セキチクシティにてサトシ達は遭難していた。
「なんでジムがないんだ?」
セキチクシティはタマムシシティほど巨大な町ではない。しかしそれでもなお遭難していたのはサトシ達の目的であるセキチクジムが見つからないでいたからだ。
『どうやら、我らは嵌められたようだな』
「嵌められた?」
『ああ……先ほどからぐるぐると同じところを回っている。あの団子屋が何よりの証拠』
そういってYTPが客のいない団子屋を指差し、指摘する。
「そう言えばあの団子屋、何度も見るわね」
「まさかとは思うが、あの団子屋がセキチクジムだったりして」
「んなわけないでしょ」
「いやそうとも言えないぞ。セキチクジムのジムリーダーはキョウという忍者らしい。ジムを改造し、違和感を出させないことくらいは出来るはずだ」
「よくぞ見切った!」
どこからともなく忍び装束の男女二人組が現れサトシ達の目の前に現れた。
「うわっ!?」
「我が名はキョウ。このセキチクジムのジムリーダーだ」
「そして私は兄キョウの妹のアヤと申します」
アヤに見惚れたタケシがプロポーズをしようとするとカスミが耳を引っ張って止めていた。
『お前達がセキチクジムの……』
「さて、サトシ君。御主の噂は聞いている」
「噂? もしかして俺って名トレーナーとして有名!?」
「ああ。各地方のジムに迷惑をかけるトレーナーとして有名だな。ハナダジムやタマムシではジムの経営に影響を及ぼすほど破壊させたと聞く。そんな御主にぴったりの二つ名が迷トレーナーというわけだ」
「ちょっと待った! その原因はほとんどこのYTPが原因だよ! 少なくとも俺はそこまで指示してない!」
「なんと。アヤよ聞いたか?」
「兄者。まさかいくつもバッチを持っていながら言うことを聞かせられないなんて未熟にも程がありますね」
『全くだ』
二人と一匹が頷き、呆れ顔になる。
「お前のせいだろうがぁぁぁっ!」
サトシがツッコミをいれるが誰も相手にしなかった。
「さて、そんな訳でそこのピカチュウはこのセキチクジムに入る許可を与えることは出来ぬ」
『何故そうなる?』
「このセキチクジムは少々凝っていて多くの仕掛けをしてある。故にコンビネーションの合わないトレーナーとポケモンを通す訳にはいかぬのだ」
『コンビネーションだと?』
「そうだ。本来ポケモンジムというのはトレーナーの資質を見るものであって強いポケモンを見るわけではない。故に拙者は考えた。どのようにしたらトレーナーの資質を見抜けるか……そこで閃いたのがジムのアスレチック化。セキチクジムにトレーナーはポケモンを三匹までしか持ち込めないようにしてその三匹を使ってセキチクジムのアスレチックを攻略するように促したのだ」
『だがそれでは我を出入りを禁止させる理由にはなっていない』
「もしお主がアスレチックを攻略しようものならセキチクジムが半壊されてしまう恐れがあるのでな」
「あー確かに」
その言葉にタケシが頷く。事実、このYTPはタマムシジムを半壊させており、何をしでかすかわからない。サトシを除いたポケモントレーナーの評価がそんなポケモンだ。
『ふむ、ではこの我が出れぬ以上待機させて貰うぞ』
YTPが無表情でそう答え、仁王立ちする。それでも嫌な予感を感じさせるのは何かしら間違いではない。何かしでかすことを前提にしなければならない。特にタケシはタマムシジム崩壊を防ぐことが出来ずポケモンリーグから警告を受けているのだから。
「では参ろう。挑戦者よ拙者に着いてこい」
キョウがジムの中に入るとサトシがポケモン三体選び、それを追いかける。カラクリを解いていき、ジムを攻略していく。
「よし、これで最後だ!」
サトシがカラクリを解いて行き、最後の部屋までたどり着く。その先にはキョウとアヤ、そしてロケット団を蔦巻きにしているYTPがいた。
「何でだぁぁぁっ!?」
『カラクリを超える純粋な強さ。それこそがパワーだ!』
「色々突っ込みたいところはあるけど、とりあえずなんでキョウさん達を蔦巻きにしているんだよ!?」
『我を襲ってきたのでな。条件反射でやってしまった』
「条件反射でやるなよ! ロケット団じゃない二人を解放してやれよ!」
『トレーナー命令とあれば仕方ない。二度とするでないぞ』
YTPがロケット団を持ち上げ、砲丸投げのように投げる準備をする
「え、もしかしてこれってヤバい?」
「だよな」
「やめろ、やめるニャー!」
『さらば……!』
そして三人が「やな感じーっ!」という悲鳴と共に空の彼方へと消えていく。その瞬間、キョウとアヤの縄も解き、自由になる。
「ロケット団を仕留める際誤って手が滑った瞬間にこのピカチュウにやられるとは拙者も未熟よの……」
「お兄様、まさかピンクバッチをこの者どもに?」
「いやそれはならぬ。確かにピカチュウは優秀だがトレーナーの指示ではなく自ら動いた訳ではない。そのようにして渡したらタマムシジムの二の舞になる」
『流石忍者、耳が早いな』
「耳が早い……?」
サトシは人間の耳に足を生やした謎の生物達が走る姿を思い浮かべる。
『情報通だということだ。タマムシシティに紛れ込んだのだろう』
「いっておくがタマムシシティに紛れ込んだのは拙者達ではござらん」
「兄者の娘、つまり私の姪のアンズがやってくれました。この場にはいないので紹介は出来ませんがどこかで会うことになるでしょう」
『それよりもジム戦をしてほしいのだが?』
「む、そうだった……ではルールを説明する。ルールはごくシンプルに一対一のシングルバトル。ただしそのピカチュウは禁止だ」
『残念……』
「審判は私アヤが務めさせていただきます」
「よし、わかった。早くやろうぜ!」
キョウがアヤにアイコンタクトを合わせると頷き、旗を上げる。
「これよりジムリーダー、キョウとトレーナー、マサラタウンのサトシとのジム戦を開始します。始めっ!」
「では行けっ、ゴルバット!」
「ヒトカゲお前の力見せてやれ!」
キョウがゴルバット、サトシがヒトカゲを出し、対峙する。そしてサトシが指示したのは意外なものであった。
「ヒトカゲ、北斗神拳!」
それはYTPが使う北斗神拳。ヒトカゲは憐れにもその拳法の使い手となってしまった。
「カゲェェーッ!」
ヒトカゲの攻撃が命中し、ゴルバットはぶっ飛ぶ。しかしゴルバットが痛みを感じないことに違和感を感じないでいると急に墜落した。
「ゴルバット!?」
『ほう、北斗神拳の有情拳を選んだか。礼儀正しいヒトカゲらしいな』
YTPが何か言っているがヒトカゲがどこか遠い場所に向かってしまったのだとサトシの同伴者二人がため息を吐く。
「ゴルバット戦闘不能! よって勝者マサラタウンのサトシ!」
アヤがそう宣言し、キョウは再びアイコンタクトを送った。
「(アヤよ、例のアレの準備を)」
「(了解です)」
「さて拙者を破った以上、御主にはピンクバッチを手にする権利がある。しかし拙者の手元にそれはない……この先にあるピンクバッチを取って来て貰おう」
「わかりました!」
サトシ達はキョウが指を指したその部屋を開く。その部屋には無数のピンクバッチとビリリダマ、そしてマルマイン、ゴローニャ等多数のポケモンによって敷き詰められていた。
「ふぁふぁふぁ。その中で本物のピンクバッチは一つのみ。それ以外のバッチを持ったらそのポケモン達がだいばくはつをするようにしつけている」
「何て卑怯なの……」
「何とでも言うがいい。忍者とはそういうものだ」
『たったそれだけか?』
「え?」
『アレだけの数の中に本物が一つだけとなれば偽物には本物とは違う特徴、それもビリリダマやマルマインが判別出来るということは見ただけでわかると言うこと。本物を探す等容易いことだ』
「あ……!」
「し、しまった!」
YTPが指摘するとサトシは笑みを浮かべ、キョウは焦り汗を垂らす。
『ふんっ!』
そしてYTPが足で全てのバッチを押し上げ、その中から本物を取り出す。
『さあサトシ。これがピンクバッチだ』
「というわけでピンクバッチゲットだぜ!」
「策士策に溺れるとは正にこの事よ……アヤよ、そしてアンズよさらばだ」
キョウが頭を抱え、その場から消える。以後セキチクジムでその姿を見たものはいない。何故ならばキョウが反省を兼ねて特訓をしたおかげで四天王になったからである。
これ書いておいてなんですが、やっぱりテンプレ小説が書きたくなるものですね。