ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地 作:赤土
ネタは浮かべど筆が進まず、身体的疲労と精神的不調が重なって
かなり間が開いてしまいました、すみません。
今回は年明け早々に起きた事件を受けて
「大変な時期だけど盛り上げていこう」と言うコンセプトで。
故に、ちょっと悪戦苦闘したかもしれませんが。
一時に比べれば避難所生活をしている人々は減ったものの
物理的に家が破壊されたり、アインストのミルトカイル石や
インベスのヘルヘイムの実などで汚染されているなど
帰宅困難になっている者も確実に存在している。
また、自宅に戻ることが出来たとしても
度重なる町内での戦闘行為等で心休まる暇は住人には無かった。
ここまでの事態になってしまっては、悪魔のお家芸とも言える記憶操作による
カバーストーリーを組み立てるにしても無理がある。
そもそも、既にフューラー演説によって怪異の存在は公に知れ渡っている。
最早、記憶操作など何の意味も成さない状況なのだ。
しかし、この有様を目の当たりにしても
それでも人々はこの絶望的な今を生きようとしていたのだった――
――――
某日、駒王警察所前避難所。
「……元気づけるための興業で、プロレスをやる……か」
眉間にしわを寄せながら、提案された意見を復唱しているのは
警視庁超特捜課課長、
彼は元々駒王警察署の所属では無いが、超特捜課が駒王警察署を拠点としている関係上
代表のような立ち位置となってしまったのだ。
「やるのは構わんが、設備とかどうするんだ。
言っとくが、俺ら超特捜課にそんな余裕は無いぞ」
「そこは俺達が何とかやります。警察の訓練施設の一角を使わせてもらえれば。
そう思って、提案したんですが……」
蔵王丸警部と交渉しているのは同じ超特捜課特別課員の宮本成二。
彼は駒王学園に籍を置いている都合上、特別課員として
超特捜課の治安維持出動に参加している形となっている。
ちなみに、プロレスの立案は彼ではない。
彼の中学時代の友人の一人にして、大那美高校の
レスリング部である彼のきっての希望により
興業と言う形でプロレスが行われることとなったのだ。
したがって、本当のプロレスラーが来るわけではない。
「……ま、いいだろう。だが成二、怪我人とか出すなよ?
俺達もプロレスのルールは知らねえから、レフェリーだって出来ねえ。
その辺もどうにかしなきゃ、興業にならねえだろ」
蔵王丸警部の指摘に、セージも黙り込む。
セージもまた、レフェリーが出来るほどプロレスには詳しくないのだ。
ついセージが頭を抱え込んでいると、どこからともなく声が響き渡った。
「そう言う事なら、俺に任せなさい」
「ん? ……ああ、お前さんか」
入って来たのは元教会の戦士にして、今は怪異絡みの事件によって
身寄りを無くした子供達を引き取っているNPO法人「
蔵王丸警部もまた、蒼穹会には顔が利くために、二人は顔見知りでもあった。
「お久しぶりです、蔵王丸さん。こっちに来たとは聞いていたんですが」
「お前こそ、結構やんちゃをしたって聞いてるぞ。駒王署の連中に迷惑かけてないだろうな?」
立場は異なれど、気心の知れた顔なじみと言った具合に言葉を交わす二人。
砕けた挨拶もそこそこに、慧介は本題を切り出す。
「話は聞かせてもらった。レスリングのレフェリーなら、俺に任せなさい。
めぐがプロレス好きでな、付き合っている間にルールを覚えてしまった」
そんな背景が、とセージが思いながらも事情に明るい者が携わるのは話が早い。
そう考えたセージは、早速慧介にレフェリーを頼むことにした。
「任せなさい。で、誰がリングに上がるんだ?」
リングに上がるのは頼牙とセージ。
普通に戦えばセージに軍配が上がるのは明白だが、これはプロレスだ。
実際の力量差云々よりも、どれほど派手で見栄えがするかの方が重要視される。
その点において、セージの戦闘スタイルはプロレス向きとは言い難い。
普段能力が明らかに上である悪魔やアインスト等を相手にしているため
どうしても堅実な立ち回りを要求されるのだ。
力と技でのぶつかり合いは、アモンの独壇場なのだ。
(俺が出てやろうか?)
(やめてくれ。頼牙を殺す気か)
当然、今回アモンを出すわけにはいかない。
デーモン族のアモンと、マグネタイトによる補強の全くない
正真正銘生身の人間の頼牙とでは、プロレスの知識以前の問題だ。
「それじゃ華に欠けるわねぇ。私達にも一枚噛ませてほしいにゃん」
頭を抱えていたセージの背後から、ぬるりと黒歌が絡んでくる。
黒歌もプロレスの知識は無い。はずなのだが。
しかし、その傍らには妹の白音もついている。こうなると、少し話は変わる。
「やっぱりみんな女子プロも観たいと思うのよ。レスラーなら当てがあるから大丈夫にゃん。
ね、白音」
「…………修行の一環、という事ですので」
修行の一環。彼女は現在、宮本家の近所にある四川料理屋「
そこの店主である
「
身体能力的にもリスキーである。矯正が難しいのならばと、悪魔の駒とは別のアプローチで
近接戦闘をこなせるようにしようと言う、黒歌の提案でもあった。
――店の制服でセージにちょっかいをかけさせようという入れ知恵もあるのだが。
「そういや拳法ならってるんでしたっけ。異種格闘技ってわけですか。
それなら構いませんけど、ドレスコードは加えさせてもらいますよ。
黒歌さんに任せたんじゃえらいことになりかねない」
「それはそれで需要があると思うんだけど……まあ、仕方ないにゃん」
ここは警察の管轄の敷地である。警察のお世話になりそうな興業は出来ない。
黒歌の普段の言動から過剰に心配したセージは、念入りに釘を刺す。
釘を刺されていなかったら実行に移したのか。
後でお蔵入りを見せるという黒歌。
つい想像してしまったセージは、頭を振りながら表に出さないようにして
黒歌に塩対応を返している。
「ところでドレスコードって、そんなにヤバいものなのか?
いや、場合によっちゃ許可を取り消さざるを得んからな」
「やらせませんよ。普通にジャージで……」
「そんな色気もへったくれも無い芋ジャージでやる女子プロレスなんて誰が見たいにゃん!?
それは断固として拒否するにゃん! 折角白音と合わせでコスチューム用意したってのに!」
「……それ今初めて聞いたんですけど。でも気になるので見せてください」
ジャージでのプロレスと聞いて、断固抗議する黒歌。
それでは確かにプロレスの興業と言うよりは、体育の授業である。
黒歌も白音も素材がいいので、それでもそれなりには見栄えはするだろうが
黒歌は一切納得しなかった。
白音も黒歌の用意したというコスチュームに興味があるのか、食いついている。
それじゃあ、という事で外に出て着替えてくることとなったのだ。
――――
「いえーい! やっぱ私の見立てに間違いは無かったにゃん!」
「……でもちょっと、恥ずかしいです」
白音が恥ずかしがる通り、そのコスチュームとは純白のレオタードにスカート状のフリルを拵えた
レスラーと言うよりもアイドルのようなコスチュームだったのだ。
女子プロでも可愛い路線とかだとあるのかもしれない、そういった類である。
「これは……いいのか?」
「あ、アイドルのコンサートみたいなもんだと思えば……」
「最近のアイドルはプロレスもするのか。
そりゃ聞いた話じゃ一次産業に手出してるアイドルもいるらしいがな」
セージも思わず蔵王丸警部や慧介と顔を見合わせ、アイドルのコンサート、という事で
各々納得することにした。
尚、その後黒歌が披露した自分の分だが、こちらは一昔どころか二昔前の
特撮の女幹部と言った趣で、今となってはパロディでこすられる程度にしか用いられない
デザインの、刺激的なコスチュームだった。
……こっちは男性陣三人でかなり揉めたが、
ちょっとだけ、子供番組制作における放送倫理会との兼ね合いで苦心する
番組製作陣の気持ちがわかったような気もしたセージであった。
尚、頼牙からの好評の意見は下心が見えすぎるという事で
あまり意見としては反映されなかったようだ。
――――
頼牙の思い付きから始まったプロレス興行だが、思いのほか好評を博した。
どれくらい好評だったかと言うと、今回の興業が本物のプロレス団体の耳に入り
そこの花形レスラーである「ニン肉マン」をはじめとしたレスラー達による
慰安も兼ねた興業の約束が取り付けられたのだ。
実際のところは以前から行われている興業の一環ではあるのだが
応援興業という事で、駒王町や沢芽市などにも訪れることが決まったのだ。
白音と黒歌の試合も、かなりの好評だった。
元々は白音の訓練の一環だったのだが、黒歌のマイブームにプロレスがあったらしく。
その点においても趣味と実益を兼ねたとのことである。
頼牙から手合わせを熱望されているが、これも軽くあしらわれてしまっている。
――その頼牙とセージの試合だが。
セージは頼牙の必殺の掌底を受けてからのパワーボムで沈んだ。
いくら打ち合わせた上での流れとは言え、セージの普段の戦いを知る者からすれば
呆気ない、と言う返答が返ってきてもおかしくない試合の内容であった。
「……セージ先輩、もうちょっとアモンに頼らない体技も鍛えた方がいいと思います」
「……俺もそう思う。と言うか、これでも
やっぱ付け焼刃か。この調子で凰蓮軍曹に再会したらまたどやされちまうし
今度特訓に付き合ってくれないか」
白音からの指摘にも、セージはぐうの音も出ない程に何も言い返せずにいた。
実際彼の戦闘スタイルは、直接前に出るよりは後方からの戦いの方が相性がいい。
と言うよりは、前に出て戦うことに関しては最近専らアモンに一任しているのだ。
実際正しいのだが、自衛も出来ない程となると話は変わってくる。
その事をセージも自覚しているのか、白音の指摘は素直に受け入れ
訓練の打診を返答としていた。白音もまた、この打診には二つ返事を返していた。
「布団の中じゃ中々の実力なのにねえ。
せっかくだしセージ、白音との特訓、布団の中でもやったらどうにゃん?」
「黙ってろ色ボケ猫」
――一方で黒歌の茶々には塩対応を返しているが。
「ん-、でも真面目な話。掌底打ちも気功を合わせたらすごい威力になるにゃん。
セージが喰らってよろめいてたと思うけど、あれ当たった瞬間に気を流し込んだら
普通にぶっ飛ばせる威力出せるわよ。顎とか狙ったら人型なら潰せるわね、多分」
「元々、掌底って力任せの技じゃないっすからね。
そりゃ力任せの派手な技もいっぱいあるっすけど、無理に仕掛ける技は自滅にも繋がるっすよ」
「……あ、それはなんとなくわかります。
師匠に教わったライトニングフィンガーも、掌底の発展形の技ですし」
頼牙の掌底も、白音さんのライトニングフィンガーも見た目以上の威力を出している。
ライトニングフィンガーは白音の気が発する光からいくらか派手にはなっているが。
力任せの技ではない、それはつまり仮に「戦車」時代にライトニングフィンガーを会得し
「戦車」の力でライトニングフィンガーを繰り出したとしても
技の威力にそこまでの変化はなかったかもしれない。
逆に言えば「戦車」時代と変わらぬ威力の技を繰り出せるという事で
ライトニングフィンガー、ないし十文字修司の流派「縦横不敗」は
今の白音と相性がいいと言える。
実際、「縦横不敗」の教えは
「自分自身もまた天然自然に生きる自然の一部。故に大自然に流れる気を己のものとし、
自身の気も大自然のそれと重ね合わせ、還元し、自らに活かすものとする」と言う
自然の中に存在する大いなる気の流れと一体化することで、身体の気の流れを活性化。
自然を、地球を愛し共に生きようとする十文字修司の考えに基づいている。
これは奇しくも、白音の弱点であった
「身体の気の許容量に対し白音が持つ気の量が多く、暴発しかねない」という
下手をすれば命にも関わる、致命的な弱点の克服にも繋がっていた。
白音の訓練と、セージの問題点の洗い出し。
そして何より、避難所生活を強いられる一般の人々への活力の供給。
それらをして、頼牙が発案したプロレスの興業は成功したと言えるだろう。
何気ない生活を送る一般の人々がいるからこそ、超特捜課も、セージ達も戦えるのだ。
本編では謎()のレスラー、マスク・ザ・ハチワレとカムカム・ミケとして活動している
黒歌と白音。
何でそうなったのかと言う補足も兼ねて。
時系列は特に考えてませんが、一応珠閒瑠市行く前のどこか、です。
>伊草慧介
何気に久々登場のなg……伊草さん。
嫁さんの元ネタキャラもプロレス好きそうなイメージが。
拙作では嫁に付き合ってるうちにプロレスのルール(お約束)を覚えてしまった。
頭の固さ的に台本ありきなプロレスの戦いは苦手そうだけど。
>山田頼牙
セージの中学時代の級友の一人。現在は大那美高校のレスリング部。
名前の由来はリバプールの風、と言えばお分かりかと思います。
彼も永井豪由来ですし。そう言えばファイヤーからサンダーにパワーアップしたのは
あるプロレスラーの名前が「山田」だったからでしょうか。
音読みしたらサンダーになりますし。多分関係ないか。
黒歌がプロレスにハマったのは彼の持ってるマンガ「ニン肉マン」のせい。
>ニン肉マン
元ネタは言わずと知れたアレ。
なんかザ・ニンジャあたりと混じっちゃったデザインしてそう。
この世界にはキン肉マン達超人はいないので、興業している彼らは
マンガのキャラクターを基にしたプロレスラー。
よって2世で出てきたインチキ超人レスラーとかではなく
正真正銘ガチのプロレスラー。ただキャラクターを売り出しているだけで。