ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地   作:赤土

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本編が難産なので番外編に逃げてます。
そしたらこっちはこっちで難産に。

……もうエイプリルフール合わせにしちまえと。
そしたら本編並に長くなっちゃいましたが。
もう少し短くするつもりでした。

なお、その本編では現在アンケート行っております。
よろしければご協力お願いします。
(もう結構経ってますけど……)


DX11. ホラ吹き凌馬

某日

ユグドラシルタワー

 

 

「…………光実(みつざね)

 

 

ロックシードの開発、クラックの調査のみならず

沢芽市に発生するインベスやアインストへの対応など、呉島貴虎(くれしまたかとら)戦極凌馬(せんごくりょうま)と言った

ユグドラシルのスタッフは日々の職務に忙殺されていた。

 

 

その中でも、実弟である光実にテロリスト容疑をかけられている貴虎は

目に見えて憔悴していた。 

 

弟の無実を証明すべく、その身を粉にして東奔西走していたのだ。

……物理的には、職務のために沢芽市はおろかユグドラシルタワーに軟禁状態であるために

ほぼほぼネットを介しての行動ではあったのだが。 

 

「貴虎。光実君の事は気がかりかもしれないが、それで君が倒れられでもしたら困る」

 

「……大丈夫だ、凌馬。光実の苦労を思えば、この程度は……」

 

珍しく他人を気遣う凌馬の台詞にも、貴虎は強がって見せているが

その言葉には明らかに力が足りていない。 

 

「ストップだ。もし今君が斬月の運用テストを控えている、と言う状態だったならば

 私は管理者権限でテストを中止するだろうね。それ位、今の君は消耗している」

 

「…………そうか」 

 

実際にアーマードライダーシステムを運用しているのは貴虎だが

そのシステムのコンディションなどを統括する立場である凌馬に強く言われては従う外ない。

無闇に意地を張るほど、貴虎も青二才ではないのだ。 

 

「そうだとも。そう言う訳だから受け取りたまえ。

 本来なら湊君あたりに頼むことだが、彼女も哨戒で忙しくてね」 

 

「ああ……すまんな」 

 

コーヒーの注がれたマグカップを、凌馬は貴虎に手渡す。

互いに激務の中の束の間の休息、と言えよう。

 

 

その束の間の休息の中、貴虎はふと疑問を口にしたのだ。 

 

「……そう言えば、だ。斬月にせよ、龍玄にせよ。

 これらの名前はどこから出てきたんだ?」

 

「あれ、前に言わなかったかい? ただの私の趣味だって」

 

「変身時のガイダンス音声はお前の趣味だってのは聞いたが、名前もそうだったか」

 

ただの個人的趣味。貴虎の質問に対し、アーマードライダーやロックシードの開発者である

凌馬は事も無げに答えた。

スペックは趣味の一言で片づけるにはすまない性能をしているが、それに伴う名前や

変身時に流れる音声ガイダンスは完全に彼の趣味であった。 

 

「まあね。ああ、因みに現状唯一我々の関係者以外が所持している

 ドリアンのアーマードライダー……ブラーボだがね。

 あれも私の趣味だ。なんとなくそう言うイメージが湧いたんだ」

 

「イメージ、か」

 

休息の最中の与太話。コーヒーを片手に凌馬の話に耳を傾ける貴虎。

自分の使っているアーマードライダーの名前と言う

真剣に語るべきでもない話題を凌馬に振っている。

傍からすれば荒唐無稽な話だが、その荒唐無稽を具現化できる。

戦極凌馬は、そうした人物の一人でもあった。 

 

「……で、斬月の名前の由来を知りたいって話だったね」

 

「ああ。だが休憩中の気晴らしの与太話だ。真に受けなくてもいいぞ」

 

「いや、寧ろよくぞ聞いてくれたよ貴虎!」

 

貴虎としては気分転換の話題の一つのつもりだったが、自分の開発品の事について聞かれたからか

凌馬はすこぶる上機嫌である。放っておいてもべらべらと早口大声で話し続けかねない程度には。 

 

「そう、あれは私が以前イギリスに旅行に行った時だった」

 

「イギリス? 斬月と言う名前の響きからは随分程遠い場所だな」

 

貴虎の言う通り、斬月はその名前、デザイン、ガイダンス音声など和風で統一されている。

それなのに、イギリスの話が出てくるとは一体。

貴虎はその時点で疑問に思わざるを得なかった。 

 

「そこでイギリスで起きた事件の文献を目にする機会があってね。 

 

 ……そう、それは十八世紀頃の出来事だったかな。

 今でも駒王町や珠閒瑠(すまる)市と言った場所で悪魔の目撃例は多数あるけれども

 それらはある人物によって炙り出された存在だ。

 尤も駒王町と珠閒瑠市の悪魔は、起源は別だけどね。 

 

 ……で、だ。その十八世紀のイギリスでも、悪魔による暗躍はあったそうなんだ。

 その時に、当時オランダ辺りを経由してやって来たのかな。

 ある一人の侍が、イギリスで暗躍していた悪魔を倒した――そう記されていた。

 その侍の名が……」

 

「読めたぞ。その侍に肖って名付けたんだな」

 

得心がいった様子で貴虎は断言するも、凌馬は薄ら笑いを浮かべている。

してやったり、といったようだ。

 

 

「…………だと言ったらどうする?」

 

「なに? 違うのか?」

 

「私がイギリスに旅行をしたのは本当だが、今話したのは公式な文献なんかじゃなく

 現地に伝わる御伽噺みたいなものだよ。忍者じゃなくて侍って辺りが

 イギリスもなかなか日本の侘び寂びを理解しているな、とは思ったがね。

 いくら私でも、大事なアーマードライダーの名前にどこの馬の骨とも知らない

 著者の寓話の登場人物の名前など付けないさ。 

 

 それに、そうだとしたら斬月は対悪魔を念頭に置いたアーマードライダーに仕上げている……

 そうは思わないかい? 貴虎」

 

「まあ、それも道理か。インベスを悪魔と解釈出来なくも無いだろうがな」

 

言い包められた感は無きにしも非ずだが、確かに戦極凌馬の

その自己主張や承認欲求の強さを鑑みれば、伝説や神話と言ったメジャーなものならともかく

どこの馬の骨ともわからないものを起源にするとは考えにくい。

貴虎の凌馬評は、そこに落ち着いていたのだ。

 

「悪魔対策と言えば。さっき話していた侍も、まさか地力で悪魔を倒したわけではあるまい。

 何かしら、悪魔に対し有効な武器……刀とかか。そう言うのを使ったんじゃないか?

 それを、アーマードライダーに応用してみてはどうだ」

 

「勿論、君に言われずとも既に対悪魔用のロックシードは研究しているさ。

 成果次第では、既存のロックシードにもフィードバックできるかもしれないね」

 

アーマードライダーシステム。それは、人類の叡智にして、自衛の手段の一つ。

戦極凌馬が作り上げたそれは、人ならざるものの脅威にも十分以上に立ち向かえた。

その彼の研究が成果をあげているこの現状。彼にとっては願ってもない状況であるとも言えた。

 

「そいつは頼もしいな」

 

「ああ、任せてくれたまえ」

 

そう自慢げに答える凌馬であったが、その口元には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

(……だが、その対悪魔のデータを仕入れるためには。

 光実君には悪いが、彼にモルモットになってもらうとしようか。

 何せ、今や彼が一番悪魔に近い位置に立っているからね。

 貴虎には、もう既にアインストの相手をしてもらっているんだ。

 今悪魔に喧嘩を売って敵を増やすこともない)

 

その成果のためには。友の弟でさえも売り渡すことを厭わない。

戦極凌馬。その実力や実績は本物であるが、人格はそれに比例しない。

 

その彼の目論見も、貴虎が知ることは無い。

知れば、反対するなり身代わりになるなりするだろうから。

 

「因みに、龍玄はどうなんだ?」

 

「ロックシンガーだよ」

 

「……お前、真面目に答える気が無いだろう」

 

「はっはっはっ、バレては仕方が無いな」

 

雑談に戻り、おどけた様子でけらけらと笑いながら答える凌馬。

その姿に、貴虎はただ嘆息するのみだ。とは言え、貴虎も真剣に尋ねたわけでもないので

そのおどけた様子を責めることは無いし

そもそも、凌馬は普段から大体こうだという事もおおよそ把握している。

 

「俺はてっきり、白を基調とした斬月に対し黒を意味する玄を取り入れたのかと思っていたが。

 防御に優れ、近接戦闘を得意とする斬月に、飛び道具を持ち後方支援に適した龍玄。

 見事に運用がかみ合っていると思ってな。

 俺の斬月はともかく、まさか龍玄を初めから光実が使う事を見越していたわけではあるまい?」

 

「当たり前だよ。光実君にアーマードライダーとして戦ってもらうなんて

 君が許さないだろうと思っていたからね。 

 

 ……だから意外だったよ。

 貴虎がこうもあっさり光実君がアーマードライダーになることを承諾したのは」

 

「光実自身に言われてはな。俺もあいつ自身が名乗り出る形でなかったのならば

 あいつがアーマードライダーになることを認めはしなかっただろうがな」

 

光実がアーマードライダーになろうとした理由。

それは、彼なりに変わろうとした結果だったのかもしれない。

学校生活にはお世辞にも馴染めているとはいえず

その延長線上でストリートギャングの遊びに参加し。

それをひた隠しにしながら、家では兄の手伝いをしている。

その中で、自分を失うまいと変わろうとした結果が

アーマードライダーという力だったのだろう。

 

「とは言え。本当は今でも反対しているんだろう?

 寧ろ、手元に置いておきたい……そう考えているんじゃないかい?」

 

「……否定はしない。だが、いつまでも俺の影に置いておいても、あいつのためにならない。

 そう思っていたんだがな……」

 

光実のためを思い、敢えて色々な経験を積ませるための一環として

ユグドラシルでの自身の手伝いや、駒王学園への交換留学を体験させていた。

 

ところが、結果はこれだ。

光実はテロリスト容疑をかけられ、駒王学園が行った七姉妹学園との合同学習会に参加した際には

その七姉妹学園がある珠閒瑠市で事件が起こり。

これらの事件が立て続けに起こった事で、貴虎も自責と後悔の念を覚えていたのだ。

 

「……そうだな。まるで、彼の行く先々で狙いすましたかのように事件が起きているようだ。

 この沢芽市だって、光実君が出た途端静かになった。

 ユグドラシルタワーと言う戦略的価値のあるものがあるにもかかわらず、だ」

 

「……タワーでは無いだろう。寧ろ、タワーの上にあるもの。

 それが、光実の……いや、我々人類に襲い来る試練の根源かもしれんぞ」

 

ユグドラシルタワーの上空に鎮座し、不気味に佇んでいる建造物――クロスゲート。

その存在はユグドラシルによって隠蔽されているが

そこから現れる存在――アインストに関しては、隠蔽しきれるものでは無い。

そのため、ユグドラシルはインベスの対応に加えて

アインストにも対応せざるを得ない状況になっているのだ。

 

「貴虎。アインストもインベスと同じく……いやそれ以上に厄介な

 『理由のない悪意』と言えるかもしれない。

 ……認めたくは無いが、今ある私達の力だけでは及ばないかもしれない。

 

 ……だからね、借りようと思うのだよ。悪魔の力を」

 

凌馬の提案。それは、貴虎にとっては驚くべきものであった。

神とは対面したことのある貴虎だが、悪魔の情勢については疎い。

その点、凌馬はこうは言っているものの、既に悪魔とのパイプは有しているのだ。

 

つまりこれは、事情を知るものからすれば「白々しい提案」なのである。

 

「――っ!? 正気か、凌馬!?」

 

「正気だとも。だからこそ、悪魔にも対応できるようなロックシードの研究をしていたんだ。

 悪魔の力を借りようとして、寝首を掻かれては笑い話にもならないからね。

 それに……悪魔と言うのは胸先三寸で契約不履行を行ったりするそうだ。

 我々が守るべきは人類の未来だからね。

 人類の未来を胸先三寸で決められてはたまったものでは無いよ」

 

「その人類の未来を守るのに、まさか悪魔の力を借りるとは……」

 

悪魔と言うものを光実からの報告程度でしか知らない貴虎は

凌馬の提案に関して「我々も堕ちるところまで堕ちたか」と思わざるを得ないものだった。

しかし凍結はしたものの、かつて人類の8割程を間引こうとした計画を立てていた手前

貴虎も「自分も似たようなものか……」と胸中で呟いたのだ。

 

「フッ、まあ悪いようにはしないさ。そんなわけで、私は暫くこの日本支部を留守にする。

 置いていくロックシードやドライバーについては好きに使ってくれたまえ」

 

「そうだ。ドライバーと言えば……ドライバーの紛失の件はどうなった?」

 

「流通を追ってみた結果わかったんだが、ディーラー連中の不始末だったよ。

 私の方から締め上げておいたから、貴虎が気に病むことは無いよ。

 警察にも私の方から伝えておいたよ。

 これ以上騒がれるのも、私の周りで警察にうろつかれるのも不愉快だからね」

 

これも凌馬はこう言っているが、ディーラーによるマフィアへの横流しを黙認している状態だ。

手を打つつもりなど、彼には毛頭なかったのだ。

質より量。それは戦極ドライバーの運用実験における凌馬の方針であった。

 

「そうか……悪魔の拠点にはいつ行くんだ?」

 

「今晩にでも発つさ。

 私の留守は湊君に任せるが、くれぐれも君も昔みたいに無茶をするんじゃないよ。

 朱月君に怒られたくはないのでね」

 

「……そうだな。体を壊して、あいつの仕事を増やすわけにもいかん」

 

家族も同然の使用人の顔を思い浮かべながら、貴虎はコーヒーを飲み終える。

そんな貴虎に挨拶を交わし、凌馬も部屋を後にする。

貴虎も、光実は気がかりではあるものの己の職務を蔑ろには出来ない。

ユグドラシルの主任と言う立場と言うよりは、沢芽市を護るアーマードライダーの筆頭格として。

 

アーマードライダー。

それは、ストリートギャングであるビートライダーズの用いる戦力となるはずだった。

だが今は、理由なき悪意に晒される沢芽市を護るための

ユグドラシルが運用する、自衛のための戦力。

それが、この世界におけるアーマードライダーの役割になりつつあった。

 

 

「――さて、と。すまないがもうしばらく私のホラ吹きに付き合ってもらうよ、貴虎。

 アジュカの推し進めている計画も、私にとっては渡りに船なんだ。

 

 …………君が凍結させた、あの計画を私流にアレンジさせて再開させるためにもね」

 

誰もいない廊下。

戦極凌馬は独りごちりながら、自身の研究室へとその足を向ける。

 

――研究室にある魔法陣から、アジュカ・ベルゼブブの下へと向かうために。

 

アジュカにとっては、祭典の来賓として親しい知己を呼んだに過ぎない。

しかし凌馬にとっては、自身の研究の進歩のための足掛かりに過ぎない。

 

貴虎と理想が食い違っているように、アジュカともまた求めているものは食い違っていたのだ。

それは悪魔と人間の違いによるものでは無い。

 

ただ、戦極凌馬と言う存在が良くも悪くも唯我独尊を自負していたが故なのだ。




以前感想欄でも言われたBloodstainedネタ。
開発経緯こそオカルト入ってますが、アーマードライダーの斬月は
あちらさんの斬月ほどオカルトじゃないです。空即是色もしません。
ネタを拾っただけなので、別に十八世紀のイギリスで当時のグレモリーが暴れたとか
そう言う話はありません。


実は今回、斬月の名前に関するネタやりたいがためだけなので、別にクロス要素取っ払えば
鎧武の二次創作としても成り立ちそうな話なんですよね……
一応友人としての接点は最後の最後まであったっぽいですし。貴虎と凌馬。
それを軽く上回るレベルで貴虎が(対人において)節穴で凌馬が性格クソだったわけですが。

ちなみに龍玄はToshl。この時点で貴虎にも「真面目に答える気が無い」と突っ込ませてます。


ミッチ。
実は彼も鎧武本編と比べると若干成長してます。アーマードライダーになることを兄に直談判したり。
それを貴虎が認可したのも鎧武本編考えるとあり得ない部分ではありますが。
メンタルにおいては鎧武本編より強いかもしれません。多分。
テロ容疑かけられていたり、珠閒瑠市の事件について触れられているので
今回の時系列は本編で言えばセージがシャドウと戦う少し前あたり。


凌馬。
実は書いてて楽しいタイプのキャラなんですが、整合性も考えるとなると
「ここでこれ以上貴虎にばらしはしないだろ」とか「いくらこいつでもそこまでは言うまい」とか
何気に制約かかる場面もしばしば。
あくまで「自分の研究」こそが最重要であるので、悪魔の力や研究も
「自分の研究を引き立てるための添え物」程度にしか見てません。
一応、貴虎に関しては割と本気で心配してますが。利害が不一致になったら容赦なく切るだけで。


貴虎。
実は「ミッチの自主性もある程度以上に重んじている」この一点において鎧武原作以上の存在になったかもしれない人。
まあ(ネタバレのため検閲)要素含んでますので。
しかし今回それが裏目に出て、結果として鎧武原作みたいなことに。
ミッチのために良かれと思ってした行動(駒王学園への交換留学)が結果として大事件に巻き込まれる羽目に……
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