継物語-つぎものがたり-   作:零崎妖識

1 / 2
こいしフィロソフィ

001

 

私は私を言い表せない。誰にも無理だろう。お姉ちゃん以外、私を確定してる人はいないはずだ。お姉ちゃんでも確定してないかも。ただ言えるのは、私という存在は、すっごく希薄な存在だということ。

外の世界の誰かが「私という現象は、一つの青い電燈です」なんて言ったらしいけど、だったら私は空気だろう。無意識に結界を抜けて、外の世界に出ていることがある。ちょうど、今みたいに。

あれ?私、いつの間に外の世界にいるんだろう?

 

 

002

 

「君が確定されてなくても、君という存在があるんだから別に良いんじゃないのかな?」

私の前にはアロハシャツのおじさんが。ここはどこだろう?

「はっはー。そんなこと気にしなくても良いんじゃないかい?僕が居て、君が居る。それだけで十分だろう」

廃墟で向かい合っている。うーん、怨霊とか出そうでワクワクする。

「聞いてるのかい?」

「聞いてるよ?」

なら、良いや。

おじさんは胸ポケットからタバコを取り出して、口にくわえた。

「火を点けなくていいの?」

「良いんだよ。それで、だ。君は、君に何を望むのかな?」

私が、私に何を望むか?うーん、

「何もないね!」

「はっはー。驚いたね。怪異だろうと、何かを望むと思うのに」

「あ、お姉ちゃんに抱きつきたい」

「ああ、君は無意識だっけ。なら、突拍子のない言動にも合点がいく。なら、質問を変えてみよう」

君は、一体誰なんだい?

 

 

003

 

「お主が誰であろうと、お主はお主じゃろう」

儂が、伝説の吸血鬼であるように。

目の前には金髪ドレスの女の人が居た。おじさんはどこに行ったんだろう?

「かかっ。あやつの事などどうでも良いじゃろう、小娘。お主が気にかけることではない。無意識妖怪なら、ちゃんと意識しないでおくべきじゃろう」

ああ、私は無意識妖怪だっけ。なら、おじさんがどこへ行ったかは意識しないでいいんだね!

「で、あなたはだあれ?」

「儂は、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードじゃ」

「うん、長いから覚えない!」

いや、そこは覚えるべきじゃろう。

そんなツッコミをされたけど、長すぎるもん。日本の神様並みに長すぎる。ニニギのフルネーム何も見ずに言える人間なんているのかな?

それはさておき、吸血鬼。

「私の知り合いにも吸血鬼って居るよ?ちっちゃいのが」

「うぬも儂をロリの王と呼ぶ気か?」

ロリの王。なにそれ見たい。

「それはともかく、じゃ。お主、自分という存在で悩んでいるようじゃが」

時に自分を客観視するのも大切じゃぞ?

 

 

004

 

客観視。無意識なのに客観視できたら凄いと思う。主観視すらやりにくいのに。

「そもそも、自分について意識することが間違ってるんじゃないか?怪異ってのは、他人の認識で成り立ってるんだから」

アホ毛の高校生が言う。また人が変わった。

「それは今は置いておいて、君に対する、他のみんなの認識は何なんだ?」

私に対する認識。そんなもの決まってる。

「誰も、私のことを認識してないんじゃない?」

「なら、お前は消えてるはずだ。誰も知らないのなら」

世界からも、認識されないんだから。

彼は、真面目な顔で言った。アホ毛はピンと立っていた。

「君はみんなから認識されている。自分でそれに気づいていないだけだ。だから」

君が誰だろうと、君は君なんだ。

 

 

005

 

後日談というか、今回のオチ。

廃墟で会った人たちは、私が見ていた残滓らしい。そこに残っていた意識を、無意識に確認していたらしい。

一つわかったことといえば、私が何をしていようと、私は私で、何も考えずに行動するのが私だということだ。

だったら、やることは一つだけ。地霊殿に帰って、お姉ちゃんに抱きつくことだ。「ただいま」と声をかけて。

でも、どうやって帰ろう。どうしたら戻れるんだろう?

無意識に歩き出しながら、私は帰り方を意識しないことにした。ちゃんちゃん。




そんなこんなで、零崎妖識です。さて、六作目は短編集。思いつきの見切り発車です。一発目は無意識妖怪こと、古明地こいしちゃんでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。