ガンプライブ! ~School Gunpla Project~   作:Qooオレンジ

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皆様。本日もご覧いただきありがとうございます!

今回は本編、閑話共に未登場だったμ's最後の一人である西木野 真姫ちゃんがいよいよ登場してくれます。

扱い的には閑話に近いモノになっております。
その為、語り部は海未ちゃんは一旦お休みで、このお話だけ真姫ちゃんに代わっていただきました。

それでは、第5話「START:DASH!!」そのよん てん ご 。始まります。







第5話「START:DASH!!」そのよん てん ご

「ガンプラバトル?」

 

国立音ノ木坂学院。

 

4月。将来は立派なお医者さんを目指す私、西木野 真姫は自宅から一番近いこの高校に入学したの。

 

え?将来はお医者さんになるのに、なんで進学校に入らなかったのか、ですって?

 

別に学校で勉強しなくても、家で一人で勉強した方が効率良いし、進学校だと良い成績取り過ぎて妬まれたりとか人間関係がメンドウそうだし。

 

その点、音ノ木坂だと1年は1クラスしかないし、比較的お気楽な子達が集まってるから、人間関係に煩わされる心配はないもの。

 

しかも廃校が決まりそうなのよね。

 

廃校になったら来年からは新入生が入って来ないから、人間関係はさらに簡単になるのよ!

 

静かな環境で勉強出来るのよ?最高じゃない!

 

え?寂しく無いのかですって?

 

べ、別に…寂しくなんてないわよ!ホントよ!ホントなんだからね!

 

クラスで浮いてるとか、友達が出来ないとか、お昼ご飯一人で食べてるとか!そんな事ないんだからね!

 

ごほん。えっーと、ごめんなさい。少し取り乱しちゃったわ。

 

話を元に戻すわね?

 

そんな音ノ木坂学院に入学して数日経ったある日の朝。突然パパが私にガンプラバトルをやらないか?って言ってきたの。

 

私のパパは西木野総合病院の院長で、日本でも、いいえ!世界でも有数のとても凄い名医なのよ!

 

凄いでしょ!今までに沢山の病気や怪我に苦しむ患者さん達を助けて来たの!

 

中には悲しいけれど、確かに助けられなかった患者さん達もいたわ。けど、それでもパパは絶対に諦めないで患者さん達と向き合い続けているの!一人でも多くの患者さん達の笑顔を取り戻すために!

 

私が世界で一番尊敬する人で、将来の目標でもある自慢のパパなのよ!

 

そんな自慢のパパの趣味はガンプラバトル…。

 

正直、このガンプラバトルが趣味って事だけはどうかと思うわ。

 

しかもママまでガンプラバトルが大好きなんて!イミワカンナイ!

 

「そう!ガンプラバトルだよ!真姫!ママと私の夢のひとつに、いつか真姫とママとパパの三人で一緒にガンプラバトルをしたい。と言うのがあるんだ!」

 

ガンプラバトルなんて遊んでる暇があったら、私は少しでもパパに近付くために勉強したいたいわ。

 

どうしよう?パパを傷付けずに、どう断ろうかしら?

 

「えっーと…(そうだわ!)あのね、パパ?でも私ガンプラ持ってないわ?ガンプラを持ってないとガンプラバトルは出来ないわ。」

 

「大丈夫よ、真姫ちゃん。ママ達がちゃんと真姫ちゃんのガンプラを用意してあるわ。GPベースだって特別に用意してあるから、あとは真姫ちゃんのナノマシンの固有信号のデータをGPベースに登録すればすぐにでもガンプラバトルが出来るわ。」

 

ママ!もー!なんて周到な準備してるのよ!うー!た、退路が断たれたわ…。

 

二人がこんなにもガンプラバトルに夢中になったのは6年前。

 

それまでもガンプラバトルは大好きだったらしいけど、もっと好きになった切っ掛けは歴代最年少で世界大会のチャンピオンになった子のバトルを観たかららしいわ。

 

小さい頃の私もパパ達と一緒にその決勝戦を観ておおはしゃぎしていたって言うけど、正直そんな小さい頃の事なんて覚えた無いわよ。

 

自分達の娘とそう年齢の変わらない小さな子が、知恵と勇気で大人達を倒し続けて最終的には優勝しちゃったのに感動したんですって。

 

ホント、イミワカンナイわよ!

 

「ほら?これが真姫ちゃんのガンプラよ。どうかしら?素組だけどとても綺麗でしょ。」

 

ママが私に渡してくれたのはサングラスを掛けた様な金色のガンプラ。

 

へぇ。この色はちょっと微妙だけど、なかなかかっこいいじゃない。

 

「いいかい、真姫?そのガンプラの名前は“百式”。あの“赤い彗星”シャア・アズナブルがその正体を隠して、クワトロ・バジーナとしてエゥーゴに参加していた時にリック・ディアスの次に使用したモビルスーツなんだ。パパの大好きなモビルスーツの1つなんだよ!どうだい、真姫!かっこいいだろう!」

 

“赤い彗星”って、このガンプラ、赤くないじゃない…。それに金色って…私があれを使うの?

 

確かに少しはかっこいいかも?なんて思ったけど、この色はちょっといただけないわ…。

 

「武装はビームライフルとビームサーベル、それとクレイバズーカ。あとは頭部にバルカン砲が内蔵されているんだよ。本当はメガ・バズーカランチャーもあるんだけど、真姫にはまだ早いから今回は装備させてないからね?武装はシンプルだけど、癖がないから初めてのガンプラにはちょうど良いと思わないかい?さて、真姫はこの百式を上手に乗りこなせるかな?」

 

うわぁ…パパの中じゃ私があの金ピカのガンプラを使う事が確定しちゃってるわ…。しかもガンプラバトルもやる事になってるし…。

 

今さらもう断れないわよね…。

 

「わかったわ…。そのガンプラ、百式だっけ?それ使わせてもらうわ。ねぇ?それで、いつ行くの?パパ、毎日とっても忙がしいから時間取れないんじゃ…。」

 

まだよ!真姫!まだ諦めちゃダメ!

 

そうよ!パパは忙がしいんだから、そうそう時間は取れないはずわ!

 

そこに望みはあるはずよ!

 

「大丈夫だよ、真姫!パパが可愛い真姫と一緒にガンプラバトルをしたいって酒の席で溢したら、友人達が私の代わりに1日だけ手伝ってくれると言ってくれたんだ!」

 

「だからね?早速、今日の夕方のバトルロイヤルに三人で参加しようかな?って♪ね?パパ♪」

 

「ああ!いよいよこの時が来たよ!ママ!」

 

はぁ……憂鬱だわ…。

 

「イッテキマース…。」

 

「真姫!夕方だよ!学校終わったら連絡しなさい!ママと二人で迎えに行くからね!」

 

「ねぇ?パパ♪今日はどの子を使おうかしら?パパは大人気なく本気仕様のあの子を使っちゃうの?」

 

「まさか!アレを使ってしまったら折角の真姫の活躍に水を差してしまうからね!今日は素組の…………」

 

ホント、憂鬱だわ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、西木野さん。おはようございます。」

 

「西木野さん!おはよーだにゃ!」

 

朝から疲れきった私はようやく登校して教室に来たの。

 

そんな私に挨拶してくれたのはこの春からクラスメイトになった小泉さんと星空さん。

 

小泉さんは眼鏡を掛けた大人しい子で、星空さんは小泉さんとは逆に五月蝿い位に元気で明るい子。この二人は幼馴染みで親友同士なんですって。

 

私に話し掛けてくる数少ないクラスメイトよ。

 

でも、星空さん…アナタ良い歳して語尾に“にゃ”って…。恥ずかしくないのかしら?

 

「おはよう。小泉さん、星空さん。」

 

「えぇー!凛って呼んで欲しいにゃー!そしたら凛も“真姫ちゃん”って呼べるのに!」

 

「ダメだよ、凛ちゃん?西木野さんに無理言っちゃ?ごめんなさい、西木野さん。凛ちゃん、悪気はないの…。ただ、私も凛ちゃんも西木野さんともっと仲良く…。あ!ごめんなさい!邪魔しちゃいましたね?それじゃまた後で。行こうか、凛ちゃん。」

 

「はーい。またにゃー!西木野さん!」

 

「えぇ。なんか気を遣わせてごめんなさい。」

 

ホント、騒がしい子達ね。

 

まぁ…あの子達の事、キライじゃないんだけど。

 

ふふ。真姫ちゃん…か…。

 

真姫ちゃんなんて、もうママしか呼んでくれないわ。

 

 

「かよちん?今日も放課後にアミュセン行くのかにゃ?ベニャッガイは一応は持ってきてるから、凛はいつでも出撃出来るよ!」

 

「そうだね。あ!だったら先輩達の為にレストコーナーのテーブル押さえておこうよ!先輩達より花陽達の方が早く授業終わるもんね!それにたぶん先輩達って放課後に学校と生徒会に公認貰いに行くと思うから、少し遅れると思うし!」

 

「うん!さんせーにゃ!そしたら今日もおにーさんにラーメンおごってもらうにゃ!」

 

「もう!凛ちゃん!鳴神先輩が優しいからってあんまり迷惑掛けちゃダメだからね?」

 

「アイツは優しくなんてないにゃ!凛のことアホ猫なんて呼んでいぢわるするにゃ!だからラーメンおごらせるくらいは問題ないにゃ!」

 

 

 

二人とも、楽しそうね……。

 

友達、か…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[[さぁ!真姫!]]

 

[[さぁ!真姫ちゃん!]]

 

[[[ガンプラバトルを始めよう!]]]

 

ホント、憂鬱だわ…。

 

放課後、迎えに来たパパとママと一緒に私はアミューズメントセンターにやった来たの。

 

今はもうガンプラバトルシミュレーターのコクピットの中。

 

ホントは音ノ木坂の近くのアミューズメントセンターにしたかったんだけど、パパはバトルロイヤルが終わったらすぐに病院に行かなきゃダメだから、今回は病院の近くのアミューズメントセンターにしたの。

 

ガンプラバトル、ねぇ。

 

まぁ、やるからにはもちろん負けたくないわ。

 

コクピットのサブモニターに表示されてる情報じゃ、今回のステージは宇宙。ならバランサーはオートに設定して…あと操縦はIFSがあるから基本的には問題は無いし、バランサーはオートに設定したから無重力空間での細かい制動とかはサポートAIがしてくれるのよね?

 

さっきからパパもママも妙にニヤニヤしてるけど、どうせ私が宇宙でバランス崩してパニックになるって思ってるんでしょうね。

 

でもそうはいかないわよ!

 

私だってやるからには半端にはしたくないわ!だからお昼ご飯の時に少しだけ調べてあるのよ!

 

ガンプラバトル初心者は初めての宇宙戦闘の時にバランサーをマニュアルのままで出撃して、無重力空間で暴走するって知ってるんだからね!

 

[[出撃の時間だ!行くよ、真姫!ママ!ザクⅡS型!西木野 真輝(にしきの まさき)!出撃する!]]

 

[[頑張りましょうね、真姫ちゃん、パパ♪ゲルググ・ヴィントシュトース、西木野 美姫(にしきの みき)、発進します!]]

 

 

「あーもう!ホント、イミワカンナイ。西木野 真姫。百式、出るわよ!」

 

 

身体に掛かるGを感じながら、私は自分の機体“百式”を操り宇宙へと飛び出すの。

 

発進ゲートを抜けた先には真っ暗な宇宙が広がっていたわ。

 

って!ちょっと待って!これがゲーム?リアル過ぎじゃない!ナニよコレ!

 

ヤバいわ…ガンプラバトルを舐めていたかも…。

 

私は目の前に広がるリアル過ぎる宇宙に自分の認識が誤っていた事に気付いたわ。

 

コレはゲームであってゲームじゃない。パパが以前、言っていたのはこの事だったのね…。

 

こんな中で自分で造ったガンプラに乗って“ドンパチ”するんだ…。パパもママも夢中になる訳だわ。

 

[[ま、真姫?どうして平然と宇宙で操縦してるんだい!暴走は!真姫の可愛い悲鳴は!]]

 

[[あらあら?折角GPベースにちょっと細工しから可愛い真姫ちゃんのパニック姿を録画しようと思っていたのに。ムダになっちゃったわね?]]

 

目の前に広がる宇宙空間に少しだけガンプラバトルに対しての認識を改めていたら、パパの乗る赤いひとつ目の機体と、ママの乗る大きなバックパックを背中に背負った灰色の機体が隣まで来てそんな事を言ったわ。

 

パパの機体は素組って言う無改造のガンプラで、今日の機体の名前は“シャア専用ザクⅡ”。

 

ママの機体はゲルググってガンプラを改造したママのオリジナルガンプラの一つ“ゲルググ・ヴィントシュトース”。

 

“ヴィントシュトース”。ドイツ語で“突風”ね…。

 

確かにママのゲルググ・ヴィントシュトースは出撃前に調べた未改造のゲルググに比べて、脚と腰にバーニアが増設してあってバックパックも大型化してるわ。

 

大型バックパックの大出力と脚と腰に増設したバーニア。この二つを活かした高機動戦闘がママの得意な戦い方なんですって。

 

私が乗ってる金ピカよりもそっちを貸してよって言ったら「このガンプラはパーソナルカスタムって言って、ママの専用機なのよ。他の人は使えないの。ごめんね。」って言われて断られちゃった。

 

「宇宙ではバランサーはオートに!常識でしょ!ほら!レーダーに反応!敵が来るわよ!」

 

ふふん!やっぱりパパもママも慌てる私の事を見て楽しむつもりだったのね!

 

でも残念でした!そう簡単にパパとママの思い通りに行くもんですか!

 

そんな事を思いながら、私の百式のレーダー上には敵機を示す赤い光点が5つ現れたの。

 

距離はそう遠くないし、いきなりレーダー上に現れたって事はガンプラバトル用語の“湧いた”ってヤツかしら?だったらコイツ等が“ハイ・モック”、通称モックって言うヤラレキャラね?

 

調べたら大抵は一撃で落とせるって事だけど、たまに妙に強い個体がいるらしいから油断大敵ね。

 

「見えた!あの形状、やっぱりモックね!パパ!ママ!アイツ等は私がやっつけるわ!手を出さないでね!」

 

[[わかったわ。頑張ってね、真姫ちゃん。]]

 

[[よーし!真姫のお手並み拝見と行こうか!]]

 

「任せて、行くわよ!百式!」

 

私は百式の背中のウイング・バインダーを調整しながらバックパックのスラスターを噴かして機体を加速させると、モックに向かって右手のビームライフルを構えながらブースト機動に入ったわ。

 

もう少しでこちらのビームライフルの射程内…3…2…1!ロック!

 

「まずは1機!墜ちなさい!!」

 

先頭のモックが射程内に侵入したのを確認した私は、即座にロックオンを終えてビームライフルを発射したわ。

 

ビームライフルから放たれた黄色の粒子は、ちゃんと私が狙っていたモックに直撃して、まずは1機目の撃墜に成功したの!

 

「次!」

 

私は次のモックに狙いを定めてもう1度ビームライフルを撃ち出すわ!

 

再び発射されたビームは先程と同じくモックに直撃して2機目を撃墜!

 

ふふん!どう?私も中々のモノでしょ?

 

モックも2機が撃墜されてようやくこちらを危険な敵と認識した様で、手にしたそれぞれの武装で私に向かってビームや弾丸を発射してきたわ!

 

私は機体各部の姿勢制御用スラスターを僅かに噴射してモックから放たれたビームや弾丸を掻い潜ると、さらにメインスラスターを噴かして機体を加速させるわ!

 

「百式!アナタの感覚はわかったわ!だから!残りは一気に片付けるわよ!」

 

初めの二射と先程の回避運動でこの機体“百式”の感覚を掴んだ私は、残された3機のモックに向かって連続でビームライフルを放つの。

 

先の2機があっさり撃墜されたからか、こちらを警戒したモックも回避運動を行うけど、もちろん私はそんな事は織り込み済で、回避した進路上にビームを放ち残りのモックも撃墜したわ!

 

「ふん。まぁAI操作の無人機が相手じゃこんなものね。」

 

私は百式の加速を止めて各部のスラスターの逆噴射で制動を掛ける事で機体を停止させると、レーダーでこの周辺が安全である事を確認してから、構えたままのビームライフルを下ろしてちょっと一息いれるわ。

 

流石に初戦闘だから少しは緊張しちゃったわね。

 

自分では上手に出来たと思うけど、どうかしら?

 

あ、後からパパとママが追い付いてきたわ。

 

[[真姫!凄いじゃないか!初めてのガンプラバトルであんなにあっさりとモックを撃墜するなんて!しかも5機も!]]

 

[[パパの言う通りだわ!真姫ちゃんは才能あるわ!]]

 

「ありがとう。パパ、ママ。でもIFSで操縦してるんだし、誰だってこれくらいはやれるんじゃない?」

 

[[普通は初戦闘でここまでは戦えない物だよ?しかも真姫はブースト機動をしたままでの射撃で命中させてるんだ!回避運動だって見事の一言だよ!]]

 

もう!褒めすぎよ!パパは!

 

[[あら?あらあら?ねぇパパ、こちらのレーダー圏内に敵影よ?数は6機。この時間ならスクールファイターの子達かしらね?]]

 

ホントだ。レーダーの端に新しく赤い光点が6つ。

 

スクールファイターって確か、私と同じ高校生のガンプラファイターの事よね?

 

[[どうする?真姫。このままならば次の相手は無人機のモックではなく、私達と同じ人が、ガンプラファイターが操縦する機体が相手になりそうだよ?]]

 

相手はたぶん私と同じ高校生。なら負けるはずないわ!

 

「問題無いわ!誰だろうと私と百式が相手になってやるわ!」

 

[[よーし!流石は私達の真姫だ!それじゃあ今度は家族の絆の力を見せてやろう!]]

 

[[うふふ♪ママもがんばちゃうわよ♪]]

 

「パパ!ママ!一気に行くわよ!」

 

私達はそれぞれ加速を初めてブースト機動に入ると、レーダー上に写る6つの赤い光点に向かい移動を始めたの。

 

先頭は私達の中で1番足の速いママのゲルググ・ヴィントシュトース。

 

ママの左側にはパパの赤いザクⅡが、反対側の右側は私の百式が位置取り三角形の陣形で宇宙を駆け抜けて敵機へと真っ直ぐ向かうわ!

 

[[いいかい、真姫!敵の数はこちら倍の6機だ!数の上ではあちらが有利なんだ!囲まれる前にママのヴィントシュトースの機動力で掻き回して、各個撃破して行くよ!]]

 

「わかったわ!えっ?」

 

パパが作戦を伝えて来たその時、向かっていた敵機の方向からまばゆい閃光が私達を飲み込もうと迫ってきたの!

 

ちょっと!ナニよ!アレは!

 

[[っく!あれは不味いぞ!各機散開!避けろ!]]

 

[[真姫ちゃん!避けなさい!]]

 

「きゃあ!もう!何なのよぉぉぉ!」

 

私は百式のスラスターを全力で噴射して、なんとか膨大な光の奔流から必死に逃れたんだけど、光の波が収まったその時には私の周りにはもうパパの赤いザクも、ママのゲルググも見当たらなかったの。

 

「パパ!ママ!返事してよ!ねぇ、ちょっと!嘘でしょ?さっきの頭の悪いビームにヤられちゃったの?」

 

冗談じゃないわ!何なのよホント!あんなの反則よ!反則!

 

[[落ち着ついて!真姫!レーダーを確認しなさい!パパもママも無事だ!]]

 

[[真姫ちゃん!真姫ちゃんは大丈夫?]]

 

あ…パパ…ママ!生きたた…よかった…ホントよかった………………って!ナニ言ってるのよ、私は!これはゲームよ!例えヤられても死にはしないわ!

 

「パパ!ママ!よかった…無事だったのね!心配したんだから!」

 

でも、あんまりリアル過ぎるから…パパもママもあのビームに巻き込まれて死んじゃったって思って怖かったわ…。

 

[[いいかい?真姫。良く聞きなさい!固まっていては先程の大出力ビームの良い的になるだけだ!こちらを分散させようとしている敵の思惑に乗せられる形になるが、ここはこのまま散開してそれぞれで敵機の相手をしよう!なに、すぐに片付けて真姫の所に向かうよ!]]

 

[[真姫ちゃん!ママもパパもすぐに敵をやっつけて真姫ちゃんを助けに行くから待っててね♪]]

 

一人で戦う…?さっきは無人機のモックが相手だったし、後ろにはパパとママが居てくれたから不安なんて無かったけど、今度は私一人で相手は人が操ってる…。

 

しかもアレだけ凄い攻撃が出来るんだから、いっぱい改造された機体なんでしょうね…。

 

不安だわ……でも………負けない!負けてなんかやるもんか!

 

「パパ…ママ…。だ、大丈夫よ!私はパパとママの娘よ?一人でも負けないわ!絶対に!」

 

だから…パパもママも気を付けて…。

 

そんな言葉が言いたいのに、素直じゃない私は言えない…。

 

ホント、こんな自分がイヤになっちゃうわ…。

 

[[ハハッ!それでこそ真姫だ!よぉーし!パパも頑張るぞー!]]

 

[[ママも真姫ちゃんに負けてられないわね♪]]

 

その言葉を最後に通信は切れちゃったわ。

 

パパもママも百式の通信圏外に出ちゃったみたいね。

 

少しだけ心細さを感じながらも、私はレーダーを見てこちらに向かって来ている2機の敵機を確認すると、百式のスラスターを全開に噴射して機体を加速させ迎撃に向かう事にしたわ。

 

ブースト機動でそのまま進むと、やがて百式のメインモニターに2機の敵機の姿が写し出されたわ!

 

「なんでネコ?可愛いけど宇宙にネコって?な、なんかシュールね…。」

 

私に向かって来ている敵機は、大きな頭の黄色いネコの機体と、薄い緑色の弱そうな機体だったわ。

 

「とにかく!あんなふざけた外見の機体なんかには絶対に負けない!負けらんないわよ!行くわよ!百式!」

 

デカネコがこちらの射程内に侵入したその瞬間、私は即座にロックオンを終えて構えていたビームライフルの引き金を引いたの!

 

ビームライフルから放たれた閃光は狙い違わずに大きな頭のネコに命中したんだけど……

 

「は?ナニよソレ!ちょっと焦げただけ?イミワカンナイ!」

 

大きな頭に命中した百式のビームは直撃したにも係わらず、まともなダメージを与える事は出来なかったの。

 

あのデカネコ!どんな装甲してんのよ!

 

「あーもう!1発でダメなら何発だって当ててやるわ!喰らいなさい!」

 

ふざけた展開に頭に来た私は百式のビームライフルを連続で発射してデカネコに何発も直撃させたんだけど…

 

「う"ぇえ!ちょっ!反則よ!反則!だからなんで焦げただけなのよ!あのデカネコどんだけ硬いのよ!」

 

そうしている内にデカネコを盾にする様に動いていた薄緑の機体がこちらにマシンガンの弾をばらまき始めて来たの!

 

私はIFSを通して百式を操りその攻撃を最小限の動きで回避して、反撃に薄緑色の機体をビームライフルで狙うんだけど、射線にデカネコが割り込んできて生意気に右手からビームを撃ち出して攻撃してきたわ!

 

狙いが適当なのか牽制なのかは分からないけど、その攻撃は私とは明後日の方向に飛んでいったわ。

 

射撃戦闘じゃらちが明かないと思った私は、百式のスラスターを逆噴射させて1度機体に制動を掛けると、左手でビームサーベルを引き抜きビーム刃を展開させて近接戦闘でデカネコを仕留める為に再び加速を始めたわ!

 

「サーベルで関節を狙えば装甲の厚さなんて関係無いんだから!行きなさい!百式!」

 

あのデカネコは硬いけど足は遅いのよ!機動性なら素組でも私の百式の方が上!

 

肩の関節を狙って腕を斬り飛ばしたら、その隙間から直接コアを攻撃して一撃で墜としてやるわ!

 

デカネコは急に軌道を変えて接近して来た私に慌てて面白い位にあたふたしてる!

 

これならイケるわ!一気に決めて残りの弱そうなヤツも片付けてやるんだから!

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

百式のビームサーベルがデカネコを捉え様としたその瞬間、今までデカネコの後ろに居た弱そうなヤツが急に加速して私の百式とデカネコとの間に割り込んで来たの!

 

「っ!邪魔よ!弱そうなの!ならまずはアンタから墜ちなさい!」

 

私は攻撃目標をデカネコを庇おうと出て来た弱そうなヤツに切り替えて、加速の勢いを乗せた斬撃を振り抜いたわ!

 

[[凛ちゃんはヤらせません!きゃぁぁぁぁぁぁぁ!]]

 

私の一撃は胴体を外してしまったけど、薄緑色の弱そうなヤツの右肩から先を斬り飛ばしたわ!

 

ついでに1度距離を取るために、機体の勢いを殺さずに弱そうなヤツの胴体に蹴りを入れて、後ろのデカネコと一緒に弾き飛ばしてやったわ!

 

って!ちょっと?今の声ってもしかして小泉さん?え?なんで?どうして小泉さんが居るのよ!

 

薄緑色の機体と接触した時に聞こえた声はクラスメイトの小泉さんの声だったわ…。

 

お互いが広域通信はOFFにしてる筈だから、今のはたぶん接触回線ってヤツね。

 

小泉さん…あんなに大きな声も出せるんだ…。

 

凛ちゃんはヤらせない。って聞こえたけど、いつもあんなにおどおどして大人しい子が友達の為に身体を張って庇うなんて……。

 

星空さんの後ろに付いて回るだけの子だと思っていたのに、正直、小泉さんを見直したわ。

 

凛ちゃんって言ってたから片方の無駄に硬いデカネコには星空さんが乗ってるのね?

 

ふふ。いつもにゃーにゃー言ってる星空さんらしい機体ね。

 

でも、どうしよう……知り合いとなんて戦いたく無いわ…。

 

小泉さんの機体には結構なダメージを与えたから、このまま逃げてくれないかし?

 

そうしたら見逃してあげるのに…。

 

あれ?

 

「ママの反応が消えた?え?ナニ?ど、どうして?ママ、レーダー圏外に出ちゃったの?」

 

…ううん…違う…レーダー上にはママより遠くに行ったパパの反応はある。

 

なら…もしかして…ママは…ママは…ヤられちゃったの?

 

嘘でしょ?ママのガンプラはあんなに改造してあったのよ?

 

え?う、うそ……パパの反応も消えた?

 

パパもヤられちゃったの?

 

なんで?パパもママもベテランだって言ってたのに……。

 

二人ともすぐにやっつけて私の事を助けに来てくれるって言ってたのに……。

 

パパ……ママ……………………ヤメタ………。

 

もうヤメタ。

 

クラスメイトだから、大人しい子があんなに頑張ったんだから見逃してあげようって思ってたけど、ヤメタ。

 

「もうヤメタ!絶対に許さないんだから!小泉さんも星空さんも!ママをヤったヤツもパパをヤったヤツ等も!みんなまとめて…私と百式が墜としてやるわ!」

 

ママを!パパを!私の家族を墜としたヤツ等の仲間なら!クラスメイトだろうがなんだろうが関係無い!

 

「百式!行くわよ!」

 

上等よ!ヤってやるわ!

 

かかってきなさい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 

 

 

 

 

 




皆様。ご覧いただきましてありがとうございました!
真姫ちゃんの初めてのガンプラバトルでしたが、いかがでしたでしょうか?
そんな訳で前回のお話で海未ちゃんとソラが戦ったゲルググのカスタム機のファイターは真姫ちゃんのママさんでした。
真姫ママさん&真姫パパさんは本来ならばもっと強いのですが、ママさんはソラの動きを警戒しすぎて、パパさんはことりさんのバスターライフルを警戒しすぎて、それぞれ実力を発揮する前に撃墜されてしまいました。
また、真姫パパさん&真姫ママさんも今回は本来のガンプラを使ってはおりません。
もしかしたらいずれ二人の本来の機体も登場するかもしれません。
ちなみに真姫パパさんのモデルはフランクなシャアだったりします。

次回は語り部が再び海未ちゃんに戻り、今回の直後からのお話になります。

それでは本日もご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
皆様のありがたいご感想やご意見をお待ちしております!
それでは次回、またお会いしましょう!

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