ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地   作:赤土

24 / 41
凄く……凄くご無沙汰しております。

ドライブから始まった物語はゴースト、エグゼイドを経て
ビルド、果てはジオウに辿り着いてしまいましたが
更新再開です。

それでも、まだ定期更新とはいかない状況であることをお許しください。


Case4. セージは今、免許を取っている

駒王学園二年生にして警視庁超常事件特命捜査課(ちょうじょうじけんとくめいそうさか)の特別課員である宮本成二(みやもとせいじ)

様々な出来事を経て警視庁・超特捜課の所属になった……のはいいのだが

ここで一つ大きな問題が発生してしまった。

 

――――

 

それは数日前にさかのぼる。

超特捜課は駒王町にてテロ活動を行う禍の団(カオス・ブリゲート)を自衛隊らと協力して撃退する立場にある。

この日も、禍の団が動いていると言う通報を受け超特捜課は出動していたのだ。

いわば、超常事件や超常の存在に対する特殊捜査係ともいえるのが超特捜課であり

セージも神器(セイクリッド・ギア)を所有している事や紆余曲折を経て超特捜課と行動を共にしている。

 

『セージ、追撃するぞ!』

 

「分かった!」

 

PROMOTION-KNIGHT!!

 

禍の団の英雄派に所属するフューラー・アドルフが派兵した部隊の追撃のために

セージは昇格(プロモーション)のカードを使い騎士(ナイト)に昇格。

紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)に宿る意識体、紫紅帝龍(ジェノシス・ドラゴン)フリッケンが変形したバイク

マシンキャバリアーを使い敵を追い詰めて勝利するのだった。

 

なお、紫紅帝の龍魂は神器ではないし紫紅帝龍フリッケンは

龍の名を冠しているがドラゴンではない。

これに関しては、これまた複雑な経緯を有している。

 

ともあれ、セージは自身にある力を活用して駒王町を

ひいては日本国を脅かすテロ組織の追撃を行いそれが勝利に繋がったのだ。

 

……ところが。

 

「セージ君。そのバイクは排気量どれだけです?」

 

「…………えっ」

 

同行していた巡査、氷上涼(ひかみりょう)が発した何気ない一言。

マシンキャバリアーはセージが持っている原付免許で運転できる代物ではない。

幾らフリッケンのサポートがあるとは言え、本来ならば運転すらできない代物なのだ。

 

『……すまんセージ、うっかりしていた』

 

「冥界と同じノリで扱った俺も迂闊だった……」

 

落ち込むセージに、追い打ちをかけるように交通課に所属していた事もある

氷川と同じく巡査の霧島詩子(きりしまうたこ)が声をかける。

 

「冥界ならともかく、ここは日本。確かあなたの免許は原付免許。

 そのバイクはどう見ても原付じゃなさそうだから……無免許ね。

 これは超特捜課のメンバーにあるまじき行為ね」

 

「そ、それは……」

 

『おい姉ちゃんよ! あそこはあのマシンを使わなきゃ追い付けなかった場面だろうが!

 これだから人間は面倒臭いんだよ、こういう時のルールがな』

 

霧島の容赦無い言葉に返す言葉を失うセージ。

ひょんなことからセージに憑依している冥界の勇者、悪魔アモンが庇いたてるが

霧島の言葉には説得力があり過ぎて唯々頷き返す事しか出来なかったのだ。

 

「……フリッケン、リミッターはかけられるか?」

 

『出来るがお前、原付のスピードでフューラーの部隊とかに太刀打ちできると思うか?

 二輪ならいざ知らず』

 

「出来ない」

 

原付で太刀打ちできるとは、セージどころかこの場にいる誰もが思っていないことだろう。

思わず即答したセージだったが、人間界で高機動力を誇るマシンでもある

マシンキャバリアーが使えないのは痛い。

しかしセージに二輪免許は無い。ならばどうするか。答えは一つであった。

 

――――

 

「……と言うわけで、今日から駒王運転免許試験場で各種試験を受けてください。これ書類です。

 バイクの免許と神器は関係ないって言えればいいんですけど、形だけでも必要ですからね。

 乗り物型だと車両登録とかそう言う事も含めて手続きいりますからね。

 あ、車両登録とかの諸々は免許さえ取ってもらえれば後は我々でやっておきますので」

 

「やっぱそうなりますよね」

 

駒王警察署から少し離れたところにある、駒王運転免許試験場。

ここでセージは免許取得に向けて試験を受けていた。

既に原付免許を取っているとはいえ、普通二輪とはまるで話が違う。

 

ところで実はこの試験、超特捜課の装備開発を行っているギルバート・マキ博士も協力している。

何故、とはセージも思ったがなんでも試作中の

「デーモンサーチャー」と呼ばれる装置の実験のためらしい。

デーモンサーチャー。その名の通り悪魔を探知する装置であり

市井に紛れ込んだ悪魔を探り当てるための装置らしい。

これは「悪魔憑き」に対しては悪魔の影響が強く出ているほど反応を強く示すため

今回の試験に際してセージがアモンの力を借りたドーピングをしないようにすると言う名目上

この装置のテストも兼ねているようだ。

 

『面倒臭いものを作りやがったものだな、人間も』

 

「俺に言わせればそうでもないさ。これが実用化されれば

 人間社会に紛れ込んだ悪魔を効率よく炙り出せる。

 そうすれば、誤認で無関係な人が巻き込まれることも無くなると俺は見ている。

 

 ……研究が進めば、天使だって炙り出せるかもな。前に薮田(やぶた)先生が話していたんだが

 『天使も悪魔も結局は同じ存在』だってな。

 グレモリー先輩辺りが聞いたら卒倒しそうだけどな」

 

『そっちはどうでもいいけどよ、何も今回テストしなくてもいいだろうがよ』

 

「……この試験、俺の将来のためも考えてるんだ。

 普通免許の方が就職には有利かもしれないけどな。

 お前が表に出ている状態で免許を取れるかどうかは

 後で打診してみるから少し大人しくしててくれ」

 

セージはセージで、今回の試験を将来のためと考えている節があった。

人間としてこれからもこの世界で生きていくからには、人間のルールに従わなければならない。

逆に言えば、そのルールさえ守れればアモンも人間界で生きていくことは可能なはずなのだ。

本人が首を縦に振るかどうかは別として。

セージは人間として、人間のルールを守るために

こうして今回の試験を受けることに名乗り出たのだ。

 

――――

 

自動二輪車の操縦は原付とはわけが違う。

セージも原付は通学やら何やらで乗り回していたが、自動二輪を誰のサポートも受けずに乗るのは

今回が初めてである。アモンはもとより、フリッケンもセージの意向に従い今回は静観だ。

 

『おい、ちょっとやべぇんじゃねぇのか』

 

『黙ってろアモン』

 

実際、力のかかり方が原付のそれとは比べ物にならない。

挙動自体は原付の応用で出来るものの、かかる力は原付よりもはるかに大きい。

そのせいか、セージも苦戦しているようである。

 

しかし今回の試験は、特別措置が取られていた。

セージは初めその特別措置を辞退しようとしたが、交通課と超特捜課の双方から

「日にちをかけてでも受かるまで繰り返す、ただしなるべく速やかに。

 経費はこっちで何とかするから」

と言われてしまったのだ。

 

事実、セージはすんなりと合格どころか、未だ合格ラインにすら立てていない。

ブレーキが間に合わなかったり、S字をうまく曲がり切れなかったりと

原付とは違う自動二輪の力に苦戦していたのだ。

 

「……少し休憩にしましょう」

 

試験官の言葉に従い、休息を取る事になる。

既に日は頂点を少し過ぎたところだが、状況は改善されていない。

セージはあの事件を迎える前から、運動神経はそこまで優れていたわけではない。

駒王番長などと呼ばれちょっとした有名人にはなっていたものの

それも腕っぷしではなく外見と機転のお陰である。

原付だって辛うじて運転出来た程度だ。

それなのにかつて兵藤一誠を原付の後ろに乗せて堕天使からの逃走劇を演じられたのは

単に火事場の何とやらのお陰であろう。

 

『おいセージ。こんなんで本当に大丈夫なのか?』

 

「やるしかないだろう。俺としても今回の話には乗り気なんだ」

 

アモンの言葉に、セージは嘆息しながら答える。

セージ自身としてもこの状況を改善したいとは思っている物の、どうにもならない状況なのだ。

今までの戦いのように神器やアモンの力を使うわけにはいかない。

と言うより、それが平和な人間社会での生き方だろう。

過ぎた力はそれ自体が脅威となる。肩身が狭い思いをしなければならないとは言っても

郷に入りては郷に従え、と言う言葉もあるのだ。守るべきものは守らなければならない。

 

『面倒な話だな。俺に代われば一発合格間違いなしだってのによ』

 

「それはズルだろう」

 

アモンの力を使えば、バイクの操縦も簡単に出来るだろう。

フリッケンもマシンキャバリアーの操縦の際にアシストしてもらっているが

今回はそう言う用途では使えない。

アモンと同じ理由では無く、フリッケンを憑依させると言う用途はそもそも出来ないのだ。

セージがそれによって不自由を感じた事は無いが。

そして試験に使っているバイクも当然マシンキャバリアーでは無いため

フリッケンのアシストはどちらにせよ出来ない形だ。

 

一息ついているところに、警報が鳴り響く。

禍の団による攻撃のようだ。

 

「すみません! すぐ戻ります!」

 

まだバイクの使えないセージは、原付に跨り現場へと急行するのだった。

 

――――

 

超特捜課で装備開発を行っているギルバート・マキ博士に託された

デーモンサーチャーを原付に装着、稼働させながらセージは原付で現場に向かって移動していた。

反応は悪魔が三体。それ以外の反応は無い。

と言うより、まだ試作品であるこれは悪魔にしか反応しない。

悪魔憑きであるセージを含めると四体だが、移動中はアモンの力を使っていないため

セージから発せられる悪魔の反応は弱い。よって、機械に出た反応は三体分である。

禍の団に所属している悪魔か、そうでないかまではわからない分

セージが元来持っている神器である記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)のRADARのカードよりは精度は劣る。

 

だがデーモンサーチャーの肝は量産化である。

一般流通させると言う意味ではコストを抑える必要がある。

その為にそう言った細かい精度までは犠牲になっている。

そう言う意味ではセージの能力との棲み分けは成されている。

決して必要のない発明ではないのだ。

それ故に、性能テストのためにセージも自前のレーダーではなく

デーモンサーチャーを使い悪魔の所在をモニターしているのだ。

 

(悪魔って事は、グレモリー眷属かはぐれ悪魔のインベス、あるいは旧魔王派ってところか。

 数的にグレモリー眷属っぽいな、これは。シトリー眷属は冥界待機状態だし

 インベスや旧魔王派は少数精鋭じゃない。

 魔王本人が出て来たんなら話は変わってくるだろうが……

 

 俺みたいに戦うためにデーモンサーチャーを活用する場合

 相手の所属とかが分からないのは不便だな。

 逃げるのに活用する場合は相手の位置が分かればいいから然程問題ないだろうが)

 

セージの読み通り、現場には既に木場祐斗や姫島朱乃、ギャスパー・ヴラディと言った

リアス・グレモリーの眷属がフューラーの部隊と交戦していた。

聖槍騎士団はいない。異能封じの聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の複製品を持つ彼女らが居たら

聖槍一本で封じられる神器や異能、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)に頼って戦っている

リアス眷属がまともに戦えるはずがないのだから。

 

『雑魚の小競り合いって所だな。どうするセージ? 無視も出来なくは無いと思うが』

 

「いや、仕留める。戦火が飛び火したら折角復興しつつある町に被害が出るからな。

 それに、朱乃先輩やギャスパーは兎も角祐斗をスルー出来るほど薄情じゃない。

 

 と、言う訳で――狙い撃つ!」

 

DIVIDE!!

 

BOOST!!

 

DOUBLE-DRAW!!

 

 

 

GUN-RADAR!!

 

 

 

SOLID-SNIPER RIFLE!!

 

セージは離れた位置から、記録再生大図鑑と紫紅帝の龍魂を使いスナイパーライフルを実体化させ

一体ずつフューラーの兵士たちを撃ち抜いていった。

アモンの力を使うなりして自分が直接殴り込めば混戦状態に陥る。

そうなれば勝てたとしても周辺に出る被害が大きい。

その為、足止めを祐斗達にやらせる形にして

セージは一体ずつ確実に敵を潰していく手段を選んだのだ。

セージが加勢したことで、膠着状態だった戦況は一気に祐斗達に傾いた。

 

「これは……あらあらセージ君。ご無沙汰してますわね」

 

「どうも……って後ろだ!」

 

セージに振り向いて目の笑っていない愛想笑いを振りまいた朱乃の背後から

フューラーの兵士が銃剣を手に襲い掛かる。

そのまま朱乃を突き刺さんとしたが、その刃は居合わせた祐斗によって

届くことなく斬り捨てられた。

 

「Sieg... Rei... ch...」

 

「『帝国に勝利を』……か。今更だけど彼らはオーフィスでも他の英雄派でもなく

 フューラーにしか従っていないみたいだね。

 それよりセージ君。助けてもらっておいて言うのもなんだけどさ……

 

 ……腕、鈍ってない?」

 

「うっ……そ、そうか? そりゃ確かに最近は戦闘にはあまり出ずに

 免許の取得にかまけていたが」

 

祐斗の指摘もある意味的確であった。セージの参戦が原付での移動であったことを差し引いても

遅かったのもあるし、確実性を重視したとはいえ

フューラーの兵士を片付けるのに時間がかかっていたのも事実。

極めつけは、討ち漏らしによってあわや朱乃が致命傷を受けかねなかったことだ。

 

『言われてみれば、この所戦闘らしい戦闘には出ていなかったな。

 まぁ、俺は半分わざとだと思っていたが。

 戦闘なら、死者が出る事なんて珍しくもなんともない。

 それにかこつけて、あの口煩いグレモリーの女王を始末するつもりなのか、とな』

 

(……アモン。冗談が過ぎるぞ。俺は確かにグレモリー先輩や姫島先輩

 それに兵藤なんかとは関わり合いになりたくないが

 だからって「死んでいい」とまでは思ってない……それは兵藤も一応な。

 向こうの縄張りだけで大人しくしている分には、俺だって一々突っかかったりはしない)

 

『だが今回が禍の団を始めとした俺達の敵の中でも単純な戦闘力だけに特化していた

 フューラーの兵士で良かったぞ。これがアインストやインベスだったら

 戦火の飛び火による被害は二次関数的に広がるぞ』

 

自らの能力によって眷属や同類を増やす能力を持っている異界の怪物、アインスト。

そしてドラゴンアップルに巣食う害虫とも呼ばれる

異界の怪物でもあり小動物の妖怪が変異した存在でもあるインベス。

戦闘に巻き込まれることは即ち逃げ遅れた人々が

アインストないしインベスへと変異してしまう恐れがあるほか

地形もミルトカイル石やドラゴンアップルによって汚染されてしまい

除染の手間が増えてしまう。

ここ最近の駒王町は、ようやくそう言った汚染の除去が進んできたところなのだ。

 

(確かにな。そう言う意味でもこっちでもマシンキャバリアーを

 早く使えるようになりたいところだが……)

 

「ところでセージ君、免許の取得ってどういうことだい?」

 

祐斗の質問に対し、セージは今自分が置かれている状況を説明する。

これからの戦いのためにも、セージのマシンは役に立つ。

それを人間界でも活用できるようにするため、免許をとろうとしている最中なのだと。

 

因みに、ギャスパーはセージが怖いのか既に逃げ帰ってしまっている。

この辺り、セージが初めに会った頃よりも大幅に悪化しているようではあるが。

 

「なるほどね。それは確かに戦っているどころじゃないね。

 となると、暫くは僕らで町の防衛にあたるべきかな?」

 

「町の防衛なら、リアスも苦い顔はしないでしょうけれど……

 セージ君をこのまま野放しにしておくと言うのも、それもそれで問題がありますからねぇ」

 

(……信用されてないな。当たり前か)

 

過去、セージは幾度となくかつての主であるリアスに対し牙を剥いた。

今までは同じオカルト研究部と言う括りの中にいたためリアスもある程度

セージの動向を観察できていた部分はあるが、既にセージはオカ研を退部している。

その為、リアスは使い魔を通してセージを観察していたのだった。

尤も今回、朱乃達がセージに遭遇したのは全くの偶然なのだが。

 

『おい嬢ちゃん。野放しにしなかったらどうなんだ?

 言っとくが、お前達に一度勝っているのはセージを通じて知っているんだからな』

 

(煽るなアモン。勝ったって言ってもあれはレーティングゲームの会場だからできた戦法だ。

 町中で被害を出さずに姫島先輩らを倒す戦法なんざ立てられない。

 と言うか、関わり合いになりたくないって言ってるそばから戦うってどういう事なんだよ)

 

「……とにかくそう言う訳だ。今回も免許の試験を抜けてきた形なんだ。

 町の防衛は、免許が取れるまでそっちにも頼みたいんだが。

 

 ん? と言うか、クロスゲートの監視は兎も角町の防衛はそこまで躍起になる事なのか?

 ああいや、今回は……いや今回『も』、か。

 お陰で助かったからあまり悪し様に言う気も無いが

 超特捜課ともめ事だけは起こさないようにして欲しいとだけ、な」

 

「勿論、そっちも行いますわよ?

 けれど、過ごしてきた町をいいようにされて黙っていられるほど

 私達も薄情じゃありませんわ。セージ君ならわかっていただけると思ってましたのに。

 警察に対しては、私達、『善意の協力者』と言う事で通してありますもの」

 

「僕としても問題ないかな。超特捜課の人達も戦ってくれているみたいだし。

 セージ君の言わんとすることもわかるけれど、先輩の言う通りにやっている感じかな」

 

少々わざとらしく(と、セージには見えた)振る舞う朱乃をよそに、祐斗もセージの提案に乗る。

駒王協定の締結と共にリアスの駒王町に対する権限の一切は失われている。

その為、駒王町の庇護は既にリアスやその眷属らの職務とは一切関係ないことなのだが

理由をつけてリアス達は今なお町のパトロールを行っていた。

 

「知ってると思うけれど、今のオカ研は人手不足なのよ。誰かさんのせいで。

 それとも、リアスに頼んで免許……原付は持っているみたいですから二輪かしら。

 それを取得できるように頼んでみるのも一つの手ではないかしら?

 確かに駒王町の支配権は無くなったけれど、悪魔の力を使えばーー」

 

朱乃が喋り終えるより少し前に、セージが物凄い目つきで朱乃を睨んでいた。

朱乃が語っていた事は、セージの理想とは真逆のものであったからだ。

 

セージにとって、二輪免許の取得は将来も見据えた大事なもの。

決して戦いのためだけの取得ではないのだ。

そして、人間としてこの世界で生きるからには、人間の敷いたルールには従わなければならない。

そこに悪魔の力や権力を介在させるような事は

セージにとっては許しがたい人間への冒涜だったのだ。

セージの表情を見て察した祐斗が、朱乃にそっと耳打ちをしている。

 

「……い、言ってみただけですわ」

 

「口は禍の元、言わなくてもお判りでしょう姫島先輩。

 確かに俺は神器の力、フリッケンの力、アモンの力を使っちゃいますが

 バイク免許取得に関しては一切力を行使しておりませんので。

 それじゃ、俺は試験があるのでこれで」

 

一頻り話し終えると、セージは原付に跨って来た道を引き返していった。

その背中を、祐斗と朱乃は黙って見送っていた。

 

「……セージ君なりのけじめのつけ方なのかもしれませんね。

 今まで部長は、いや僕らは悪魔の力で好き放題やり過ぎた。

 今やそれはそれより強い力や悪意で押しつぶされ、それが罷り通らなくなった。

 

 いや、或いはそもそも間違っていたのかもしれませんね」

 

祐斗の言葉を、朱乃は黙って聞いているのだった……

 

――――

 

「お待たせしてすみません、試験を再開しましょう」

 

原付で試験場に戻ったセージは、再びバイクに跨り免許取得まで

試験場のコースで二輪の運転に明け暮れる。

その成果が出るのは、そう遠くない話であろう……

 

その間、痺れを切らしたアモンがあわや飛び出そうとしたり

うっかり紫紅帝の龍魂の力を使いそうになったのはまた別の話。




おまけ

セージが無事二輪免許を獲得して少し後

「はい駒王運転免許試験場……って宮本君、もう免許は取ったはずじゃ……」

『違う、俺だ』

名前:アモン
職業:ソロモン72柱序列7位
住所:駒王町○○-××

『これで俺も免許が取れる。そうなればセージにもでかい顔はさせねぇし
 人間社会でも動きやすくなるからな』

――――

タイトルと言いおまけと言い元ネタは仮面ライダードライブの
(後の展開を考えると笑えるけど涙ものの)チェイス免許取得回でした。

帝王切開どころか死産しかねないほどの難産(と言うかほぼ死産かもしれませんが)
で結局間が開いた部分をメタネタで埋めると言う反則技を使って形にしました。

Q:木場がセージに対して「腕がなまった」って言ってるけど
  そんなにセージ戦線離脱してた?

A:投稿日時がかなり空いたことに対するメタネタも含んでます……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。