「もうさー、回りくどいことはやめて、いっそストレートに『いじめはダメだ!』って、クラスの女子に熱く語ればどうかな? ほら、人という字は人と人が支え合ってできている、とかなんとか言ってさ、金八センセのノリで」
「金八って・・・。おまえ、古いなー。せめて『ごくせん』とか『GTO』のほうがよくね?」
「え~、金八ってすごく感動するよ? 『おまえたちは腐ったミカン・・・ん? りんごだっけ? じゃなーいっ!』ってさー」
翔多が、金八先生の真似(のつもりなのだろう、本人は)をして、言った。
「・・・じゃ、一回やってみれば?」
浩貴が呆れ半分でそう返すと、翔多は『は?』といった顔になり、
「なに、言ってんだよ。金八役は浩貴以外にいないでしょ」
そんなことをのたまった。
「ちょっと待てよ! なんでオレが?」
「だって浩貴、人徳あるし。女の子にも超もてるしぃ。浩貴金八センセの語る言葉になら、女子生徒も絶対聞くって。ね?」
のほほんと言う翔多に、浩貴はきっぱりと断った。
「絶対いやだ!」
「TATUYA行って、金八先生のdvd借りて来ようよ」
なのに、翔多は、浩貴の抗議などなんのそののニコニコ顔。
「いやだって言ってるだろ!」
浩貴は、思わず勢いこんで叫び、翔多の目の前に顔をつき出す形になった。
そう、ミニテーブルを挟んで、彼らは見つめ合う格好になり、気づけば、浩貴の目の前に翔多のアップがあった。見惚れずにはいられない、彼の美しい顔。
思えば、初めて会ったときから、浩貴は、翔多は綺麗だと思っていた。深い意味はなく、ただ事実として、そう思っていただけだ。それにそんなふうに翔多の容姿をたたえるのは、浩貴だけではなかった。日向高校の栗原翔多は、その中性的な美貌で、近隣の学校や、通りすがりの人間をも魅了している。
そして、翔多の顔を間近で見つめると、あらためて、その綺麗さに圧倒された。なめらかな肌は、柔らかそうで、至近距離でも毛穴さえ見えなくて。バンビを思わせる大きな黒目がちの瞳は、吸い込まれそう。さくらんぼのような唇は、触れたらとても気持ちよさそうだ。
・・・触れたい・・・、翔多の唇に・・・、肌に・・・。
刹那、浩貴の感情はその欲望だけに支配された。
ゆっくりと、右手で翔多の頬に触れた。彼の肌の柔らかさとスベスベ心地良い感触に、浩貴の体温があがる。
もう、とまらなかった。浩貴は、自分の唇を翔多のそれに押し付けた。キスをしたのだ。
そのあとは、頭で考えるよりも先に、体が行動していた。気づいたときには、浩貴は翔多をカーペットが敷かれた床の上に押し倒していた。