ポケットモンスター〜こんなピカチュウは嫌だ〜   作:ディア

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一年ぶりに書き終えました。お待たせしました!


第6話

カントーで最も都会と言われるタマムシシティに着いたサトシ達は妙な雰囲気を感じた。

「あれ? おかしいわね……タマムシシティってこんな町だっけ?」

「いや普段はもっと人混みがあって活発なはずなんだが……なんか台風でも来そうな雰囲気だな」

そう、現在のタマムシシティは人っ子1人外に出ていないだけでなく、扉に木を打ち付けており、まるで台風が来るかのような雰囲気に包まれていた。二人はその原因をわかっていたがあえて皮肉げに会話をする。

「なんでピカチュウを見ているんだよ?」

その原因とはイエロータイツピカチュウことYTPだ。YTPはただ単純に最強ジムリーダーと評判のマチスを倒しただけでなく後継者(またの名を被害者、あるいは共犯者)のヒトカゲに北斗神拳を伝授した。

 

そんなYTPが腕を組みながら目をつむり語り始めた。

『タマムシジム……このジムは因縁とも言えるべきジムだ』

「ピカチュウ、どういう事だよ?」

『前に我がナゾノクサやクサイハナ等のポケモン数百匹がかりで襲われてゲットさせられたというのは聞いたな?』

「まさかその数百匹が……タマムシシティに?」

『否、我を異常状態にしたクサイハナがそのタマムシシティのジムリーダーのポケモンだ。つまりタマムシのジムリーダーはオーキドと共に我を捕まえたうちの1人と言える』

「1人って……他にもいるのか?」

『いるぞ。他に我が知っているのはカントー地方チャンピオンのワタルだ。あいつのカイリューやギャラドスのはかいこうせんが我の体力を奪っていったな』

「さ、流石チャンピオン……このピカチュウの体力を削らせたのか」

『話を戻すぞ。この静けさは大方、サトシにジムバッチを貢献した我を、恐れたジムリーダーが避難するように呼びかけたのだろう』

「でも幾ら何でもやり過ぎじゃない? いくら逝かれ性能のピカチュウとはいえ伝説でもないポケモン一体相手にここまでやらなくても……」

「俺はやり過ぎじゃないと思うぞ。何しろサトシはポケモントレーナーの中では最強と評価が高いからな」

カスミがこの事態に批判する一方、タケシは評価していた。気持ちはわからなくもない。

「サトシのピカチュウが最強の間違いでしょ?」

「それは否定しない。というかどうしてここまで強くなったのか知りたいくらいだ」

 

『我はただ生き延びる為に強くなった。それだけのこと。それと一つ言わせておく。このジムも恐らく我は戦えん』

「どうして!?」

『タマムシのジムリーダーはこれまでのジムリーダーの中では我のことを知っているだけに一番我のことを警戒している。何せポケモン数百匹を目の前で半殺しにしたピカチュウがやってくるのだ。我に対する警戒心は半端なものではない』

「た、確かに……」

『だがヒトカゲの北斗神拳が強化されればクサイハナなど一撃だ。恐らく50匹程度なら無双出来るだろう』

「ムソウ?」

サトシが聞いたことのない言葉に首を傾げた。

『此れに並ぶもの無し、という意味だ。要するにクサイハナ50匹相手にヒトカゲは楽勝出来るということだ』

「本当か!?」

『もっとも今日一日中、しっかりと我に師事したらの話だ。このままではせいぜい1匹倒すだけでもやっとだな』

 

「ヒトカゲってほのおタイプだからくさタイプのクサイハナに有利なんじゃないのか?」

タケシがそのことを指摘するとYTPは首を振り、答えた。

『仮にも我を異常状態にしたクサイハナだ。ヒトカゲが異常状態にならないというならクサイハナ相手に優位に立ちそのまま火力で押し切れるだろう。しかしヒトカゲとてポケモンだ。最低でもまひ、どく、ねむり、こおりの異常状態のうちのどれか一つかかる』

「しかしクサイハナはくさ・どくタイプだからこおりの異常状態になる技は使えないと思うんだが……」

『そうだ。だからこおりはない……となれば残りの状態異常にかかる。その対策をしておかねばならぬ』

YTPがそう言って取り出したのはゴーグルだった。

「これは……?」

『防塵ゴーグル。それをヒトカゲに装着すればしびれごな等の粉系の技は無効化する』

「それじゃ早速つけようぜ!」

ヒトカゲに装備させると多少不恰好ではあるが、サトシ達は満足し、ヒトカゲも笑みを浮かべていた。

『よし、では少し待っていろ』

YTPが起こした行動。それはシャッターを無理矢理開き、タマムシジムの在処を秘孔解亜門天聴で物理的に聞き出した。

「ちょっとちょっと! 何やってんのよ!?」

『見てわからぬか? 道を尋ねただけだが』

「それは拷問っていうんだよ!」

『安心しろ。あの秘孔をついても死にはせん。あれはみねうちと変わらん』

 

そんなやり取りをBGMにサトシはタマムシジムに向かうとそこは香水店だった。

 

「なんだこりゃ…………?」

前述した通り、タマムシシティは全ての店がシャッターを下ろしている。故にこのジムも例外ではなかった。百歩譲ってシャッターを下ろしているのはまだマシだろう。シャッターをこじ開ければいいのだから。

『夜逃げか。小賢しい真似を』

そう、店の中は空。ジムらしき場所も植物を放置して夜逃げした後だった。

 

「よし、追いかけようぜ!」

「タケシ、私達ってなんだか借金取りみたいじゃない?」

「ある意味間違いないじゃないな」

『いや、待て』

サトシが追いかけようとするとYTPが取り押さえ、一点の場所を見つめた。

「どうしたんだ? ピカチュウ」

『北斗剛掌波!』

YTPの一撃により天井が丸見えになるとそこからジムトレーナー達が現れた。

『やはりここにいたか』

「な、何故私達の場所を?」

着物を着た女性トレーナーがYTPに尋ねるとYTPはジムの方に向いて語り始めた。

『気配とジムの植物だ』

「植物?」

『あの植物の中にはこの時間帯に手入れしなければならないものもある。しかも手入れにクサイハナを使わなければならないという致命的な植物。ただ手入れするならともかくクサイハナを見捨ててまで逃げようなどという腐った輩ではない。違うか? タマムシジムリーダー、エリカ』

「……ふう、参りましたわ。まさか私達の気配だけでなく、植物をみて私達がここにいることを察知するとは思いもしませんでした。故にこれを授けます」

エリカが肩を落とし、サトシにバッチを渡した。

「これって……?」

「タマムシジムのレインボーバッチですわ。そのピカチュウをそれだけ使いこなしているだけあって逞しい貴方にふさわしいバッチでしてよ」

「逞しいか……照れるな」

サトシがレインボーバッチに手を伸ばす。するとYTPがそれを阻止した。

『否、これはまだ受け取れん』

「何故でしょうか?」

『確かに我はそれを見切ったが主人たるサトシはそれを見切れなかった。故に、サトシがこれを受けとる資格などない』

「そんなことはありませんわ。私はちゃんとサトシさんのトレーナーとしての技量を見切った上でバッチを渡しています」

『エリカ、単刀直入に言う。サトシとポケモンバトルをしろ』

エリカが顔をひきつらせ、サトシの連れ二人組は苦笑していた。

 

「……仕方ありませんわ。ただし、条件がありますわ」

『勝負に条件を付けるとは、とてもではないがジムリーダーとは思えんな』

「一つ、そこにいるゴーリキ擬きのピカチュウ以外のポケモンを使うこと」

『ゴーリキ擬きとは随分な言われようだが、我はこの試合元々戦わないつもりだ』

「二つ、敗北条件は自らのポケモンが全て気絶またはトレーナーが降参すること」

『…………まあよかろう。それも望む条件のうちの一つだ』

「そして最後に如何なる理由があろうとも癇癪を起こさずタマムシジムで暴れないこと。これらを守って頂ければポケモンバトルを致しましょう」

エリカがそうキッパリと言い切り、サトシを見つめるとサトシが手を上げた。

「それの条件に少しだけルールを付け加えさせて貰いたいんだけど」

「なんでしょう?」

「道具ありのシングルバトル。お互いに使うポケモンは三体までとさせてもらえますか?」

『ほう……』

「流石に気づきましたか……確かに私の提案したルールのままポケモンバトルをやっていたら大乱闘になるところでしたわ」

 

「大乱闘?」

カスミが首を傾げ、その意味を尋ねるとYTPがそれを答えた。

『エリカは肝心の勝負方法を決めていなかった。そこにつけこみ、相手つまりサトシが一対一のシングルバトルをするものだと思わせておいてエリカは数百ものくさタイプポケモンを出そうとしていたということだ』

「腹黒過ぎでしょ……」

『しかしサトシがそれに気づいたお陰でそれは白紙になった。マトモにやればサトシの方に勝ち目はあるのだからこの勝負貰ったも当然だ』

そんな会話を他所に、サトシとエリカがポケモンをフィールドに繰り出した。

 

「さあ行きなさい! モンジャラ」

「よし、頼んだぞヒトカゲ!」

そして審判が口上を告げ、その試合は始まった。

「参りましたわ。審判この勝負棄権致します」

そして終わった。僅か数秒でエリカが降参し決着がついてしまった。

「え? あ、え?」

YTPの力を使わず、最短記録を塗り替えたことに戸惑いサトシは狼狽えてしまった。

「サトシさん。これがレインボーバッチです」

戸惑うサトシにエリカが声をかけ、レインボーバッチを渡した。

 

「どういうことなの?」

「試合に勝って勝負に負けたってことだな」

カスミの疑問に答えたタケシは腕を組んでそれを説明し始める。

「敗北条件の中に降参のタイミングについて言及してなかったんだ。だから速攻でエリカさんは降参してなるべく自分に被害がいかないようにしたんだ」

「でもそんなことをしてピカチュウ怒らない?」

「怒るに怒れないのさ。エリカさんの出した条件の中に如何なる理由があろうとも暴れてはならないという条件があるからな。これを破る真似はピカチュウに出来ない」

「でもピカチュウが不機嫌になったら私達に負担がかかるのよ? ほら、今のピカチュウかなり機嫌悪いもん」

カスミがピカチュウの拳を指差すとそこには血まみれの拳があり、怒り心頭であるのは明らかだ。

「新技を試したいのにその前に倒してしまったようなものだし、それは仕方ないことだよ」

「仕方ないなんていってないでピカチュウの防止役をエリカさんに誘ってきなさいよ」

「何っ!? カスミ公認となれば誘わなければなるまいっ! エリカさ~ん!」

『やかましい』

タケシがエリカをスカウトしようとすると機嫌の悪くなったYTPがタケシを殴り黙らせた。

『行くぞ。もはやここには用はない』

YTPがサトシ以下三名の首を掴み、その場を立ち去る。その事にエリカは内心大はしゃぎ。何一つ被害なくジムを去ったのだから仕方ないと言えば仕方ないことだ。

 

『さて、邪魔な虫もいることだ。我のでんじほうで葬り去ってくれるわ』

タマムシジムを出て数分後、タマムシジムの方を振り向いたYTPがそのような物騒なことを呟き構える。

「ま、待て! ピカチュウ!」

『もう遅い!』

タケシが止めるがでんじほうが放たれ、その延長線にいたロケット団三人組は巻き添えになり空の彼方へと消えタマムシジムにロケット団三人組によって威力が弱まったでんじほうが直撃しタマムシジムを半壊させた。

「に、逃げるぞーっ!」

サトシもこれには流石に不味いと思ったのか、二人と一匹に声をかけその場を全力でダッシュして逃げた。

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