新人浮遊霊の受難   作:rosetta08

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あなたもうしろに▼




二話 泣かないでください!

へ、へぇー!そっかー、僕、死んじゃったんだー

へぇー!いやー驚いたなあー!

 

「へ、へぇー、そうなんですかぁ」

 

「あ!!信じてないですね?あなたのことなのに!」

 

ジト目、というのだろうか。

なぜかジト目で不服そうな顔を向けられている。

 

 

「1週間前に通り魔に刺されたんですよ?覚えてないですか?」

 

「覚えてないですか?って言われても…」

 

 

覚えている、と言えば覚えている。

冷たい雨と、胸の辺りの冷たい異物感と、鋭い痛み。

 

あれが現実だったなら、の話だけれど。

 

「あ、なんか心当たりがある顔してますよー?」

 

「いや、でも、あれ…?」

 

しかし夢だったなら彼女が知っているはずがない。

いや、今この瞬間も夢の続きだとすれば…

 

「先に言うと、夢じゃありませんからね!」

 

ところがどっこい、夢じゃありません…!現実…!これが…!現実…っ!

 

「みます?」

 

「みます?ってなにを…」

 

下着かな?

でも払えるほどお金持ってないよ僕。

 

「えっとぉ…」

 

彼女は先ほどの鞄からスマートフォンのタブレットのようなものを取り出す。

なに?死後の世界ってハイテクなの?

 

「…あ、ありました!これです!」

 

手渡されたタブレットの画面には、仰向けに倒れた男が倒れていた。

 

「あ、ズームしますね!」

 

横から彼女がタブレットを操作する。

なんかすごいいい匂いする。成仏しそう。

 

 

「これは…確かに、あのー…僕ですね」

 

「はい!」

 

はいってそんないい笑顔で言われても。

 

 

胸に深々と刺さったナイフ。

雨で流れた一面の血。

そして僕の、死に顔。

 

なにこれ…口だけじゃなくて鼻からも血ってでるの…?

 

 

「これ、まああの信じるんで消してもらっていいですか?」

 

「ごめんなさい…それはちょっと…」

 

まあそうだよね。会社の備品だろうしね。

言ってることが本当なら顧客情報だもんね。

 

「すごい恥ずかしいんですけど」

 

「こういうとき鼻からも血ってでるんですねぇー」

 

やめて!あらためて言わないで!

ほんとに恥ずかしいから!

 

「…ところで、死んじゃったのは不思議と簡単に納得できちゃったんですけど、これからどうしたらいいんですか?」

 

本当に不思議だ。

自分でも不思議なほどあっさりと理解してしまった。

コーラを飲めばゲップがでる、くらいのレベルで。

 

「安心してください!そのための私ですから!」

 

まずは…と彼女は再び鞄を漁る。

そして、1枚の書類を取りだした。

 

 

《新藤 遥 享年21歳 会社員 童貞

長男 未婚 子無 善行基準クリア

総合審査値 78 整理番号 6245》

 

「新藤さんはイイ人だったみたいですね!なので3年も待てば転生できると思いますよ!よかったですね!」

 

「……………はい…」

 

「審査値高い人なら私も安心…」

「え、あの、なんで泣いてるんですか」

 

 

泣くとも。それは泣くともさ。

そんな…死んでまで童貞だなんだって…

イイ人だったみたいですね!って…

 

『新藤くんはイイ人だけど…ごめんなさい』

『結局イイ人止まりなんだよね』

『イイ人だけど…お友達でいよ?ごめんね?』

 

「うっ…うえぇっ……」

 

「えっあの、泣かないでください!どうしたんですかいきなり!?」

 

死に様を見ても動揺しなかった大人が背中を丸めて泣き出し、背中をさすられ慰められている。

 

 

 

 

 

「はい、ちり紙です。ゆっくりかんでくださいね」

 

「あい…」

 

いきなり目の前で成人男性に泣かれた彼女には同情するが、仕方ない。

それを会社全体で管理しているのが悪い。

 

 

結局、彼女が説明を再開できたのは5分程後だった。

 

 

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