幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ……いや割とマジで 作:とるびす
天井が落ちてきたけど頼れる式神が一瞬で消し飛ばしてくれました。
はいあらすじ終わり。
「ふぅ……紫様、埃はかかっていませんか?」
「……ええ大丈夫」
───んなわけないでしょ!?
一瞬気絶しかけたからね!?いやまず地盤がそのまま落ちてくるってどういうことよ!?どんだけ緩んでたのよここら一帯の地盤!
ていうかそれを一瞬で消し飛ばした藍の火力。色々とおかしいでしょ……。
「しかし一体なんだったんでしょうね。私の計測や統計からは本来このような崩落……もとい沈下が起きるのはありえないのですが」
んなこと私に聞いても分かるわけないでしょ!PだかNPだかよくわからない予想を計算したとかいう意味不な無敵の頭脳でなんとかしてくださいよぉ!
……それにしてもあたりに散らばっている残骸、どっかで見たことがあるような。例えばあの趣味の悪い時計台とか。
うん、あれ多分紅魔館よね。忌々しき畜生住人たちとクソガキ吸血鬼が跋扈し、一人の優しい女の子が幽閉されてるクソ悪魔の館。
いや、上で何があったし。
嫌な予感が頭をよぎる中、藍に原因を探ってもらおうとした……その時だった。
”奴ら”が来た。
「おっ、紫じゃん。こんなところで暴れてどうしたのさ」
「おっ、地上の賢者か。いいところに来たね。酔い覚ましにはもってこいだ! それに暴れる奴には暴れて迎えるのが礼儀ってね」
で、でたぁ……!
元・山の四天王の
つまり二人合わさって超ヤバイ奴らってことだ。
ほら歩いてるだけで地面にクレーターできてるし!ベコォ!ベコォ!とか言ってるし!あれか、お前らにとって地面は寒天か!
こんな奴らの存在が許されていいはずがない!
唯一の救いは奴らが自発的には地上に出てこないこと。お願いだから二度と上には上がってこないでね?絶対よ?振りとかじゃないわよ?
面白そうな玩具を見つけた子供のように笑みを浮かべ、こちらに接近する天災×2。すかさず藍が私と奴らの間に入る。
「紫様がやったのではない。勝手に落ちてきたのだ。いちゃもんなら他所につけてくれ」
藍のナイスフォロー!
しかし理不尽には通じない!
「あー……実のところそんなことはどうでもいいのさ。さっきも言った通り酔い覚ましに付き合って頂戴よ。なに、悪いようにはしないよ。鬼は嘘をつかない」
嘘だッ!!絶対嘘だ!!鬼は嘘をつけない種族だって!?それが嘘よ!!
ていうか嘘を本当にするのがこいつらの恐ろしいところではあるのだけど。
「紫様は忙しいんだ。お前たちのような酔っ払いどもにかける時間などない」
「藍は固いなぁ。もっと気楽に生きていこうよ」
「気楽すぎるのも考えものだ」
私はどっちも嫌。
固いのはアレだし、気楽なのもこんなんだし。やっぱり霊夢くらいがちょうどいいわ。いやホント、マジで。
「ハッ、しけた性格をしてるねぇ。……だが九尾。お前さん、私たち鬼に向かって少しばかり生意気じゃないかい?」
「相手が誰だろうと関係ない。私は九尾である前に紫様の式なのだ。主人に生意気な口をきく貴様らになぜ敬意を持たねばならん。ちゃんちゃらおかしな話だな」
「ほう、言うじゃないか」
あ、なんかヤバイムード。一角がバキバキ指を鳴らしてるし藍は袖をまくり始めた。薄っすらと両者の後ろにオーラまで見える。気迫だけで岩石に囲まれたこの空間がミシミシと唸りを上げてる。私も腹から沸々とこみ上げるものを感じていた。つまり吐き気である。
すぐさま目線で我が友人に”止めろ!今すぐだ!”と訴えかける。対して”無理^ - ^”と即答で返された。役に立たねぇ!
「私はねぇ、あんたみたいな高飛車な奴が大っ嫌いなんだ」
「ほう奇遇だな。私も貴様のような脳筋クソダルマな奴は大っ嫌いだ」
ちょ、なんで敵を作ってるの!?貴女さっき橙に色々言った後じゃない!警護って敵を作ることじゃないよね!?
しかし私必死の(心の中での)制止を振り切って、両者はガンを付け合うと拳を振りかぶる。
あ……ヤバめ。
激突の瞬間に私は咄嗟に結界を張ったが、
──ボッ!!
空気が爆ぜ、衝撃が体を打つ。
私は宙を舞った。
「ハハッ、中々やるじゃないか! 次いくぞッ!」
「ふん……脳筋には付き合ってられん。紫様、ここは───って、紫様!? どこへ行かれたのですか!? この藍に何も言わずに!!」
「上の方に飛んでったよ。南斗人間砲弾ばりの速さだったねぇ」
飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで、回って回って回って回ーるー!!
方向感覚が狂ってしまって自分がどこにいるかも分からない。視界がぐるぐる回転して落ちているのかすっ飛んでいるのか。死んではないと思うけど……私死んでないよね?
しかし今私はどこらへんを飛んでるんだろ。イカロスの如く太陽まで飛んでいってるのだろうか。いやもしかしたら地中に落ちていってるのかも。……勢いがなくならないことには何も分からないわね。
高速でぐるぐる回転する視点は私から視覚とその他諸々の五感の全ての機能を停止させた。その代わりに脳が妖生稀に見る勢いで活性化しているのが実感できる!まあだからといってどうすることもできないんだけどね!
そしてその行き所のない思考はどうでもいいことを考えるのに費やされた。
いやまずね、あのバカ式!か弱い主人が近くにいるのに戦闘をおっぱじめるって、どういう教育を受けてきたのよ!主人の顔を見てみたいわホント!
……あ、私を主人って思ってるかどうかは別か。
それにしても今日は幻想郷危険人物のオンパレードだったわねぇ。これで風見幽香まで来たらもうホント……幻想郷が私の胃を殺しにきていると疑わざるをえない。
……いや別に幽香来襲を望んでるわけじゃないからね?振りじゃないからね? フラグ建築とかそんなんじゃないからね!? 絶対出てこないでくださいお願いします!
てかなんかこのくだりが全部振りに思えてくるじゃない! 振りじゃないのに! 決して振りじゃないのにぃぃぃ!!
……おっ? ぐるぐるが徐々に遅くなってきた。やっと勢いが落ちてきたのかな? 今なら私の妖力でもなんとか空中に留まれそうだ。
ふぅ、結局どっちの方向に吹っ飛んだのかもどんだけの時間回っていたのかもよく分からないわね。まあ私が無事だっただけでも良しとしましょう。いや全然よくないけど。
ていうか第二波が来る可能性が無きにしも非ず。届くかどうかはわからないけど「やめろォ!」くらいは言っといた方がいいわよね。声が届けば少なくとも藍は止めてくれるだろうし。……止めてくれるよね?
私はあの二人に制止の言葉を届けるべく自分が出せる最大声量で言葉を叫んだ。
「双方そこまでよ!」
この辺りで推進力が落ち着いた。ピタリと空中に静止する。目が回って視界がブレまくっている。吐き気も再来して私はもうボロボロだ!
しかしここはどこかしら?ヤケに暑いし風もびゅうびゅう鳴っている。灼熱地獄か叫喚地獄あたりに落ちたのかな?
恐る恐る目を開くと……
呆気にとられるレミリアとフランの顔があった。私の首元には槍と剣が突きつけられている。よく見ると霊夢や魔理沙、他紅魔館の連中もいる。
……あれ?
「一体何事かしら?」
こう言わずにはいられなかった。
全く状況が飲み込めない。全員が「なんでこいつがここにいる?」とか「場違い乙」みたいな視線で私を見ている。なんか気まずいし恥ずかしい!そして恐ろしい!
てか暑ッ!?暑い暑い!確かに今は夏だけど暑すぎる!扇子を扇いでみたが熱風が吹いて逆効果だった。当たり前だ!
もっともこの暑さの原因はすぐに分かった。
「フラン、その剣をしまってちょうだい」
フランが燃える剣を持っていたのだ。最近のおもちゃは凄いのね。暑さまでリアル。
フランは素直にしまってくれた。やっぱりいい子!貴女みたいな子がもっと幻想郷に増えるべきだと思うの私。
ていうか今さら気づくのもおかしいんだけどフランの腕とか足がちぎれてるじゃない!?ひ、酷い……一体誰がこんなことを……。
次に気になったのは気持ち悪い風。気分が悪くなってギュルギュルとお腹が唸りを上げる。大衆の前でぶちまけるのは流石にやばいので即刻止めたいのだが……
原因はレミリアの持っている槍だった。
レミリアかぁ。こいつに意見するのはかなり危険なのでそれとなく進言しておく。あくまで進言。意見じゃない。
「レミリア、風は肌に良くないわ。少しばかり抑えてくれると助かるのだけど?」
「……分かったわ……」
仮にもお嬢様。肌荒れは天敵だろう。こちらもさっさと引っ込めてくれた。
さて、これでやっと落ち着いて状況を考えることができるわ。
まず私がいる場所。間違いなく紅魔館なんだけど……館がすっぽり消えている。ていうか色々と酷いことになっている。
なにここ。幻想郷?ちゃうよね?世紀末よね?モヒカンたちがヒャッハーしてる世界よね?
世紀末覇王霊夢……あらぴったり。
じゃないわよ!なにやってんのこいつら!?完全に吸血鬼異変の二の舞じゃない!
これには私も思わず苦言を申してしまった。
「少し度が過ぎましたわね。霊夢、これじゃ異変解決とは呼べないわよ?」
ていうか新たな異変が起きている。
名付けて世紀末異変。
この後諸々の会話で世紀末化の犯人が魔理沙であることが判明した。いや、核ミサイルて……なんでそんなもんが幻想郷にあるのよ!ていうか地盤沈下の原因はコレか!
おふざけが過ぎるわこの爆撃魔女!藍からの追及を覚悟しておくことね!
まあそのあたりの損害賠償は一旦置いといて……
「貴女たち姉妹は何をやっているのかしら?」
なんでレミリアとフランは槍と剣を振り回してたのかしら?吸血鬼の姉妹喧嘩は物騒ね。
だけどやっぱりレミリアの方が何倍も強いだろう。なんたって運命を操っちゃうんだから。対してフランは吸血鬼ってだけの普通の女の子なのよ?そんなの毛虫とダイオウグソクムシが戦うようなものじゃない!それにフランは優しい子なのよ?レミリアに対して反撃なんてできるはずがない!
なるほど……ほぼ無抵抗なフランの腕とか足をちぎったのはレミリアか。
ヤバイわねこいつ。ずっと前からヤバイ奴だと思ってたけどもっとヤバかったわ……!
けどなんでこんなことを?
ただの姉妹喧嘩ならここまで酷いことにはならないはず……。やっぱりなんらかの確執があったりするのかしら?
むむ、優しくてみんなに好かれるタイプのフランを幽閉して、さらにはこんなにボロボロになるまで暴行を加える意地悪で器の小さな姉レミリア……。
……なるほどね(超速理解)
ふふふ……ヒントは今までのフランやレミリアの言葉に隠されていた。そして現在の状況!これで謎は全て解けた!
ここで大賢者八雲紫の観察眼から彼女たちの過去を推測した結果を発表して進ぜるわ!
フランは生まれながらに優しい子でみんなの羨望を集めていた。だけどそれに嫉妬したのが意地悪な姉レミリア!彼女は両親の居らぬ間にフランへ日常的な暴行を加えていた!フランは優しすぎてそのことを誰にも相談できなかったのね。そして両親の他界を機にレミリアの暴行はますますエスカレート!それでも笑って済ませてくれるフランに愛憎に似た何かを抱いた小心者のレミリアはついにフランを監禁したのよ!
ああ……なんという悲劇!可哀想なフラン!意地悪なレミリア!
これはDVだ。レミリアのDVだ!とんでもない姉ね!最終鬼畜姉!
幻想郷の大賢者八雲紫、この現状に見て見ぬ振りはできないッ!!
私は説教垂れるつもりなど毛頭ない。
これもただの進言だ。というより遠回しのレミリアに対するdisりである。
「片方は本気で殺そうとしている……片方はわざと相手に殺されようとしている。滑稽な姉妹喧嘩ね。それでお互い満足できるの?」
もちろん殺そうとしているのはレミリアで、わざと殺されようとしているのがフラン。フランは前から少しばかり自暴自棄になっている部分があったからね。あんな監禁生活してちゃ当たり前よ。
二人の様子を見るとドンピシャらしい。流石ゆかりんと褒めてあげたいところね!
そしてフランに無理な我慢は良くないよ!的な主旨のことを劇に例えつつ言う。内容はノリ。
「貴女たち二人には事の結論をつけれない。だから何者でもない第三者である私がその結論を言って差し上げますわ」
DVってのは無自覚なものが多いらしいのよね。
だから私がはっきりと、しかしレミリアを刺激せず、フランを悲しませない言い方でマイルドに包んで言ってあげましょう。
扇子をわざと音が鳴るよう仰々しく閉じる。そして一言。
「両者に非はない。互いにすれ違い、非を感じあっているだけ。簡単なことよ」
……決まった。
これが模範解答よ。まあ実際はレミリアが一方的に悪いんだけど……全部は悪くないんだよって感じにね。
いざこざっていうのは大抵小さなすれ違いから生まれる。だからこう言っとけば95%はそれでOKよ。ふふふ……私メンタルクリニックのお医者さんになれるわね!
「……貴女に何が分かるというの? 私と貴女は会ってまだ十年も経っていないというのに」
……はぁ?なに言ってんの貴女?
十年よ十年!十年もこの私が貴女みたいなひよっこ妖怪に振り回され続けたのよ!?ふざけんなって感じよ!
十年?ええ、いいじゃないの十年!!
「たかが十年。されど十年ですわ」
あーむしゃくしゃする……!
いや、ここは一旦落ち着きましょう。クールダウンクールダウン。
取り敢えずいつもの笑みを顔に貼り付けておく。これで不審に思われることはないはずだ。
さて、次にどうしましょうか。この場には霊夢がいるという抑止力があるから……多少の発言も大丈夫かしら?うん、大丈夫よね!霊夢ならいざという時に颯爽と私を助けてくれるよね!
それならさらなる真相をぶっちゃけるわ!ここまで来たら引けないもの!
「レミリア、貴女の愛情は決して間違ってはいない。ただ、それが為す結果をフランの優しさと運命に頼りすぎた。そんなことは自分でも分かっている……だから歯痒いのでしょう?」
まあ愛情は全部間違ってるけど少しはレミリアを持ち上げとかないと私の身が危ない。しかし言いたいことは言い切った!
そう、レミリアは運命を見る能力で日々のDVが周りにバレないことを知っていたのよ!フランが優しさ故に告発しないことをね!つまり確信犯だ!
レミリアもばれたっ!って顔をしているわ。ふふふ……図星ってわけね。
そして一気に畳み掛ける!
「貴女は逃げ続けた。だけれどやがては疲弊していって、最後には全てを終わらせようとした。
”死”……という方法を持ってして」
そう、レミリアはついに見てしまったのよ。自分のDVがバレてしまうという運命を!
フランは告発しなかった。だが不審に思った人物は紅魔館にいたのだ! それが図書館の魔女なのか司書なのか……はたまた門番かメイドなのかは知らないけど。
いや、誰が知ったかは問題じゃないの! 自分がDVをしているという疑惑をもたれてしまったのがレミリアにとっては問題だった!
周りの追及をレミリアはぬらりくらりと躱すがやがては追い詰められてゆく! そして追い詰められたレミリアは……唯一の被害者であり証人であるフランを消そうとし、この事件を闇に葬ろうとした!そう、フランの”死”をもってしてね!
そして異変を起こしそのどさくさに紛れてフランの腕と足を切る。ここまでは順調だった。だが止めを刺す前にレミリアにとって想定外の出来事が起こったのよ。霊夢があまりにも強すぎて早々に部屋にたどり着いてしまったってことがね!
その事件現場を霊夢に目撃され、やむ得ずフランを殺して事をうやむやにしようとしたが、そこへ颯爽と現れた探偵八雲紫! ついに事件は明るみに出たってわけ!
なんとも悲しい……卑劣で利己的な事件。
だが名探偵☆ゆかりん、暴いてみせたり!
レミリアも観念したかのように消沈した。ふふ……これだけの人数の前で聞かれてしまったんだもの。逃げようはないわ。
「……一本取られたわ。貴女はフランのことを私なんかよりよく分かっている。貴女とフランが出逢えたということだけで、幻想郷に来た意味は十分ね。素直に礼を言う」
コ◯ンの犯人みたいなことを語り出した。開き直ったのかしら?
「……だけど、どうして貴女は私たちにここまでしてくれたの?それだけが解せないわ」
いやいや、こんな酷いDVを知れば誰も見過ごさないわよ。まあどうしても聞きたいなら幻想郷の賢者っぽく言ってあげるわ。
そしてこんな感じで最後に私からの要望も織り交ぜたものを一つ。
「幻想郷は全てを受け入れる。だけどその後のことは本人たち次第なのよ。ならば……楽しく平和に暮らしてちょうだい。それが私の願いなのだから」
争いは何も生まないのよ。だから楽しく静かに温厚に……ね?
私はこの暴力と恐喝が支配する幻想郷から争いを消したい!まあ格下の妖怪とか一般の人間とかならどうぞドンパチやってくださいって感じだけど、貴女たちはダメ。絶対ダメ。
……最後の最後にレミリアにもそれなりの花を持たせてあげようかしらね。結局のところ愛憎から始まった悲しい事件だったんだから。
レミリアの捻くれた性格さえなければ本当は仲良き姉妹としてやれてたんだと思う。フランもレミリアを愛していたからこそDVを告発しなかったんだろうし、地下室で話し合った時もレミリアのことを悪く言っている風なことはなかったしね。
「フランのことを一番わかっていて、一番愛しているのは貴女よ、レミリア。そのことは否定しないであげて? それがこの子にとっての誇りであり、誉れであり……本当の喜びなのだから」
ここまで持ち上げればレミリアも少しは思うところがあるでしょ。改心とまではいかなくても多少の後ろめたさは感じるようになるはずだ。悔い改めるといいわ!
するとレミリアは少しプルプル震えると私から顔を背けた。……貴女もしかして私のことをせせら笑ってる?反省してるの貴女!?
……ん?フランは未だに浮かない顔をしていた。まだ悩み事があるのかしら。
「……私はもう私じゃないの。壊れた心はもう二度と戻らないから……いやけど別にこれが嫌だとかそんなんじゃないの。私は満足してるのよ? だけど心がない私にお姉様たちと一緒にくらすなんてそんなことできるはずがない。お姉様も迷惑だろうし、みんなも私を────」
うわぁ……すっごい傷ついてるじゃない。これなんかトラウマみたいなことになってるんじゃないの? レミリアって本当にとんでもない奴ね! 思わず抱き締めちゃったわ!
けど大丈夫!
「そんなことないわ。心とはただ在るものじゃない。生まれ育むもの、そして繋がるもの。そんな簡単には無くならないものなのよ。非常に厄介なことにね」
どうよこのノムリッシュ感溢れる素敵な言葉は!けど実際そうだと思うわよ?さとりもそんなこと言ってたし。
……あいつそういえば「メンタルケアもやってますよ。まあ、貴女のような崇高な賢者様(笑)には不要でしょうがね(嘲笑)」とか言ってたわね。それならさとりのことを紹介しておこうかしら。
幻想郷において心理学やら精神学やらであいつの右に出る者はいないだろう。……若干……いや、かなりの不安はあるけど。
というわけでフランと通院の約束を取り付けた。……結局地霊殿には行くことになるのね。私の決心ってホント緩いわ。
するとフランは浮かない顔をしつつ、上目遣いで私を見る。
「……なんで私にこんなにしてくれるの? 私は紫に何もしてあげれないのに……」
そんなことないわ。私は貴女に癒しという名の心地良き安らぎを
それに貴女と私は友達なんだからね!
そしてちょっとしたエールを送った後、さらにギュッと抱きしめてあげた。フランは涙を流してそれを拭う。ああ、本当に辛かったのね……。
話し終えたフランはレミリアと向き合う。どちらともが居心地悪く視線を逸らしている。まあ、最初はこんなものでしょう。長年に渡る確執とはそれほどまでに深いのだから。
「まあ、まだまだ難しいところもあるでしょうね。だけどそれは時間が解決してくれる。ちょっとずつ前に進みなさい」
そして締めの句。時間は全てを解決してくれるという名言を引きずり出して私からのアドバイスは終了よ。
少なくともこれでDVはある程度抑えれるはずだ。ごめんねフラン……私に力があれば貴女を助けてあげるのだけど。力のない自分が恨めしい……!
さて、これで一応は一見落着かしらね。
けどもっとまずいことを忘れているような? なんだっけ?
………………あっ。藍たち放置したままだった!!
やばいやばいこのままじゃ地底が消し飛ぶ!急いで戻らないと!
私が背を向けた後も霊夢やらフランやらが何かを話していたが、私はそれを聞く暇もなくスキマへと飛び込んだ。
最後までその場にいてあげるのが一番いいんだろうけど、生憎地底の……引いては幻想郷の危機なのよ!幻想郷は私が守る!
……ふと思ったんだけど、私っていつになったら寝れるんだろう?
睡眠っていうのは大切なことなのよ?
睡眠が不足すると免疫とか自然回復能力が低下するの。特に成長期での睡眠不足は成長ホルモンへの悪影響を与えて後遺症が残ったりする!
つまり万年成長期である紫ちゃんはもっと睡眠をとるべきであってね?
え、ダメ?
注:当事件はフィクションです。実際の団体や個人名が登場しますが本当にフィクションです。なので警察の方は座って待機をお願いします。
ゆかりんは頭の回るバカ。
そして難しい台詞回しを敢えて好む厨二病。いい年してこれか……
レミリア→鬼畜!
フラン→優しい!
という固定概念の結果ですね。そして霊夢が居ることで少々調子に乗った結果、このザマである。
何か矛盾があれば即修正します。
なんていうか……正直すまんかった。次回は日常回か吸血鬼異変になります。
???「どっちになってもゆかりんの胃はここで終わりだがな!」