幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ……いや割とマジで   作:東方兎流陽寿

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敗戦処理って楽しいよね(hoi脳)


今昔幻葬狂〜永〜
八雲紫の後悔


 

 

 妹紅が最近おかしい。

 

 今の彼女を例えるなら、まさに茫然自失といった様子で、何にも興味を示さず家の片隅でへたり込んでいる。外出を勧めても飯を作っても反応がないのだ。

 おまけに一睡もしていないようで……もしかしたら私の見てないうちに一度くらい死んでしまっているのかもしれない。

 

 ……正直、こんな妹紅は二度と見たくなかった。まるであの、妹紅と初めて会った時をそのまま繰り返しているようだ。

 これじゃただの廃人だ。

 

 一体何があった? 私が昏睡している間に竹林では何が行われていたのだ? 妹紅を連れてきた永遠亭の兎、鈴仙に尋ねても難しい顔をするだけ。

 だが一言告げられたのは、

 

『八雲紫とはもう関わらせない方がいい』

 

 との事だった。

 ここまでくれば馬鹿でもわかる。妹紅をこんなにしてしまったのは、間違いなく八雲紫のせいだ。よくよく思えば、妹紅が頻りに言っていた『恐ろしい妖怪』とは彼女のことだったんだろう。

 

 妹紅は紫が人間を食ったと言う。

 ならば、紫の『人を食わない』という言葉は虚偽だったのか? 私は……妹紅か紫のどちらかを信じるなら、勿論妹紅の方を信じたい。

 様々な要因があったにしても、私が紫を信じていたのは、人間不喰の誓いがあったことに大きな一因があるのは否定できない。

 だが奴にとって人里とは、人間の養殖場に過ぎなかったのかもしれない。阿求の想いをよく知っていながら、それを無碍にして露骨な餌を与え弄んでいたのだとしたら……!

 

 それは紛う事なき裏切りだ。

 奴や幻想郷そのものへの信頼の揺らぎに直結する。それだけ、私は許せないのだ。

 

 

「なあ妹紅。いい加減なんでもいいから口に入れよう。……どうせ死なないんだ、我慢したって苦しいだけだろう」

「……」

 

 今日も相変わらずうんともすんとも言ってくれない。深い隈と闇を湛えた瞳で私の方を一瞥するだけ。そしてまた虚空へと視線を戻す。

 精魂を悉く摩耗しているのか……。

 こんなの、意味のない生き地獄じゃないか。

 

 私じゃ、妹紅を動かすことはできない……?

 

「……輝夜を連れてくれば、何時ものお前に戻ってくれるか? もしそうなら……私が何としても輝夜をここまで連れてこよう。永琳が止めようが、紫に目を付けられようが、絶対に……!」

 

「──違う。違うよ慧音」

「っ!! 妹紅……やっと、話してくれたな……」

 

 消え入りそうな声だったけど、妹紅は確かに私の名を呼んでくれたんだ! よかった……ようやく事態が良い方向に進んでくれた。今のうちに妹紅を何時もの姿に戻せれれば、御の字だな。

 取り敢えず聞けることを聞いてみようか。

 

「どうしたんだ妹紅……お前らしくもない。お前の身に一体何があったんだ?」

「……今いる場所が解らない。果たして夢なのか現なのか、過去なのか未来なのかも……。何をしても全てが無駄なような気がしてさ、やる気が起きない」

「お前はお前だ。ほら、夢じゃない」

 

 力無い妹紅の手を握る。若干握り返すそぶりを見せたが、やがては動かなくなってしまう。力は失われていないはずなのに……。

 

 ポツリポツリと妹紅は昔話を言い聞かせるように語り始める。そしてそれに合わせて、瞳からは雫が流れ落ちていた。

 

「目を瞑ったらあの時が何度も脳裏をよぎる。最後には記憶通りメリーが喰われて……八雲紫は……あ、あぁ……ッ!!」

「大丈夫か妹紅!?」

「あ、あいつの顔はメリーだった! 変わらない顔で言いやがったんだ……『全部嘘』だって……、触れちゃならなかったんだ……あいつには……!」

 

 震えて、涙して、えずく。胃の中に何も入っていないからだろう、吐瀉物の代わりにどろりとした固形の血塊が吐き出された。

 私は、何も言ってやれなかった。

 

 妹紅に掛けてやる言葉が見つからなかった。

 思わず生唾を飲み込んだ。

 

「慧音……私は、もうダメだ。アレに関わっちまったのが、運の尽きで……もう逃れられん。だがせめて、お前や輝夜だけでも……頼むよ」

「教えてくれ。八雲紫とは、なんだ?」

 

「予想に過ぎないけど……アレは、あの時間は本来起こり得る筈のない出来事だった。逆だったんだよ。八雲紫は……あいつは───」

 

 

 

「──!?」

 

 紡がれた言葉は到底理解できるモノではない。

 だが何故だか納得できたんだ。点在していたピースが一斉に合致を始めるような、確信に似た恐ろしいナニカが、私の感情を支配していた。

 

 そして早急に調べる案件が出来てしまった。

 もはや八雲紫への怒りなど消え失せていた。あるのは謎の焦燥感だけ。

 

 こんなことを理解して、私に何ができるのだろう。……いや、そもそも何かする必要などあるはずが無いのだ。

 だけど、看過できないこの想いは、決してマヤカシなどでは無いんだろう。

 

 

 紫……お前は一体、何をしているんだ? 何を思って今を生きているんだ……?

 誰か、教えてくれ。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 誰か私に説明してくれないかしら?

 

 なにがって……この状況ひいては情勢についてよ! 頼れる人は居ないし、AIBOは滅多に話しかけてくれなくなったし……!

 この私一人で幻想郷の運営なんかできるわけがないでしょうが! いい加減にしろ!

 

 はぁ、はぁ……!

 落ち着きましょう。私は冷静沈着な思慮深き賢者。例え心の中でだって騒いだりしない。淑女は狼狽えませんわ。

 

 さて、まずは気持ちの整理という意味も含めて現在の状況について振り返ってみましょう。ていうか今のところそれしかできない。

 

 

 異変後、混乱が収まり次第処分を言い渡すと永琳たちに告げて、傷付いた皆の送還や、幻想郷連合解散式などを行った。途中博麗神社の一画を貸し出す盟約が霊夢に知られてしまって一同ボコられるという不祥事もあったが……ええ、何も問題はないわ(白目)

 

 はぁ……もうね、レミリアとメイドを紅魔館に送り届けた時の連中の殺気よ! フランが止めてくれなきゃパチュリーあたりに消し炭にされてたかもしれないわね。かく言うフランもめちゃくちゃキレかけてだけどさ!

 なんで私が悪いみたいになってるんだろう……AIBOからは『実際貴女が8割悪い』なんて言われるし! 私が何をしましたってのよぅ!

 ちなみにアリスと魔理沙も紅魔館で下ろしたわ。アリスの怪我は特殊らしくてね、パチュリーの手を借りたいんだと。……私的には魔理沙のメンタルケアも必要だと思うのよね。多分。

 

 幽々子と妖夢に関してはロリっ子閻魔の映姫に連絡を入れておいたから、是非曲直庁の職員が治療に当たってくれるだろう。

 本当なら私が彼女たちの看病をしたいという気持ちは勿論ある。だけどいかんせん多忙すぎてね……お見舞いに行った時には沢山差し入れを持って行ってあげる事にしよう。

 

 藍と橙は我が家で療養中。どっちも未だに目を覚まさず死んだように眠っている。

 AIBO曰く、大したことない傷らしいが、アレだけの事があった後ですもの。万が一の光景が何度も頭に浮かんできて、眠たい筈なのに眠れやしない。

 

 オマケにAIBOはそんな私たちを尻目に『眠い』とだけ言って引っ込んじゃったし……はぁ、辛い。一応藍たちが起きた時のためにお粥を用意したけど、冷めちゃってね、それを一人で黙々と処理した私の心境わかります?

 

 

 そして現在、事後処理の為に緊急集会を招集し、てゐ引いては永遠亭という建物に住まっていた者達の処遇が話し合われているのだ。場所は妖怪の山の天魔の屋敷である。

 ちなみにてゐは怪我が酷くてその場には出ることができず、永琳や輝夜(名前まんまだった)はその場に呼ぶのは危険だということで、当事者は私だけの変な会議が始まったのだ。

 

 まあ緊急過ぎたせいで全然集まれてないけどね! 阿求なんて護衛(慧音)なしでバタバタ来てくれてるし、オッキーナに至っては来てすらないわ!

 

 さっきからやんややんやと色んな意見が出されている。例えば地底や外の世界への追放、賢者管理下での幽閉、なんとか頑張って殺してみる……など。

 だがこれらは私が直々に却下させてもらったわ。そりゃね、目を離した隙に何を企まれるか分かったんもんじゃないし、あいつらって死んだら場所を選ばず復活できるから幽閉なんてできないし、まず殺せないし……。

 

 だからといって野放しにできるはずもない。特に幻想郷の最高戦力とも言えるレミリア、幽々子、藍を倒してしまった永琳の処遇が問題なのだ。下手に厳しい処分を下したら再び暴れ出さない保証は一切ないわけですし。

 まあ、そりゃあ奴らの恐ろしさは戦った者にしかわからないでしょうね。

 

 と、場を見かねたのであろう阿求が近付いてくる。今日は慧音が居ないみたいなので、慎重に賢者の合間を縫って。

 

「紫さん、このままじゃ埒が明かないですよ。やはり急ごしらえではなく場を改めた方が良いのではないでしょうか?」

「けどねぇ……あまり永遠亭の連中を放置するわけにはいかないし、だからと言って完璧な措置を取ることは難しい。さてどうしたものか……」

 

「隔離監視で如何でしょう」

 

 混迷していた会議に一石を投じたのは華扇の発言だった。影響力の高い彼女の発言には否応無しに注目が集まる。

 

「永遠亭の主要メンバーである四人を幻想郷の各地に隔離し、我々の息がかかった者、若しくは我々が直々に監視すればいい。大した脅威ではない者はお膝元、特に危険な者は僻地に、という風にね。なんなら私が一人請け負ってもよろしいですが」

「……今までの中ではマシな案、か。して……誰がその厄介者どもを受け入れるのだ? ……我々天狗としてはやぶさかでもないが───」

 

「それには及びませんわ」

 

 悪いけど遮らせてもらうわよ!

 天魔の意見はもっともだろう。しかし仮にてゐや永琳を妖怪の山に配置して天魔と結託でもされたらとっても厄介よ。ていうか色々と詰む。

 妖怪の山に居を構えている華扇も同上。

 

 よって奴らの配置場所は何としても私が決めなければならないわ! もう……オッキーナが居ればもっと楽だったのに……!

 

「四人の軟禁場所は私が指定するわ。やはり月人の扱いは私が一番長けているでしょうし、()()()()()()()()()()()()()()に迷惑をかけるわけにはいかないですもの。そうでしょう?」

 

 なんか一瞬で場が静かになったわね。ていうか敵意を感じるまであるわ。……特に天狗連中の方からひしひしとね!

 なんか変なこと言いましたっけ? ああ、強いて言うなら文があの場には居たけど、アレは野次馬っていうのよねぇ。

 

 あと阿求からの『まーたやりやがったよこいつ』みたいなジト目が痛い! いやホント何が悪かったのか分からないのよぉ!

 

「……貴殿の独壇場では会議の意味がないな。一人で決めたいのならそうされるといい。そんなに我々を巻き込みたくないなら、な」

 

 その言葉を皮切りに天魔を始めとして天狗の皆様がぞろぞろと退出してしまった。また天魔に近しい賢者も続く。

 ええい気難しいわね! 射命丸を見習って……と思ったけどそっちの方が鬱陶しかっわね。

 

 思わず奴らには聞こえない程度に不満を呟いておきましょう。そうじゃないとやってらんないわ。

 

「せっかく主催者の座を譲って華を持たせたのに……どうも鼻っ柱をへし折っちゃった気分ですわ。いやはや、やんぬるかな」

「貴女……やっぱり性格悪いですね……」

「全くもって同意します」

 

 ちょ、こらこらー! やっぱりって何よ!

 穏健派賢者である華扇と阿求からのあまりの言われように流石にムッとなったわ!

 

 はぁ……それにしても五賢者のうち三席が簡単に欠けてしまうこの不安定さはどうにかならないものかしらね。馬鹿正直に出席を続けてる私がバカみたいよ。

 まあ、これでスムーズに進行することができるし、取り敢えずさっさと会議を終わらせちゃいましょう。家に藍と橙を残したままなのが気になるもの。

 

「それでは私たちだけで次の──」

「まあ待て紫。節目の重要な案件なんだ、全員で臨もうではないか」

 

 背中から部屋中に響く声がする。声の主は勿論オッキーナで、私のバックドアーから颯爽と登場した。普通に玄関から入ってこれないんですかね貴女は。

 まあまあ……いきなりの事でめちゃくちゃビビったのは内緒だけどね!

 

「天魔殿も、この程度で退室されては示しがつかんだろう。他ならぬお前の部下の手で、その惨めで卑賤な本性を幻想郷に晒したくはなかろう?」

 

 流石オッキーナ! 私に言えない事を平然と言ってのけるゥ! そこに痺れもしないし憧れないけどねぇ! いくら天狗の事が嫌いでも建前ってもんがあって……! だけどこういうところが頼もしかったりするのよ……!

 それにこれよこれ。こういうのを本物の煽りっていうんですよ。阿求と華扇は即刻考えを改めるよーに!

 

「遅刻は駄目よ隠岐奈」

「いやすまないな。少しばかり厄介な野暮用を片付けていた。だがこれで、ようやく建設的な話し合いができそうだな?」

「どうかしらね?」

 

 早速場を乱しまくってる件について。

 だが確かにオッキーナが会議に参加してくれるのは凄く嬉しいわ。だってオッキーナは一部例外を除いた殆どのケースで私の味方に回ってくれるから、阿求に並んで信頼ができるのよ。

 今回も自分の顔を立ててもらう事でこれ以上の紛糾をギリギリで回避させてくれた。ホント、できる賢者っていうのはオッキーナの事を言うんでしょう。

 

「まだ重要な話が二つも残っているだろう。……これから先、因幡てゐをどのように扱うか、そして新入りの件、とな」

「ええその通り。……よく知ってたわね」

「私たちの間に隠し事はナシだぞ」

 

 あーはいはいバックドアーね。いつもならプライバシーが何だので愚痴る所ではあるが、AIBOの所為で軽く思えてしまったわ(白目)

 

 そう、全部オッキーナの言う通りである。

 

「新入り……? また貴女は勝手に」

「その辺りは後ほど説明しますわ。まずてゐの処遇についてを確定させましょう。一応、考えている案がございますが……」

 

 てゐは幻想郷の重鎮。故にその管轄も広く、重要なものが多かった。例えば広大な迷いの竹林の管理や、溢れる妖怪兎の統括、細かいところでは幻想郷全体の財政・経済管理なんかも行ってたのよ。

 しかし今回の件で月との癒着に、管理していた迷いの竹林があんな化け物の温床になってた事など、看過できない不祥事が発覚している。

 

 だからそれだけ責任を取らせなければならない。しかし、この幻想郷の支配システム上の問題で、てゐを追放、または処刑するなんて選択肢が取れないのよ。彼女を失う事による影響力があまりにも大き過ぎてね。

 ぶっちゃけ私以外の重鎮四賢者は替えが利かないっていうのは幻想郷運営での大きな欠陥だと思うわ。私? 私は……藍がいればどうにかなるし……。

 

 

 結局、話し合いの結果、てゐの影響力は出来るだけ削いでおこうという事になり、管轄地域を大幅に没収し永遠亭周辺に限定。さらに有限的な賢者職の凍結、という結構重い感じの処罰が下されることとなった。まあ残等かしら。

 

 そして問題となったのが、"誰がてゐの権利を引き継ぐのか"である。まあ正直なところ私は全くと言っていいほど興味ないわ。だけど他の皆にとっては違うみたいで……。

 迷いの竹林なんか手に入れてなんかいい事ある? 頭は痛くなるし迷うし、変な連中はウロついてるしで散々だと思うんだけど。

 

 と、再度阿求が話しかけてくる。

 

「紫さん、不用意に他の賢者……特に天魔に引き継がせると均衡が崩れますよ。やはりここは異変を収めた紫さんが引き継ぐべきでは……」

「正直なところ御免被りますわ。貴女は?」

「言わずもがなです。そもそも人里にはそんな力ありませんし、貴女がやってくれるなら十分に信用できるんですが……」

 

 えぇー? もうこれ以上仕事は増やしたくないのよ! ていうか私の権利も欲しいんなら欲しい人にあげるわ。だから私はなんか大老的ポジションに収まればいいかなーって。

 ちなみに"大老"とは"大いに老けている"という意味ではない! 断じて!

 

 まあ、引き継ぎに関する対策はちゃんと考えてるから大丈夫なんだけどね。

 

「引き継ぎは必要ありません」

「……?」

「ほう」

「は?」

 

 私の言葉にこの場にいる全員が注目してくれた。くぅ〜緊張するわね!

 

「迷いの竹林の管理及び弱小妖怪救済を担当する役職を新たに設けようと思っています。その折、此度の役職は既存の権利を持つ我々のような者ではなく、件の新入りに任せてはいかがでしょう」

「……して、その者にそれに足る資格と能力は有るのですか?」

「それをこれより貴女(華扇)を含めた賢者の皆様方に見定めていただきたい。資格は十分に足ると判断していますが……その者の能力については私を以って不透明でございまして」

 

 ていうか会ったことないです。私が知っているのはそいつの役職と功績、そして名前だけ。しかもそれらは全部今泉影狼とわかさぎ姫からの伝聞のみっていうガバガバ具合よ。

 なんでこんな事になったかと言うと、二人との協定内容に『草の根ネットワークから一人、賢者を選出させる』というものがありまして。

 なんならそいつに面倒臭い案件全部を投げちゃおうと思ったわけ。影狼とわかさぎ姫が言うには相当高尚な妖怪らしいし。

 

 もしそいつがダメだったらオッキーナか華扇にお願いしましょう(無責任)

 事前の打ち合わせでは霧の湖と現在地を繋いだスキマを開けば来てくれるらしい。さてどうなるんでしょうね(無責任)

 

 スキマを開くとほぼ同時で何者かの進入を感じ取った。そして私の目の前に展開したスキマから現れたのは……おっかなびっくりに歩みを進める影狼と、彼女に抱き抱えられたわかさぎ姫だった。

 

 ……??

 

「あっ、いやいや私たちじゃないですから! 私らただの付き添いなので間違えないで! 付き添いは、ふ、二人まで大丈夫なんですよね?」

「やっちゃったわね。やっぱり私が来るには場違いすぎたかしら……?」

 

 こんな場所と状況じゃなかったらずっこけながらツッコんでたところですわ。なんていうか、毎日が楽しそうな二人ですこと。

 

 と、続いて何者かの進入を感じた。これは──?

 

「どうぞリーダー! こちらへ!」

「ふう……何時になってもこういう場には慣れないものですね。それにあの空間も」

 

 現れたのは奇異な妖怪?だった。見すぼらしい格好に、無理矢理貼り付けたように輝く銀髪と一房の紅い髪……メッシュかしら?

 だがそんな風貌のくせして、どこか高貴な雰囲気を醸し出す変な存在。

 何だろう……彼女を構成する全てが絶望的なまでに噛み合っていないような気がするわ。一見して普通じゃないって事が判るわね。

 

 上手く例えられないんだけど、今まで感じてきたモノとはどれ一つ合致しない、新しいタイプの雰囲気、オーラ。

 威圧的なものは微塵にも感じない純粋清廉なオーラ……ではあるけれど、何故だか言いようもない、真に訴えかけえくる気持ち悪さがあるのだ。

 

 ……うん? 何か頭に引っかかる。

 

「私、少し前より草の根ネットワーク代表を務めております()()()()と言う者にございます。高貴な賢者様方には到底及ばない下賤で矮小な妖の身ではありますが、この美しき幻想郷の為、身を粉にして尽くすことのできる機会が生まれたと聞き、馳せ参じた次第でございます。何卒───」

 

 淡々と綴られる言葉はまさにお手本そのもの。だがそれ故に声が頭に入らなくなる。周りを見ると、みんな気にしてない様子で、寧ろ感心しているまである。この違和感を察知したのは、私を含めて数名程度だろう。

 

 稀神、正邪かぁ。 ……やっぱり聞いたことのない名前ですわ。

 だけどあの風貌……確か何処かで見た事あるような……? 最近色んな事があり過ぎて記憶がごちゃごちゃになってるかも。

 

 しかもあの正邪とかいう奴は、全体に行き渡るようにスピーチしている筈なのに、ほぼ正面に位置する私に一度たりとも目を向けてはくれない。

 これは……意図的に無視されてるわね。曲がりなりにも私が推薦したんだけどなぁ。

 

 うーん、自信満々で「新しい賢者? いいわよ!」なんてわかさぎ姫に言っちゃったのを早くも後悔しそうだわ。ヤベェ奴を入れちゃったかもしれない。

 

 

 あれ、私って後悔ばっか?

 

 




ゆかりん色々とツケを払うの回。

いやー正邪か聖者かで迷ったんですけどね、彼女自身はやっぱり正邪なので正邪です。

この章では永夜異変とその後に繋がる話を少しと、第一次月面戦争を掻い摘んでお届け。必然的にゆかりん視点が多くなるから文章の質が下がる(←?)けど、その分早めにお届けできるかも。

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