ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地   作:赤土

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SINSOU氏のifからインスピレーションを受けて。
最近やけに筆のノリがいい、躁状態? 怖いなぁ。

(あの赤頭巾の正体があの人だってことを今更知った……)


If. 皆殺しのスペクター

「何故だ……どうして、どうしてこんな事――」

 

言い終える前に、光が少年の身体を貫く。

その光は、悪魔祓いが使う光の剣と同じものだった。

しかし、その力は強化されている。

とても、一介の転生悪魔で耐えられる代物ではない。

 

少年は聖魔剣を取り落とし、無数に現れた光の剣に貫かれ

血まみれになって倒れている。

 

駒王学園・旧校舎。

人払いの結界が張られたここは、吐き気を催す様な錆びた鉄の匂いが漂っていた。

金髪の華奢な半吸血鬼の少年は、両目から血を流し地に伏し。

 

 

同じく小柄な銀髪の少女は、両手足に物凄い痣を作り

トレードマークともいえる黒猫の髪飾りは無残にも砕け散っている。

 

 

かつては紅髪の少女の腹心として働いていた巫女装束の黒髪の少女は

その腹部を巨大な槍で貫かれ、そこに雷が落ちたかのように

元の美貌が残らないほど黒焦げに炭化していた。

 

 

……地獄絵図。

それこそが、この情景に相応しい言葉であった。

 

 

「木場! ギャスパー! 小猫ちゃん! 朱乃さん!!

 なんだよ……何なんだよ貴様ぁぁぁぁ!!

 

 俺達は、俺達は仲間じゃ――」

 

「……五月蠅い」

 

左手に赤い籠手を填めた少年の顔面に、マゼンタ色の右ストレートが綺麗に入る。

そこに一切の手加減は無く、吹っ飛ばされた少年は背中から勢いよく結界にぶつかり

背中に火傷を負う。

 

「イッセー! あ、あなた……これは一体何のつもりなの!?」

 

「俺が求めているものとお前達が与えるものが一切合切噛み合ってない。

 俺は悪魔には疎いが、こういうやり方をするのが悪魔なのか?

 

 だったら、俺は俺のために悪魔を倒す。目の前の悪魔をな。

 その上で俺は俺の目的を果たす。力に溺れたというならそうだろう。

 

 ……だがな、俺は一度はお前を信じて待ったんだ。

 それを最初に裏切ったのは……誰だろうな?」

 

左手に翳したデバイスからカードを引き抜くと、右手には巨大なカタールらしき武器が顕現する。

そこには聖なるオーラが含まれており、聖剣に類する武器の一種であると類推される。

 

「フッ、デュランダルの偽物を使ったところで、私には――」

 

「偽物? 本物も偽物もあるかよ。悪魔祓いが悪魔になるとか何の冗談だよ。

 何に釣られたんだよ? 物欲か? 色欲か? 権力か?

 まぁそんなのはどうでもいい。俺の邪魔をするなら……

 

 ……押せよ、『ディフェンダー』!!」

 

ディフェンダーと呼ばれた幅広のカタールと

青髪に緑のメッシュが入った少女の持つデュランダル(巨大な剣)がぶつかり合うが

カタールはデュランダルを弾き飛ばし、そのまま少女の身体を横薙ぎにする。

 

一閃。少女は崩れ落ち、そのまま立ち上がらなくなってしまう。

 

「ゼノヴィアぁぁぁっ!!」

 

神の消滅を知り、自暴自棄となって悪魔に下った少女は呆気なく地に伏した。

デュランダルの偽物とは言え、ディフェンダーにも聖なる力はあったのだ。

それで斬られれば、悪魔がタダで済むわけがない。

 

「……アーシアを真っ先にやられたのは痛いわね。

 向こうは回復持ち、これではじり貧よ」

 

「大丈夫っす部長! まだ俺が居ます!

 やられたみんなのためにも……俺は……俺はあいつを……

 

 ……ぶっ殺してやる!!」

 

赤い籠手の少年は赤い鎧に身を包み、真っ向から突っ込んでくるが

その目前で、修道服の少女が立ちはだかるように進路を阻害する。

 

「!? あ、アーシア……」

 

「隙だらけだ」

 

その隙を突き、カードから新しい武器を召喚していた少年は

鎧の隙間に特殊な銃弾を撃ち込む。刹那、赤い鎧の関節部分からは血が噴き出し

鎧は内側から砕け散るように爆散してしまう。

 

立ちはだかった修道女も、瞳孔は開いており額からは赤い筋が縦に流れ落ちている。

当然、何も言うことなく笑いかけることも無く、物言わぬ骸となって

赤い鎧を纏っていた少年の傍らに崩れ落ちる。

修道女は、少年が生やした触手を使って生きて動いているように錯覚させる形で

骸を利用されたのだ。

 

「ああああああああああああああああああ!!」

 

「五月蠅い、って言った」

 

修道服の少女と同じ位置に赤い筋が垂れるように銃弾を撃ち込まれたのは

彼の情けかどうかは図り知ることは出来ないが

少年もまた、物言わぬ骸となってしまう。

 

地獄絵図を彩る死体は、一つ、また一つと増えていく。

 

「……どうして、どうしてこんな事をするの!?

 私を狙えばよかったものを、他のみんなは関係ないでしょう!?」

 

「無いわけがないだろう。ここに転がっているのは皆お前の駒だ。

 言うなればお前の一部。俺の意見を分からせるためには必要な事だった。

 

 ……どいつもこいつも『部長は正しい』『部長は信用できる』『部長さんなら大丈夫です』

 壊れたスピーカーみたいな事しか言わなかったけどな」

 

腹立たしそうに少年は硝煙立ち込める銃を握りながら言う。

その言葉は、ただ一人意見を異にする彼にしてみれば耳障りな事この上なかったのだ。

 

「たった、たったそれだけのためにみんなを殺したの!?

 あなたも、あなたも同じ私の眷属なのよ!?」

 

「それだ。その物言いが気に入らん。俺は俺だ。

 いつお前の所有物になった。誰が所有物にしてくれと言った?

 そうしなければ助からなかった? 試したのか? え?」

 

紅髪の少女と少年の言い合いは平行線だ。

今のままでは何も手に入らないから、自由を求め旅立とうとした少年。

自分が何とかする、自分に出来る精一杯をと考えはしたものの力及ばず

彼の求めないものを与え続けようとした少女。

 

そう。契約は成り立たなかったのだ。

 

「契約不履行? 不信任? なんだっていい。

 今の俺に必要なものは、俺の本当の身体と、自由だ。

 それを阻むものはたとえ神だろうと、悪魔だろうと逆らってみせる」

 

「分かったわ。なら私も全力であなたに応えてみせる。

 紅髪の滅殺姫と呼ばれた、このリア――」

 

次の瞬間、少女の頭が破裂した。

少年が、少女の口に銃口を突っ込み、銀弾を発射したのだ。

次の瞬間、少年の身体から何かが抜け出ていくのが見える。

 

そして、そこに転がっていた数々の骸からも、チェスの駒らしきものが抜け出て、砕け散る。

 

――――

 

数週間後。

 

「おはよう! セージ!」

 

「ああ、おはよう……って昼だけどな。

 ったく、俺も早く学校に行きたいぜ……ってお前ら、悪さしてないよな?」

 

駒王総合病院の病室。そこにあるベッドには駒王学園の旧校舎前で少女を銃で射殺した少年がいた。

あの後、彼の身体はこうして病院で目覚め、何事も無かったかのように

目を覚まし、今は検査入院の真っ最中だ。

 

そこに、クラスメートである松田と元浜がやってきた形だ。

 

「悪さはしてねぇけど……」

 

「イッセーの奴が、最近学校に来ないんだ。あと木場に小猫ちゃん、朱乃先輩にリアス先輩……

 それからアーシアちゃん、ゼノヴィアさん……要するに、オカ研の面子がこぞって来ないんだ」

 

「……祟りにでもあったか?」

 

少年が冗談めいて言うが、オカルト研究部と言うその名前が

それを冗談には聞こえなくさせているらしく、二人は震え上がる。

 

「じょっ、冗談言うなよ!」

 

「あーあ、でもイッセーや木場はともかく女の子がこぞって来なくなったもんだから

 火が消えたみたいでさ……平和って言えば、平和なんだけどよ」

 

「良いじゃないか。平和こそが一番だ」

 

しみじみと、とても少年には思えないような貫禄を持たせて少年がベッドの上で語る。

 

 

駒王町。それは悪魔に支配されていた町。

 

しかしある日、その支配者は謎の失踪。謎の変死事件は相次いでいるものの

駒王警察署超特捜課の活躍により縮小傾向にある。

 

時を同じくして、駒王学園における性犯罪がぱたりと無くなったとも言うが

その件に関する関連性は、未だ謎に包まれている。

 

――――

 

一方、冥界。

 

「……人間風情が。このままでは済まさん……!!」

 

「ちょ、ちょっとサーゼクスちゃん。ソーナちゃんもいるんだからあんまり早まった真似は……」

 

「うるさいっ! こっちはリアスとその眷属を軒並み失っているんだ!

 一人の元はぐれ悪魔の仕業でな! この恨み、はらさでおくべきか……!!」

 

冥界に、紅髪の暴君が誕生した瞬間でもあった。

人類と悪魔の共存の日は、まだまだ遠い……




彼の場合、冷静に、本気で殺すときはあっさりです。
あと、使えるものは何でも使います。それこそ死体でさえも。
え? レイナーレ? あれは……カッとなってやったって事で……

本編見た後だと意外と別の道を歩んでいる人多いなぁ、とか思っていたり。


時系列的にはディケイドもといフリッケンが加入した直後……
……つまり、レーティングゲームに乗っからず、ガチで反逆したもしもの世界。
因みにこの世界は割と原作準拠。ゼノヴィアが眷属だったり
木場や小猫との条約が締結されてなかったり。

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