ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地   作:赤土

39 / 43
今回久々にちと長いです。


Case17. 新超特捜課発足

「……それでは、我々はこれで。警部のご活躍に期待しております」

 

「言われなくとも、(やなぎ)の顔に泥塗る真似はしねぇつもりだよ。

 それに……この人事は警視総監直々のものだからな。

 逆に言えば、警視総監クラスが動くほどの事態が起きてるって事だ。

 

 ……そっちも気をつけろよ。まだ俺の憶測にすぎねぇが、柳の左遷と言い

 どうも超特捜課(ちょうとくそうか)絡みのみならず、警察全体できな臭い臭いを感じやがるからな」

 

駒王警察署。先の戦闘を終えたセージと周防(すおう)兄弟は

当初の予定通り、蔵王丸警部をここまで護衛して来たのだ。

克哉が運転する車を、達哉とセージがバイクで護衛する形でやって来た。

そして今、その役目を終えた周防兄弟は元来の持ち場である京都府警に戻ろうとしていた。

そんな中、達哉(たつや)がセージを呼び止める。

 

「……宮本成二、だったな。少し、いいか?」

 

「何ですか? 周防巡査」

 

呼ばれる形で、セージは達哉の下へと歩み寄る。

 

「兄貴――いや、周防警部が手続している間に、俺はこっちの署員と情報交換していたんだ。

 そこで……少し気になることを耳に挟んでな」

 

神妙な面持ちで、語りだす達哉。

彼が語った内容は、十年前に珠閒瑠(すまる)市で起きた事件。

その一部始終の顛末と……黒幕の名前。

 

「以前、須丸清蔵(すまるせいぞう)って国会議員についてお前の神器(セイクリッド・ギア)で調べた時に

 『這い寄る混沌』って単語が出たそうだな。

 

 ……それが本当だとしたら、事態は俺達にとっても黙って見過ごせる事態じゃない。

 何せ、十年前に這い寄る混沌と対峙したのは俺……いや、俺達だからな」

 

達哉の発言に、セージは目を丸くする。

セージにとって十年前については長野の大量殺人事件こそ認知しておれども

珠閒瑠で起きた事件については情報が少なかったのだ。

 

「這い寄る混沌……ニャルラトホテプ。

 奴は人間の心の闇そのもので、俺たち人類のダークサイドともいうべき存在だ。

 だから、アインストやインベスなんかと違って滅ぼすことはできない。

 ……現に、奴の差し金としか思えない連中と戦ったしな」

 

人の心から、闇を完全に拭い去るのは不可能だ。

それを成した時点で、人は人でなくなってしまう。

故に、人類のダークサイドたるニャルラトホテプを滅ぼすことは不可能である。

達哉は、かつて戦った自分の経験を基にそう結論付けていた。

 

「滅ぼすことはできない……では、一度は周防巡査らに敗れながらも

 この混沌とした世情を好機とみて、再び表舞台に出てきたというのですか?」

 

「いや……奴は表舞台で姿をさらすなんてことはしないし

 俺たちが過去戦った時も真の姿と嘯いていたがあれがそうだという保証はない。そういう奴だ。

 奴のいいように踊らされている連中や、自分の尖兵を送り込んで

 今の人間がどう動いているかを観察するのが常套手段だ。今回もそうだろう。

 おそらくだが、あのフューラー・アドルフやその配下、聖槍騎士団あたりは

 ニャルラトホテプの化身と考えていいだろう。奴らは、俺の事を知っていたみたいだしな」

 

「……そして、須丸清蔵もそのニャ……ニャルなんとかに踊らされている、あるいは

 そのニャーなんとかの化身だと?」

 

実際、クトゥルフ神話には同名の神がいるとされている。

しかし、セージもそこまで博識ではないらしく、ニャルラトホテプの名前にはピンとこなかった。

記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)で調べることも可能だが、相手が人類のダークサイドというべき存在であることと

須丸清蔵の件で痛い目にあって以来、迂闊に記録再生大図鑑を開くことを躊躇っていたのだ。

 

「……ニャルラトホテプ、だ。まぁ、それはさておきそう考えていいだろうな。

 行方不明扱いになっている須藤竜蔵も、ニャルラトホテプのいいように扱われていた。

 そして……セベク・スキャンダル。この主犯である神取鷹久(かんどりたかひさ)も、ニャルラトホテプに魅入られた存在だ。

 十年前の事件では、『噂』って形で神条久鷹(しんじょうひさたか)って名前で神取鷹久が復活した。

 その前例を考えると、須丸清蔵ってのは復活した須藤竜蔵(すどうたつぞう)……

 あるいは、ニャルラトホテプが須藤竜蔵を模して生み出した存在だってのが、俺の見立てだ」

 

達哉の見立ては、セージにとって妙に納得できた。

しかしそうなると、須丸清蔵の働きかけで兵藤一誠は釈放されている。

その後の彼の顛末についてはセージの知るところではないが

須丸清蔵とニャルラトホテプにつながりがある以上

ニャルラトホテプは兵藤一誠――あるいは赤龍帝を使って何かをしようとしているのではないか。

セージには、その懸念が生まれたのだ。

 

(……うん? そういえば、あの時聖槍騎士団は兵藤の奴にドラゴンアップルを寄越していたな。

 そして、今度は須丸清蔵が兵藤を釈放させた。この両者の関連は、周防巡査が言うなら

 そのニャルラトホテプって存在になる。ニャルラトホテプ……兵藤を強化して何がしたい……

 いや、『何をさせたい』んだ?)

 

「達哉! そろそろ出発するぞ……ぐすっ」

 

セージが達哉に質問をしようとしたところ、遠くから用事を済ませた克哉(かつや)の呼ぶ声が聞こえる。

心なしか、鼻声であるが……

 

「分かった、今行く……って兄貴、どうしたんだ?」

 

「あ、ああ……実は今しがたそこで白猫と黒猫に遭遇してな……

 すり寄ってくるものだから、つい撫でてしまったんだ……

 あれは妙に人慣れしていたから、誰かの飼い猫かもしれないな……ぐすっ」

 

セージはその二匹の猫に心当たりがあったが、克哉のただならぬ状態を見て

直ちに「猫アレルギー」であると見抜いた。

知らない以上は仕方のないことなのだが、二匹の猫――白音と黒歌の迂闊さのみならず

克哉にも心の中でツッコミを入れていた。

 

「(猫アレルギーなのに猫触るんかい!)

 す、すみません克哉警部……その猫、多分俺が面倒見てる猫だと思います……

 いつ入り込んできたんだか……すぐに連れ出しますので」

 

「そうなのか? かわいい猫じゃないか。何て名前なんだい?

 ……ぐすっ」

 

つい話し込みそうになる克哉を、呆れながら達哉が制止する。

名残惜しそうにしながらも、克哉は鼻をすすりながらその場を後にするのだった。

 

「兄貴。もう出発するんじゃないのか? ほら行くぞ」

 

「あっ、待て達哉! せめてあの子らともう一度……ぐすっ

 宮本君にあの猫の名前も聞いてないし……ぐすっ」

 

「……白音と黒歌、です」

 

セージの言葉を聞いて、満足そうに克哉は離れていった。

達哉もまた、克哉を引きずるようにして駒王警察署を後にする――その間際。

 

「……成二」

 

「なんです?」

 

「帰る前に、お前にこれを渡そうと思ってな。

 十年前に俺達がペルソナを召喚するのに使っていたものと同じものだ。

 今度は俺じゃなくてお前の番……そんな気がするんだ。

 ここに来る前、フィレモン……いや、ある人物から聞いたんだが

 『神器もペルソナもその本質は同じ』だそうだ。

 お前なら、これをうまく使えるかと思ってな」

 

そう言って、達哉が渡したのは無地のタロットカード数枚。

かつて、達哉らが戦った際にペルソナの触媒となった「フリータロット」と呼ばれるものである。

 

「本当なら、青い部屋……ベルベットルームにいる悪魔絵師に頼んで絵を描いてもらって

 それを基にペルソナを召喚するんだが……お前、ベルベットルームは知っているか?」

 

達哉の問いに、セージは首を横に振る。

セージが持っているのはあくまでも神器であり、ペルソナではない。

そのため、ペルソナ使いの初歩とも言える情報は、完全に欠如していたのだ。

 

「そうか……いや、もし行ったとしても最後に俺がベルベットルームを訪ねた時

 フリータロットに絵を描ける悪魔絵師は旅に出ていたからな。

 だから、ちょっとしたお守り程度に持っておいてくれ」

 

それじゃゴミを寄越したのとあまり変わらないじゃないか、とセージは一瞬毒づきかけるが

改めてフリータロットを調べてみると、そこには確かに何かの力の残滓らしきものが感じられた。

達哉の言う通り、セージはフリータロットを記録再生大図鑑のデッキに収納することにした。

偶然の一致かそれ以外の要因かはわからないが、セージが能力発動に用いているカードと

フリータロットは規格が一致したので、すんなりとデッキに収まったのだった。

 

しかし、デッキに装填されたからと言って何か変化があるわけでもない。

達哉曰く「タロットカードを触媒にしてペルソナを召喚する」だそうなので

ペルソナのないセージには、ペルソナ以外の力として発現するのではないか。

曰く「ペルソナと神器は同質のもの」らしいので

そう考えることにし、ひとまずは置いておくことにしたのだ。

 

「それでは、我々はこれで失礼します」

 

「俺達が共に戦う日も来るかもしれない。

 だがそれは今じゃない、先の話になるだろうな。

 ……まぁ、俺達が共に戦うってのはそれだけの事態が起きていることだろうから

 そうそう起きてほしくないことでもあるけどな」

 

警察署の入り口に立ち、敬礼で達哉と克哉を見送る超特捜課の面々。

その傍らには、白猫と黒猫もいたが彼女らは二人を見送った後程なくして

セージによって返される運びとなってしまった。

 

――――

 

周防兄弟の任務――蔵王丸警部を駒王町まで護衛する――は、無事に終えることが出来た。

駒王町に待機している超特捜課は、蔵王丸という新たな司令塔の下活動を再開することとなったのだ。

 

「……というわけで、既に知っている奴もいると思うが

 俺が今日からお前たちの上司になる、蔵王丸慚愧(ざんき)だ。よろしく頼む。

 

 ……早速だが、俺達超特捜課に重大な指令が下った。

 二週間後、沢芽(ざわめ)市にあるユグドラシルタワーで神仏同盟(しんぶつどうめい)と北欧神話の会談が行われる。

 俺達は、それに伴う警備を行うこととなった。

 これは本郷(ほんごう)警視総監からの正式な指令だ。今日からそれを見越した活動を行う、いいな?」

 

就任するや否や、蔵王丸警部は本郷警視総監から下された指令を読み上げる。

それによれば、沢芽市で神仏同盟と北欧神話の会談が行われるため

超特捜課は現地のセキュリティポリスと協力し両勢力の神仏の警護を行われたし、とのことだ。

警護対象が警護対象なため、超特捜課が動かざるを得なかったのだ。

 

一応、覇龍(ジャガーノート・ドライヴ)騒動を境に駒王町における禍の団(カオス・ブリゲート)の活動や

アインストやインベスといった怪異の被害は根絶こそしてないものの減少傾向にあり

超特捜課が出動せずとも済む状態には落ち着きつつある。

その現状を顧みた上での今回の指令であった。

 

「了解しました。ですが、こちらを留守にするわけにもいかないのでは?」

 

「ああ。だから、沢芽市に行くメンバーは書類選考という形だが俺の方で選抜させてもらった。

 まずは現場指揮として氷上涼(ひかみりょう)巡査。次に補佐として霧島詩子(きりしまうたこ)巡査。それから……

 これは警護対象からの直々のご指名だそうだ。宮本成二特別課員」

 

「……えっ?」

 

蔵王丸警部の言葉に、セージは耳を疑う。

警察の手伝いということで今までやってきていたのだが

今回はある意味それよりも重要な要人警護だ。

しかも、警護対象――おそらくは天照か大日如来だろう――からの指名だという。

 

「待ってください、警部。セージ君の実力は私も知ってますが

 よその国のVIPの応対も要求される今回の指令は

 セージ君には少し荷が重いのではないでしょうか?」

 

「そ、そうですよ。今まで幾度か顔を合わせた大日如来様や天照様ならいざ知らず

 よその国の神様の警護なんて……いや、面識という意味での前例はあるにはありますが」

 

「俺もここに来るまでと来てからも報告書を読ませてもらったが

 こいつ、ギリシャの神の一柱と面識があるそうじゃないか。

 その辺も踏まえての人選だし、そもそも先方から指名されてるんだ。無碍にできるかよ」

 

霧島の指摘通り、セージも紆余曲折を経てとんでもない人脈を築き上げているが

その本質はただの高校生である。そんな彼に外国のVIPの対応は厳しいものがある。

故に、セージも辞退しようとするが「先方の指名」という真っ当な理由ゆえに却下された。

 

「なら仕方ないですね。いい機会ですから、社会勉強ということで」

 

「……めっちゃプレッシャーかかる社会勉強なんですけど」

 

護衛対象からの指名では断れない。そのために氷上はセージに対し

「社会勉強」の体で引き受けるように促す。セージ自身、困惑しているが

話の流れは理解しているため、引き受けざるを得なかったのだ。

 

「わかりました……ところで、護衛の人手は大丈夫です?

 足りないようでしたら、俺の方から黒歌さんにも手伝ってもらうように……」

 

「そうだな、と言いたいとこだが今回は無しだ。

 そもそも、俺がその黒歌ってやつのことを詳しく知らない。

 いや、経歴は書類に目を通したから知ってるんだけどな。

 だから、いくらお前の知り合いだからってよく知らない奴を警護に回すわけにはいかねぇな。」

 

蔵王丸警部の説明に、セージは納得する。

よく考えてみれば、宮本家に居候している猫魈(ねこしょう)姉妹は

超常の存在を相手にした公の場に出すには向かない。

 

まず黒歌。彼女は悪魔政府においては死亡扱いとなったものの

凶悪なはぐれ悪魔として名を馳せていた。

その関係からか、性格もざっくばらん過ぎてVIPの応対には向かない。

精々、今セージの母親がやっている介護の手伝いに際してセクハラジジイをおちょくる位だろう。

場を和ませるのならばありかもしれないが、国と国との公の会談の場で

和気藹々という単語が過ぎる様な環境は、些か不真面目と取られかねない。

 

次に白音。彼女は黒歌から本気で心配される程度には体が弱いし

身体的な意味のみならず猫魈としても未熟だ。

未熟さという点では指名の入ったセージでさえぎりぎりどころかアウトと言わざるを得ないのに

指名も入っていない彼女は今回の場においては相応しくないだろうし

場の空気――プレッシャーに押し潰される危険性も大いにある。

 

自分でさえ危ういというのに、先方に失礼があってはならない。

そう考え、セージは護衛の増員を断念せざるを得なかった。

 

「わかりました、では二人には留守番を依頼しておきましょう。

 俺達が抜けている間の町の警備は必要ですからね」

 

「そのことなんだが……これは須丸清蔵からの差し金でな。

 お前ら三人が抜けている間、駒王学園の生徒会――ソーナ・シトリーと

 その眷属どもも町の警護に就かせるとかぬかしてきやがったんだ」

 

その名前が出た途端、ざわめく会議室。

静粛を促し、蔵王丸は話を続ける。

 

「……くどいようだが、俺も報告書は読んでいるから

 この件について首を縦には振りたくないんだがな。

 だが、須丸清蔵の発言力は柳警視の左遷の一件からもわかっているとは思うだろうし

 それを差し置いても、町の警護に当たれる人材が減っているのは痛い。

 神仏同盟や町民との折り合いって意味で仕事が増えるかもしれねぇが、そこはよろしく頼む。

 俺も慣れないながらは何とかするからよ」

 

「……うん? ちょっと待ってください。オカ研……リアス先輩ではなく

 生徒会のソーナ会長を?」

 

「ああ、そういうことらしい。確かな筋からの情報だ」

 

蔵王丸の挙げた名前に、セージは訝しむ。

こういう場合、率先して出てくるのはオカ研――リアスの方だ。

だがある意味でオカ研の、リアス眷属の中核と言える一誠は釈放されたとはいえ

駒王学園は退学処分となっている。

それが故に、フットワークが鈍っている面もあるのかもしれないが

それだけで片付けるには、リアスが大人しすぎるとも思えてならなかった。

 

「ま、そいつは冥界以外だとこの駒王町が縄張りなんだろ?

 今回護衛に就くのは沢芽市。縄張りの外にはそうそう出られないってだけの話じゃねぇのか?」

 

厳密には、リアスに駒王町の統治権は既にない。

だが安玖の言う通り、駒王町の外でリアスらが活動したという話を、セージは聞いていない。

故に、安玖の意見は理にかなっておりそういう方向でセージも納得することにしたのだ。

 

「他にないか? ないなら、これから氷上、霧島巡査と宮本は本番に備えた訓練。

 それ以外……っつても俺と安玖巡査か。俺達は通常業務だ。いいな?」

 

就任の挨拶からそのまま流れで沢芽市の要人警護のミーティング的な要素も含んだ

蔵王丸警部の挨拶が終わろうとする辺りで

一人の警官が金髪の小柄な少女を連れて駆け込んでくる。

 

「どうしたんだ?」

 

「警部殿。実はこの子が……」

 

息を多少切らした様子で、少女は蔵王丸に訴えてくる。

 

「お願いです! 兄を……兄をテロリストから連れ出してください!」

 

「テロリスト……禍の団ですか?」

 

テロリスト、という少女に霧島は禍の団の存在を感じ取り少女に尋ねる。

首肯した少女は、さらに畳みかけるように話を続ける。

 

「兄が所属した組織がまさかあのヒトラーの意を酌んだ組織だなんて思いもしませんでした!

 兄――アーサー・ペンドラゴンは曹操という男に騙され

 禍の団の英雄派という組織に入り浸ってます!」

 

少女の話を統合すると、若干だが齟齬が生まれる。

まず、「禍の団の英雄派」という組織を統括しているのはフューラー・アドルフであるはずだ。

それは実際に演説で語られたことだし、超特捜課も彼が率いるナチス由来の軍隊や装備と

幾度となく刃を交えている。これは否定のしようがない。

しかし、少女の話では「兄が曹操という男に唆され入ったのは

『禍の団の英雄派』というテロ組織」である。

フューラーの配下に、曹操という男がいるのだろうか。

 

「まず落ち着いてください。我々の持つ情報とあなたが持つ情報に齟齬が生じてます。

 とりあえず……お名前をお伺いしてもよろしいですか?

 私は警視庁超特捜課所属、霧島詩子巡査です」

 

「あ、ごめんなさい。私はルフェイ……ルフェイ・ペンドラゴンです」

 

――――

 

英国から来た少女、ルフェイの話が本当ならば、英雄派という組織は二つ存在し

ナチスを彷彿とさせる軍事組織で成り立っているフューラー率いる英雄派。

そして、世界各地から英雄もしくはそれにまつわるものを片っ端から集めている

曹操率いる英雄派。

 

その二つが存在したため、ルフェイは兄が入った組織を「ネオナチ」の一種だと勘違いしたのだ。

ヨーロッパ方面では、ヒトラーや彼にまつわるものは日本以上に蛇蝎の如く嫌われている。

それはアーシアが「ハーケンクロイツ(鍵十字)」を遠目に見た際に戦慄するほどだ。

 

「……どうやら、私の勘違いだったようですね」

 

「それでもてめぇの兄貴がテロ組織に入ったって事実は変わらねぇだろうが。

 まさか、兄貴を連れ戻すためにわざわざ日本くんだりまで来たってのか?」

 

そう、ルフェイは日本の超特捜課の活躍をネットで知り

彼らならば禍の団に入ってしまった兄を連れ戻せるのではないか。

そう考え、日本語を学びパスポートを取り日本まで来たのだ。

……多少、彼女の持つ魔術でズルはしたが。

 

「ですからお願いです! 兄を……兄を連れ戻すのに協力してください!」

 

ルフェイの涙ながらの訴えに、困ったように顔を突き合わせる超特捜課課員達。

最初に入って来た警官が困惑していた様子だったのはこれか、と蔵王丸は納得していたが。

 

「……お嬢ちゃん。すまないが、我々超特捜課も暇じゃないんだ。

 だが、情報が入り次第君に伝えることを約束しよう」

 

「……そう、ですか……」

 

落胆した様子で俯くルフェイ。だがこればかりは仕方がない。

既に超特捜課には任務が入っているし、そうでなくとも手掛かりがないに等しい人物――

それもテロ組織関係者を捕まえるのは通常の捜査でも困難を極める。

そのため、現状でできるのは通常の尋ね人探し程度であり

それは超特捜課でなくともできる業務だ。

 

「……いや。ちょっと待ってください。

 俺の神器なら、捕まえるのは出来なくても手掛かりの一つや二つは見つかるかもしれません」

 

『待てセージ。無限大百科事典(インフィニティ・アーカイブス)の使用は許可できないな。

 須丸清蔵を調べてえらい目にあったのをもう忘れたのか?

 そうでなくとも、お前は再来週の会談の警護で重要な役割になりかねないんだ。

 ここでぶっ倒れたら、後が困るだろうが』

 

禁手(バランスブレイカー)でアーサー・ペンドラゴンについて調べようとするセージだったが

フリッケンに待ったをかけられてしまい、発動することが出来ない。

仕方なく、記録再生大図鑑の能力だけで調べることにしたのだが。

 

COMMON-LIBRARY!!

 

「アーサー・ペンドラゴン。フューラー・アドルフによって発掘された

 エクスカリバーの一本『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』を持つ。

 力を求め、禍の団の英雄派に転がり込み現地の精霊や妖精を手にかけ

 現在は『人間の力を知らしめる』曹操の思想に共感し、曹操と行動を共にしている。

 その行動が故に、エクスカリバーの製造者の一人であるヴィヴィアンからは

 非常に強い敵意を持たれており英国政府からも指名手配されている……そうだ」

 

セージのその言葉のすぐあと、一人の警官が国際指名手配者リストを持って入って来た。

その中にはフューラー・アドルフ、フリード・セルゼンをはじめとした

既に超特捜課がよく知っている人物のほかにもアジア系の顔つきをした曹操

フリードに雰囲気が似ているジークフリートといった人相写真の中に――

 

「こ……これです! これが兄です!

 ああ……国際指名手配犯にまで……」

 

眼鏡をかけた精悍な青年、アーサー・ペンドラゴンの写真も写っていた。

しかしここで、腑に落ちない点が挙がる。

「曹操はフューラーと違い、声明を発表していない」のだ。

ここにいるのはセージとルフェイを除けば公務員であり

国を脅かすような情報は率先して入ってくるような環境だ。

 

もし英国で声明が出されたのならば、ルフェイは英国の組織に転がり込んだだろう。

それをせず日本の超特捜課に来たということは、英国でも曹操は声明を出していないことになる。

つまり、曹操率いる側の英雄派は、テロリストとしてすら認められていない。

精々、フューラーが声明発表したおかげで認知されるようになった

禍の団の一組織に過ぎない扱いだろう。

暴力団――曲津組(まがつぐみ)でさえ、指定暴力団組織として国に認知されていた。

曹操の英雄派には、それすらないのだ。

つまり、暴力団以下――下手すればカラーギャング程度の存在だ。

 

「……こういう意味で予言したくはなかったけど。

 けれどこれで、一応お兄さんを探す口実は出来た。

 だけど、それにばかり人材や戦力を割けないという点は理解してほしい」

 

「セージの言う通りだ。連れ戻すんならそれなりのチャンスがあるってこった。

 それより……今空路は閉鎖されているはずなんだがな?

 お前、どうやってここに来たんだよ」

 

安玖の指摘に、ルフェイは「しまった!」という顔をする。

空路封鎖は解かれていない。

そのため、英国のルフェイが日本であるここに来られるわけがないのだ。

……通常の方法ならば。

 

「……あなた方なら話しても平気ですね。私、魔法が使えるんです。

 悪魔のそれとは違う、人間の魔術として。

 それで、ここまでやって来たんですけど……た、大変でした……」

 

曰く

「魔法使いということで変な指輪を填めさせられそうになる」

 

曰く

「魔法使いということで変な儀式の最中に飛ばされたが

 空を飛んだライオンが儀式を滅茶苦茶にした」

 

曰く

「英国出身ということで何故か大根とおろし金がお土産に渡された」

 

ここにいる面々は知らないことだが、オーディンらが体験した「転移トラブル」を

ルフェイも体験したことになる。

疲労を押して慣れない土地の警察組織にやって来たのだから

現在のルフェイは相当疲労困憊しているだろう。

 

「その魔法で……こっちに……来て……」

 

言い終える前に、ルフェイは倒れてしまった。

仕方なく、セージの時と同様ベッドに運ぶこととなった。

 

「……身分証確認。兄貴以外の親族への連絡。それと入国管理局に連絡。

 暫くこいつは英国大使館預かりになるかもしれねぇな」

 

突然やって来た問題に蔵王丸は頭を抱えながら、警官らに指示を出していた。




終わり間際のこのタイミングでルフェイ参戦。
ヴァーリチームが存在しない関係上、アーサーは曹操英雄派のまま
ルフェイはフリーになってしまいました。
原作では兄を追ってテロ組織入り……なんですが
ちょっとここで「ん?」と思ったので方針転換。
英雄派、という括りで見れば拙作世界では
ルフェイがネオナチと勘違いするのもさもありなんですが
禍の団という括りで見ると……アインストが手ぐすね引いてるわけですので……
ルフェイ兄の後を追って入らなくてよかったねとしか。

因みに、当初の予定ではバオクゥに協力を仰ぐも手が回らないという理由で
却下されたり、超特捜課を取り巻く国民感情に変化が生まれているという
描写を入れる予定でした。

>周防兄弟
当初の予定通りここで退場。強キャラはゲスト参戦、はっきりわかんだね。
因みに達哉がセージにフリータロットを渡す件は
異聞録におけるたまきちゃんと主人公(ピアス)のやり取りのオマージュ。
あの後も達哉はフィレモンに会ったり、ベルベットルームに行ったりしていますが
別段大きな事件が起きたとかそういうわけではないです。多分。
今更ですがセベク・スキャンダルが起きてるってことは十数年前に
この世界次元転移装置っぽいもの作ってるんですよね……

フリータロットはちょっとアレンジ加えてます。
原作ではン十枚ン百枚消費しますが、さすがにそのまま流用できないので
これ一枚がそのままペルソナカードになるというイメージで。
でもセージにはペルソナ能力がない。これは何のフラグ?

>会談の護衛役
少なすぎる位ですが、この超特捜課からはこれだけしか出せません。
左遷された柳警視とか、周防兄弟とか参戦させる手もあるにはあるのですが。
まぁ、ユグドラシルには黒影トルーパーや最悪斬月龍玄いますし……
因みに安玖巡査が外されたのは「勤務態度」が原因。元ネタアンクちゃんだしねぇ。

>ルフェイが飛ばされた世界
仮面ライダーウィザードより。
他の魔法使いネタも引っ張ってくるべきだったかもしれませんがとりあえず。
因みに英国出身だから大根とおろし金を寄越されたエピソードは
「すりおろし声優」で検索をば(元ネタの声優さんは豪州出身だけど……)。
ちなみに拙作世界の英国王室でも「日本食ブーム」で「大根おろし」が流行って
世界情勢で「大根の輸入」が出来なくなったのが最近の悩みの種だとか。

※2019/03/05訂正
いや、違和感はあったんです……
けれど兄弟で同じ組織に属しているのでわかりやすくした方がいいかと思いましたが
よく考えたら階級違うから読み取れますよね……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。