幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ……いや割とマジで   作:東方兎流陽寿

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蓬莱山輝夜の永夜異変三分間クッキング(仕込み)

 

 

仮に、である。

 

 大多数と個人、そのどちらかを見捨てねばならない時、人は一般的に後者を選択する。対象者の意思など関係なしに選択は為されるのだ。

 見知らぬ者に意の介在による余地などあるはずも無く、"意思"よりも"数"という選定条件が課される。所謂、功利的、合理的と称される常識思考。

 幸福の最大化とはよく言ったものだ。

 

 だが、個人が知り合い……それも己が愛する程の者であるとするなら、その限りではない。"価値"の介在が生じた時、人は確かな思考能力を故意的に消失させるのだ。愛故に狂ってしまった者など歴史上でも珍しくない。

 途轍もないエゴ。

 

 それらは全て自己愛から転じたものだ。自身の欲が齎す破滅よりもタチが悪い。

 それでも人は、逃れることができない。人を辞めても、何年の月日が経とうと……それは決して変わらずに心を蝕み続ける。

 

 永く生きた者にはそれが分かるのだ。だからなるべく関係を断つべく努力する。てゐも、況してや永琳でさえも、心のバグについては悉く無力で、どうすることもできないのだから。

 

 

 ならば、と。

 愛を受けたからには、それに報いるのが最大の奉公といえよう。

 たとえ相手が望んでいなくても、その人の為になるのなら、どのような道化でも演じてみせる。何を捨てても構わない。

 

 安息と時間……これだけあって、何が必要だと言うのか。立場は違えど想う事は共通していた。地上も月も関係なく、妖怪も蓬莱人も関係なく、"価値"の一致のみが二人の運命を手繰り寄せた。

 

 

 さあ、異変ももう終わりだ。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 ポタポタと血が滴り、藍の金色の尾毛を紅く濡らす。永琳が手に感じる生々しい感触は、自分の策略が成った事を暗に示していた。

 

 矢に塗られていたのは従来の通りの毒薬ではなく、藍達が求めていた解毒剤そのものだった。だからといって永琳が藍の治療の為にそれを投薬したというのは、大きな間違いである。

 良薬も過ぎれば毒となり身を滅ぼす。初めから、完全な解毒薬など存在しなかった。

 直接的には毒を打ち消す効果を与えても、毒の強さに比例してそれに伴う影響は劇薬となり、服用者を襲う。

 

 多量の毒を服毒した藍には、間違いなく致死量に届くだろう苦しみを与える筈だ。

 藍を殺せば後に残るのは霊夢のみ。そしてその霊夢の攻略法も既に考えついている。

 

 胸を突き上げるは程良い達成感。それらを満たしていく確かな充足感。そして藍から溢れた小さな呻きに、永琳は自らの選択の成功を予見した。

 

 

 だが、状況は一変する。

 異常にいち早く気が付いたのは、息を飲んで場を見守っていた魔理沙だった。

 何やら不自然だ。

 矢は確かに藍の尾へと突き立てられている。しかし、その付近が黒色の何かに染まっており、そこから血が溢れ出している。

 

 暫くして判った。

 アレは黒に染まっているのではない。ぽっかりと穴が空いており、それが暗闇を湛えているのだ。つまり矢は藍に届いていない。

 やがて全員が気が付いた。

 そして全員が、ほぼ同時に目を見開いた。

 

 生え出たのは一本のしなやかな手腕。矢はそれを貫通し血を滴らせている。

 永琳は思わず一飛びで藍から距離を取る。あり得ないはずの出来事に眉を顰め、油断なく霧散しかけた霊力を再び練り直す。

 

 そんな永琳とは対照的に、腕はしばしの硬直の後、ゆっくりと動き出した。手探りするように虚空を何度か空振るともう一本の腕を引き出して空間の縁へと手を掛ける。

 そして身を乗り出した。

 

「よっこい、しょ…」

 

 悪ふざけのような掛け声を上げながら彼女は現れる。どこまでも美しく、妖しく、激しく静かで……見るもの全ての心を奪う境界の住人。

 いたる所が欠損しており、それを埋め合わせるようにスキマが不気味に蠢き周囲をぐるぐると見回している。

 

 消滅したあの姿とほぼ変わらぬ姿形を見せつけながらも、どこか無機質にも思える微笑みは、見る者に否応なく警戒を抱かせる。

 藍の尾とスキマの境目へ手を掛けもたれかかると、戯けるような声音で言葉を発する。

 

「まったく、随分な仕打ちですこと」

 

 まるで他人事のように。

 そして一瞬だけ顔を顰めると掌を空へと掲げ、愛おしそうに自分の胸元へと運ぶ。

 

「撃つ、斬る、衝く、放つ、殺す……何を取っても私には効きません。しかし、この痛みだけは敢えて残しておく事にしましょう。そうじゃないと、この子達に示しがつきませんわ」

 

 止まらずに流れ続ける血液を宙に散らして深く刻みつける。ここであった事を忘れぬよう、痛みを深く、さらに深くへ───。

 

 永琳は思わず額を抑えた。

 

「……これは、流石に想定外」

 

 苦々しく呟く。

 

 

 音も無く地へ降り立つと、全てを見透かすような淡い桔梗色の瞳で周りを一瞥する。

 

 そして八雲紫が示した感情は怒りでも、憎しみでも、悲しみでもなかった。

 それは喜び。

 仲間達が傷付き倒れていることへ明らかな喜色を表していた。

 

 永琳は勿論、霊夢や藍も困惑した。

 

 

「アンタ、ゆか……違う。擬きの方ね!」

「ハァイ霊夢。かれこれ半年ぶりくらいかしら? 私のレクチャー通り精進しているみたいで何よりよ。魔理沙の方は……迷走してるみたいね?」

「お前っ生きてたのか!?」

「いいえ死にましたわ。……いや、消滅した、の方が正しいのかしら。そこらへん、実際はどうなんでしょうねぇ?」

 

 あっけらかんと言い放つ言葉ではない。だが彼女にとってはその程度のことなのだろう。まるで他人事のようだった。

 

 ふと、レミリアと咲夜を一瞥する。おもむろに頬緩ませると妖力を纏った一薙を放ち、途端に特別な力が二人を包み込む。

 

「まさか貴女ともあろう者がねぇ。本来なら考えられないことだわ。だからこそ、大いに助けとなった。私は貴女達へ最大の賛辞を贈りましょう」

 

 境界操作の能力の一端であることは一目瞭然で、失われていた生命力がこんこんと漲りまるで時を戻すかのように傷が塞がっていく。

 ついには変わらぬ姿へともと通りに。

 治癒能力、というよりは復元能力。医者要らずとも言える出鱈目な力に永琳は厳しい表情を浮かべる。だが、まだ想定内だ。

 

 続いて幽々子と妖夢へと向き直る。

 

「幽々子……いつの世を隔てても貴女は尽くしてくれるのね。貴女のような親友を持つことのできた()()()は、さぞ幸福なことだったでしょう。私からも、貴女達へ最大の感謝を」

 

 先程と同じく淡い力が二人を救う。消滅とともにあやふやになりかけていた存在の境界を定めて幽々子の霧散を防ぎ、尚且つ傷を塞ぐ。

 "境界を操る"とは物事に仕切を付けることや内容の改変だけを指すのではない。あやふやな物を自分の意思のままに定める能力でもある。

 

 次にアリスへ。

 真実か虚像かも分からぬ姿に笑みを深める。

 

「貴女は……ふふ、私から言えることは何もありません。だけど嘘に塗れた姿や力だったとしても、使い方を誤りさえしなければ問題はないのよ。今夜は一時の気の迷い。偽物が蔓延る世界に、貴女の決意は少々酷でしたわね」

 

 あやふやなままでは生きづらいだろう、と。『夢と現の境界』すり替えることで、人形のように色のないアリスに豊かな色彩が戻っていく。

 アリスを哀れに見た紫からの情けだった。

 

 

「橙。貴女が居なければ私はこうして幻想郷の地を踏むことなく、最悪の未来が訪れていたことでしょう。よくぞ務めを果たしてくれたわ……いつの日も、貴女は八雲の誇りよ」

 

 事実、橙が成した事の大きさは余りあるものである。彼女がこの場に居たから、紫は身体を構成できたのだ。彼女の中に隠された八雲紫のデータを使って。

 後は()()()に迷いの竹林で遺した保険を使えば、こうして春雪異変と同じ状態で再臨することができる。

 何にせよ、橙が居なければ何も始まらなかった。

 

 残るは、弔いの為に全てを投げ打った己が式だった妖獣。紫の為に自身の存在すら否定して力を得──……そして敗れた。

 正確にはいま目の前に居る紫は主人のそれではない。だが

 

「紫、さま……っ、わたし、まだ、許可を……」

「……藍。死ね、なんて命令は下してないわよ?」

「おっしゃる、通りです」

 

 苦しそうに俯く藍を尻目に紫は片手で大きなスキマを展開する。直感的に何か嫌なものを感じた。だが、もはや為すがままに受け入れる。

 

「血肉を構成する全てが不足しているわ。今度こそ貴女の力……いえ、全てを貸して欲しい。貴女は……八雲紫に命を捧げても構わないと、こんな状況でも言い切れる?」

「は、はは……私なんかで、宜しいのですか?」

 

 取るに足らない愚問であることは紫自身が一番よく解っていた。あの八雲藍がこれ以外の答えを持ち得るはずがないのだから。

 藍はいつもこうやって命を掛けて紫を慕い続ける。そして死んでしまう。

 

 もう、そんなのはうんざりだ。

 

「今宵の出来事は全て質の悪い夢幻(ゆめまぼろし)。目を覚ませば何時もの(うつつ)が出迎えてくれる。さあ、ゆっくりおやすみなさい」

「また、あの方とともに……?」

 

 

 ──多分、ね。

 

 

 言葉とは裏腹に紫の笑みは深い。絶対の自信をもたらしてくれる頼もしいものだった。

 そうだ。これが……紫の笑みだ。

 

 安心した。

 この悪夢は所詮は幻なのだと想いながら……消えてしまった主人の事を最後まで案じながら、甘んじて身体を投げ出した。

 

 スキマの中に吸い込まれたのを確認し、紫は入り口を閉じる。これで今宵の罪と過ちは全て赦された。残されたのは償いのみ。

 ありがとう、と何度も頭の中で反芻する。

 

 

「──終わらせましょう。短くも永かった異変の締めを務めさせなきゃね」

 

 

 空洞の先にあるのは虚無を湛える瞳。真の意味で地上と月の賢者が相対した瞬間である。

 

「こんにち……いえ、今はこんばんわ、でしたわね。こんなにも醜い月が幻想郷の美しい夜空を汚しているのですから」

 

 くるくると、扇子で螺旋を描く。月が彼女の背後を彩るが、偽物の月では些か力不足のようだった。紫を引き立てるには弱過ぎる。

 

()()()()()。八雲紫と申しますわ」

「……でしょうね。けど生憎、貴女とは初めましてでもないし、二度と会うつもりもなかったわ。さっきのアレは影武者だったとでも?」

「ふふ、月の頭脳とも謳われし者がそのような考えにしか行き着けないなんてねぇ。永く生き過ぎて頭が劣化しているようですね」

 

 煽っているつもりなのだろうか。

 しかし八雲紫の言う通り、少しだけ思考能力が鈍ってきていることは事実だ。じっくりと目の前の隙間妖怪について考察を深めたいところではあるが、時間と状況がそれを許してくれない。

 

 永琳の最優先事項は八雲紫の抹消。それは依然変わりなく、失敗したのならすぐに修正しなければ。

 もはや霊夢や魔理沙に構っている暇はない。

 

 そしてそれはもう一人の蓬莱人にとっても同じこと。

 永琳とは対照的に、妹紅は獰猛な笑みを浮かべながら嬉々として立ち上がった。

 

「わざわざもう一度出てきてくれるなんてなぁ! そうさ、こんなに簡単にくたばってもらっても困る。お前は是非とも私の手で殺らないと気が済まん!」

「あら貴女も私を?」

「当たり前だッ!」

 

 並び立つ二人の蓬莱人。瞬間、永琳と妹紅の思惑は合致し、成り行きでの協力体制が構築された。互いに互いを良くは思っていない二人ではあるが、共通の敵が居れば話は別。二人の戦闘における柔軟性は非常に高かった。

 しかしそんな永琳と妹紅の鋭利的な殺気もどこ吹く風と、紫は涼しい顔で受け流す。

 

「悪いけど、貴女達の相手をするのは私の役目ではないわね。蓬莱人の相手なんてただの骨折り損ですもの。面倒なことは御免被りますわ」

 

 だから、と薄く微笑む。

 

「相応の相手を用意します。それも貴女達の納得のいく形で」

「……なんですって?」

 

 疑問の声を上げる。しかし、その呟きは八雲紫の変化とともに噤んだ。

 身体を構成していたスキマが次々に縮小し、完全な生身へと修復されているのだ。ただ一箇所、ぽっかりと空いた左目を除いて。

 それに伴い紫の妖力ははっきりと定まったものへ蓄積される。その供給源はというと、迷いの竹林そのものだった。どうやら随分と昔から何らかの策が講じられていたようだ。

 

 そして肉体はほぼ完全なモノヘ。

 あとのピースはひとつだけ。

 

「霊夢、貴女に頼みがあるの」

「……アンタが私に? 悪いけどアンタのことは全然信用できないわ」

「ふふ、それでいいわ。むしろ私を安易に信用するならそれこそ終わりですもの。だけど彼女の危機なら手を貸さないわけにはいかないんじゃないかしら?」

 

 変にぼやかした言い方ではあるが、彼女というのが誰を指しているのかはもう分かっていた。そして、悔しくも紫擬きの言う通りだ。

 

「コンガラも、それでいいわね?」

『アンタに指図を受けるのは気に食わんがな。巫女が望むなら致し方あるまい』

 

 旧知の仲であるような紫の態度にコンガラと呼ばれた陰陽玉の中身がぶつくさに答えた。なおコンガラという名前は霊夢にとって初耳だった。

 

 

「紫をお願いね。あの子は……とても弱いから」

「は? どういうこと……」

 

 疑問は届かなかった。目を閉じると同時に眩い光が紫を包み、今までの存在とは違ったモノへと昇華を遂げる。

 

 綺麗なままの姿は最後に見たあの姿と全く同じで、恐らくその内にある心もまた、同一のものなのだろうと霊夢に確信させた。

 

 そして再度開かれた瞳は周りを右往左往した後、大きく見開かれる。

 

「……えっと、何事かしら?」

 

 紡がれた八雲紫の第一声は、いつものように突拍子がなく、思わず首を傾げたくなるものだった。取り敢えずど突いてやりたくなった。

 だがそれがいつもの八雲紫たる所以なのだろう。

 

 霊夢は小さな溜息を吐いた。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 連綿と続いていく記憶の鎖を辿った。私が体験した様々な事が浮かんでは吸収され、私を形作っているような、そんな感じ。

『ドグラ・マグラ』の胎児の夢なんて話があるけど、正しくこんなものなんだろうか。つまり私はいま胎児そのもの…?

 

 時はどんどん加速する。

 辛い日々、悲しい日々、(少しばかりの)楽しい日々……どれもが私を私たらしめる大切な出来事の連続でできた毎日。

 

 紅霧が幻想郷を覆った。

 春が一向に訪れなかった。

 友人が暴れまくった。

 

 そして、今日の異変は──。

 

 ……結局なんの異変だったの?

 何だか急に馬鹿らしくなってきたわね。目的も曖昧なままに勢い余って暴走しちゃった為にこんな目に遭うなんて!

 

 そうよ思い出した!

 最後の記憶は、永琳に変なチート技を使われて奥の手不発。そこから一気に窮地に追い込まれ……そして……今ここに立っている。

 

 見覚えのある和室。死屍累々の惨状。

 血生臭さと魔法の匂いが辺りに充満している。

 

 

 ──……ドウシテコウナッタ?

 

 

「……えっと、何事かしら?」

 

 流石の私もこれには呆気にとられた。だって目を開けたらいきなり状況がガラリと変わってて、尚且つこの惨状ですもの! まーた変な技で時が弄られたというのかしら?

 まず何がどうなったらこんなことになるのか……。皆目見当もつかないわ。

 

 橙にアリス……幽々子やレミリアとその従者たちまで……! 前作ボスが噛ませになったような凄い落胆と絶望を感じるわ!

 てかアリスってば何か縮んでない? いや寧ろこっちの姿の方が私にとっては見慣れているというか……。アリス(魔界のすがた)って事でいい?

 

 いやそもそもね、私は今なにをしていたの? 記憶が曖昧でどうにも状況が掴めない。確か最後に覚えてるのは……藍が私の前に飛び出して、それから……うぅ、思い出せない!

 ホント、唐突に自分の知らない世界に投げ込まれたような、よく分からない感覚ね。

 走馬灯という可能性もなきにしもあらず!

 

 てか手のひら痛ぁ!? ちょっ、変な弓矢がぶっ刺さってるじゃないのよ!? ひぃぃ貫通してるぅぅ!! 血もどんどん流れててこれは……出血多量で死んじゃったりしませんかね…?

 一先ず抜いてみようと頑張ってみたけどビクともしやしねぇ! 一応の気休めでスキマから取り出した包帯を巻いておきましょう! 痛いなぁ……!

 

 取り敢えず流れに身を任せてみようと挙動不審に周りをキョロキョロしていると、突然霊夢が私の肩を小突いた。何時ものジト目で私を見遣る。

 あっ、貴女は無事だったのね! いやホント良かった! 貴女までやられてたらどうしようかと……。

 

 ふふ、霊夢は今日もばっちり可愛いわね! それになんか焔みたいなオーラが出ててすっごくカッコいい! 後で出し方を教えてもらおう。

 

 ……って、あらら? さっきまで一緒だったのに久し振りに会ったような感覚だわ。

 んー?

 

「いつまで寝ぼけてんのよ。ほら、やるわよ異変解決」

「異変解決? ……ああ、そうだったわね。その為にここまで来たんですもの。目的は達成しないといけませんわ」

 

 霊夢のおかげで大元の目的を思い出すことができたわ。そうじゃないと何だってこんな所に居るんだって話よね。

 そう! 邪智暴虐なる竹林の帝王、因幡てゐと極悪月人、八意永琳を倒すのよ! ……ところでさっきから私に殺気を飛ばしてる銀髪×2にどういうリアクションを取ればいいんだろうか。

 今現在で考えられる限り最悪の組み合わせじゃないの。八意永琳だけでも手に余るというのに……!

 

 モンペの変人……確か藤原妹紅だったっけ? アレが敵方なのは何となく分かる。スイスとパナマの国旗を足したようなファッションをしてる方の月人と合わせて奇抜二人組ね。

 アレも敵なのよね?

 

「永琳はいいとして、もう片方はどのように? 敵として扱えばよろしくて?」

「アンタが好きにすればいいわよ。私が残りのヤツを相手してあげるから」

 

 ……んん? 話が噛み合わない……。

 あとついでに赤十字お姉さんから向けられる殺気が一気に膨れ上がった。あっ、これは敵ですわね間違いない。当たり前の事が再確認できた。

 

 ……ま、まあ何でもいいわ。霊夢がここに居るんだから私達に負けはないわ! さあ霊夢、ちゃちゃっと二人を倒しちゃって!

 

 自然な形で後退りしつつ霊夢の背後へ回る。だがその時に気が付いた。

 霊夢の口の端が持ち上がってる。

 

 ……はて? 霊夢ったら、何でそんな楽しそうに笑っているの? こんな事になってるのに……何か良い事でもあったのかしら。

 ま、まあ楽しいなら何よりよ。

 

「ふふ、どうしたの? 霊夢。そんな嬉しそうに笑っちゃって」

「何でもないわよ。さあ、さっさとこの面倒臭い異変を終わらせちゃいましょう」

「え、えぇ……」

 

 非常に頼もしい限りではあるのだが霊夢の言葉から強い違和感を感じたことは言うまでもない。まるで私に戦闘の参加を呼びかけているような……。

 そんな冗談はよして欲しいわね! 幻想郷の頂点に立つ妖怪達を降した(んだと思う)敵に何の助力ができるってのよ! もう貴女だけが頼りよ! 魔理沙はなんか消沈しちゃってるし!

 

 てかなんなのこの構図!? なんで2対2みたいな感じになってるんですかね!?

 いやホント、勘弁ならないかしら。そりゃあ霊夢のベストパートナーは勿論私だけれども、こと戦闘面においては魔理沙にお譲りしてたはずなのに……!

 

 マジでダメよそれは! せっかくなんか命を拾ったっぽいのにぃぃ! 誰かの助けは……そうよ! 藍は何処にいるの!? 助けてぇぇぇ!!

 

 

【今は休ませてあげなさいな。式は酷使してこそだけど、壊れてしまえばそれで終い。超えてはならない領域への線引きはその主人たるものの重要な責務ですわ。そうじゃなくて?】

 

 いやいやそうかもしれないですけどね……! そもそも酷使してるというか藍が酷使されたがってるというか。藍に頼りきりなのは事実だけど……。

 

 ……ってか私の脳内に直接……!?

 ど、どなたですか?

 

【お気になさらず。それに喋るのは今回が初めてのことではないでしょう? ほら春雪異変の時に少しだけ……】

 

 心当たりが無いわけじゃないけど……まさかあの時の雑魚妖怪!? おのれ、よくもおめおめと私の脳内に現れてくれたわね…!

 アンタの所為で酷い目に遭ったんだから!

 

【雑魚妖怪、ねぇ。……まあ否定はできません。貴女とほぼ存在を共にしているようなものですし、残当でしょう】

 

 まーたイミフなこと言ってるわこの人。特に『存在を共にしてる』ってところがなんか気持ち悪い。なんかヌルっとした感触がするわ。もう一人のワタシ……所謂AIBOってこと?

 そういえば声音が私と似ているような……。

 

 まあいいわ。よく分かんないし。

 それで、今回はなんの用なの? 生憎のところ私は今すっごく忙しいのだけれど?

 

【ふふ……放っておいたらまた死んじゃいそうなんですもの。本来ならあの時のように身体を()()()()()()()対処したいところですが、諸事情あって力の行使は最低限に留めたいわ】

 

 なるほど、春雪異変の後の妙に私へのヘイトが高かった幻想郷世論の原因はAIBOの所為だったってわけね。許すまじ……!

 だが今は突然現れたAIBOに構っている暇などない。力を貸してくれないんならさっさと往ねって欲しいんですが……。

 

【邪険に扱わなくてもいいじゃない。貴女はまだ分からないことばかりで、今回の事の重要性に気が付いていない。身に付けた力もこれでは無に等しく、そう、正しく豚に真珠と言ったところかしら】

 

 そこは宝の持ち腐れでいいじゃないの!

 だがAIBO露骨なスルー。

 

【それに、あの程度の火の粉なら貴女でも十分ふり払えるはずですわ。今の貴女は本来の私に程よく近いのだから。楽勝よ楽勝♪】

 

 無理言うなあぁぁぁあ!!

 

 




結局最後は結界組なんだよなぁ

ゆかりん初陣! なお蓬莱人二人相手とかキツすぎやしませんかね……?
次話はほぼ出来てますので早ければ明日にでも……。お待ちくださった読者様には申し訳ない限りです……。

特に言う事は無いけどナイトメアダイアリー(略してメリー)は最高でしたね……。

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