「…、ゆっくり、自分の状況を整理してみろ」
「……、僕は…、茶熊学園所属、冒険家」
「お前は誰だ?」
「僕は…、僕は…、ハイセ……、ササキ…」
「…そうだ、お前はハイセ・ササキだ」
「バイパーさん…、僕は…」
「大丈夫だ、…誰も死んではいない。あまり無理をするなハイセ……、命令だ」
「…、はい…」
「今はもう…、休め…」
「はい…、おやすみ…、なさい」
「バイパー殿、ハイセ殿は、もしや」
「そうだな、説明しよう」
「ハイセ・ササキは、『半喰種』だ」
その場にいた者達は、絶句した。
「狂気の科学者…、『ヨーゼフ』の手により、『赫包』を移植された『喰種化』被害者だ」
「!!!まさか、人為的に喰種を作るのか!?」
「ウソ、そんな!?」
「こんなことって…」
「有り得ない話だが、事実だ。……、アイツの扱いには幾つか「決まり事」がある」
「ひとつ、"『ハイセ・ササキ』は『ヒト』として扱うこととする"」
「ひとつ、"赫子が暴走しやむを得ない場合此れを『喰種』と見なし駆逐する"」
「そんな決まり事が…」
「だが、アイツは俺を、友と呼んでいる。そんなヤツを殺させはしない。俺とメア、元同僚達での話し合いの結果だ」
「極力、Rc抑制剤などで沈静化を図るが、もしもの時、俺達はハイセを駆逐せねばならない。……アイツはそのリスクを承知でお前達を助けようとしたんだ」
「ハイセが、私達を…」
「師匠が、僕達を…」
皆、信じられない様子だ。
「そして、『ヨーゼフ』のハイセに関する研究資料を見つけた」
「それには、とんでもない事実があった」
「とんでもない事実?バイパー殿、それはいったい」
「それは、アイツの前の人生だ」
「人生?」
皆、頭に疑問符が浮かんでいる。
「あぁ、本名、ケン・カネキ。そして、クジョウの島出身という事実」
「なっ!?」
「ウソ、だろ?」
「あの人が、そんな!」
「ケン君が、ねぇ〜」
イサミ、シズク、カスミ、ツキミが驚く。
「バイパー殿、冗談でござろう?ケンが、生きている筈がない!」
「残念ながら、事実だ、イサミ」
「ケン、そんな、ウソだ」
「………」
「う〜〜ん」
イサミは怒声を張り上げ、シズクは泣き崩れ、カスミは右手で左腕を抑えて俯き、ツキミはうねっている。
「『ヨーゼフ』の研究資料によると、親はいない、間違いないか?」
「えぇ、ケンは、幼くして親が亡くなっています」
「そして、親戚の家に預けられ、そして行方不明になられました」
「そして、その行方不明は、どうやらその親戚に売られたみたいだ」
「くっ、下衆が!」
「ケン…」
「……」
「……」
「イサミ殿、シズク殿、カスミ殿、ツキミ殿、彼は、ケン殿とやらは、どんな方だったのだ?」
4人は話し始める。
「ケンは、私とシズクの3人で、幼少期を過ごしておりました」
「ケンは内気で、本が好きで、3歳の時に亡くなった父親の書庫でよく本を読んでいました」
「ですが、母親が亡くなられて、叔母に引き取られましたが、後に、自殺したと聞きました」
「自殺、だが、行方不明と…」
「自殺した場所に行きましたが、遺体がないんです」
「自殺の方法は刃物での自殺、しかも場所は森です。木や地面に血が、引きずられた跡ついていてもおかしくありません」
「ですが、無いんです」
「無い?」
「はい、数分で痕跡を消せる訳でもなし、だから行方不明なんです」
「なるほど、それで、カスミ殿は?」
「私も本が好きだった、私が本を読んでいる時、彼がいた」
「彼と本の話をしている時、弓を引いていた時が、凄く楽しかった」
「けど、行方不明って聞いた時、絶望したわ」
「…、そうか、ツキミ殿は?」
「私は、今は言いたくないかな〜」
「そうか、無理強いをさせてすまない」
「バイパー殿、続きを」
またバイパーが語り出す。
「アイツは数多の拷問から人間を捨て、喰種の道を選び、三年前までずっと戦っていた」
「が、『ヨーゼフ』が雇った者達によって、ケン・カネキの人生は終わった」
「ここからだ、ケンは生きていた。記憶を失ってはいたが、ヤツはまた『ヨーゼフ』によって研究された」
「そしてその一年後、ハイセはまた脱走した。他の喰種を喰らっていたケンの力を駆使し、研究所を脱走。そして半年前の事件により、ハイセは救われた。そしてハイセは、決まり事により、世にだした」
「以上だ」
ハイセの経歴を知った人々は、皆黙り込んでいた。
「そしてイサミ、シズク、カスミ、ツキミ、お前達はケン・カネキの名を呼ぶな」
「…、どうして?」
「至極もっとも簡単だ。ハイセは『ヨーゼフ』によって作り出せれた人格、ケン・カネキの人格は元に戻りたがっている。ケン・カネキが戻ったら、また暴走しかねない。だから控えろ」
「………、わかりました」
「それでいい、これで話は終わりだ。そして、この場にいる人達に告ぐ」
「お前たちもハイセを人間として扱え、いいな?」
その言葉に、全員が頷く。
「では、この話は終わりだ」
全員がどう思っているかは分からない、だけど、
皆、心に秘めている思いは、一緒だった。