青葉包囲戦!   作:ピュゼロ

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・ポツダム宣言の全文を読んだ事がないので、初投降です。


青葉、霧島、夕立、時雨などが登場します。
なので好きな方は読まない方が良いと思います。


古鷹さんは天使です。


秘書艦たち

 

 

 にじり寄る。

 はやる気持ちをぐっと堪える。

 青葉は静かに耳を澄ませた。

 

 ――キミたちが負けたのは確かにショックだったな。

 負けるとは誰も思っていなかったのもそうだろう。あちらの鎮守府はまだ新参だ。

 霧島。キミが旗艦だったから特にね。

 

 そんな言葉が聞こえてきた。

 ペンを握りこんだ右手で一度額にかかった髪の毛を払った。

 青葉は身を隠している物陰でもじもじと尻を動かして、さらにその続きを聞き取ろうとした。

 

「だけど、仕方ない。常勝と心がけるべきではあっても、実際にはなかなか簡単にはいかないだろう。演習の相手艦隊だって、負けようとしているわけではないし。ぎりぎりのところまで競って、その上で負けた事を、恥じる必要なんてないよ」

「司令……わたしは、己の本分を果たす事ができませんでした。目前の海戦を控えた中、それにケチをつけてしまいました」

「友軍の練度に勇気づけられるという事もある。士気を下げたばかりじゃないさ」

「……司令」

「キミの頑張りはみんなよく知っている」

「司令。わたしは……そんな事を言ってほしいのではありません……」

 

 ――ここだ!

 電流が青葉の中を走った。

 素早くカメラを構え、そーっと身を乗り出し、提督と秘書艦の、秘密の会談の、その決定的瞬間をおさえようとして……。

 一瞬。

 提督に肩を抱かれた霧島と、目が合った。

 彼女の顔色がさっと変わった。そして、無言のまま、提督を突き飛ばして駆け出してしまった。

 その目に、大粒の涙が浮かんでいたのを……青葉は見ていたかもしれない。

 

「霧島ッ!? ――キサマ、青葉か!」

 

 提督が少しの間、振り返って青葉に気を取られているうちに、執務室の扉が「バタン!」と大きくしまった。戦艦特有の、十三万六千馬力によって思い切り叩き付けられてしまった。

 彼はもちろん後を追おうとしたのだが、霧島が力任せに扉を閉じた時の、上下の階にまで響くほどの衝撃によって、ノブや扉そのものが少々歪んでしまったようだった。しばらくがちゃがちゃと引っ張ったり蹴りつけたりして、無駄だと悟ると彼は悪態をつきながら扉を殴りつけた。

 

「――なあ、青葉」

 

 それは力を込めないよう意識された、ことさらゆっくりとした声だ。

 もちろん青葉はあんまりに場が気まずいものだから、とっくに窓を開け放ち、そこに片足をかけているところだった。基準値76mmもの装甲を誇る重巡ならば、このぐらいの高さから落ちたところで、特に支障は生じないのだ。

 

「キミの心無い行動によって、彼女を傷つけてしまった。見られていたんならわかるだろうが、この際、僕が彼女を愛しているだとかそーいうのは関係がない事だ。キミの僚艦であり、戦友なんだ。言いたい事は……わかるだろう」

「ち、違うんです――! こんな、こんなハズでは――!!」

 

 こういう場面でよくある(と青葉が思っている)のは、まずシャッター音やらフラッシュの光で二人が気づいて、うろたえているところをしり目に悠々青葉側が逃げ出す感じの流れである。

 よくある感じのやつだ。

 いわゆるところのパパラッチ青葉だ。

 それが逆に、被写体に先に走り出されてしまっては……これはかなり困る。

 しかもなんだか事態は深刻で、よくない感じだ。

 本来なら二人して赤面したりするところなのだ。

 

「普段はこう、きまじめな霧島さんが顔を真っ赤にしたりして……ね? ね? 可愛いと思いませんか? その時は、司令官さんもなんだか嬉しかったり……しませんか?」

「……お前が何を言いたいのか、さっぱりわからない」

 

 彼はむっと顔をしかめてそういった。

 いよいよもって駄目そうな感じである。

 しかし、本当は青葉だって叫びたいのだ。話が違うじゃないかと。

 よくある感じの……こう、撮影した写真をネタに脅して、見逃してもらえるような雰囲気さえも……なかったのだ。

 うかつにそんな事を口走って、踏んではいけない境界線が、すぐ目の前に深々あったのだ。

 

「……お、お先に失礼しますッ」

 

 そういえば、こういう時のセリフも考えていなかった。

 それが全体的な敗走ムードの原因かしらと思いながら、青葉は窓から身を投げた。

 

 

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