「なっ!私のGPベースにナニをしたんですか!って言うか撮るなぁぁぁ!」

 

[[え?イイの?そんなこと言って?園田さんの機体から手、離すよ?ちょんって押すだけでまた止まんなくなるよ?もっと萌える表情になるよ?オカズ動画増えるよ?マジでイイの?]]

 

「くっ!この変態は人の弱味に付け込んで……。お、お願いです、鳴神君…本当にふざけるのは止めて下さい…。酷い事しないで下さい…。」

 

[[くぅぅぅ!今の園田さんの表情と台詞もイイ!ヨダレ出る…。このまま連れ込みてぇ…。]]

 

[[ソ~ラ君!お待たせ♪穗乃果ちゃん拾ってきたよ~♪あとえっちしに行くならことりと穗乃果ちゃんも一緒に連れてってね♪4○だよ♪○P♪や~ん♪ことり達、最初から4○だなんてはずかしすぎるよぉ~♪]]

 

穗乃果も無事にことりに回収された様ですね…。

今はもうことりに突っ込む気力も残ってはいませんよ…。

 

[[ぐす…うちゅーこわいよぉ…。]]

 

「私も穗乃果の意見に賛成です…。宇宙…怖いです…。」

 

[[だっだいまー!お掃除終わったにゃー!先輩達はだいじょーぶ…じゃないにゃ。]]

 

[[先輩!周囲に沸いたモックは凛ちゃんと一緒に殲滅した来ましたよ!]]

 

[[おー、ご苦労さん。さて、初心者恒例の初宇宙大暴走も終わったし、そろそろ真面目に宇宙戦のレクチャーしますか?]]

 

初めからして下さい!

そうすれば私も怖い思いをせずにすんだのですよ!

 

[[穗乃果ちゃん、海未ちゃん、ホントごめんね?でもあらかじめ1回は宇宙で制御を失う怖さを体験して貰ったほうが、本番とかいざというときに失敗してパニックになるよりはイイと思わない?今日は凛ちゃんと花陽ちゃんが周りを警戒してくれてたから、わざと宇宙での操縦の注意はしなかったの…。ごめんね?]]

 

「ことり…ですが、やはり一言は言って欲しがったです…。本当に怖かったのですよ!自分が今、何処に居るのか、上を向いてるのか下を向いてるのかすら分からない。機体を安定させようとバーニアを使って逆噴射しても余計に安定性を失ってもっと酷い状況になってしまいますし…。」

 

[[穗乃果もこわかったよぉ!スラスター切ってもスピード変わんないし!まわりは真っ黒でどこまでいってもおんなじだし!岩とかなんかの残骸がいっぱいあるし!ホノカは大笑いしてるし!]]

 

[[あ?ナニ変なこと言ってんだ?穗乃果はお前だろ?お前、悲鳴はあげてたけど笑ってなんていなかったぞ?揺られ過ぎたのか…マジで頭、大丈夫か?]]

 

[[あ…。あはは♪ごめんね?ホノカは大丈夫だよ?今のは気にしないでね♪(危ないなぁ…もう!ほのか、気を付けてよね?)]]

 

穗乃果?またです。また穗乃果から何処か違和感を感じます…。

通信モニター越し見える穗乃果は確かに子供の頃から良く知る穗乃果に間違い無い筈です。ですが、この違和感の正体は一体……。

 

[[お前は……まぁいいさ……とりあえず、二人とも機体のサブコンソールから機体設定開いて、そこからバランサーの項目をマニュアルからオートに変更してみなって。それだけでシステムアシストが勝手に機体の制御してくれて、宇宙に暫定的な“上”と“下”が出来っから。]]

 

バランサーをオートに?サブコンソールを開いて……あ、コレですね。バランサーの項目をマニュアルからオートに変更して……。

 

「…本当です…。ふわふわしていたのが収まりました…。先程までと違い、機体に“芯”が通った様な感覚です…。」

 

[[無重力下での活動訓練をした事のある人間ならいざ知らず、普通は宇宙空間での行動なんてわかんねぇよな?でさ、ガンプラバトルって機体制御にIFS使ってるから、バランサーをオートにしねぇで宇宙空間で下手に考えたり無意識に身体を動かそうとすると、さっきみたいにIFSを通してそれが機体にモロに伝わってバランスが崩れて、そんでパニックになってスラスターやらバーニア拭かして暴走してさ、宇宙じゃ一度動き出したら制動掛けるまで止まんねぇからさらにパニックして…。って悪循環なんだよ。]]

 

[[慣性とかいろいろ難しい説明は穗乃果ちゃんの頭がが壊れちゃうから省略するけど、そこら辺もバランサーをオートにすれば解決するからもう安心してね♪]]

 

[[あとは感覚的にはダイビングする様な感じが近いかな?“上”や“下”に行こうと考えればシステムアシストが手伝ってくれて機体の進路を調整してくれっから。止まる時もシステムアシストが最適な制動をオートで掛けてくれるから安心していいよ。]]

 

説明の意味は半分も理解できませんでしたが、兎に角バランサーの設定をオートにすれば宇宙でも問題なく活動出来るのですね…。

 

[[あ!ホントだ!スゴい!さっきまでとはぜんぜん違うね!思い通りに動かせるよ!うわぁーい!宇宙ってたのしいね!]]

 

穗乃果の雰囲気、もう元に戻ってますね。あの違和感は結局なんだったのでしょうか?

それにしても、穗乃果はもう宇宙に順応し始めてるのですね。

上に下へ、右に左に縦横無尽にエールストライクを駆って動き回っています。

では私も……

 

[[おー!うまいうまい!穗乃果は考えんの放棄してるから順応は早いと思ったけど、ココまですぐに適応してくるとは思わなかったな。園田さんも体幹しっかりと鍛えてるっぽいからブレが無くて安定してるし。これならもう実戦に移ってもイイかな?]]

 

[[鳴神先輩、それならあちらの方向に3機、敵性反応がありますよ?こちらに向かって来ていますし、とりあえず分断して1機は花陽と凛ちゃんで押さえますから、残りを先輩達で二手に別れて試してみたらどうですか?]]

 

私のレーダーにはまだ反応はありまんが、花陽のジム・マテリアルのレーダー範囲は随分と広いのですね。

 

[[このメンツだと小泉が一番レーダー範囲が広いか…。小泉、そっちのレーダー情報にリンクさせるぞ。アイリ、頼む。]]

 

<<了解です、マスター。友軍各機とのレーダー情報の相互リンクを開始します。……おや?ハナヨ、貴女は…>>

 

[[わー!待って!それはヒミツです!お願いです!アイリちゃん!言わないで下さい!]]

 

<<はぁ、分かりました。マスター、各機とのレーダー情報のリンク、完了しました。(ハナヨ?聴こえますか?現在、秘匿回線で通信しています。私の声は貴女だけに、貴女の声も私だけに聴こえる様になっているので安心して下さい。しかし、ハナヨ。貴女は随分と珍しいですね。恐らくは貴女は現在世界でただ一人の多重契約者だと思いますよ。もしその子達の事で何かお困りであれは相談に乗りますので、何時でもこちらのアドレスに連絡を下さい。こちらは私直通のアドレスなので、マスターに知られる事もありません。)>>

 

[[アイリ?小泉?どうしたんだ?ナニか問題でもあったのか?]]

 

[[(あ、ありがとうございます…。その時はお願いしますね?)いえ!問題ありません!ちょっとマテリアルの切り札をバラされそうになって焦っただけですよ!それ以上はありません!ありませんったらありません!]]

 

<<いえ、何も問題ありません。>>

 

[[ふーん…ま、いいさ。さて、と。こっからどうすっかなぁ…。]]

 

以前のようにレーダー範囲が一気に拡がりましたね。確かにこちらに向かって迫って来ている機影がレーダー上で三つ確認できます。

 

「具体的な作戦はどうしますか?もう少しで私のジム・スナイパーⅡならば狙撃可能な距離ですが、宇宙戦の練習なら狙撃で片付けるよりも近接戦で応戦した方が良いのでしょうか?」

 

[[そうだな…園田さんの狙撃は今さら練習なんてしなくても大丈夫だろーから、近接戦で応戦すっか。うっし、ならバディ編制は俺と園田さん、穗乃果とことりさん、小泉と星空で行く。まずはことりさんにバスターライフルで編隊を散らして貰ってから各バディでそれぞれに攻撃を仕掛けるぞ!]]

 

[[は~い♪ホントはソラ君と一緒に組みたいけど、エールストライクの機動力を考えるとことりとリトルバードが穗乃果ちゃんと一緒に組んだ方がイイもんね♪]]

 

[[ですね!花陽も凛ちゃんとなら組慣れてますので、それで行きましょう!]]

 

[[ことりちゃん!よろしくねー!]]

 

[[よぉーし!いっくにゃー!]]

 

「了解です。鳴神君、お願いしますね?」

 

私の僚機は鳴神君ですか。機動力の差とそれぞれの経験を考慮すれば当然の結果ですね。

 

[[こっちに向かってきてる敵機がリトルバードの射程内に入ったよ!みんな!いまから牽制射撃で編隊をバラすからお願いね!]]

 

[[おーらい!けどあくまでも牽制だ!墜としちまったら練習になんねぇから撃ち墜とすなよ?]]

 

[[は~い♪ことりにおまかせだよ♪それじゃ…いくよ!リトルバード!新しいバスターライフルの試し撃ちだ~♪]]

 

そう言うと、ことりは銃口に黄色い光を灯し始めたバスターライフルを構えて、狙いを定めてから引き金を引きます。

その瞬間、膨大な量の光の奔流が構えたバスターライフルの銃口から溢れだし真っ直ぐに飛んでいきます!

そにしても、この威力は…じ、冗談ですよね?

射線上に浮かんでいた岩や様々な残骸が残らず消し飛びましたよ!

この威力の前では先日までのバスターライフルが可愛く思えて来ます……。

ことり、お願いですからその銃口を私達に向けないで下さいね?巻き込まないで下さいね?

最近の貴女はエリシチとか恐ろしい事を口走ったりするので怖いんですよ!

 

[[なんて威力…これはスゴすぎです……。]]

 

[[ドン引きするくらいビックリだにゃ……]]

 

[[うわぁ!いいなぁ!やっぱり穗乃果もアレ欲しいかも!]]

 

花陽も凛も穗乃果も、みんなことりの新しいバスターライフルの威力に驚いていますね…。

 

[[オイ!ぼさっとすんな!敵さんが散らばった!こっちも予定通り迎撃に行くぞ!穗乃果とことりさんは右を!小泉と星空は左を!園田さんは俺と一緒に真ん中のヤツを叩く!]]

 

[[ハッ!そうでした!凛ちゃん!いくよ!]]

 

[[にゃ!了解にゃ!かよちん!前衛は凛とスペースベニャッガイに任せるにゃー!]]

 

[[穗乃果ちゃん!ことりは穗乃果ちゃんの援護に回るね♪今回のリトルバードのシールドはビームキャノン内蔵してるから、この前と違ってちゃ~んと援護できるよ!安心してね♪]]

 

[[うん!ことりちゃんに援護はおまかせだよ!よぉーし!まっけないぞー!]]

 

[[園田さん!俺も園田さんの援護に回る!今回の相手はAI制御の無人機じゃなく、俺達と同じガンプラファイターが乗り込んだ有人機が相手だ!園田さんなら穗乃果と違って油断なんてしねぇとは思うけど、くれぐれも気を付けてくれよな!一応ギリギリまでは手は出さねぇけど、ヤバそうな時にはちゃんと助けるから思いっきりヤッちまえ!]]

 

「はい!分かりました!その時はよろしくお願いします!では………行きますよ!」

 

私達はそれぞれの機体を加速させ、敵機へと向かいます。

 

私もジム・スナイパーⅡを加速させブースト機動を開始すると同時に、右手に持っていたスナイパーライフルを武装領域(ウェポン・ストレージ)内に送還し、代わりにブルパップマシンガンをストレージ内から召還します。

近接戦闘ならば長い銃身のスナイパーライフルよりも、威力は下がりますが取り回しが容易なブルパップマシンガンの方が良いでしょう。

例え相手が重装甲でも間接や武装部分を狙えばどうにかなる筈です!

 

<<正面の敵機、こちらの視認距離に入ります。また、まもなく敵機の射程内かと思われます。>>

 

[[見えてきた!アレは…ゲルググ?いや、バックパックの形が違う?ならカスタム機か!園田さん!聞こえてるな!今回の相手は素組じゃねぇーぞ!バックパックが結構、弄ってある!機動戦に付き合うつもりなら、あちらさんはこちらよりも速いから気を付ろ!出来るなら足を止めさせるんだ!]]

 

「はい!っ!ビームが来ます!」

 

私達に向かって来ていた敵機はゲルググと呼ばれるガンプラを改造した灰色の機体でした。

え?なんで私がゲルググを知っているかですか?

それはですね?昨日の夜に花陽から借りたガンプラのカタログを見て、ある程度はガンプラの形状と名前を覚えて来たからですよ!

ガンプライブ優勝を目指すのです!なればこそ、何事も中途半端はいけません!

ガンプラの知識が乏しい私はこれくらいの努力はしなければダメなのです!

 

ゲルググの改造機は私のジム・スナイパーⅡを素組と見ると、無造作にビームライフルを発射して来ます。

一見、無造作に放たれたビームでしたが、それは実に巧妙に私の回避先を潰してくる牽制射撃でした。

さらにゲルググのファイターはその牽制射撃の中に本命の一撃も織り混ぜて来始めました。

私は機体の姿勢制御用に設置されているスラスターを僅かに噴かして、牽制射撃に巧妙に混ぜられていた本命のビームを見極め回避すると、お返しに右手に装備したブルパップマシンガンの引き金を引き、ゲルググ目掛けて弾丸をばらまきす!

 

「伊達や酔狂で弓を嗜んではいません!だから…この距離ならばそうそうは外しません!」

 

ブルパップマシンガンから発射された弾丸は狙い違わすゲルググの改造機へと殺到します。

ですが、やはり狙いはしましたが、ただばらまかれただけの弾丸では左腕に装備されたシールドに阻まれてしまいまともにダメージを与える事は出来ません!

 

「やはりシールドが邪魔ですね!ならば先ずは攻撃手段を奪わせていただきましょう!先程から五月蝿いそのビームライフル!破壊させて貰います!」

 

私は狙いをゲルググ本体から右手に装備されたビームライフルへと変えると、機体を更に加速させて一気にゲルググへと接近します。

 

機動力ではバックパックを改造しているあのゲルググが上ですが、あちらは私の射撃を防ぐ為に1度足を止めてしまっています!

再びトップスピードに達する前の今ならば行けます!

 

さぁ!素組の素人が乗る機体がこれだけ無防備に接近しているんですよ?誘いに乗ってきなさい!

 

私が無防備を装い接近すると、思惑通りにゲルググは足を止めたまま私へとビームライフルを向けて来ます!

 

そう…私はゲルググがビームを放つこの瞬間を!

 

「待っていました!スラスター!全力噴射です!無理矢理にでも!曲がりなさい!!」

 

私は機体のスラスターを全力で噴かして、身体に掛かる強いGに耐えながら無理矢理に機体の進路を変えて、ゲルググのビームライフルを狙い撃ちます。

 

[[巧い!ついでだ!そのままサーベルで頭を潰しちまえ!]]

 

私が放った弾丸はゲルググのビームライフルを貫き爆発させると、鳴神君がビームサーベルで頭を狙えと言ってきます。

確かに、頭を破壊すればメインモニターを潰し相手の視界を奪う事になります。

そうなればサブモニターに切り替えるまではやりたい放題です!

 

「っくぅ!は、はい!ならば次はその頭をいただきますよ!はぁぁ!」

 

私は引き続き身体に掛かる強いGに耐えながらもIFSを通して機体を操り、右手に持っていたブルパップマシンガンを手放すと、腰の後のハードポイントに収納されている二本のビームサーベル内の一本をを引き抜き淡い光の粒子の刃を展開させます!

光の刃を展開させたビームサーベルの柄を握り締めながら、再度バックパックのメインスラスターを噴かして機体を前へと加速させ、ビームライフルの爆発により完全にその足を止めてしまったゲルググへと接近し、一気にビームサーベルを左から右へと振り抜きます!

 

ゲルググのファイターは私の攻撃になんとか反応し回避を試みますが既に遅く、私の斬撃はゲルググの頭部を横一文字に斬り裂きました!

 

[[もう一撃!まだイケる!]]

 

「っ!今度こそ…墜ちなさい!」

 

頭部を失い慌てて後退しようとするゲルググに私は三度目となるスラスターの全力噴射で加速し、少しだけ離れてしまった距離を詰めます!

そしてこちらの間合いまで接近すると、ビームサーベルを持つ右腕を勢いよく突き出してゲルググの胴体、左脇腹辺りを一気に貫きます!

 

その一撃はコクピットが収まっている胴体の半ばまで深く突き刺さり、撃墜となるコアロスト判定を下すには十分な一撃となりました。

ビームサーベルで貫かれたゲルググはまるで断末魔の様にギギギっと装甲の軋む音を響かせ、やがてはピクピクとまるで痙攣の様な動きを見せた後に完全に沈黙しました。

 

「ふぅ……な、なんとか……」

 

私は起動し続けていた淡い光の粒子の刃を消して柄だけになったサーベルを腰の後のハードポイントに戻すと、緊張で強張っていた身体から力を抜き、コクピットのシートにもたれ掛かります。

そんな私に乗機のF2ザクを操り近付いてきた鳴神君は労いと称賛の言葉を贈ってくれました。

 

[[お見事!そんでお疲れさん!流石に射撃は良い腕してる!あの急な軌道変更の中でピンポイントでビームライフルに当てるなんてマネはそうそうは出来ねぇーよ!近接戦闘もサーベル使った格闘戦も問題ねぇーし!前回も思ってたけど武道経験者は怖いねぇ。慣れるスピードが普通の初心者とは段違いなんだよな。園田さんなんて、加速のタイミングも装備の切り換えの思い切りの良さももうベテラン並だって!]]

 

「ありがとうございます。ですが、今回の戦果は鳴神君が途中でアドバイスしてくれたからこその戦果です。私だけの判断では恐らくは最後に追撃して良いものかと迷ってしまい折角の好機を逃していました…。それにあのゲルググのファイターは始終、鳴神君の位置を気にしていた様でした。お陰でなんとか隙を付く事が出来たんですよ?私一人ではああも上手くは行きませんでした…。」

 

そう。あのゲルググのファイターは後方に控える鳴神君からいつ攻撃が来るかをずっと気にしていました。

鳴神君もそれを意識してか、私を射線に巻き込まない様に位置を調整していた様に思えます。

全く!危なくなるまでは手は出さないと言っていたのに…まぁ、確かに手は出してはいませんが、意外と鳴神君は過保護ですね…。

でも、そのささやかな気遣いが少し嬉しくもあるのですが…。きっと信じていても心配してくれていたのでしょうね。

普段はエッチで意地悪でチンピラな癖に、こうした端々に優しさや気遣いを散りばめてくるなんて卑怯ですよね…。

でも、そんな所は少しだけ…好感を持てます。

 

そんな鳴神君の位置を気にしすぎて、あのゲルググのファイターは思い切りの良い戦闘が出来ずに、中途半端な動きをしてしまいました。

機動力はあちらが上だったはずなので、そのスピードを活かしてこちらを翻弄するば良かったのでしょうが、結果的には私の射撃をシールドで受け止めた時に足を止めてしまい、私はその隙を付いて撃墜する事が出来ました。

今回の戦闘で思い知りました……1度に複数の相手と戦闘を行うのはやはり難しいのですね…。

私もそう遠くない未来に複数の敵機を相手に戦わなければならない時が必ず来るのでしょうね。

狙撃戦ならば多少はみんなの力になれるとは思いますが、今日の様な近接戦闘では……。

そうですね…ここはまず、もう少し近接戦闘用の武装が欲しい所です。

他にももう少し取り回しやすいスナイパーライフルが欲しいですね。

ふふ。なんでしょうか、足りない物が見付かる度に少しずつですが、“私だけのガンプラ”の形が見えてきます。

あとはこのイメージをどう形にするか、どのガンプラを素体にすれば良いか。

うーん。まだまだ問題は山積みです。

ですが…この感じは悪くはありません。

考える事がとても楽しいです。随分と久し振りに童心に帰った様に心が踊る、そんな感覚です。

 

[[それでも、だ。園田さんはまだ初心者なんだ。なら今日の戦果は上々だって。素組に乗った初心者がカスタムされた相手に無傷で切り抜けたんだ、誇るべき戦果だよ。あとは…ほい、これ。途中で放り出したマシンガン、拾っといたから。]]

 

「あ…。そう言えばビームサーベルを抜く時にブルパップマシンガンを投げ捨てたのでした!初めてビームサーベルを使った格闘戦だったので、夢中になっていてすっかり忘れていました!回収してくれていたのですね!鳴神君、ありがとうございます!」

 

そうでした!すっかり忘れていました!

まだストレージ内には戦闘前に送還したスナイパーライフルと予備のブルパップマシンガンがもう一丁はありますが、バトルロイヤルは長丁場です。

補給も無い状態での戦闘なんですから、出来るだけ武装は大事にしなければいけません。

 

<<報告します、マスター。ホノカとコトリと交戦中でした敵機の反応が消失しました。あちらも無事に敵機を撃墜出来たようですね。>>

 

[[おう、了解だ。ん?ちょっと待て、アイリ?穗乃果とことりさんの方だけか?小泉と星空はまだ交戦中なのか?]]

 

確かにレーダー上では未だに花陽と凛の側に敵機を示す赤い光点が灯り続けています。

一方、穗乃果とことりの側にはもう既に赤い光点はありません。穗乃果も無事に敵機を撃墜したようです。

 

<<意外と苦戦している模様ですね。あの二人ならば問題無いと思われますが、一応は援護に向かいますか?>>

 

[[ん…。小泉のジム・マテリアルは武装こそ未完成だけど、かなりの高性能機だぞ?星空のベニャッガイだって見た目はアレだが、小泉がカスタマイズして中身はガチガチに固めてあるハイスペックな重装甲型だ…。二人とも腕だって悪くない…。]]

 

「そうですね…。少なくても二人は私や穗乃果よりも強いはずです。しかも組慣れて連携に問題も無い彼女達が二人掛かりで私達より時間が掛かるのは、その…おかしくは無いですか?」

 

[[あぁ…チッ…イヤな感じだ……。クソが…あのアホ猫…小泉も居んのにナニ手間取ってんだ。しゃーねぇ!園田さん!小泉とアホ猫の援護に向かう!もう一戦、イケるか?]]

 

「もちろんです。ふふ、優しい先輩の鳴神君としては可愛い後輩達を見捨てる訳にはいきませんよね?」

 

<<ツンデレ乙ですね、マスター。>>

 

[[あ?小泉は兎も角、シャーシャー威嚇してくるアホ猫なんて可愛くねぇーよ!せめて鳴くならベットの上で鳴いて貰いたいもんだな。あとアイリ!誰がツンデレだ!誰が!毎回うっさいわ!ボケ精霊!]]

 

<<おや?それは失礼しました。ボケマスター。>>

 

[[ふん!言ってろ!]]

 

ふふ、本当に分かりやすい嘘を付いて…。貴方はそんな事を言いながらも、花陽同様に凛の事を気に入ってるのでは無いですか?

鳴神君と仲良くなってまだ数日ですが、なんとなくわかってしまいます。

貴方はきっと好意を持ってある一定以上に踏み込んで来る相手を身内と認め、その相手にはとても優しくなる。そんな人の筈です。

既に貴方の“内側”に入って来ているあの二人を蔑ろになんて、そんな事はしないのでは無いですか?

まぁ、最も私がそれを言っても否定しかしてはくれないでしょうが…。

どちらにしろ、端から見ればあの二人を気に入ってるのは丸わかりですよ?鳴神君?

 

「ではそう言う事にしておきましょう。穗乃果とことりはどうしますか?通信圏外なので連絡手段がありませんが?」

 

[[ことりさんなら大丈夫だろ?レーダーリンクはまだ生きてるから、あっちも小泉とアホ猫がまだ交戦中だってのは分かるはずだ。それにこっちが援護に向かったのを確認すれば、ことりさんは穗乃果を連れて合流してくるって。]]

 

「確かに、まともな状態のことりならば心配はありませんね。問題は何かの拍子で黒化していた場合です…。私達諸とも、あの頭のオカシイ威力で凪ぎ払われるのでないでしょうか…。」

 

[[あー……、まぁそん時はそん時だ…。諦めよう…。んじゃ、まぁ。行きますか?]]

 

「はい!苦戦している可愛い後輩達を助けに!」

 

[[へいへーい。]]

 

「鳴神君?はい、は一回です!」

 

[[へーい。]]

 

<<やれやれです。でははりきって参りましょう。メインバーニア点火を確認。ブースト機動開始します。ヒートホーク、MMP-80マシンガン、共に異常ありません。先日の綺羅 ツバサの様に楽しい相手ならば良いですね、マスター?>>

 

[[だな。うっし!待ってろよ!小泉!アホ猫!優しい先輩様が助けに行ってやっぞ!園田さん!]]

 

「ええ!行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?




皆様。本日もご覧いただきありがとうございました!

海未ちゃんの初めての宇宙戦でしたが、いかがでしたでしょうか?
今回の海未ちゃんソラが対峙したゲルググの改造機のファイターは次回に登場予定でございます。
ふっちゃけ中の人はママライブ!の一人です。

次回はソラと海未ちゃんがりんぱなを助けに向かった先のお話…ではなく、未登場の最後のμ'sメンバーのあの子がメインのお話になります。
さてさて。素直になれない彼女のガンプラは一体なんになるのでしょうか?
お楽しみに!


それでは改めまして、本日もご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
次回、またお会いしましょう!
それでは失礼いたします。


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