「遅刻したーっ!!」
マサラタウンに住むサトシは大慌てでオーキド研究所へと向かっていた。その理由はサトシはフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメの三匹のポケモンを欲しがっていたが寝坊してしまい、すでに他のトレーナーとなった子ども達にとられたと思っていた。しかしサトシは諦めなかった。自分の他にも寝坊している子どもがいると思い、駆け足でオーキド研究所へと向かっていたという訳だ。
そんなこんなでオーキド研究所についたサトシは息を整え、オーキドに話しかけた。
「おやサトシ。ようやく来たか。……それよりも大丈夫か?」
「は、はい。俺はなんとか。それよりもオーキド博士の方は?」
今のオーキドは傷だらけでところどころにガーゼや絆創膏が見当たり、その姿はかなり痛々しい。
「うむ。なんとかな。それよりもサトシのポケモンについてじゃな」
「そうでした! 俺のポケモンは?」
「残念じゃがご覧の通りじゃ」
オーキドが空になった三つのモンスターボールを見せるとサトシは脱力した。
「そんな〜……俺のフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ……」
「そう落ち込むな。あの三匹よりもずっと強いポケモンを渡そう」
そしてオーキドはサトシにモンスターボールを渡した。
「これは?」
「その中には電気ネズミポケモンのピカチュウが入っている。捕まえるのに苦労したんじゃぞ?」
「うわぁ……ありがとうオーキド博士!!」
「うむ。ではくれぐれも室内で出さない──」
「いけっ、ピカチュウ!」
「ば、バカモン! こんなところで出したら……」
オーキドがそそくさとその場を離れようとしたが純粋な子どもであるサトシは興味津々にモンスターボールの中身を開けた。
そして中から出てきたのは筋骨隆々のピカチュウのマスクと黄色いタイツを履いている身長2m以上ある大男だった。名付けるなら
『オーキド……』
決して大きな声ではないがドスの効いた声がオーキド研究所に響き渡り、オーキドはともかく第三者であるサトシですらもYTPの声を聞いて汗をダラダラと流す。
『あのようなリンチで我を捕まえるとはどういうことだ? ええ?』
「ま、待て! 話せばわか……『北斗剛掌波!!』ギャーッ!!」
哀れ、オーキドはオーキド研究所から吹き飛ばされてしまった。
「オーキド博士一体何をしたんだろう……」
『奴の悪行を聞きたいか? 小僧』
YTPはサトシの方に振り向き、そう尋ねた。
「えっ……まあ」
『では話そう。奴は我を捕まえるのに計900ものポケモンを使って我をリンチしたのだ』
「900!?」
『何せ相手が悪かった。ナゾノクサ、クサイハナ、ラフレシアの300体が我に向かってどくのこな、しびれごな、ねむりごなを使ってくるのだからな。流石の我といえどもそれだけやれば異常状態になる』
「残りの600は?」
『うむ。リザードンとカイリューそれにギャラドスだ。奴らは異常状態で弱っている我を徹底的に攻撃し、リンチした』
「よ、よく生きてられたな」
『オーキドの目的は我を捕まえることだからな。我は奴の目的を理解し、隙あらばリザードンやカイリュー、ギャラドス、草ポケモン達をなぎ倒していった。しかし多勢に無勢。我はこうして捕まったと言うわけだ』
「それじゃ、俺のパートナーに──」
『断る。小僧如きに我を操れることは出来ん』
「そこをなんとか!」
『どうしてもやりたいというならば表へ出ろ。そこで我が小僧の力量を測る』
この時、サトシは悟ってしまった。自分の人生に幕が降りかねない事態だと。
『どこからでもかかってこい』
「うワァァァっ!!」
『威勢はいいが所詮は素人か……残念だ』
YTPはそう言って両手を何か包み込むかのように添える。すると電気の塊がバチバチと音を立てながら徐々に増えていく。
『でんじほう』
でんじほう。それは威力120命中50という命中率こそ低いが当たれば大ダメージを与える技だ。ジバコイルの必殺技であるがYTPが使えるのは彼が彼であるが故だろう。
そしてオーキド研究所の天井に穴を開け、サトシは吹き飛ばされてしまった。
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「ひぇ〜……どんだけやばい威力込めているんだ? あれは」
「でもあれを捕まえてボスに献上すれば幹部昇進間違いないわね」
「俺もそう思うニャ」
YTPの一方的な虐殺を見ていたものたちがそこにいた。ロケット団のムサシ、コジロウ、ニャースである。彼らはオーキド研究所からレアなポケモンを盗もうと企んでいたがYTPの姿が見え、それを観察していた。誰でもあんな姿のピカチュウは目についてしまうだろう。
「ムサシ、どうやって捕まえる? あれじゃどうしようもないぞ」
コジロウはYTPに近づいた瞬間、瞬殺されるイメージが湧いており、ムサシに相談した。
「ニャース、例のものを持ってきなさい」
「アイアイサー」
ニャースが取り出したのはロケットバズーカだった。
「ムサシ、流石にそれはまずいって!」
コジロウがそれを見て慌てて止める。ロケット団ではポケモンを奴隷のようにこき使うことはしても殺すことはタブーであり、あのピカチュウを殺したら間違いなく自分達は首になる。
「コジロウ、あんたが何を勘違いしてるか知らないけど私は殺しはやらないわよ。この弾の中身はトリモチよ」
「と、トリモチ?」
「そーだニャ。一度くっついたらどんな凶暴なギャラドスでも動きを封じてしまう特製トリモチニャ」
ギャラドスは一度暴れたら街が崩壊するまで暴れ続ける。言ってみれば大災害のようなものだ。それを止められるということはどれだけの価値があるか彼らは理解していない。
「そいつはいいや! よし、それでいこう!」
コジロウが賛成したことによって作戦は決行。YTPにばれないように慎重に近づいていくのであった。
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ロケット団がYTPの捕獲作戦を実行しているその頃、サトシは森の中にいた。
「う、う〜ん?」
「おお、サトシ気がついたか?」
「オーキド博士!」
「いやよかったよかった。それよりサトシ、あのピカチュウはどうしたんじゃ?」
「それが……」
そしてサトシは事情を話した。
「ふむ、トレーナーがポケモンに立ち向かうのは大変危険な行為じゃ。下手をすれば死もあり得る。というかあのピカチュウ相手に生きているワシらが不思議なくらいじゃ。だからワシは10歳になって常識が身につきはじめた子供達にポケモンを渡しているんじゃよ」
「そうなんですか」
「まああやつらしいと言えばそうなんじゃがのう……それよりもサトシにモンスターボールを渡すのを忘れてたわい」
サトシはオーキドからハイパーボールを6つ受け取った。
「これは?」
「本来であればあのピカチュウで旅立ってもらいたかったのじゃがそれはちと難しい。しかし今のワシのポケモンを渡すわけにもいかん。そのボールで新たなポケモンを捕まえて旅をしてもらいたいということじゃよ」
「それじゃあのピカチュウは!?」
「サトシよ。本当のポケモンマスターは様々なポケモンを使えてナンボのものじゃ。あのピカチュウだけが全てではない」
「あれだけの気性難を巧みに操ればシゲルだって俺のことを認めてくれる! だからこのボールは返すよ」
「頑固な奴じゃのう……それはわかった。じゃがあのピカチュウに認められるにはどうするんじゃ?」
「それは……とにかく色々と試してみるよ!」
「サトシー! ポケモンに出会ったらすぐに逃げるんじゃぞー!!」
オーキドの叫び声が森の中で響き渡った。
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サトシは奇跡的に他のポケモンに会うことなく、YTPのところまで戻った。ちなみに屋外である。
『来たな。小僧』
「当たり前だ! お前を巧みに操ってこそのポケモンマスターだ。その為にはお前が仲間にならないといけないんだ!」
『面白い。ハンデをやろう』
「ハンデ?」
『我とてポケモンだ。モンスターボールの中に入れる。我をモンスターボールの中に入れてみよ。そうすれば認めてやる。ポケモンをモンスターボールに入れるという基本中の基本が出来ないようではポケモンマスターとして失格だ』
そう言ってYTPはサトシに向かってボールを投げるとサトシはそれを取った。
「やってやろうじゃないか……!」
『北斗神拳と南斗聖拳、そして我自身の技を思い知るがいい』
「北斗神拳だか南斗聖拳だかなんだか知らないけどそんな虚仮威しなんの役にも立たないってことを教えてやるぜ! 戻れピカチュウ!」
サトシのモンスターボールから赤い光線が出る。この光線はポケモンをモンスターボールに入れるための光線で遠距離からでも放つことができる。
しかしそれをYTPは最小限の動きで躱して、拳を作る。
『北斗百烈拳』
拳の雨がサトシに襲いかかる。その豪雨に人間は逆らうことは出来ない。
「うわぁぁぁっ!?」
「ぐっ……まだまだ! 戻れピカチュウ!」
サトシは諦めず、立ち上がり、YTPを捕まえようとモンスターボールにスイッチを入れる。
『無駄だ』
だが天高く飛び上がることにより、YTPはそれを避けた。
『南斗十字鳳凰!』
YTPが腕を十字状に広げ、サトシを襲う。その姿は餌を啄ばむ鳳凰の如し。
「うわぁぁっ!?」
さらにボロボロになったサトシはゴロゴロと土まみれになりながらモンスターボールにスイッチを(以下省略。
そんな感じでYTPによるサトシ虐めは十分も続き、サトシはもうボロボロだ。だがサトシは何度もYTPを捕まえようとしていた。
「ううう……戻れピカチュウ」
サトシがスイッチを入れるもYTPは戻らない。
『だから無駄だと言っている』
そしてYTPのかみなりパンチがサトシの腹に吸い込まれるかのように炸裂……しなかった。YTPが突如後ろに下がったのだ。
『ふん。どうやら邪魔者がいるようだ。そちらの始末からやろう。出てこい! そこの三人組!』
「ったくバレちゃ仕方ないわね」
YTPが怒鳴り声を上げるとロケット団の三人組がそこに現れた。
『一応尋ねるが貴様らは何者だ?』
「なんだかんだと聞かれたら」
「答えてあげるのが世の情け」
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く」
「ラブリーチャーミーな敵役」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆ける、ロケット団の二人には」
「ホワイトホール白い明日が待っているぜ」
「にゃーんてにゃ!」
『ほう、ロケット団か』
「知っているのか?」
『知らん』
「ダァァっ……まあそんなことだと思ったよ」
YTPの即答ぶりにサトシがコケる。
「ちょっとー! 私達を知らないとかどんだけ世間に疎いのよ!」
「そうだぞ! 我々ロケット団はカントー地方最大の犯罪組織なのよ!」
「つまり悪い奴ってことか?」
「そういうこと。理解が早くて助かるわ。ジャリボーイ」
『その悪い奴が何の用だ? わざわざ挨拶をしに来たわけではなかろう』
「当然、俺達はそのピカチュウを捕まえに来たんだ」
『我をか?』
「人のポケモンを取ったら泥棒だぞ!」
「泥棒と言われようともロケット団っていうのはそういう組織だから何一つ問題ニャいんだニャーこれが!」
「そうそう、そのピカチュウを手に入れれば幹部昇進は間違いない……ということでニャースやっちゃいなさい!」
「了解ニャー!」
ニャースがバズーカのスイッチを押し、弾が発射される。
『我は小僧のポケモンではないのだがな。まあよかろう。喰らえいっ! 北斗剛掌波!』
YTPの放った北斗剛掌波がバズーカの弾を押し返し、ロケット団の方へ向かっていく。
「嘘ーっ!?」
「ちょっとニャース! 話が違うじゃないの!」
「そんなこと言われても……」
そしてロケット団にバズーカの弾が炸裂するとトリモチがロケット団にひっついた。
『これで最後だ』
そしてYTPは両腕を添え、後ろに下げる。それはロケット団も見たことがある光景だ。
「ひいぃぃぃっ!?」
「やめて! 悪かったから! お願いだからそれだけはやめて!」
「絶体絶命ニャー!!」
ロケット団が恐怖の声を上げるがYTPからしてみればそれは関係ない。むしろご褒美と言えるだろう。
『でんじほう』
そしてYTPのでんじほうがロケット団に炸裂した。
「「「やな感じーっ!!」」」
ロケット団が吹き飛ばされ、YTPはサトシの方へ向こうとした。
「戻れピカチュウ!」
しかしそれは出来なかった。何故ならばサトシがYTPを元に戻していたからだ。
「やったぁっ! ついにピカチュウを元に戻したぞ!」
サトシはYTPがモンスターボールに戻ったことに感激し、飛び回る。
「ピカチュウゲットだぜ!」
サトシがモンスターボールを上に突き出すとモンスターボールが開き、YTPが現れた。
『不意打ちとはいえ我をモンスターボールに収納した以上、我はサトシの剣となり盾となることを約束する』
「よろしくな! ピカチュウ!」
こうしてYTPが仲間となった。
続く? ……続いた!