三好夏凜は剣士である。   作:佐樹

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大変遅れました。久しぶりの投稿です。久しぶりなのに内容短いという。申し訳ない。
SAOの映画見てきました。いやほんと、とても面白くてSAOファンなら絶対楽しめる作品となっておりました。オーディナル・スケール必見です。
そして終わった後で頭の中でぐるぐる回ってたのは、「勇者部が現場にいたらどうなるかな」というもの。にぼっしーが無双しそう。

ここから本編。


アインクラッド--2

 迷宮区へと続く森の小路を歩く3つの影。それぞれ黒、白、赤と色のバリエーションに富んだ組み合わせ。命をかけたデスゲームでは少々軽装のように感じる装備の三人組は、周囲の警戒をしつつも雑談をしながら歩を進めていた。

 

「なんで私まで……」

「いいじゃない。一人より二人。二人より三人の方が格段に安全でしょ」

「私よりそっちの黒ずくめに言いなさいよ」

「俺はボス攻略の時にパーティに入れてもらってるし、たまにだが野良パーティにも入ってるからな」

 

 サチは黒猫団へと戻り、私はアスナに誘われ今日の予定を迷宮区の攻略へと変えた。

 しかし、攻略とはいえアスナはキリトと二人で行きたかったのではないかと思うと、なんとなく居づらい。結局、強引にアスナに引っ張られて来てしまった、

 

「そういえば私、ナツに聞きたいことがあったの」

「なに?」

「前に街中でナツのことを見かけたことがったんだけど、その時のナツの服装、多分私服だと思うんだけどどこで手に入れたのかなって」

 

 まさかのファッションについての話。日々をトレーニングと勇者部の活動に費やしている身としてはこういう話は苦手だ。

 あー、と少し間を置いて簡潔に答える。

 

「勇者部のみんなから贈られてくるのよ。あいつら、少しでもプレイヤーのみんなが暮らしやすいようにって料理や裁縫とか生活系のスキルもいろいろ持ってるから」

「え? でも勇者部の主な活動って中、下層よね。素材とかお金は何処から?」

「それは私が」

 

 と、そこまで言って口をつぐむ。アスナもハッとしたように目を見開いた。

 

「……血盟騎士団も物資提供した方がいいかしら」

「やめといた方がいいと思うわ。私たちはそう思ってなくとも最前線のギルドは勇者部を快く思わない奴もいるし」

 

 アスナの人望でも賛同を得るのは厳しいだろう。

 

「……このゲームをクリアするために頑張ってるはずなのに、このゲームのために頑張ってる人を助けられないなんて」

「あんたがそこまで気にしなくていいわよ。それに、今じゃ私以外にも中層のプレイヤーたちが勇者部に余ったアイテムをくれたりしてるらしいし、そこまで苦労してないわ」

 

 蛇足だが、中でも熱心に協力してくれるのがエギルさんだったりする。

 

「でも」

「あんたは少しくらい気楽に生きなさいよ。そこの黒ずくめみたにね。聞いたわよ。最近勇者部に顔を出したみたいね」

「えっ」

「ちょっ」

 

 ニヤリ、と笑いながら沈黙を決め込んでいたキリトに話を振ってやる。

 

「ちょっとキリトくんどういうこと!?」

「い、いや、どういうことって言われても、あそこの飯美味いし」

 

 後半もごもごと小声で呟くキリトに苦笑する。

 このゲームにおいて、美味しい料理というのは貴重だ。NPCの料理も、美味しいものは確かにあるがそういう場所は人が多く席の取り合いだ。プレイヤーが作るとしても、スキルが高くないと使える食材に制限があるし、簡略化されてるとはいえある程度本人のセンスを必要とする。

 その点、アスナの料理も美味しいがいかんせん。かのKoBの副団長様に料理を頼もうなどハードルが高い。

 だが勇者部は週一で炊き出しをし無料で料理を振る舞い、昼間限定で店もやっている。なにより美味いと評判だ。攻略組のプレイヤーもやってくる。攻略組と勇者部の亀裂? 美味しいご飯の前にそんなものは存在しない。

 そして当然のようにキリトも常連である。

 

「……とない」

「へ?」

「私まだ行ったことない!」

「そんなこと言われましても」

「連れてって」

「ええ」

「いいじゃない。行けば」

「いや、ならナツが連れて行けば」

 

 がすっ、と脇腹を殴っておく、

 

「ぐふ」

「ったく、こいつは」

「大丈夫キリトくん」

 

 そんな風に戯れていると、不意にキリトがバッと顔を上げる。すると、何かを考え込むように一点を注視する。

 雰囲気の変化に気付き、私とアスナも警戒度を上げていく。

 

「……キリトくん。どうしたの?」

「いや……」

 

 キリトはメニューを呼び出し、マップを可視モードにして私たちに見せてきた。

 そこにはプレイヤーを示す緑の光点が浮かび上がっていた。

 数は十二。

 

「多い……」

「それに、この並び」

 

 十二の光点は統制された二列縦隊で進んでいた。モンスターが多いダンジョンならともかく、フィールドでまできっちり並んで進むのは珍しい。

 キリトはマップを消し、私とアスナを見る。

 

「一応確認したい、そのへんに隠れてやり過ごそう」

「そうね」

「わかったわ」

 

 キリトの先導で土手を這い登り、背丈ほどの高さに密集した灌木の茂みを見つけてその陰にうずくまった。ここならば道を見下ろすこともできる。

 

「あ……」

 

 不意にアスナが自分の格好を見下ろした。アスナの__血盟騎士団の制服では茂みの中でも目立つだろう。

 

「どうしよ、わたし着替え持ってないよ……」

 

 先ほど見た光点の移動速度から考えて、もうすぐ可視範囲のはずだ。

 

「キリト」

「あいよ」

 

 キリトは自分のレザーコートの前を開くと、アスナの体を隠すように包み込む。

 私は私でアイテム欄から人一人を隠せるぐらいの大きさの黒布を実体化させ体を覆う。

 

「ナツ、用意いいのね」

「ソロやってると周りに任せることができなくてね」

「シッ、来るぞ」

 

 キリトが注意し、いっそう体を低くした私たちの耳に、ざっざっという規則正しい足音が聞こえ始める。

 そして、その集団が姿を現した。

 その集団は全員が剣士クラスであり、お揃いの鎧に戦闘服を身に纏っていた。その中でも先頭六人の大型のシールドには見覚えのある城の印章が施されている。

 

「……《軍》」

 

 周囲に聞こえないほど小さな声で、気づけばそう呟いていた。

 《軍》というのはSAOの中でもトップクラスの超巨大ギルドのことだ。主な活動は治安維持であり、勇者部の活動と似通ってはいるもののその方法は乱暴そのもの。例え自分たちにその牙が向くことはないと思っていても、恐れを抱く者は増え続けている。

 さらには、常に大人数で行動し、狩場の独占まで行うために、一般プレイヤーの間では《軍》には極力近づくな、という共通認識が存在している。とはいえ、五十層よりも上の最前線で見かけることなど今までなかったんだけど……。

 私たちが息を潜めて見守るなか、《軍》のプレイヤーはそのまま深い森のなかへと消えていった。

 消えてからも少しの間警戒し、問題がないと判断して私たちはしゃがみこんだまま、ふうと息を吐き出した。

 

「……あの噂、本当だったんだ」

 

 キリトのコートにくるまったまま、アスナが小声で呟いた。

 その噂とは、《軍》が方針変更して上層エリアに出てくるというものだ。二十五層で大きな被害を出して以来、組織強化に力を入れ前線に出ることが少なくなったのだが、そのせいで内部の方で不満の声が出てるらしい。それならばと大人数で迷宮に入って混乱するよりも、少数精鋭を送ることで戦果を出し、クリアの意思を示すという方針になったようだ。

 しかし、少々無謀ではなかろうか? いままで前線から離れていた集団がいきなり未踏破層にくるなど……。

 キリトもそう感じたのかアスナにそのことを言うと、アスナはボスモンスターを狙ってるのではないかと予想を立てる。

 しかし、未だに誰も見たこともないボスモンスターに挑む? 幾ら何でも無謀どころの話ではない。

 しかし、ここで話していても《軍》の行動についてはっきりとした答えも、それに対する行動も思いつかない。いきなりボスモンスターに挑むようなことはしないだろうと結論付けて、私たちも迷宮区へと向かうことになった。

 

「それより私のマップには引っかからなかったのに、あんたの索敵スキルってどんだけ高いのよ」

「スキルの詮索はマナー違反だぞ」

「ほらほら二人とも。早く行きましょう」

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