ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地   作:赤土

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筆が乗るぞ投下早い話進まねぇ
(タドルクエストLv2のリズムで)

今回は北欧と沢芽が舞台です。
大幅な(?)設定変更がありますのでご注意ください。
北欧が舞台、とある点でお察しかと思いますが
この「課外授業のプルガトリオ」は原作7巻からの時系列になります。


アンケートについて。
ご協力ありがとうございました。
開始から一週間も経っていない状況ですので
次回投稿分まで期限を延ばしたいと思います。
(実は今回少し長くなったので分割した事情もあったり)


Case6. 来日! 世界樹が繋ぐ北欧の主神

沢芽(ざわめ)市。

世界をまたにかける医療・福祉系の大企業、ユグドラシル・コーポレーションの支社があり

さる風車の街の巨大風車タワーをも彷彿とさせる塔のようなオフィスビル

 

――実際ユグドラシルタワーと呼ばれる塔なのだが――

 

を構え、沢芽市の発展に多大な貢献を果たしたのだ。

 

――――

 

さて、このユグドラシルと言う名前であるが。

北欧神話に登場する世界樹と同一の名前であり

実際企業のロゴマークはスペルの「YGGDRASILL」のAの部分が巨大な広葉樹となっている。

明らかに、北欧神話のそれを意識していると言えよう。

 

ユグドラシル・コーポレーションの情報は、既に「実在する」北欧神話勢力にも届いていた。

当然、主神オーディンは興味津々で会社見学のために訪日のプランを立てていた……

 

のだが。

 

「……オーディンよ。『世界樹(ユグドラシル)』の名を冠しているとはいえ人間のやる事だろう。

 人間が我ら神々やその縁のものに肖って名をつけるなど今に始まった事でもあるまい。

 態々、御身自ら出向く必要は無いと思うのだがな。そうでなくとも貴殿は……」

 

「ほっほっほ、そうは言うがのロキよ。

 かの企業は既に地球規模に成長しておるそうではないか。

 同じ名を冠する樹を擁する者としては、ちょいと視察してみたくなったのじゃよ」

 

黒いローブを纏った美青年――ロキの進言に対し、隻眼の老人――オーディンは

国際規模にまで発展したユグドラシル・コーポレーションの実情や手腕をこの目で見たい、と

固く譲ろうとしなかった。傍から見れば、頑固爺のそれである。

 

と言うのも、このオーディンと言う神。途轍もなく知識に対し貪欲であり好奇心旺盛なのだ。

その為、興味深い事象が発生しようものなら様々な理由をつけて現地に赴いている。

本人曰く「フィールドワーク」との事なのだが、如何せんオーディンは北欧神話における主神。

主神自らが幾度となく地方に飛び出ては、他の神々や秘書官とも言うべき

専属のヴァルキリーを振り回しているのだ。

ロキと話している時でさえ、前回赴いたフィールドワークの成果を纏め編集

さらにその結果からあらゆる予想を立てては楽しんでいたのだ。

傍から見ればいい歳の老人であるため、とても元気な老人と言うよりほかない。

……神々に外見年齢の概念などあってないようなものではあるが。

 

「そうじゃロキ。お主『クロスゲート』と言うものに聞き覚えは無いか?

 昨今ギリシャや日本の神仏のトレンドらしいのじゃが。

 わしは……ううむ、聞いたことがあるような、無いような……年かのう……」

 

「ありませぬな。少なくともこの北欧に起源をもつ物に、そのような名前は……」

 

「ほっほっほ。ロキよ、名前だけに囚われていては大事なものを見落とすぞ?

 わしとてオーディンと呼ばれているが、ハールバルズ、グリームニル、そしてウォーダン。

 これら全て、わしを指す名前じゃ。つまりこの北欧の地にも

 『クロスゲート』と言う名前ではなく、他の名前で伝わっておるかもしれんしのう」

 

唐突にクロスゲートの話を始めたオーディンに、ロキは嘆息する。

このオーディンと言う神、度々フィールドワークに出ている事から類推されるように

奔放なのだ。

 

「まぁそれもあるのじゃよ。日本に赴けば、クロスゲートについて何かわかるかもしれんしのう。

 だからわしはユグドラシルの日本支社を見学してみたいのじゃよ。

 と言うわけで暫く留守にするぞい。ロスヴァイセ、ついてまいれ!」

 

「はっ!」

 

フィールドワークと言うには少々前衛的なファッションであるつばの広い帽子に

黒いローブを纏い、付き人として銀髪のヴァルキリー、ロスヴァイセが付くこととなった。

……彼女こそが、その「オーディンのフィールドワークに振り回されているヴァルキリー」

その人なのだが。

 

ヤルダバオトが薮田直人(やぶたなおと)として、大日如来が天道寛(てんどうひろ)として行っているような

人間としてお忍びで日本に向かう方法は、現在日本がテロの影響で

空路・海路共に封鎖されているため転移の術で直接沢芽市に飛ぶこととなった。

この転移の術、悪魔などが使う魔法陣転移と遜色のない移動方法であり

こうした超常の存在にとっては割とメジャーな移動方法である……のだが

術者が目的地について正しい知識が無かったり、術者の魔力や霊力と言った超常の力が無ければ

移動は正しく行われない。

 

今回の場合、沢芽市が元々巨大なご神木を有し霊的な力の強い場所……だったのだが

そのご神木のあった場所には事もあろうにユグドラシルタワーが建ってしまっており

現在の沢芽市は昔ほど霊力の強い場所ではなくなっている。

幾らオーディンと言えども、行った事のない、見た事のないものの知識は有していない。

つまり、移動が成功するかどうかは博打の要素が含まれている――と誰もが思っていた。

最初に気付いたロキは、わざと黙っていたようだが。

 

「オーディン様。その目的地である

 ユグドラシル・コーポレーションとやらの場所は御存じなのですか?」

 

「心配ないわい。きちんと受付にこの時間に見学訪問をすると言うアポを取っておる。

 後は目的地のある沢芽市という場所に出れば大丈夫じゃろ。

 聞けば、世界樹の如き一番でかい塔を擁しておるそうじゃからな」

 

そのどこかいい加減な方針に、ロスヴァイセは頭を抱える。

実際、オーディンの移動やフィールドワークには「行き当たりばったり」な部分が少なくない。

その為、周囲の神々や主な付き人であるロスヴァイセは苦労しているのだ。

 

(オーディン様の付き人って言うから出世コースかと思ったら……

 これじゃまるで地方巡業じゃない……ヴァルキリーってなんなのかしら……

 私、就職先間違えたかな……

 おばあちゃんみたいな立派なヴァルキリーになりたかったのに……)

 

付き人は付き人で、とても俗っぽい悩みを抱えながら転移の術は作動したのだった。

そんな様子を、面白くなさそうにロキは見やっていた。

 

「……やれやれ。じいさんの趣味にも困ったものだ。

 これでも噂に聞く三大勢力……特に冥界の醜聞よりはマシって言うんだから酷いものだな。

 にもかかわらず、アレらはさも世界が自分達を中心に回っていると錯覚している。

 オーディンもアレに毒されちゃいないとは思いたいが……」

 

吐き捨てながら、オーディンの机の上に無造作に置かれたレポートに目を向けるロキ。

そのレポートには、今までのフィールドワークで得た知識や実際に見て回ったもの

果ては欧州の神々との対話で得た知識も含まれていた。

その中には、ギリシャの冥府神ハーデスと対話した時の議事録もあった。

 

「この几帳面な議事録はラダマンティス……ハーデスか。

 あの苦労神も面倒な兄を持ったものだな。

 ヘルの奴が『ハーデスの愚痴が煩い』と零していたな。

 あれも三大勢力に苦汁をなめさせられているクチか。

 

 ふむ……なるほど、オーディンはここでクロスゲートの情報を得たのか……

 ……む? これは……」

 

ロキの目が留まった先には、クロスゲートから現れる怪物――アインストの生態と

ドラゴンアップルの果実によって変異した姿が記されていた。

ドラゴンアップルによるアインストの変異の情報は、恐らく日本神話から得た情報であろうが。

 

「アインスト……『かつて』を指す異界の怪物、か。

 それよりもこれは……ニブルヘイム――ヘルヘイムにある果実に似ているな。

 さしずめ『ヘルヘイムの果実』と言ったところか。しかし何故ヘルヘイムの果実が

 異界のアインストに変異を齎すのだ?

 

 ……これは、我もクロスゲートに赴いてみる必要があるやもしれんな」

 

ドラゴンアップル。地上では絶滅し、現在は冥界でのみ栽培されているとされる植物。

しかし、それはドラゴンアップルの害虫と呼ばれる存在――インベスによって

生態系が塗り替えられてしまった。

しかし、インベスはニブルヘイムには生息していない。

それなのに、ニブルヘイムにはドラゴンアップルとほぼ同一の形状の果実がなっている。

不可解なピースのつぎはぎを前に、ロキもクロスゲートに対する認識を改めざるを得なくなった。

 

――――

 

沢芽市。

 

何とか沢芽駅に転移成功したオーディンとロスヴァイセであったが

案の定、ここに来る前に何度か転移を繰り返していたのだ。

 

塔繋がりで誤ってユグドラシルタワーではなく風車のある街に転移してしまい

再転移を試みるまでオーディンが呑気に観光を始めてしまいロスヴァイセをやきもきさせ

 

その次に転移した先では外界と隔離された上に氷漬けにされ

3つの塔に囲まれた学園のど真ん中に飛んでしまう事態が発生し

さらに時間軸まで10年以上狂っていた事から

「クロスゲートの仕業じゃな」と納得するオーディンをよそに

ロスヴァイセは時間移動なんて転移術でも出来ない行為を目の当たりにして

発する言葉が暫く訛り続け

 

挙句の果てには時間軸は正常に戻り、塔のある場所に転移するも

塔は塔でも塔を中心に広大な壁で日本が三分割された世界に飛んでしまい

オーディンは「これもクロスゲートの影響かのう」と一人納得していたが

ロスヴァイセは事前情報で仕入れていた日本の有様と全く違う風景や立て続けの転移失敗に

「わざとやっとるべか!?」と興奮しっぱなしであった。

 

なお3つ目の転移先でオーディンはさる天才物理学者と意気投合したとかしなかったとか。

 

「いやぁ、いい収穫があったわい。あのウサギと戦車のボトルは

 今度わしらのところでも作ってみるとするかのう」

 

「オーディン様。ユグドラシル・コーポレーションに向かうのではなかったのですか!?」

 

「そうかっかするでないわロスヴァイセ。

 得られる時にはしっかりと得る。これは知識に限らずじゃ。

 それにわしがアポロンから聞いたクロスゲートの特徴では

 クロスゲートによる転移はかなり不安定らしいからのう。

 そもそも、他世界移動なんて貴重な経験じゃろ。

 神性を持つ者でもそうそうできる事では無いわい」

 

そんなつかみどころのない、飄々とした好々爺を演じているオーディンであったが

一つ気掛かりなことがあった。

 

(ロスヴァイセにはああ言ったが……

 日本の話ではクロスゲートは動いてないと言う事じゃったな。

 それに、わしらが転移術を展開した際に周囲にクロスゲートらしき建造物は無かったわい。

 勿論本当に転移失敗したとも考えられるが……

 だとすると2回目と3回目の転移の特徴が説明できん。

 2回目は時間移動、3回目はおそらく別次元の日本に飛んでしまったと見るべきじゃろうな。

 そして軌道修正に成功した4回目。何者かの意図を感じないわけでも無いがのう……)

 

転移術は基本的に同一の時間軸、同一の世界線の中でしか転移できない。

冥界や天界は特殊な交通手段ではあるものの、転移のみでしか移動できない場所では無い。

しかし、今しがたのオーディンたちの転移は時間移動に世界線移動まで行ってしまっているのだ。

それが可能になるのは、クロスゲートを置いて他にない。

或いは、レーティングゲームのフィールド展開の際の事故が可能性としては挙げられるが

それに関してオーディンに冥界からの説明は何もなされていない。

 

……それが起こり得るのが冥界の恐ろしい所なのだが。

 

「と・に・か・く! 先方に連絡したところ迎えを寄越してくれるとの事ですので

 こちらで待機していましょう! はい!」

 

「だからそうかっかするでないわ。力を抑えて人間にしか見えぬように偽装して居るとは言え

 大声を上げれば注目を浴びてしまうぞ?」

 

オーディンの指摘に、赤面し黙り込むロスヴァイセ。

沢芽市は過去の珠閒瑠(すまる)市や現在進行形の駒王町と異なり

超常の存在に免疫が無い。少なくとも一般市民は。

その為、背中から生えた翼などの悪目立ちするものが無ければ傍から見れば二人とも人間である。

恰好も、二人とも風車の街で仕入れたと思しきスーツにいつの間にか着替えている。

WINDSCALE、の刺繍がおしゃれなフォーマルな場に相応しい恰好である。

 

――――

 

駅の待合室で二人が待っていると、黒いスーツを着た青年が声をかける。

その後ろには何人かの人を連れており、中には高校生と思しき者もいた。

 

「本日我がユグドラシル・コーポレーションの会社見学をされると仰った方ですね?

 私、ユグドラシル・コーポレーション研究部門主任の呉島貴虎(くれしまたかとら)と申します。

 ノルウェーからの長旅、お疲れ様でした。ご案内いたしますので、こちらにどうぞ」

 

「ノルウェーの小企業、スカンディナビア社のハールバルズじゃ。

 これはわしの秘書を務めるロスヴァイセ。貴虎、よろしく頼むぞい」

 

握手を交わすオーディンと貴虎。

 

ハールバルズはオーディンの別名の一つだが

スカンディナビア社はオーディンがでっち上げた架空の企業である。

なにせ日本にある企業に「東アジア株式会社」などと名付ける様なものである。

オーディン、などとバカ正直に人間社会で本名を名乗っても相当浮いた名前ととられるし

ましてや北欧神話体系からやって来た、などと他神話体系相手ならばともかく

人間社会相手にバカ正直に話すのも信憑性に欠ける。

 

……と言うのが、フューラー演説までの定説だったのだが。

 

(オーディン様、よろしいのですか? こちらの人や先方を騙す様な物言いは……)

 

(わしらはあのフューラーでは無いんじゃ。神々は神々。人々は人々。

 ヴァルハラに誘うならばいざ知らず、既に大昔、彼らの先祖に知恵も授けた以上

 神々たるわしらが必要以上に干渉すべきでは無いし

 人の世の営みを学びこそすれ、営みに口を挟むのは違うと思うのじゃよ)

 

ヴァルハラに誘う、と言う単語にロスヴァイセが反応するが

ここにいるのは大企業とは言え平和な人間社会の中で生きる青年に

まだ高校生くらいの少年。ロスヴァイセの目に入った二人ではあったが

あまりにもヴァルハラには似つかわしくない。

 

(幾らなんでもないわよねー……いつになったらヴァルキリーらしい事ができるのかしら)

 

ため息を漏らすロスヴァイセに気付いた貴虎が、心配そうに声をかける。

 

「ロスヴァイセさん、でしたか。日本の空気はそちらのお体には合いませんか?」

 

「あ、い、いえ! そんなことはありません!」

 

ため息が漏れていた事に赤面し、慌てて取り繕うロスヴァイセ。

そんな様をオーディンは苦笑しながら眺めていた。

 

「すまんの貴虎。こやつ、真面目は真面目なんじゃが、肩肘を張り過ぎるきらいがあっての。

 ここに来るまでに根詰めておったようじゃから、その疲れが出たのじゃろうて」

 

(誰のせいでこうなったと思ってるのよ!!)

 

「そうでしたか。そちらのご都合さえ宜しければ、今日は宿泊施設を手配致しますので

 そちらでお休みいただいて、明日ゆっくりわが社の見学をされると言うのは如何でしょうか?」

 

オーディンの言っている事はある意味正しいが、ロスヴァイセが心の中で思っている

「誰のせいでこうなったか」もある意味正しい。

何せ、ここに来るまでに4回も転移しているのだ。

それだけでもいくらオーディン専属とは言え経験の浅いロスヴァイセには

心労がかかると言うものであった。その様子には気づいていなかったのか

あるいは早く話を進めて休んでもらおうと言う心づもりなのか

貴虎はてきぱきと話を進めていた。

 

「そうじゃの。わしらとて日帰りの旅のつもりでも無いし、そうさせてもらおうかの」

 

「畏まりました。光実(みつざね)。この近くの一番いいホテルの部屋が空いているかどうか

 すぐに確認するんだ」

 

「わかりました、兄さ――呉島主任」

 

距離を置き、タブレットを操作して検索を始める光実と呼ばれた少年。

「兄さん」、と言いかけた事から貴虎の弟であることは想像に難くない。

 

「弟かの? わしは気にせんから、兄と呼ばせてやってもいいと思うんじゃがの」

 

「……そうは参りません。光実も私も、ユグドラシル・コーポレーションを、そこにある人々を

 背負って立たなければならない者です。

 人の上に立つ者が、己が身内を感情だけで贔屓することなど、どうしてできましょう」

 

真っ直ぐな瞳でオーディンに語る貴虎を前に、オーディンは髭を撫でながら

ぽつりとつぶやいた。

 

「『ノブレス・オブリージュ』……か。志は認めるが、呑まれるでないぞ。

 

 ……おっとすまんすまん、年を取ると説教臭くなっていかんのう。忘れてくれ」

 

大笑いするオーディンをよそに、貴虎は静かに頷いている。

オーディン自身は「年寄りの戯言」と言っているが

貴虎にしてみれば、とても重い言葉なのであった。

 

ノブレス・オブリージュ。高貴なるものには義務が伴う、といった意味のフランス語。

貴虎はこれを幼いころから父である呉島天樹(あまぎ)に聞かされて育ち

言葉だけではなく振舞いもそうあるようにしてきた、つもりである。

今の弟である光実の言動にも、その片鱗が見え隠れしている。

 

「主任。ホテルの手配が出来ました」

 

「ご苦労。ではハールバルズ様、ロスヴァイセさん、こちらにどうぞ。

 光実、案内を」

 

貴虎の指示に従い、光実がオーディンとロスヴァイセをエスコートする。

向かった先は駅前の高級ホテル。フロントで手続きを済ませ

ロビーにいる二人に鍵が手渡される。

 

「ハールバルズ様はこちらの、ロスヴァイセさんはこちらのお部屋になります。

 では明日9時にこちらまでお迎えに参りますので

 どうかごゆっくり」

 

一礼し、貴虎は光実と配下を伴ってホテルを後にする。

緊張していたのか、ロスヴァイセがひときわ大きなため息を吐く。

 

「情けないぞいロスヴァイセ。その程度で音を上げるなどと」

 

「お言葉ですがオーディン様、4回も転移すればこうもなります。

 それに最初は兎も角、2回目は寒くて寒くて凍えそうなうえに

 原初の悪魔まで徘徊しているような場所でしたし

 3回目は戦乱の真っただ中、思わずヴァルハラにスカウトしようかと思ったくらいですよ。

 4人ほど不思議な鎧を纏って戦っている人たちが居ましたからね。

 祖母ならばヴァルハラにスカウトする契約を立てたのかもしれませんが」

 

「ふむ。たしかにちと強行軍がすぎたのう。じゃが本番は明日じゃぞ。

 じゃから今日は休んでおれ。わしは折角じゃからちと沢芽市を見て回る」

 

見た目こそ老齢であるが、その行動力は見た目に全くそぐわないものであった。

オーディンは「一人で大丈夫」と言わんばかりの行動だが

ロスヴァイセにしてみればそうもいかない。それに、こんな事は今に始まった事ではないのだ。

 

「……いえ、御相伴に与ります」

 

「そうか? ならばついてまいれ……と言いたい所じゃが

 お主も疲れておるようじゃしの。駅前をぶらりと回る程度にして

 そうじゃな……疲れているのならば甘いものじゃ。

 この辺りで有名な『シャルモン』と言う洋菓子店があるらしい。

 まずはそこへ参るとしようかの」

 

シャルモン、と聞いたロスヴァイセの目の色が変わった。

ここに来る前、同僚ヴァルキリーと他愛もない雑談を交わしていたロスヴァイセだったが

「沢芽のシャルモンと言う洋菓子店がおいしいらしい」とか

「シャルモンの店主は超一流のパティシエ、フランスで修行するためだけに

 フランス軍に従軍したと言う、どっちがメインだかわからない経歴の持ち主」だとか

そう言う噂が流れており

「会った事は無いけれど、ヴァルハラに誘ったらおいしいスイーツ食べられるかも」とか

俗っぽい意見も流れていた。

そうした経緯から、沢芽に来たらシャルモンだけは一度行きたいと思っていたのだ。

 

掌を返したようなロスヴァイセの態度に「現金な奴め」と苦笑しながらも

二人はシャルモンへ向けて歩き出すのだった。




オーディン。
今回かなり改変加えました。wiki読んでも、私の記憶の限りでも
HSDD原作のような「ドスケベ爺」と言った記述が無いんですよね。
(いや、それ相応に女性と関係を持った記述はあるけれどこの程度は……)
代わりに「知識欲の塊」と言った記述があったので
今回「アグレッシブなフィールドワーク大好きじいちゃん」になりました。


ロスヴァイセ
今回触れてませんが、20代前半設定にしてあります。
その根拠は以下の通り。フィクションに突っ込むのも野暮なんですけど。
・10代で教職ってどうなのよ。ギリギリで教職免許は持ってそうですけど。
・アルコール入った=未成年者飲酒(普通に犯罪です)。
この改変加えたのは警察との絡みが大きい拙作の都合でもあり
二輪取るのに苦心したセージに対する配慮であったり
彼女のキャラクター造詣に説得力を持たせるための改変であったり(主観)。

漸く出てこれたと思ったら原作とどっこいな残念(俗物)っぷり。
出世を気にしたりシャルモンのスイーツに釣られたり。
何気に異世界移動を体験した数少ない人物。
拙作では他にはセージ(「ゴースト」第4章後半部分参照)位なもの。

転移術
とりあえず拙作独自設定ではありますが。
詳しい転移の顛末は下記に。

最初の転移
仮面ライダーWより風都。
ちゃっかり風都タワー登ったりWINDSCALEで買い物したりしてました。

2回目の転移
女神異聞録ペルソナより聖エルミン学園(雪の女王編)。
隔離されたはずのエルミンに転移するあたり転移術自体は高性能。
因みに拙作時系列では雪の女王編と地続きであるセベク編である
「セベク・スキャンダル」が起きてる設定ですので、普通に過去に転移してます。
転移術でも時間移動は不可能です。

3回目の転移
仮面ライダービルドよりパンドラタワー。
時系列的にはマジヤベーイ時期に転移しちゃってます。
エボルト大活躍って時期に飛んじゃってますからね……
4人の不思議な鎧、は言わずもがな戦兎、万丈、カズミン、げんとくん。
拙作とてスカイウォールの惨劇は起きてないので普通に異世界に転移してます。

呉島家
貴虎は原作同様ユグドラシルの主任。
光実はそんな貴虎の秘書的存在。勉強も兼ねて貴虎自ら指導している形。
実は父親である天樹も存命です。

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