ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地   作:赤土

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思った以上に長くなってしまった沢芽編。
次々回あたりで次の舞台に移りたいところなんですが……

艦これ
秋刀魚12匹目。
このペースなら今年は大漁旗取れる……か?




Case8. 天災発明家の邂逅

沢芽(ざわめ)市・オーディン達が宿泊しているホテル。

 

沢芽市のビートライダーズの一組、チーム魍魎と駒王町からやって来た

虹川楽団ことチームプリズムリバーのダンス(?)バトルは

チーム魍魎が途中でドラゴンアップルの害虫――インベスを召喚したことで有耶無耶となり

そのさなか、虹川姉妹の次女・芽留(める)がインベスの攻撃を受け毒に感染してしまう。

 

その治療のため、オーディンは本国から医療に長けたヴァルキリー・エイルを召喚。

芽留の治療にあたらせていた。

治療は無事に終了し、現在オーディン達の部屋を特別に虹川姉妹に貸し与え

オーディン達はホテルのロビーに集まっていた。

 

「峠は越えたようです。後は暫く安静にして様子を見ましょう。

 

 ……オーディン様、少し宜しいですか?」

 

芽留の治療にあたり、ドラゴンアップルの成分を分析し

それを基に解毒剤を精製したエイルだったが

そもそもドラゴンアップルは冥界にしか生息しないとされている物であったはずである。

それを、何故北欧のエイルが成分を知ることが出来たのか。

そこまでは、オーディンも踏み込んでいなかったのだ。

 

「ロキ様からお聞きになっておりませんか?

 ドラゴンアップルとは、我が領地ニブルヘイム

 ――ヘルヘイムに生息する果実に酷似した植物なのです。

 悪魔達はあれがあたかも自分達の特産品であると謳っている事もありますが……

 まぁ、あれで一儲けしようなどと言う輩はニブルヘイムにはいないようですが。

 

 副作用については私も前々から耳にはしていましたが、こうして現物を目の当たりにすると

 中々にえぐいものがありますね。だからこそ、血清を調合して持参してきましたが……

 幽霊に血清と言うのも、よくよく考えなくても変な話ですね」

 

エイルは、ロキから――より正しくは彼の娘ヘルからだが――ニブルヘイムに

ドラゴンアップル、ないしその亜種が生息していると言う話を聞いていた。

それは、植物の生育条件を無視してドラゴンアップルを生育させるインベスの毒に対して

抗体や血清を調合できると言う事を意味している。

そのお陰で、こうして芽留は一命を取り留めたのだった。

一命と言うか、既に死して幽霊の身ではあるが。

 

「今回の結果を受け止めた上で、一度ロキ様ともお話されてみてはいかがでしょうか。

 では、私は本国でやることがありますのでこれにて」

 

ロキとも対話をし、北欧神話としての意見をまとめ上げた上で

ひとまず対処法が見つかりそうなインベスに関しては情報を世界に発信できるのではないか。

エイルは今回の件からそれが可能だと考え、オーディンに意見具申をした。

その決断を下すのはオーディンではあるが、エイルの発言はインベスに悩まされている地域――

特に駒王町にとっては、吉報に他ならないものであろう。

仕事を終え、本国での内乱による傷病者への対応のために転移魔法陣を使い帰国するエイルを

オーディンは静かに見守っていた。

 

「……ぬかったの。灯台下暗しと言う奴か。まさかニブルヘイムとインベスに繋がりがあったとは

 思わなんだ……いや、待て。そもそも、インベスは何処からやって来たのじゃ?

 あんな感染力や行動範囲の広い生物が北欧に生息して居れば、わしとていくらなんでも気づく。

 それに、先ほどの妖怪の若造ども。彼らは錠前のようなものからインベスを呼び出しておった。

 

 ……ロスヴァイセ! ロスヴァイセはおるか!」

 

オーディンが自身の従者であるロスヴァイセを呼びつける。

彼女は先ほどまでインベスをけしかけた張本人、チーム魍魎の妖怪達から話を聞いていたのだ。

事情聴取も一段落していた事もあり、彼女はオーディンの招集に応じる。

 

「はっ。先程、インベスを召喚した妖怪から事情聴取を終えたところです。

 どうやら、一部のビートライダーズにはある程度のインベスを召喚する装置――

 彼らは『ロックシード』と呼んでいるそうですが。それが行き渡っているようです」

 

「なんじゃと? インベスの危険度を知らぬと見えるな。

 ……いや、この沢芽市が特別平和ボケしているだけかもしれんのう。

 聞けば、駒王町と言う町ではインベスによる被害も少なくないようじゃしの」

 

「……どうも、錠前ディーラーのシドと言う人物から購入ないし提供されたとの事でした。

 ただ、その者がどこからロックシードを調達したのか、までは分からないそうです」

 

若者たちに出回るロックシードと言うインベスを使役する危険物。

それはどう考えても、過ぎたる力である。

ビートライダーズの大半は、世間に対し不満を抱きそれをダンスで昇華させているに過ぎない。

そんな精神状態の者達が、インベスと言う過ぎた力を手に入れればどうなるか。

オーディンが最悪の想像をするのに、時間はかからなかった。

 

「ロスヴァイセよ。先刻の彼ら……ビートライダーズは

 カラーギャングのようなものじゃと言ったな?

 となれば、彼らは社会への欲求不満をダンスで発散させておるようなものじゃろ。

 彼らがダンスに打ち込む理由、わしにはそう聞こえたぞい……となれば、じゃ。

 

 ……ダンス以外に欲求不満をより直接的に発散できる手段があれば

 そっちに飛びつくのは道理ではないかの?」

 

「はぁ……まぁ確かにそうだと思いますが。

 

 ……ま、まさかオーディン様! ダンスと言う行動は欲望で言えば代償機制である昇華。

 それをインベスと言う力を手に入れた事で

 より直接的な暴力と言う攻撃機制に転換されてしまう……

 そう仰りたいのですか!?」

 

オーディンの危惧した事。

それは、ビートライダーズがインベスと言う力を手に入れて

ちょっとした暴徒になるのではないか、と言う懸念であった。

 

既にフューラー演説による不安の種は全世界に広がり、そこから内乱が始まっている。

禍の団のテロ活動など、それをちょっと後押しした程度のものだ。

結局、人間が人間同士で自分の首を絞めている。

海を超えた向こう側の国では、そんな光景が日常に混ざりつつある状態なのだ。

 

「……ロスヴァイセよ。わしはこの沢芽に来て良い事も悪い事も知ることが出来た。

 確かに、わしらの影響の及ぶ地域を蔑ろに……しているつもりは無いのじゃが

 おぬしやロキにはそう見えるのかもしれんの。

 じゃが、こうして北欧の国以外――それも比較的内乱と言う意味では平和なはずの日本でさえ

 暴動の種が蒔かれようとしておる。わしはその芽を刈り取りたい。

 その為にも、明日のユグドラシルの会社見学は何があっても決行するぞい。

 あの呉島貴虎と言う若者は兎も角、あのユグドラシルの成長とインベス……

 いや、もっと言えばロックシードには何らかの因果関係がある。わしはそう睨んでおる」

 

オーディンが明日の会社見学への決意表明をしたところで、さっきまでロスヴァイセに

事情聴取と言う名の説教を受け絞られていたチーム魍魎の妖怪達。

彼らが、オーディンに対し名乗りを上げたのだ。

 

「あの……異国の神様と知らず、無礼を働き申し訳ありませんでした!」

 

「謝る相手が違うぞい。謝るなら、あの娘に謝るべきじゃ。

 まぁ、今回はわしも非公式な訪問じゃからな。わしに対する礼儀で

 とやかく言うつもりは毛頭ないわい」

 

「今考えたんですけど、彼女たちの提案を受けることと

 もう一つ、知っておいて欲しいことがあるんです」

 

チーム魍魎の語る「知っておいて欲しい事」に、オーディンとロスヴァイセは耳を傾ける。

それは「全てのビートライダーズがロックシードを受け取ったわけではない」と言う事であった。

 

「『チーム鎧武(がいむ)』、『チームレイドワイルド』、『チームインヴィット』

 俺らが知ってる上位チームのうち、彼らはロックシードとインベスに

 否定的な立場をとっているんです」

 

「だから、俺らはさっきの彼女達――『チームプリズムリバー』と組んで

 さっき話したチームに働きかけてビートライダーズによるインベスゲーム

 ……ああ、俺らの間じゃインベス同士を戦わせたり、インベスをけしかけて

 相手チームからステージを奪ったりするインベスゲームってのを最近始めたんですけど……

 それを何とか抑止できないかな、とやってみるつもりです」

 

「まぁでも、あまり度の過ぎた奴らは『チームバロン』にぶちのめされるんですよ。

 ……彼らはインベスを使役してますが、完全に制御している感じですね。

 

 ……よく考えたら俺ら、よくぶちのめされなかったよな。

 あれでリーダーのシャプールは荒事とは無関係そうな性格してるんだからすげぇよな」

 

一応、ビートライダーズにはビートライダーズなりのルールなどは存在していたようだ。

だが、それさえもインベスの齎す毒の前には児戯に等しいものなのかもしれないが。

 

沢芽を覆おうとしている暗雲に、図らずも挑むこととなったオーディンとロスヴァイセ。

彼らの住まう世界に存在する世界樹と同じ名を冠する企業には

一体如何なる謎が隠されているのだろうか。

 

「成すべきことがわかっておるのならばわしからは何も言わんわい。

 じゃが、さっきも言ったがあの娘と家族にはきちんと謝るべきじゃな」

 

オーディンの言葉に頭を下げ、チーム魍魎はその日は一晩ロビーで待機し

オーディン達は沢芽市で連絡先を知り、かつこのホテルを紹介した呉島貴虎(くれしまたかとら)に事情を話し

部屋を余計に用意してもらい、次の日に備えたのだった。

 

――――

 

翌日。

 

ホテルまで迎えに来た呉島貴虎の車に乗り、オーディンとロスヴァイセは

早速ユグドラシルの沢芽支社に向かっていた。

その途中、オーディンは思い切って貴虎に昨日の事を問い質していた。

 

「貴虎よ。『ロックシード』と言うものに聞き覚えはあるかの?」

 

「……それはどういったものですか?

 わが社ではそのような『商品』は取り扱っておりませんが」

 

やはりな、と納得したような表情を浮かべるオーディン。

そもそも、いくらユグドラシルが多角経営を行っているとはいえ

根幹は医療・福祉系の会社だ。ロックシードとはどうしても結びつかない。

 

「それより、現在警視庁や自衛隊との協力で災害救助用の

 重機やドローンの開発を進めております。

 本日はその実演も行いますので、是非ご覧ください」

 

災害救助用の重機もドローンも、超特捜課(ちょうとくそうか)薮田直人(やぶたなおと)

ギルバート・マキが設計したものだ。

それらの実際の生産や調整は、ユグドラシルが警視庁や自衛隊

――すなわち、国からの依頼を受け行っていたのだ。

言うなれば、国の主導で生産した超特捜課の装備であるクローズスコーピオン・パワードも

ドローンドロイド、ひいてはプラズマフィストなども

ある意味ではユグドラシル謹製のアーマードライダーシステムの兄弟機にあたる事になる。

 

実際、被災地において災害救助用の重機や多目的ドローンは喉から手が出るほど欲しいものだ。

各地に行き渡るように、現在日本ではユグドラシルを始めとした

大企業がこれらの生産体制に入っている。

ユグドラシルは基本的には医療・福祉系の企業ではあるのだが

多角経営の賜物か製造ラインをも所持していたのだ。

 

……尤も、その製造ラインとは「アーマードライダーシステムを製造していた」ラインなのだが。

 

程なくして、オーディンらを乗せた車はユグドラシルタワーの前に到着する。

見た目の壮観さもさることながら、内部構造もかなり頑丈に作られている。

貴虎が言うように、内部で重機の実演を行っても問題ない位には。

 

「中はかなり広いので、私から離れないようにしてください」

 

貴虎の言葉に「これはある意味チャンスかのう」と考えるオーディン。

オーディンの考えは、見学中に迷子を装いユグドラシルの内部を隅から隅まで

貴虎と言うフィルターを通さない形でユグドラシルを見学する事であった。

 

貴虎と言うガイドが付けば、確かに安全にユグドラシルの内部を知ることができる。

だがそれは、ユグドラシルにとって都合のいい形でしかオーディンらに伝えられない情報だ。

そんな情報など、オーディンは欲していない。

 

(ロスヴァイセ。折を見てわしから離れ独自に行動するのじゃ。

 そして貴虎の語らぬ、ユグドラシルの裏の貌を調査しわしに伝えるのじゃ。

 この貴虎と言う男、悪人ではないがこのままではわしらの望む情報は絶対に提供せんぞ)

 

(……勅命であれば従いましょう。ですがオーディン様。

 日本国で勝手な事をして、日本神話……今は神仏同盟でしたか。

 彼らに怒られはしないのですか?)

 

貴虎に聞こえぬよう、小声でロスヴァイセにとんでもない事を指示するオーディン。

確かに、ロスヴァイセの言う通り日本である沢芽市で北欧神話の関係者が

勝手な事をすれば、日本神話――神仏同盟の反感を買いかねない。

三大勢力と言う、悪い見本をこれでもかと見せつけられている以上

彼らの真似だけは避けたいと考えての事であり

神仏同盟も三大勢力の所業の悪さにはほとほとあきれ返っている。

 

(……止むを得ん、事後報告じゃ。責任はわしがとる。

 具体的には、後日わしが直接天照の下にこの件の詫びに伺おう。

 昨日エイルが話したインベスの毒の血清を持参した上での)

 

(今回のようなプライベートではなく、正式な会談と言う事ですね。

 では本国に戻り次第、先方との段取りをつけておきましょう。

 

 ……あっ、オーディン様。会場についたようですよ)

 

貴虎にばれないように、神仏同盟との会談の段取りをつけていたところ

オーディン達はとうとう製造システムの実演場にやって来たのだ。

 

重い扉が開いた先には、無機質ながらも広大なフィールドが広がっており

フィールド上には実際の稼働を想定したかのように瓦礫が散乱している。

 

「うわぁ、結構本格的ですね」

 

「本番を想定して稼働させないと、実演とは言えませんからね。

 さて……では早速実演を始めましょうか。

 光実(みつざね)、クローズスコーピオン・パワードを作動させるんだ」

 

思わず感想を漏らしたロスヴァイセに貴虎が説明し

そのまま弟で秘書的役割の光実に重機――クローズスコーピオン・パワードの稼働を指示する。

光実がスイッチを入れると、目の前の蠍を思わせる鈍色の重機は駆動音を上げて動き出し

瓦礫を模した廃材を破壊・撤去するデモンストレーションを開始した。

 

「ほう、日本のモノづくりの技術は飛躍していると耳にはしていたが

 目の前で現物を見せられると納得せざるを得んのう」

 

「気に入っていただけましたか? 三大勢力の内乱や禍の団によるテロ活動

 さらにはフューラー演説による内乱で各国は混乱状態にあります。

 そこで、そうした災害から人々を守るべく我がユグドラシルは

 警視庁や自衛隊と共同でこれを開発しました。

 如何でしょう? 北欧においても導入されてみては?」

 

あくまでもビジネスとして、貴虎はオーディンにクローズスコーピオン・パワードを薦める。

実際、この重機の機動力・パワーはこのデモンストレーションを見る限りでは優秀だ。

だが、それにオーディンは考え込む仕草をする。

実際に導入するかどうかを考えていたわけではなく

ただのタイミングづくりの一芝居でもあったのだが。

 

「……おっと、私としたことが。耐久テストをご所望でしたか?

 光実、耐久テストの準備を始めてくれ」

 

「分かりました、主任」

 

「……あ、そ、その前に……お、お手洗いはどちらでしょう……?」

 

示し合わせたようにオーディンとロスヴァイセがアイコンタクトを取り、この場を離れるべく

トイレを口実に抜け出そうとする。光実がエスコートしようとするが

ロスヴァイセはそれを制し、場所だけ教えてくれるよう頼みこんだ。

勿論、この場を抜け出すための口実なのだが彼女にしてみれば

幾ら高校生でも男性にトイレのエスコートを頼むのは気恥ずかしいものがあったのかもしれない。

 

「……では、ロスヴァイセさんが戻って来てから実演を再開しますか?」

 

「いや、始めてくれて構わんぞい。ただ、出来れば動画は後で寄越してほしいかの」

 

部外秘でお願いします、と付け加えて貴虎は実演を再開する。

ここで露骨に時間を稼いでは怪しまれる。

ロスヴァイセは名目上トイレのためだけに席を立ったのだから。

貴虎やオーディンらの眼下では、クローズスコーピオン・パワードの耐久テストと称し

設定された過酷な環境下でどれほどの稼働力を見せるのかの

デモンストレーションが行われていた。

 

――――

 

(……全く、いくら情報集めとは言えオーディン様も無茶仰ってくれるわ……

 これは危険手当でも貰わないとやってられないわね)

 

道に迷った風を装いながら、ロスヴァイセはユグドラシルタワーの広大な廊下をうろついている。

しかし、見れども見れどもそこの風景は大企業のオフィスビルと大差ない。

この程度なら、ロスヴァイセも他の建物とは言え前情報で知っている。

 

(しかし、本当にこの建物にインベスに繋がる何かがあるのかしら……あら? あれは……)

 

ふと、ロスヴァイセが目をやった先には袋小路に入り込んでいく白衣の男性。

研究者だろうか。ロスヴァイセが彼の後を追うと

そこは何の扉もない本当に廊下の突き当りだった。

 

(……消えた? いえ、これは隠し通路的な何かがあるわね。

 そう言えば、昔おばあちゃんに忍者屋敷に連れて行ってもらったっけ……

 

 ……じゃない! 隠し通路があるって怪しさ満点よ! 調べてみましょう!)

 

何の変哲もない突き当りの壁に鎮座している観葉植物や、ランプを調べてみる。

すると、程なくして壁に突然通路が現れる。

もう少し苦戦するかと思っていたロスヴァイセも、これには驚いた。

 

(ラッキーね、あまり得意じゃない結界魔法なんて使う羽目になったら

 どうしようかと思ってたわ……)

 

最後の手段として、結界魔法を応用し隠し通路を割り出すつもりでいたのだ。

まさか、攻撃魔法で強引に通路を開けるわけにもいかないし

そんな事をすれば叩きだされるうえに本当に神仏同盟からお叱りを受けてしまうだろう。

 

深呼吸をした後、ロスヴァイセは現れた通路をくぐり、その先にあった長い階段を下る。

ある程度進んだところで、壁の雰囲気が変わり

現在地が地上から地下になった事を物語っていた。

それに伴い、照明も来客を迎えるものから外敵を威圧するものに変貌していた。

 

(あからさまに何かあるって言ってるようなものじゃない……

 

 ……っ、誰かくる!)

 

思わず身を潜めるロスヴァイセ。廊下を歩いて来たのは

僅かに口ひげを生やした人相の悪い男性と白メッシュの入った白衣の男性。

先刻ロスヴァイセが見た白衣の男性とは別人のようだ。

 

「どうだい? 展開しているロックシードは順調かい?」

 

「ああ。ガキどもはこぞって買いに来るから俺もウハウハだし

 プロフェッサーだって研究成果が見られてウハウハ。

 まったく、ぼろい商売もあったもんだなぁ?」

 

話の内容から、プロフェッサーと呼ばれた白衣の男はロックシードを開発し

人相の悪い男はロックシードの販売を行っている事が分かる。

この事から、ロスヴァイセは人相の悪い男こそがチーム魍魎の言っていた

錠前ディーラー・シドではないかとあたりをつけた。

尤も、他に錠前ディーラーがいないと言う前提付きだが。

 

「なぁ、そろそろ上位ランクのロックシードも流通させてもいいんじゃねぇか?

 あるんだろ? 呉島兄弟が使っているもの以外にもよ」

 

「確かに、貴虎と光実君にはそれぞれメロンとブドウのロックシードを渡してある。

 だが、あれは私が開発したドライバーとの同時使用を想定に入れているものだ。

 今君が売りさばいているような使い方は想定に入れてないし

 戦極ドライバーも市場流通できるほど数が確保できているわけじゃあない。

 

 ……だから、あまり勝手に持ち出してくれるなよ?」

 

何のことだ? と人相の悪い男はとぼけてみせ、白衣の男もそれ以上の追及はしなかった。

その理由を、人相の悪い男はすぐに知ることとなる。

 

「君に頼まれていたロックシードならもう完成している。

 これでも大変だったんだよ? 戦極ドライバーやロックシードだけでもいっぱいいっぱいなのに

 その上さらに政府からは警察や自衛隊用の重機を作れってお達しが来るんだから。

 ま、実際工場で作っているのは私じゃ無いんだけどね。アッハハハハハ!」

 

――そう。「自分が直接関わっていないからどうでもいい」のだ。

自分が作った発明品が誰の手に渡り、それがどういう働きをするのか。

彼はその一部始終さえ見られれば、それ以上は追及しなかったのだ。

 

「……それに言わせてもらうと、私としては政府が提示したあの重機、気に入らないんだ。

 何せ、私の発明ではないのだからね。悪魔と戦うだけならば、私が設計した

 ロックシードや戦極ドライバー――アーマードライダーシステムがあれば

 事足りるはずだからね。

 

 さ、私はこれから友人と話がある。君はロックシードを受け取って行き給え。

 ……そうそう、つい今しがた第四ラインの量産型戦極ドライバーと

 ロックシードも完成したそうだよ?」

 

「いいのかよ? 俺みたいな奴に情報漏らしちまってよ。

 『また』横流しされるかもしれねぇぜ?」

 

彼らの言い分では戦極ドライバーは怪異に立ち向かえる戦力を秘めている。

そしてそんな危険なものが、どこかしらに横流しされている事を示唆している。

しかも、開発者はその横流しを黙認しているのだ。

 

「ああ、私としては戦極ドライバーがインベスのみならず悪魔を始めとした三大勢力や

 アインストを蹴散らしてくれれば、それだけで私の発明の正しさが証明されるからね。

 誰がどのように使おうと、私としてはさしたる問題ではないね」

 

「……本当にいかれてやがるぜ。お前がアインシュタインでなくてよかったって思えるぜ」

 

「ああ、覚えておきたまえ。原爆の父はアインシュタインではなくオッペンハイマーだ」

 

現状を原爆に准えて白衣の男を皮肉ったつもりが、逆に言い返されてしまっている辺りは

白衣の男も戦極ドライバーやロックシードの設計が行える知識を持っている事を照明していた。

その事に人相の悪い男は舌打ちをしつつ、来た道を引き返していった。

 

(あまり……性質のいい人間ではなさそうね……)

 

その様子を、ロスヴァイセは謹製の魔術カメラで録画、録音している。

それは、まだ二人には気づかれていない。

そんなロスヴァイセをよそに、白衣の男は突き当りの大きな扉のロックを解除し

中に入ろうとする。

 

ロスヴァイセはそれを追って陰に隠れながら移動するが

その先にいたのはロスヴァイセも驚くほどの人物であった。

 

「さて……待たせたね、我が同志――

 

 

 ――アジュカ・ベルゼブブ」

 

白衣の男の前に現れたのは、緑髪の男にして、四大魔王の一人。

悪魔の駒の生みの親でもある、アジュカ・ベルゼブブ。

その他にも、研究室らしきところには老人が二人並んでいる。

 

「ああ、待ちわびていたよ我が友戦極凌馬(せんごくりょうま)

 今俺が進めているプロジェクトについて、君の意見を求めたくてね。

 協力者としては君もよく知っている、ユグドラシル・コーポレーションの

 専務取締役である呉島天樹(あまぎ)

 そして珠閒瑠(すまる)市出身の国会議員、須丸清蔵(すまるせいぞう)だ」

 

「『噂』はかねがね聞いておるよ。沢芽の発展を陰から支えた天才発明家、戦極凌馬君。

 我が珠閒瑠市もユグドラシルの子会社を誘致しているからな。

 そう言う縁でもこちらの呉島君にも良くしてもらっている。

 今日我々が出会えたのはよりよい未来を生み出す第一歩になるであろうからな」

 

「これはどうも、呉島専務に須丸先生。私の研究が、皆さんのお気に召せばいいのですが」

 

アジュカの立会いの下、須丸清蔵と名乗った老人は凌馬や天樹と握手を交わす。

ここだけ見れば、位の高い人物同士の会見の場であると錯覚しかねない。

 

(須丸清蔵……? だがあの風貌、サングラスで完全には窺い知ることはできないが

 十年前に行方不明になった須藤竜蔵(すどうたつぞう)のそれに似ているな。

 ……いや、あれから十年も経っているんだ。

 人間ならばとっくに第一線から身を引いているか……

 

 ……人間ならば、か。一度(みなと)君にも調べてもらう必要がありそうだな。

 ま、私の研究にはどうでもいい事だが……何だ、何かが引っ掛かる……)

 

凌馬は凌馬で目の前の須丸清蔵と言う人物を内心訝しんでいるが

その様子を陰から見ていたロスヴァイセは、この場にいるべきではない

魔王、アジュカ・ベルゼブブの存在に面喰っていた。

 

(あれは……な、なんでここに四大魔王の一人がいるのよ!?

 それに……あれは……ファスナー……?

 でも、あんな空間に出来る大きなファスナーなんて……

 それに、あの中から出て来てるのって……!!)

 

外から内部を覗き込んでいるロスヴァイセ。

だが、内部の情景に目を奪われているうちに

背後の気配に対する注意が完全にそれてしまっていたのだった――




対魔忍ロスヴァイセ……いや、ふと今回の話で頭に過ったフレーズ……

そして紘汰さんや戒斗いないのにヤベーイ状態になってる沢芽市。
因みにチーム鎧武は裕也が、チームバロンは劇中触れてる通りシャプール(そっくりさん)が
リーダー務めてます。

「同級生のゴースト」時代に「拙作の沢芽市でインベスゲームは流行ってない」
と書きましたが、「流行っている状態から話が始まったわけではない」だけで
「流行らない」訳ではないので今回こうなりました。
フューラー演説で直接的な害は被ってませんが経済に関する影響は出ていたため
その反発がインベスゲームを招いたような感じです。

>須丸清蔵
風貌は、ペルソナ2罰の神取を思い出していただければ。
その要素を須藤竜蔵に落とし込んだ感じです。
故に、プロフェッサーが須藤竜蔵との関連について訝しんでいます。
名前はペルソナ2で珠閒瑠の地を平定した御前様こと澄丸清忠とのかけ合わせ。
御前様の正体は「アレ」だったのでつまり……

そんなわけで、ここにいるのは「人体実験をものともしない」奴らに
「人の悪意の集合体に限りなく近い場所にいる」奴しかいないわけで……

>ファスナー
仮面ライダー鎧武のクロスゲートとも言うべき「アレ」です。
鎧武原作と違い、拙作ではかなりクロスゲートに性質を近くしてあります。
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