ガンプライブ! ~School Gunpla Project~   作:Qooオレンジ

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皆様。本日もご覧いただきありがとうございます!

今回も更新まで一週間も掛かってしまい、申し訳ございませんでした…。
今回からはいよいよ“ことほのうみ”の2年生トリオ+ソラのμ'sとしての初めての公式戦……ではなく、ツンデレ1年生とアホな2年生とのファーストコンタクトになります。
語り部も真姫ちゃんメイン回の“てん ご”シリーズですので、海未ちゃんから真姫ちゃんに一旦交代になります。
バトル中では既にちょっとだけ会っている真姫ちゃんと穂乃果ちゃんの二人ですが、生身では今回のお話で初めての出会いになります。

そんな訳で今回は久し振りの戦闘回になります!
今回の真姫ちゃんのお相手は……?

それでは 第5話「START:DASH!!」そのきゅう てん ご① ご覧下さい!










第5話「START:DASH!!」そのきゅう てん ご①

「あーもう!しつこいんだから!さっさと堕ちなさいよ!」

 

放課後のアミューズメントセンター。

 

私はガンプラバトルシミュレーターのコクピットの中で、メインモニターに映し出された敵機に向かってそんな言葉を吐きながら、ビームライフルのトリガーを引いてビームを発射するわ。

 

発射されたビームは狙い通りにコアのある胴体に直撃して、敵機は大きな爆発を巻き起こして沈んで行ったわ。

 

「ナニよ!今日のバトルロイヤルも雑魚ばっかじゃない!ホント、何時になったらこの前の連中…あの素組のザクに当たるのかしら…。」

 

2日前…パパとママと一緒に出撃した私の初めてのガンプラバトル。

 

その時に遭遇した小泉さんと星空さんの仲間の素組のザク。

 

私はこの2日間、アイツを探して放課後のアミューズメントセンターでバトルロイヤルに参加しているの。

 

え?どうしてザクだけかですって?

 

それはね?あのザクが悔しいくらいに強かったからよ!

 

ザクと一緒に居た素組のジム・スナイパーⅡ。

 

後からやって来てクレイバズーカを撃ち抜いたエールストライクガンダム。

 

最後に仲間を巻き込みながらバスターライフルを撃ってきたウィングガンダムの改造機。

 

この3機のファイター達も確かに強かったけど、それよりもあのザクのファイターの強さは群を抜いてイカれていたわ。

 

いくらビームを撃っても当たらない。牽制のバルカンすらも当たらない。ビームサーベルでの近接戦闘でも私の攻撃はかすりもしない…。

 

なのにあのザクの攻撃は確実にこちらの動きを捉えて直撃させてくるし!

 

おまけにGPベースに記録されていた、あの時のバトルの記録映像を見ていて気付いたけど、あのザクは私の事を僚機のジム・スナイパーⅡが狙撃しやすい場所へと少しずつ誘導していたのよ!

 

私が必死に回避していたのに、アイツは嘲笑いながら私を誘導してたのよ、きっと!

 

ホントに頭に来るわ!

 

結局あの日のバトルは後から来たウィングガンダムの改造機のバスターライフルとか言う頭のオカシイ攻撃でヤられちゃったけど、あの連中で1番強いのは間違いなくザクのファイターだったわ!

 

「っ?!タイムアップ?そっか…もうそんなに時間が経ったのね…。」

 

今回のバトルロイヤルでも私と百式は余裕で生き残ったわ。

 

あの日の撃墜がまるで嘘の様に…。

 

バトル終了を告げる電子音声のアナウンスを聞きながら、次第に暗くなって行くコクピットの中で、私は目を閉じてあの日のバトルをもう一度思い返すわ…。

 

どうすればあのザクに勝てるか。

 

どうすれば攻撃が当たるか。

 

どうすれば攻撃を避けれるか。

 

イメージの中、一対一だっていうのに、私の百式はまた一方的にヤられちゃう…。

 

ホント…なんなのよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スゴい!スゴい!あなた!スッゴーく強かったね!ねぇねぇ!その制服!穂乃果とおんなじ音ノ木坂の制服だよね!あ!りぼんが青だから1年生?うん!1年生なんだね!」

 

コクピットのハッチが開くまでの僅かな時間のイメージトレーニング。

 

その中ですらもあのザクに勝てなかった私は、憂鬱な気分で次のバトルロイヤルまで少し休憩しようとレストコーナーへと足を運んだの。

 

そしたらいきなり目の前に変な人が現れてこんな事を言ってきたわ…。

 

私と同じ音ノ木坂の制服…胸元のリボンの色は赤だから、この変な人は2年生ね。

 

先輩か…相手にするの面倒そうだわ…。

 

「……あの、なんのご用ですか?私、あんまり暇じゃないんですけど?」

 

「うん!ごめんねー!私は高坂 穂乃果!2年生だよ!あなたのお名前は?穂乃果に教えて!」

 

う"ぇえ…この先輩、人の話聞いてないし…。

 

あぁもう!ホント面倒な人に絡まれちゃったわね!

 

このアホっぽい先輩、早くどこかに行ってくれないかしら。

 

「西木野 真姫…1年生です。それで?もう一度聞きますけど、先輩はなんのご用ですか?」

 

私はさっさと話を終わらせて次のバトルロイヤルの準備をしたいのよ!

 

「西木野 真姫ちゃん!それじゃ真姫ちゃんだね!うん!真姫ちゃん!可愛いお名前だね!」

 

この人、初めてあった人の事をいきなり名前で、しかも真姫ちゃんって!

 

あの元気の塊みたいな星空さんだって西木野さんって呼んでるのに?!

 

「ねー真姫ちゃん!次のバトルロイヤルは穂乃果と一緒に出撃しよー!」

 

「先輩と一緒に出撃?!なんで私が!」

 

「うん!あのね!今日はそら君もことりちゃんも海未ちゃんも用事があってアミューズメントセンターにこれなかったの!だからはなよちゃんと凛ちゃんを誘ったんだけど、ふたりとも少し遅くなるってメール来たんだー。」

 

「はぁ?!先輩、ナニ言ってるんですか?私の質問の答えになってないんですけど!」

 

「だから今日は真姫ちゃんと一緒にガンプラバトルだよ!がんばろーね!真姫ちゃん!」

 

「だから人の話を聞きなさいよ!ってか私は誰とも組みません!一人で出撃します!」

 

私は一人でも戦えるわ!足手まといなんていらない!

 

「おねーさん!次のバトルロイヤルにふたり参加しまーす!あ!真姫ちゃん!今回は特別に穂乃果がバトルロイヤルの参加料おごっちゃうね!先輩にどーんとまかせてまかせてー!穂乃果ふとももだね!あれ?ふくらはぎだっけか?」

 

任せて任せてって!こんな人には任せておけないわよ!

 

この人と一緒に出撃したら絶対に邪魔になるわ!

 

「あぁー!もう!ホントなんなのよこの人は!それに太ももでもふくらはぎでもなくて太っ腹よ!太っ腹!これくらい間違えないでよ!」

 

「真姫ちゃん!しつれいだよ!穂乃果は太っ腹じゃないもん!太ってないよ!和菓子はあきたー!とか言って毎日お店のお菓子つまみ食いしてるけど太ってないもん!」

 

「なんなのよこの人は!ホントイミワカンナイ!いい?太っ腹って太ってるって意味じゃないの!確かに太ったお腹って意味でも使えるけど、太っ腹って気前がいいとかそう言う意味で使われてるの!」

 

「へ?そーなの?真姫ちゃんスゴい!物知りだね!あたまいーんだ!あ!でも穂乃果太ってないからね!ほら!ちょっとみてよー!」

 

ふん!当たり前よ!私は毎日ちゃんと勉強してるんだから!

 

アホっぽい顔で制服を捲し上げてお腹を見せようとしてる人とは違う……へ?お腹を見せる?!な、な、な!

 

「なー!ちょっ!アナタ!ナニしてんのよ!こんな公衆の面前でお腹出さないでよ!恥ずかしいでしょうが!頭オカシイの?!心を病んじゃってるの?!ハッ!アナタ!ま、まさか露出狂?!露出狂ね!そうなのね!きゃぁー!誰かー!変態よ!痴女よ!」

 

「もー、真姫ちゃん!いきなりおっきな声ださないでよ!穂乃果はへんたいでもちじょでもないよ?あとね!へんたいはそら君でちじょはことりちゃんなんだって!海未ちゃんが言ってたよ!そら君はえっちだけどへんたいなのかな?ねぇ真姫ちゃん?ちじょってなーに?」

 

「誰よソラって!誰よことりって!海未って誰よ!」

 

「あ!バトルロイヤルが始まるよ!真姫ちゃん!いくよ!さー!はりきって出撃だー!」

 

「もぉー!イヤー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<ぜんしすてむ、おーるぐりーん。はっしんじゅびかりょー。ほのかー、はっしんできるよー。>>

 

[[ありがと!ポチ!よぉーし!真姫ちゃん!ファイトだよ!高坂 穂乃果!ランチャーストライクガンダム!いっくよー!]]

 

「ホント、イミワカンナイ!こうなったらヤケよ!ヤケ!百式!西木野 真姫!行くわよ!」

 

結局、あの変な先輩……高坂先輩に押しきられて一緒にバトルロイヤルに出撃する事になっちゃったわ…。

 

あの先輩…人の話はまったく聞かないし、言ってる事はイミワカンナイし、アホっぽいし、友達は変態に痴女らしいし…でも、何処か憎めないのよね…。なんだか不思議な人…。

 

先輩との頭の悪いやり取りが不快じゃなくて、逆に心地よくもある…。

 

発進ゲートから勢い良く飛び出して、私の百式の隣にやって来た高坂先輩の機体を見ながら、私はぼんやりとそんな事を思っていたの…。

 

ダメねこんなんじゃ…。

 

気持ちを切り替えましょ!今はとりあえずバトルに集中よ!真姫!

 

もしかすると今度こそはあのザクがいるかもしれないのよ!

 

次は絶対に負けないんだから!

 

よし!切り替え完了よ!今日も頼むわね!百式!

 

さて…と、今回のバトルステージは毎度お馴染みの宇宙空間ね。

 

宇宙なら地上より戦いやすいわ。

 

だって私は地上での戦闘よりも、この宇宙での戦闘の方が好きなんですもの。

 

何処までも広がるこの広大な空間を百式と一緒に自由に駆け抜ける…。

 

重力に縛られている地上では決して味わえない感覚よね。

 

「高坂先輩?なんかフラフラしてるけど大丈夫なの?バランサーちゃんとオートにしてる?それともスラスターに異常でもあったの?」

 

高坂先輩が乗る機体は、バックパックの左側に長い砲身のビーム砲を持つ、砲撃戦用のランチャーストライクガンダム。

 

前に色々と調べた中にランチャーストライクガンダムについてもあったわね…。

 

えーっと、ランチャーストライクガンダム…確か高火力でエネルギー消費も激しい“アグニ”ってのが主砲だったわね。

 

先輩、大丈夫かしら?ランチャーストライクは火力が高い分、他のストライカーパック…エールストライクやソードストライクよりも機動力は落ちる…火力に比例してエネルギー消費も激しいから、その消費分を計算しながら使わなきゃ、すぐにエネルギー切れになるのよね。

 

それにあの先輩、ちゃんと私を巻き込まない様に射線の事を考えて撃てるのかしら?

 

無理ね……高坂先輩ってアホっぽいからエネルギー消費を計算しながらとか、射線の事を考えるとか苦手そうよね…。

 

それに、なんだか片方だけ折れたストライクの額のアンテナに見覚えがあるんだけど気のせいかしら…。

 

確か一昨日のバトルロイヤルで、私の百式のクレイバズーカを撃ち抜いたザクの仲間のストライクも、片方だけ額のアンテナが折れていたわね。

 

まさか高坂先輩って、あの時の連中の一人?

 

でも一昨日のストライクはエールストライクだったわよね?ランチャーストライクではなかったわ…。

 

まぁストライクガンダムは背中のストライカーパックを取り換えれば、エール・ランチャー・ソードにそれぞれ機体は変わるし…。

 

うーん。やっぱり、あの折れたアンテナが気になるわ。

 

偶然の一致?それともこのアホっぽい先輩があのザクの仲間?

 

[[いじょーはないよ!だいじょーぶ!でもなんかいつもより機体がスッゴい重いんだよねー!動きづらいよー!あれ?今日はレーダーの範囲が広い?あ!そっか!ランチャーストライクって砲撃戦用だから、エールストライクよりもレーダー範囲が広いんだった!]]

 

「高坂先輩、いつもはエールストライク使ってるんですか?」

 

[[うん!ランチャーストライクは今日はじめて使ってるんだー!穂乃果が今度みんなと一緒に出る公式戦ってスコアマッチだから、いーっぱい敵をやっつけなきゃいけないんだよねー!エールストライクの方が使いやすかったけど、武器がビームライフルとか普通のしかないから、ランチャーストライクにしよーかな?って、思ったの!]]

 

……片方だけアンテナが折れたエールストライク…それってやっぱりこの前のエールストライクよね。

 

仲間にあのザクがいないか聞いてみようかし?高坂先輩ってアホだから、聞いてみたらあっさり答えてくれそうよね?

 

「……ねぇ…もしかして高坂先輩の仲間にスゴい強いザクっていない?」

 

[[スゴい強いザク?それってそら君のことかな?そら君スゴい強いもん!あれ?でもなんで真姫ちゃんがそら君のことしってるの?]]

 

やっぱり高坂先輩が一昨日の連中の一人だったのね!

 

あれ?でも良く考えれば、高坂先輩って小泉さんと星空さんを誘ったって言ってたわよね…。

 

少し考えれば分かったハズなのに、先輩のアホさに流されてまともに考えれなかったわ…。

 

イヤだわ…私に先輩のアホがうっつていたらどうしよう…。

 

だ、だいじょうぶ…よね?アホって病原菌とかじゃないんだから、うつらないわよね…?

 

そう!それよりもあのザクのファイターよ!

 

高坂先輩は“そら”って言ってたわね…。それがあのザクのファイターの名前…。

 

「高坂先輩、一昨日のバトルロイヤルで百式と…今、私が乗ってるのと同じ機体と戦わなかった?」

 

[[ひゃくしき?……あー!そうだよ!どこかで見たなー!って思ってたら、真姫ちゃんのその機体って一昨日のバトルロイヤルではなよちゃんと凛ちゃんをいじめてた金ピカと同じ機体なんだ!]]

 

「金ピカって言わないで!百式よ!百式!それに!小泉さんと星空さんもイジメてないし!私は正々堂々真っ正面から戦ったわ!イジメたのはそっちよ!一昨日のバトルロイヤルで戦った百式って私よ!アンタ達!よくも一昨日はたった一人の初心者相手に、寄ってたかってボコボコにしたあげく!あんなワケのワカンナイ非常識なビームで沈めてくれたわね!さぁ!吐きなさい!私のことおちょくってくれたあのザクは今日は来てないの!来てないなら今すぐ呼び出しなさい!もう一度!今度は一対一で勝負よ!」

 

見付けたわ!とうとう見付けた!

 

今度こそは負けない!負けないんだから!負けてやるもんですか!

 

もう一度勝負よ!そらとかって言うザクのファイター!

 

<<れーだーけんないにてっきのしんにゅーをかくにーん。ほのかー、てきだよー。>>

 

[[へ?あ!ホントだ!真姫ちゃん!敵が来るよ!お話はあとでね!]]

 

敵?百式のレーダーにはまだ……あ、ホントだわ…レーダーの端に敵機を示す赤い光点が3つ侵入して来た…。

 

正直、私としては今すぐにあのザクについて色々と聞きたいけど、まずは目の前の敵を片付けてからよね。

 

こっちに真っ直ぐ向かって来ているんだから、あっちも私達の事は捕捉してるんでしょうし。

 

2対3で数の上ではあちらが上…。おまけにこちらは今日が初乗りの機体で、強いのか弱いのかも分からない未知数のアホな先輩が僚機…。

 

ふふふ…ちょうど良いハンデじゃない!

 

「前方に敵機3!こちらのレーダーでも捉えたわ!先輩!後でザクのファイターの事、教えて貰いますからね!でもその前に……邪魔なヤツ等を片付けるわよ!」

 

[[りょーかいだよ!真姫ちゃん!穂乃果が前に…]]

 

「出ないで下さい!高坂先輩のランチャーストライクは遠距離砲撃戦用でしょ!前衛は私と百式が引き受けるから、高坂先輩は隙を見て一機ずつそのおっきなビーム砲で確実に墜として下さい!」

 

[[えー!穂乃果も前に出るよー!]]

 

「あのねぇ…自分の乗ってる機体の特性をちゃんと理解してるの?先輩のランチャーストライクは近付かれたら小回り効かないし、近接戦闘用の武器って右肩のガトリングくらいしかないのよ!近接戦闘したかったら、次からはエールストライクかソードストライクで出てきて下さい!ほら!邪魔だから早く後ろに下がって!」

 

[[真姫ちゃんがきびしー!でもそっかぁ…ランチャーストライクじゃいつもみたいに近接戦闘は無理なんだねー。やっぱりエールストライクにすればよかったー!]]

 

「理解したら急いで下がって!もうすぐ敵機が見えて来るわ!あと!そのビーム砲は絶対に私に当てないでよね!私の百式じゃその威力の砲撃受けたら一撃で沈んじゃうから、ホント気を付けてよね!」

 

[[はーい!それじゃ前衛は真姫ちゃんにおまかせするね!穂乃果、がんばって援護するよー!]]

 

高坂先輩、ようやく納得して下がってくれたわ…。

 

さて…と。今日の最初の相手は……はい?

 

「……ナニ、アレ?」

 

百式のメインモニター映し出されたのは先行してこちらに向かって来た2機の機体……無駄にデカイ戦車のオバケみたいなヤツと、頭部と胴体のコア付近にだけ装甲を付けたフレームだけの機体だったわ…。

 

もう一機はどうやらあちらの後方に湧いたモックの処理に行ったみたいね…。

 

あのフレームだけの機体は仮に“骨組み”とでも呼ぼうかしら?

 

“骨組み”の腰なんて簡単に折れそうな細くて頼りない骨格してるわ。って!

 

「ナニよ!あの“骨組み”のスピードは!」

 

向かって来ている2機の内、“骨組み”がいきなり凄いスピードで突っ込んで来たわ!

 

「っ!ロックオンアラート?!嘘でしょ!あの距離からロックオンされたの?高機動型が遠距離狙撃とかイミワカンナイ!きゃ!」

 

コクピットに響くアラートは、敵機からロックオンされた事を報せてくれるロックオンアラート。

 

間を置かずに機体を襲った激しい衝撃に、私は思わず小さな悲鳴をあげてしまったわ。

 

そんな自分に恥じ入りながら、私は次の狙撃に備えて各部のスラスターを噴かして、ランダムな回避運動を始めつつサブモニターで百式の被害状況を確認すると、先程の狙撃はどうやら右肩を少しかすっただけの様だったわ。

 

でもかすっただけであの衝撃って、直撃してたら装甲なんて関係なく右肩が吹き飛んでだわね…。

 

あの“骨組み”が手にしている長い砲身のライフル…あれだけの威力で尚且つ、かすった右肩にビーム特有の装甲の融解がないって事は、恐らくは対物(アンチ・マテリアル)ライフルとかってヤツね。

 

さっきの衝撃から考えると、たぶん弾丸も普通の弾丸じゃなく、威力の上げるための特殊なヤツを使ってる可能性が高いわね。

 

でもそこまで威力の高い弾丸を使ってるなら、その分だけ弾数は少ないはずよ。

 

“骨組み”の後ろの戦車のオバケは、こちらへの移動をやめて静観しているわ…。

 

あの“骨組み”だけで私達の相手は十分って思ってるのね…私も随分と嘗められたもんだわ…。

 

いいわよ!こうなったらあの“骨組み”を墜として、後ろの戦車のオバケを引きずり出してやるわ!

 

[[真姫ちゃん!こっちの後ろにもモックが湧いちゃったよ!えーっと、全部で15機!いっぱい湧いてきた!]]

 

「この忙しい時にモックとか!モックのポップ管理してるのが運営だかマザーシステムだかどっちかは分かんないけど、ホント空気読んでよね!高坂先輩はモックの相手をお願い!その初乗りのランチャーストライクの慣らしにはモック程度が丁度良いでしょ!私はあの“骨組み”の相手をするわ!」

 

あんなろくに装甲も付けてない機体なら、一発でもビームライフルが当たれば墜ちるはずよ!

 

私の百式は素組で、お世辞にも機体性能が高いなんて言えないわ…。

 

機動性も攻撃力もあちらが上…ろくに装甲がついてないから防御力じゃ百式が上でも、あの対物ライフルの威力の前じゃ百式の防御力なんて紙みたいなものだし…。

 

でもね…機体を操るパイロットの腕は!操縦技術では負けないわ!

 

[[りょーかい!モックやっつけたら穂乃果も真姫ちゃんの援護に行くから無理はしないでね!]]

 

「高坂先輩こそ!モックなんかにやられないでよ!あと、ランチャーストライクの主砲ははエネルギー消費が激しいから撃ち過ぎに気を付けてよね!」

 

[[だいじょぶ!だいじょーぶ!モックなんかにはまけないよー!いくよ!ポチ!スラスター全開だー!]]

 

<<すらすたーぜんかい。ぶーすときどうかいしー。>>

 

「行ったわね…それじゃ私達も……行くわよ!百式!」

 

高坂先輩がこちらに背を向けて、後方のモックに向かうのをサブモニターで確認しながら、私も百式のメインスラスターを点火して機体を加速させてブースト機動へと入るわ。

 

“骨組み”は散発的に対物ライフルで狙撃して来ていたけど、最初の一発以降は至近弾は無かったから、あのファイターは射撃の腕はそこまで良くないのかしら?

 

一昨日のジム・スナイパーⅡなんて、機動戦闘中の百式のビームライフルにピンポイントで当てて来たわよ?

 

「あと少し…あと少し…入った!射程内!墜ちなさい!」

 

私は“骨組み”が百式のビームライフルの射程内に入ると、すぐさま“骨組み”をロックオンしてビームライフルを一発、二発、三発と断続的に発射したの。

 

でも“骨組み”の素体が何かは分からないけど、流石は高機動型のカスタム機。

 

百式が放つビームライフルは簡単にヒラリヒラリと回避されて、お返しにと対物ライフルでこちらに射撃してきたわ。

 

最も、狙いは適当みたいだから、回避運動を続けてる私の百式にはかすりもしないわ。

 

「このまま中距離からただ撃ち合ってるだけじゃ埒が明かないわね…。相手は高機動型なんだから、セオリー通りにまずは足を止めなきゃダメかしら?」

 

どうしよう…スピードは“骨組み”の方が上だから、ビームサーベルで接近戦をしようにも、接近したらすぐに逃げられちゃうわよね。

 

あれだけ装甲が薄いんだから、バルカンでもダメージは入るけど、バルカンの射程じゃ短すぎるから、有効なダメージを与えるにはやっぱり接近しなきゃダメ…。

 

ならクレイバズーカは?百式の左右のバックパックにマウントしてある二本のクレイバズーカ。

 

そう…確かその二本のクレイバズーカの内、バックパックの左側にマウントしてあるクレイバズーカの弾頭は散弾を撒き散らす拡散弾だったわよね?

 

けど広範囲に散弾を撒き散らす拡散弾でも、ただ撃つだけじゃ大きく回避機動を取られて簡単に避けられちゃうわ…。

 

ならどうするの?真姫…。

 

考えなさい…頭は考える為にあるのよ…考える事を止めたら人はお仕舞いよ………。

 

……そうね…拡散弾だけ使って避けられるなら、まずは右の通常弾のクレイバズーカを使って“見せれば”良いのよ。

 

始めに通常弾を使えば、こちらのクレイバズーカの弾頭は通常弾だけだと思うはずよ。

 

ダメだったら?左側のクレイバズーカの弾頭が拡散弾だと気付かれたら?

 

その時はまた別の策を考えれば良いわ。

 

モックを相手にしている高坂先輩のランチャーストライクを組み込んだ作戦でも良いわ。

 

でもまずは自分の力だけでやってみなきゃ!

 

「パパが言ってたわ!一度きりの人生、たまには分の悪い賭けだった悪くない、って!やるわよ!真姫!」

 

私は武装領域(ウェポン・ストレージ)にビームライフルを収納して、左右のバックパックにそれぞれマウントされているクレイバズーカを取り出したわ。

 

“骨組み”の対物ライフルはボルトアクションタイプ…次弾を装填する時には僅かに動きが鈍る…。

 

狙うなら“骨組み”が射撃して、次弾を装填したその時ね…。

 

“骨組み”が狙うのは私が軌道変更した直後………いくわよ………今!

 

私は両手にクレイバズーカを構えながら、百式のスラスターを噴かして急激な軌道変更を行うわ。

 

その直後、予想通りに“骨組み”は百式へ向けて対物ライフルを放って来たわ!

 

「来ると分かってればそんな単調な射撃なんて避けるのは簡単なのよ!クレイバズーカ!行きなさい!」

 

私は対物ライフルの弾丸を避ける為に、もう一度スラスターを噴かして軌道変更を行うと、次弾を装填しようとして少しだけ動きが鈍った“骨組み”へと右のクレイバズーカを5連続で放ったの。

 

高機動型相手になんの策もなくビームライフルよりも弾速の遅いクレイバズーカが当たるとは初めから思ってはいない私は、“骨組み”が回避する予測地点に向けて、今度は本命の左のクレイバズーカ…拡散弾の詰まっているクレイバズーカを連続で放ったの。

 

回避予測地点を中心に散弾が大きく覆う様に撃ち出して、私は追撃の為に空になった両手のクレイバズーカを放り投げて、ストレージからビームライフルを呼び出しながら真っ直ぐに“骨組み”へと向かってメインスラスターを全開にしてブースト機動を開始するわ。

 

「これだけの散弾の雨よ!避けられるもんですか!さぁ!飛び散りなさい!」

 

“骨組み”が回避した先に放たれた拡散弾は飛び散って中身の散弾を盛大にばらまいて、“骨組み”へと襲いかかるわ!

 

散弾に気付いた“骨組み”はスラスターやバーニアで制動を掛けて、もう一度回避運動をしようとしたけれど、少しだけ遅かったみたいね。

 

ろくに装甲の無いフレームだけの機体に散弾の雨が降り注いで、大きなダメージを負った“骨組み”はようやくその足を止めてくれたわ!

 

「足が止まった高機動型なんて!怖くもなんともないんだから!今度こそ…墜ちなさい!“骨組み”!」

 

足を止めた“骨組み”の装甲の無い部分…二の腕や太もも等の四肢へ向けて、私はビームライフルを連射。

 

ビームライフルから吐き出された無数の黄色い閃光は“骨組み”の四肢を貫いて、その手足をもぎ取ってやったわ!

 

「これでとどめよ!行きなさい!百式!」

 

私は左手にビームサーベルを引き抜くと、メインスラスターをさらに噴かし機体を加速させて、手足が無くなりまるで“だるま”の様になって動けずに無防備な姿を晒している“骨組み”へと一気に接近して、ビームサーベルを振り抜いたわ!

 

一撃で墜とす為に“骨組み”のコアを狙った胴体へのビームサーベルの斬撃は、コア付近を守る僅かばりの装甲で、ほんの少しだけビームサーベルの斬撃に抵抗した様だけれど、所詮は機動力の犠牲に極端に削りに削った紙装甲。

 

僅かばりの装甲はあっさりとビームサーベルの前に融解して、そのまま機体の中心部にあるコアごと“骨組み”の胴体を両断してやったわ!

 

「ふん!機体は素組でもファイターの腕が違うのよ!フルカスタムの機体にだって私は負けないわ!次はあのデカイ戦車のオバケよ!覚悟しなさい!え?」

 

“骨組み”をビームサーベルで切り裂いた私は、そのまま“骨組み”の後方で待機していた戦車のオバケに向かおうとしたんだけど…。

 

「ミサイルの弾幕?!ナニよ!この数は!」

 

戦車のオバケを写し出すはずだった百式のメインモニター、そこに写し出されていたのは戦車のオバケじゃなく、視界を覆い尽くす無数の小型ミサイルだったわ。

 

あの数はマズイわ!早く回避を………はぁ?!こっちを追い掛けて来る?!もう!なんで全部一斉にこっちに来るのよ!ってあの数のミサイルが全部ホーミングミサイルなの?!

 

ならビームライフルで撃ち落として……無理よね…ビームライフルじゃあの数の小型ミサイルを全部は撃ち落とせないわ。

 

あーもう!さっき拡散弾の方のクレイバズーカを放り出すんじゃなかったわ!

 

あれがあればまだやりようもあったんだけど……。

 

残ってる百式の武装はビームライフルにビームサーベル、それと頭に積んであるバルカン……これじゃ打つ手なし…ね。

 

はぁ……溜め息しかでないわね。悔しいけど今日のバトルはここで退場か…。

 

………もしあのザクのファイターが今の状況だったら?

 

たぶん“骨組み”との戦闘の段階から、私とは違う作戦だったんでしょうね。

 

今の私と百式じゃ“骨組み”は倒せても、クレイバズーカを放り投げた状態じゃあれだけの弾幕を張る事が出来る戦車のオバケまでは辿り着かない…。

 

こんな所でやられてる様じゃあのザクになんて勝てる訳ないわね…。

 

あーあ…悔しいな…やっぱり………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[[真姫ちゃん!おまたせ!たよれる先輩と援軍のとうちゃくだよ!]]

 

っ!高坂先輩?!いつの間に?!それに援軍?

 

[[穂乃果先輩!先輩のランチャーストライクにあの弾幕の、ホーミングミサイルの弾道データを送りました!指定したポイントにアグニを撃って下さい!アグニの火力ならあそこに撃てばホーミングミサイルをまとめて誘爆される事が出来るはずです!西木野さんは一度こちらに合流して!]]

 

それにこの声って小泉さん?

 

[[かよちんも穂乃果先輩も西木野さんの金ぴかも!みーんなまとめて凛とベニャッガイが守るにゃ!西木野さん!早くベニャッガイの後ろに!]]

 

一昨日の黄色いデカネコ?!それじゃこっちは星空さん?!どうして小泉さんと星空さんが居るの?!

 

<<はなよからでーたきたよ。ほのか、あぐにであそこをねってー。>>

 

[[りょーかいだよ!ポチ!アグニ!きどー!]]

 

<<あぐに、きどー。えねるぎー、じゅうてーん。>>

 

[[穂乃果先輩!急いで下さい!装甲の厚い防御特化の凛ちゃんのベニャッガイでも、あの数のミサイルは受けきれません!でも爆風だけならいけます!ベニャッガイの後ろに隠れれば、この前のメガモックの時のようにみんな助かります!]]

 

高坂先輩のランチャーストライクのアグニでホーミングミサイルを誘爆させて、爆風は星空さんのデカネコを盾にして防ぐって事?

 

行けるの?でも今はそれしかないのね!

 

[[穂乃果にまかせて!はなよちゃん!ポチ!アグニのエネルギーのじゅーてん!いそいで!]]

 

<<はーい。あとちょっとまってー…もうちょっとー…そろそろー…おまたせー。じゅうてんかんりょー。ほのかー、あぐにうてるよー。>>

 

[[よぉーし!エネルギー全開だよ!アグニ!いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!]]

 

[[西木野さん!早く凛ちゃんの後ろに!爆風が来るよ!]]

 

[[さぁ!ばっちこいにゃ!爆風なんて目じゃ無いにゃぁぁぁぁ!!!]]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様。本日もご覧いただきありがとうございました!
本当は1話で終わるはずでしたが、書いてる内にどんどん長くなってしまい…。
次回で真姫ちゃん回は終わるとは思います。
今回は原作で言えば真姫ちゃんが音楽室で愛してるばんざーいを歌ってる場面でした。
音楽室の変わりにアミューズメントセンターでのファーストコンタクトになりました。
そして今回の真姫ちゃん&穂乃果ちゃんのお相手は、フレームだけの機体“骨組み”と大きな戦車のオバケ。
今回の本文中では紹介できませんでしたが、“骨組み”の方はガンダムバルバトスの改造機でした。
次回に花陽ちゃんが“骨組み”と戦車のオバケについて説明してくれるかと思いますので、詳細は次回までお待ちください。
ちなみに“骨組み”と戦車のオバケには元ネタがありまして、今回と次回では名前は出ませんが、機体の名前も元ネタからマルパクりしています。
元ネタは自分が大好きなかなり昔のロボットゲームのマンガの主人公機とヒロインの機体なんですが、名前をご覧になれば、分かる人もいるかもしれません。
骨格だけの機体と対物ライフル(元ネタでは対戦車ライフルでした。)で分かってしまった方は是非お知らせ下さい!
次回は“まきりんぱな”の1年生トリオ+穂乃果ちゃんと、戦車のオバケとの戦闘になるかと思います。

それでは改めまして、本日もご覧いただき、本当にありがとうございました!
皆様のご意見やご感想もお待ちしております。
お気軽にお声掛け下さい。

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