ハイスクールD×D ゴースト×デビルマン HAMELN大戦番外地 作:赤土
――如何だっただろうか。
この選択が正解だったか、或いは選んだ選択こそが正解だったか。
その回答の合否を決めるのは、私ではない。君達自身だ。
そしてそれは、今こうして物語を紡いでいる彼ら自身にも言えることだ。
ではもう一度、今度は「もう一つの選ばれなかった可能性」をご覧いただこう――
――――
「まだ決めかねているのなら、はっきりと言ってやろう。
こいつを撃たなければ、お前は未来永劫ハーレム王にはなれないぞ!!」
岩戸山の最奥、鏡の泉。
そこで白音を人質に待ち構えていた宮本成二のダークサイド。
即ち心の影が形を成した存在――シャドウ成二。
彼はイッセーに対し、セージに散々苦汁を舐めさせられた
その仕返しをしろとばかりに拳銃を投げ寄越す。
拳銃にはかつてドライグを止めるために発砲したとはいえ、人体――イッセーは悪魔だが――には
過剰火力とも言うべき
逡巡していたイッセーではあったが、「撃たなければ、ハーレム王にはなれない」。
その言葉が、イッセーの中でぐるぐると回っている。
(そ……そうだ! 何をためらう必要があるんだ!
こいつのせいで部長は……リアスは辛い思いをさせられて!
三大勢力の和平だって果たされずに、悪魔は今なお滅びに瀕してるじゃないか!
それなのにこいつは、そんな悪魔に手を差し伸べるどころか
その手を踏みにじるようなことばかりしてるじゃないか!
そうだ……俺が、俺がやらなきゃ、こいつを……悪魔の敵であるこいつを!)
迷っていたイッセーの瞳に、セージに対する個人的な憎悪と
悪魔を救わんとする義憤が入り混じった炎が宿る。
そんな様子を
次の瞬間、ドライグは己の宿主の思わぬ行動に目を丸くすることとなる。
静まり返った洞窟内に響き渡る、火薬の破裂する音。
静寂の空気を切り裂く形で、イッセーの構えたニューナンブからは煙が立ち上がっていた。
(……こいつは驚いた。まさか、こうも躊躇いなく引鉄を引けるとはな。
仮にも、こいつは一年前は普通に交友のあった相手じゃないか。
一人殺したことでタガが外れたか、或いは元々……まあ、俺の知った事では無いがな)
何の躊躇もなく引鉄を引いたイッセーの行動に、流石のドライグも舌を巻いたのだ。
しかも、相手は同じクラスだったはずの宮本成二。
まるで、自らの行いの結果など考えていないかのように。
その行動は、対象となったセージや、唆したシャドウ成二はもとより
その場にいた他の者達にも少なくない衝撃を与えたのだった。
「そ、そんな……!?」
「まさか!? 何のためらいもなく……!?」
ギャスパーと
「……せ、セージさん!!」
絶句する白音に、治療のためセージに駆け寄らんと飛び出すアーシア。
それほどまでに、周囲に与えた衝撃は大きかった。
その衝撃を与えた張本人のイッセーは、興奮からか肩で息をしているが
努めて冷静に、飛び出そうとしたアーシアを制止する。
「だ、大丈夫だアーシア。俺が撃ったのは……」
イッセーはそう言って、シャドウ成二が立っていた方角を指差す。
その先には、シャドウ成二が崩れ落ち…………
…………て、いなかった。
「な……!? そ、そんな……!?」
「クッククククク……どうした? 何を驚く必要がある?」
今度はセージを撃つと見せかけて、シャドウ成二を撃ったはずのイッセーが衝撃を受け
シャドウ成二はわかりきった事とばかりに、不敵な笑みを崩していなかった。
「そ、そんな……俺は確かに、お前を狙ったはずだ……!!」
「ククク……大方、セージを狙うと見せかけて俺を撃つ腹積もりだったんだろうが。
お前……俺の名前、もう一度言ってみろよ」
未だに不敵な笑みを崩さないシャドウ成二は、ここぞとばかりにイッセーを挑発する。
イッセーに問いかけるその問い。「俺の名前を言ってみろ」。
彼は間違いなく宮本成二である。その事は、再三彼自身が言っており
セージ自身もシャドウ成二の事をまた、宮本成二であると表面上は認めている。
……つまり、シャドウ成二とは宮本成二である。
「み、宮本……成二……」
「そうだ。俺は宮本成二だ。お前は粗方『宮本成二は宮本成二でも、俺を撃てばいい』。
などと考えて、俺を狙ったのかもしれんが……
……残念だったなあ! お前の後ろを、振り返ってみたらどうだ?」
シャドウ成二は邪悪な笑みを浮かべたまま、イッセーに振り向いてみるように促す。
確かにイッセーはシャドウ成二を狙ったはずだ。しかし、シャドウ成二には傷一つない。
そして「後ろを見ろ」と促すシャドウ成二。それらが意味するところは――
「……ぐ……くっ……!!」
イッセーが振り向き、つられてイッセーの向いた方角に目線を向ける一同。
そこには、突っ伏して地面を赤く染めるセージの姿があった。
「せ、セージさんっ!!」
そのただならぬ様子を見たアーシアは、目もくれずにセージの下に駆け寄る。
いくらセージが自前で回復が出来ると言っても、深い傷を負った状態のセージを無視できるほど
アーシアは冷淡ではなかったのだ。
しかも、これは人体には過剰威力ともいえる神経断裂弾。
イッセーに向けられた際でも身体に直接撃ち込まれたわけではない。
それが、今はマグネタイト保有量以外は普通の人間であるセージに撃ち込まれたのだ。
何処をどう見なくとも、致命傷である。
「な……なんで……!?」
「言ったよな? 俺は宮本成二、だと。
つまりだ。俺を撃つという事は、そいつを撃つ事だ。
お前が銃を向けた、憎しみを向けたのは間違いなく『宮本成二』なんだよ。
俺を倒せば解決する? そりゃあ無理だな。
お前は、人の心の影の何たるかを全く理解しちゃいない。
ま、お前に理解してほしくも無いがな。
わかるか? お前の作戦は他でもない『浅知恵』に過ぎなかったんだよ」
シャドウ成二の手には、
何のことは無い、シャドウ成二はイッセーが自分を狙うであろうことも見越したうえで
このカードをあらかじめ仕込んでおいたのだ。
弾道さえも計算に入れていたのか、反射された神経断裂弾はイッセーではなく
セージに直撃するコースになるように、シャドウ成二は位置を決めていたのだ。
イッセーがセージではなく自分を狙う事さえも、シャドウ成二は見越していたのだ。
それはセージ自身が「イッセーの事だから、自分に危害を加えるかもしれない」。
そう考えていたのだ。
その考えは当然シャドウ成二も持ち合わせており
それを見越したうえで尚、シャドウ成二はイッセーに神経断裂弾入りの拳銃を寄越したのだ。
「当てが外れて残念だったなあ? そしてお前の気持ちはよくわかったよ。
『俺を殺したいほど憎んでいる』、そう言う確信は持てたのだからな。
不確かな妄想に縋って、周りに憎しみをばら撒き続ける。
それがお前の夢の代償だよ。夢を追うのはいいがな、代償はきっちり払え」
「お、俺は……そんな、八つ当たりみたいな真似はしてねえ!
俺が戦った相手は、みんなそいつが悪いからだ!
悪事を働いた奴を倒すのは、当たり前だろうが!
代償も何も、そうなって当たり前だからだ!」
イッセーの主張。それは、今まで戦った相手は世界を脅かす相手である。
故に、自分達の行いは正義である。そう言う事であった。
しかしそれは、妄信的な正義である。そもそも、イッセーが属している悪魔と言うものは
人間にとって、必ずしも益の存在であるとは言えない。
と言うよりも、イッセー自身が益を齎す存在であるとは言えない部分も少なくないのだ。
にもかかわらず正義を語るのは、きわめて独善的であると言える。
「悪行の塊であるお前がそれを言うか……まあ、いいがな。
だが、都合が良かったな。お前が憎くて憎くてたまらない奴を生贄に捧げたんだ。
夢ってのはな、周りの連中の屍の上に立ってるんだ。
それはお前のハーレム王の夢だって例外じゃない。
血塗られた夢に溺れて、間違った世界と共に沈めばいいさ。
ククク……クハハハハハハッ!!」
高笑いと共に、シャドウ成二はセージにとどめを刺さんと武器を構える。
神経断裂弾を撃ち込まれたことで、セージは戦う力を失っている。
アーシアが必死に治療を試み、白音も気を送り込むことで延命をしているが
神経断裂弾のダメージは人体には大きすぎた。
シャドウ成二の攻撃がセージに突き刺さろうとした瞬間。
何処からともなく砲撃が敢行される。砲撃で巻き起こった土煙に乗じて
白音がセージを抱え上げ、体勢を立て直すことに成功したのだ。
「……い、今の聞いていたら、ちょっと急いででも駆けつけなきゃ、って気がしまして……ね」
砲撃を行ったのは、満身創痍のバオクゥだった。
火花が散っている砲台からは、煙が上がっている。
その様子を見たセージは、自分の治療もそこそこに
アーシアにバオクゥの治療を行うように依頼する。
「……あ、あとは自分の回復で何とかする……
アーシアさん、バオクゥの方を……頼む」
セージの依頼通り、手早くアーシアがバオクゥの治療を行う。
本来白音の負傷対策で同伴したのだが、こうしてそれ以外の者達の治療が行われている。
こうして激戦区になったのだから、無理からぬことではあるのだが。
しかし、セージの言葉は彼なりの強がりであった。
そもそもアーシアの
しかも受けた傷は神経断裂弾によるものだ。
内部から破壊されているため、ちょっとやそっとでは治らない。
そのため、セージが戦闘に参加するのはこの状況では無理であると言える。
「……チッ。どいつもこいつも邪魔をする!」
一方で、面白くないのはシャドウ成二だ。
イッセーの銃撃を反射したことでセージに致命傷を負わせたが
そのセージを守ろうと怪我人まで出てくる始末。
それに対する怒りの感情が、彼が従えていた悪霊を強化してしまったのだ。
「死にぞこないがウロチョロと……俺は邪魔をする奴には容赦しない主義でな!
半端に生かす理由も無いのだから、こうなったらここで全員始末してやる!
お前達を全員悪霊にして、輪廻の輪から外してやるのさ!!」
そう言うや、シャドウ成二は彼が持つディス・レヴを稼働させて
その攻撃も光実が変身した龍玄の砲撃や、無数の蝙蝠になったギャスパーの攻撃で
制空権は拮抗状態になっていた。
そしてさらに、彼らにとって追い風になる出来事があった。
「……成る程。彼は既に『絆の力』をある程度紡いでいたわけだ。
なら僕からはこれ以上手出しをすることもないな。
その力の何たるかがわかっているのなら、
それに強大な敵を数を以て打ち倒す。珍しい事でもないしね」
「あ、あなたは……一体……!?」
ディエンドが参戦拒否を示したのだ。今さっき足止めをされたバオクゥにしてみれば
ここで自分達の妨害に打って出てこないディエンドの行動は不可解であった。
しかし、その問いに対する彼の答えは決まっていた。
「僕かい? 言わなかったかな、『通りすがりの仮面ライダー』だって。
僕が気にかけていた彼も士の力を行使するのに最低限の条件は満たしているみたいだし
もうこれ以上僕がここに居座る理由は無いかな。
お宝をダメにしてくれた奴に対する制裁も、ある意味果たされてるようなものだしね。
ここで彼や彼の仲間がこの試練に打ち勝てば、僕の意趣返しにもなる」
「……クッ、この期に及んで裏切るか、お前は!!」
そうなると一度は組んでいたシャドウ成二としても面白くない。
呼び寄せた悪霊が乗り移ったかのような怨嗟の声を上げるが
ディエンドは飄々とした態度で歯牙にもかけていない。
「裏切るも何も、僕は君の仲間になった覚えは一度も無いんだけどね。
君風に言うなら利害の一致って奴さ。君だってそいつをいいように利用したんだろ?」
そう。シャドウ成二だって、イッセーを利用するだけしておいて諸共に始末しようとしたのだ。
裏切り云々については、決してディエンドの事を言えた義理ではない。
「……ククク、確かにそうだ。まあ、これ以上敵が増えるというのでなければ
別に俺はお前がどう動こうが知った事ではないさ。
お前の言うお宝とやらにも、俺は興味がない。
人の世の法や平和を犯すのでなければ、どう動こうが知った事か」
「警察官から拳銃を奪っておいて法や平和を語るとはよく言うよ。
ま、それこそ僕には関係ないけどね。
じゃあお言葉に甘えて、今回はお先に上がらせてもらおうかな。それじゃあね」
ATTACKRIDE-INVISIBLE!!
そう言うや否や、ディエンドは姿を消して何処かへと去ってしまった。
しかし、ディエンドの抜けた穴をものともせずにシャドウ成二は悪霊達の機動部隊や
「
数の不利を感じさせない戦いを繰り広げることとなる。
その戦いを辛うじて制したのは、セージを欠きながらもシャドウ成二を倒さんと戦い続けた
白音、アーシア、ギャスパー、光実、バオクゥ、そしてイッセー。
しかし本来、この戦いはセージとシャドウ成二の戦いであったはずなのである。
それなのに、セージはいの一番に脱落し、肝心のシャドウ成二との戦いに関与できなかった。
言わば、セージ不在のままセージは己との戦いに臨むという
不可思議な構図が生まれてしまったのだ。
その事に気づいていたのか、シャドウ成二も負けは認めたものの
セージ自身の戦いに終わりはない、どころか
「意味のない戦いとは言えお前達の勝利は勝利。精々、感傷に浸っているんだな。
だが覚えておけ。宮本成二は『殺されてもおかしくない程の憎悪を実際に向けられている』。
そして『己との戦いの場に出てきてすらいない』という事だ。
ディエンドは納得したようだが、お前達はどうだろうな。
俺を『宮本成二』じゃないと思っているのだとしたら……ククク……
……そう言う思いやりは本当に『絆の力』と言えるのかな……?
本人がどう思おうが、お前達にとって『宮本成二』と言う存在がどういうものか……
全く、いい仲間を持ったものだ。
精々、お前達も『理想の宮本成二』とやらに縋るんだな」
シャドウ成二は負けたにもかかわらず、不敵な笑みを崩すことなく
高笑いをあげながら黒い靄と共にその姿を消していく。
その後、ダメージで気絶していたセージが目を覚まさないまま
リアスらが警視庁公安部に追われる形で合流。
突如顕現したクロスゲートによってまた別の場所へと飛ばされることとなったのだ――
と言う訳で
Aパートが「撃たない」
Bパートが「シャドウ成二を撃つ」
と言う選択肢の結果でした。
今回も戦闘シーンほぼカットですがご容赦を。
今回は正史とは戦闘内容結構異なっちゃいますが……
実はこの選択肢が一番の罠回答。
カメンライドのライダー達との戦闘が回避できるので
はなっから6対1でシャドウ成二を攻略できますが……
この戦いで一番肝心なセージが抜けているので「意味のない戦い」になってしまいました。
シャドウを出し抜こうったってそうはいかない。
しかもその相手が頭脳戦では勝てたためしの無い相手のシャドウとなれば。
相変わらずイッセーアレですけど、如何せん原作からして「反省」が無いとしか……
反省だけならサルでもできるとは平成の時代よく言われましたけど
だからって反省しない理由にはならないでしょう。
そしてさらに意地が悪いのが
「セージを助けるためにシャドウ成二と対峙するが、そのシャドウ成二もセージである」点。
勿論皆(約一名除く)善意で戦闘に参加している訳なんですが
本来向き合うべきである本人が不在のまま当事者の影と戦ったところで……
だからシャドウは「意味のない戦い」と吐き捨ててます。
しかも言外にシャドウ成二を「お前なんかセージじゃない」って周りが物語ってしまっている状態。
シャドウ成二のその後次第では、下手すりゃセージが廃人化することも……
(参考:ペルソナ2罪でのシャドウゆきの戦後)
シャドウはセージを殺すつもりで行動していて、それをいざ周囲が守ろうとすると
こう言う罠に陥るとかちょっと意地悪過ぎませんかね……