Fate/Zepia   作:黒山羊

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+1days AM7:32 『怒髪衝天』

 朝の戦隊ヒーローモノを見て機嫌の良いギルガメッシュ。捕まえた舞弥のエサ、もとい『フレンチトースト大粒イチゴと生クリーム乗せ』を作っていたズェピア。そして、舞弥と長めの手錠で繋がりながらも器用にズェピアを手伝うポニーアサシン。

 

 璃正は朝の鍛錬をしていたし、時臣は宝石を通して凛の『ヒーロー戦隊が如何に格好いいのか』という子供らしい話を聴いていた。雁夜も鍛錬を休憩して桜と一緒にテレビを見ていたのだ。

 

 そんな朝の時間をゆっくりと過ごす彼等は昼間の戦闘が御法度な聖杯戦争参加者としては比較的正しい。

 

 彼らはほんの数分前までそんな、戦いの合間の平穏を楽しんでいた。

 

 

 だがしかし。

 今、遠坂連合の面々は激怒していた。

 

 綺礼から報告された、キャスターの悪事。時臣は魔術の秘匿を無視したその行動に眉間に皺を寄せて怒りを露わにし、璃正は神父として神に唾吐くこの外道を赦せぬと憤り、雁夜の蟲が主の怒りに反応してか興奮して飛び回り、微かながら冬木中にギチギチという蟲の鳴き声が響いている。

 

 だが、彼等の怒りはすぐに収まった。何故か。

 

 それは非常に古典的な理由だ。

 

--人間は自分より遥かにブチ切れている存在をみると冷静になる--

 

 ただそれだけか、と思う者がいれば、彼等が見た風景を見て同じ事が言えるだろうかと問いたい。

 かたや、悪鬼羅刹も逃げ出す鬼の形相で周囲に黄金の魔力を容赦なくぶちまけ、その余波で冬木教会を若干異界化させているギルガメッシュ。

 

 かたや、眼球全体から滂沱の如く鮮血をたれ流しながらどす黒い魔力をぶちまけ『キ、キキキ、キキキキキキキキ----!!!!!!』と壊れた機械のように嗤うズェピア。

 

 その二人が人を何人か思念で殺害せしめるレベルの怒気と殺気を撒き散らして居るその光景に自分たちの怒りなど一瞬で覚め、冷や水を掛けられたように冷静になったマスター達。

 

 綺礼でさえその目を見開いて若干唇の色が失せていたと言えばその状況が如何に恐ろしいか判っていただけるだろうか。

 そして当然、そんな馬鹿でかい魔力と殺気と怒気に他の英霊やマスター、そして野生動物が気付かぬはずがない。

 

 沈没前の船よろしくネズミが大挙して引越を始め、飛ぶ鳥は墜ち、魚は川に浮かんでビクビクと痙攣、冬木のあらゆる場所で猫がその毛を限界まで逆立ててさながら毬藻の如き容貌となり、土佐犬すら股に尾を挟んで親からはぐれた子犬のようになる。

 

 

 ランサーはとっさに主を殺気から護るかのように仁王立ちで実体化し、ライダーはウェイバーをそのマントの内に抱き寄せ、セイバーは珍しく「……おはよう」と挨拶してきた自分のマスターをお姫様抱っこして数メートル後方へと跳躍した。

 

 アサシンに至ってはその余りの恐怖からトラウマを感じた数名の人格が精神防衛の為の新人格を形成し、その数を増している程だ。

 

 

 それ程の怒りを垂れ流している二人だったが、その怒気をどうにか深呼吸などで制御して綺礼に詰め寄る。

 

「「詳細な情報を寄越せ……」」

「……場所は未遠川中流の排水溝。内部には数名の子供達とキャスターのマスターによる人体を使った『作品』がある。工房としての規模は地味だが、流石にそれ以上は分からなかった…………すまない」

 

 その言葉を何とか言った綺礼と報告に来ていたアサシンが若干涙目だったことを誰が責められるだろうか。

 

 

 この冬木の街に潜む悪がまさしく撃滅されんとしているなか、普段通りに行動出来て居たのは恐怖が麻痺している桜と、脳味噌がイカレているキャスターとそのマスター。

 

 

 そしてズェピアが作っていった大量のフレンチトーストを食べて幸福の頂点に居た久宇舞弥とポニーだけであった。

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