「これでようやくあのジムに挑めるのか……」
サトシがそう呟き、そのジムへと入る。そのジムリーダーはエスパータイプのポケモン使いであり、自身もエスパーだ。
『この前はあのザマだったからな』
ゴリゴリマッチョピカチュウことYTPが指差した先には催眠術にかかったロケット団三人組の姿があった。そう、サトシもあのようにジムリーダーが仕掛けた仕掛けにまんまと引っかかりジム挑戦を諦めることにしたのだ。ちなみにYTPは引っかからずにサトシをぶん殴り目を覚まさせた。
本来であればジムに仕掛けはなくサトシはYTPでジムバッチをゲットしていたはずだったのだがジムリーダーのナツメは優れたエスパーだ。ナツメは2年ほど前から、ナツメはYTPがナツメのポケモンを虐めとも言える戦いを予知しておりジムを改造して戦わないようにしていた。その結果ナツメのポケモンが生贄になる防ぐことができたのだが……1人の男がサトシの心を動かし再び挑むようにした。
その男はナツメの父親だ。彼はナツメが超能力に夢中になりすぎたのを危惧し、止めようとしたがナツメは逆に暴走してしまい彼の妻、つまりナツメの母を人形へと変えてしまった。それ以降彼はナツメを変えられる人間を探していた。それを探すために街の中を徘徊していたらサトシのYTPがマジギレしたのを見かけ、全身全霊の力を込めてジム全壊を半壊程度に防ぎ、サトシと出会った。そしてサトシにアドバイスを送った。
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時は遡り数日前。
「ナツメはそのピカチュウを恐れている……おそらくジムを改造したのもそれだ。そのピカチュウを使わないと決意すればナツメと戦えるだろう」
ただしそのピカチュウ以外のポケモンでは負けることは確実だ。と彼が付け加えるとサトシは反論した。
「そんなのやってみなきゃわからないじゃないか!」
「やってみないとわからないのは理解できる。しかしエスパータイプのポケモンに無策というのはあまりにも無謀だ」
『確かにな。サトシもポケモンマスターを目指すなら無策では意味がない』
YTPにまで言われサトシは凹んだ。
「ふむ……君はゴーストタイプのポケモンを持っているのか?」
「ゴーストタイプ……?」
「その様子だと持っていないようだな。ゴーストタイプはエスパータイプに強く、相性も抜群にいい。何せゴーストにエスパーはほとんど効かないからな」
「それ本当ですか!?」
「本当だとも。すぐにでもゴーストタイプのポケモンを捕まえてナツメと戦いたまえ」
「ありがとうございます!」
そしてこの日、ナツメは感情がなくなってから初めて自らの父の行動に感謝した。
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そしてサトシはゴーストを手に入れナツメと戦うべくジムへと再びやってきた。
「さあ勝負だ!」
「ええ、わかったわ。でもそのピカチュウは禁止よ」
「もちろんだ! その為にゴーストを捕まえて来たんだ……あれ?」
その時、サトシはゴーストがいないことに気がつきあたりを見回す。しかしどこにもいない。
「あのゴースト気まぐれだからなぁ……」
タケシがそう呟き、カスミも頷く……なんで2人が人形にされずにここにいるのかはサトシ達とナツメは初対面だからとしか言いようがない。
「
ナツメは手持ちにあるフーディンを出した。このフーディンは2年前まではケーシィでしかなかったがサトシがやってくることを予測してから特訓しユンゲラー、フーディンへと進化したのだ。恐るべしバタフライ効果。
「さあ貴方のポケモンを出しなさい。出ないと棄権と見なすわ」
「仕方ない……いけっヒトカゲ!」
サトシはヒトカゲを出し、フーディンを対面させる。
「それじゃジム戦を始めるわ」
そしてサトシとナツメのジム戦が始まった。
「ヒトカゲ! 北斗神拳だ!」
「「な、なんだって!?」」
サトシの指示にタケシとカスミが驚愕した。まさか北斗神拳がヒトカゲも使えるなどと思いもしないだろう。
「カゲーッ!!」
しかしそんな思惑もヒトカゲは御構い無しに手を突き出し、フーディンに向けてYTPの天破活殺を放つ。するとフーディンが吹き飛びされ、壁に叩きつけられた。
「ねえ、ピカチュウ。あんた北斗神拳をヒトカゲに教えた?」
カスミが隣にいたYTPにそう尋ねると頷き、答えが返ってきた。
『軽くだがな。あいつはサトシの為に強くなりたいと願っていたからな……我はそれに少し手を貸しただけのこと』
「そのうちポケモンリーグに北斗神拳禁止ってルールが出来上がるな……こりゃ」
タケシがため息を吐くとYTPは指を振った。
『その時は南斗聖拳を教えるまでだ。しかしその心配もあるまい……ヒトカゲの尾の炎を見よ』
「え……!? 炎が弱くなっている!?」
「どういうことだ!?」
『本来北斗神拳、特に天破活殺のような技は体力を消耗する。それこそ我のように完成された北斗神拳でもなければヒトカゲのように体力が減っていくのだ』
「でも数々のポケモンを葬ってきた北斗神拳ならフーディンが相手でもいけるんじゃないの?」
『北斗神拳はほぼ全てがかくとうタイプの技の判定だ。それに比べフーディンはエスパータイプ。我ならともかくまだ未熟なヒトカゲではせいぜいあのフーディンの体力を削ることくらいが限界だ』
「それでも強力だな……あのフーディン相当鍛えられている感じがあるからな。まるで執念みたいなのも感じるし」
「タケシ、そんなのわかるの?」
「俺は一応ブリーダー目指しているからな。そのくらいはわかるさ」
「ニビジムの時はピカチュウの力量を見抜けなかったのに、そこまで成長したの?」
「まあな……あの時は仕方ないさ」
『なんにせよ、サトシは北斗神拳を使ったことによるリスクを受け入れなきゃいけない。ヒトカゲを他のポケモンに交換するか、あるいは続行するか……どちらにしてもサトシの力量が問われる』
「ヒトカゲ! かえんほうしゃだ!」
サトシはヒトカゲを他のポケモンに変えずに攻撃させた。
「そうか! その手があったか!」
「え? 何がよ?」
「ゲンガーはゴーストタイプなのにじめんタイプが効かないなどと言ったポケモンの謎の一つが判明したんだ。それは特性という奴でヒトカゲはもうかの特性を持っている」
「もうか?」
「ああ。もうかは調べたところによると、そのポケモンがピンチになるほどばほのおタイプの威力が上がるんだ」
「じゃあサトシはそれをわかっていたのね!」
『ポケモンマスターを目指すものであれば相性だけではなく特性も理解しなければならないからな。そこのところをしっかりと指導してやった。最もヒトカゲ、いやポケモンを大切にするサトシのことだ。こういった戦法は二度と使うことはあるまい』
「それを使うってことはよほどサトシはナツメに比べて実力がないと自覚しているのか……」
『かもしれん。今までジムバッチを獲得出来たのは我の力によるものだ』
「「そりゃそうだ」」
『だが今回は我はこうして観客としてみている以上、完全にサトシの実力がものをいう。いかにしてヒトカゲの実力を発揮させるのか……それこそがサトシの今回の課題だ』
YTPがそう締めるとヒトカゲはフーディンのサイケこうせんを受け、倒れた。
「さあ、次のポケモンを出して。でないと貴方の不戦敗ということにするわよ」
ナツメの冷酷な宣告がサトシを絶望させる。今手持ちにいるポケモンで勝てるポケモンはいない。ゴーストさえいれば何とでもなる……そう思った瞬間、ゴーストがナツメのところに現れた。
「ゴースゴスゴス!」
不気味な笑い声とともに現れたゴーストはナツメを笑わせようと渾身のギャグをする。
「……」
しかしナツメは感情を失っており、笑うことはない。だがゴーストは諦めなかった。自身の顔を舐め、目を口の中から出したりして少しでも笑いを取ろうとする。
「シシシ!」
最後にはどこからともなく爆弾を取り出し、それに火をつけた。
「ああっ!?」
サトシ達はそれをみて慌てるが爆弾の近くにいるナツメは全く動じておらず、ゴーストに至ってはもはや笑顔だ。
BOM!
小規模な爆発によりナツメ達は黒焦げとなり、そしてゴーストも黒焦げになった。
「アッハッハハハ!」
ナツメは大爆笑。腹を抱えて笑った。
「笑っている……! 10年以上も前から笑わなかったあのナツメが……!!」
そんな声が聞こえ、サトシが振り返るとナツメの父が涙を流している姿があった。
「やっぱりおじさん……そんなにナツメのことを知っているってことは……」
サトシは彼の正体に気づいていなかった。故に、彼がナツメの父だということも知らない。
「やっとわかってくれたか!」
「ナツメの近所に住んでいたおじさん!」
そう、このようにサトシは予想の斜め上の答えを出す為、彼がナツメの父だとわかるはずもなかった。
「どこまで鈍いのだ君は!?」
タケシやカスミはそれに同意するように頷いた。
「それよりゴースト! いつまでそこにいるんだ! こっちに来いよ!」
「ゴスゴス!」
ゴーストはフーディンを指差すとフーディンがナツメと同じくフーディンも腹を抱えて爆笑していた。
「えーと……どういうこと?」
「ナツメとフーディンは感覚を共有している。故にあのように腹を抱えて笑っているのだ。あれではまともにポケモンバトルなどできるはずもない。よってこのジムバトル、マサラタウンのサトシの勝利とする!」
こうして初めてサトシはYTPを使用せずにジムバッチを獲得した。
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「サトシ君、私達を救ってくれてありがとう」
結局、正体を明かしたナツメの父はサトシに礼を言い、頭を下げた。
「いや、そんなことは……」
「謙遜しなくていい。もし君があのゴーストを捕まえなければナツメは昔のままだった。ありがとう……」
「本当にありがとうね。私も助かったわ」
ナツメは本心でそう言った。何故なら彼女が大笑いしたことによってYTPと戦わずに済んだのだから。あのまま戦えばヒトカゲに指導する為にナツメが犠牲となる未来が見えていた。YTPと関わって被害が最小限に済んだのはこのジムかもしれない。
「それじゃさようならー!」