なんでもそこそここなせる。
勉強もある程度できれば、スポーツもチーム競技ならレギュラーをとる、個人なら地区予選を突破するくらいはできると思う。友達付き合いも苦手じゃないし、先生からも賑やかし屋だけれども手のかからない良い生徒という評価をされているはず。容姿も、男ってのは身長が180あればそれなりに見られるものだ、みたいなことを誰かが言ってて、条件を満たしてるしそこそこなんだろう。
一言で表すなら器用小金持ちぐらいが妥当なとこか。
俺は自分に対してコンプレックスはあるけれど嫌悪感を抱いたことはない。恵まれてると考えてる。
ただ、『主人公』にはむいてない。主人公ってのはなにか欠点があって、でもおっきな魅力があって、良くも悪くも大きなことを成し遂げるやつってのが相場だ。俺とは正反対だ。
これは、そんな俺が出会った『主人公』としてふさわしい女の子たちのことを綴る物語。そして、俺が物語の脇役ぐらいにはなろうと奮闘する話。
─────────────────────
高一の夏。
病気で入院した俺は、手術を明後日に控えていた。
失敗はほぼないし麻酔による合併症なんてそうそう起こるもんじゃない。俺がそんな特例を引くなんて思えないしそういうものへの恐怖は無かった。
ただ、全身麻酔やら痛み止めやら初めてする体験に対して不安はあって、それを紛らわせる為に病院内をうろいてた時に彼女と出会った。
茶色い髪、そんなに高くない背、着崩した感じの服装、
そして目を引くヘッドフォンとアイドルのように整った容姿。
声をかけてみよう。どうしてだろう、そんな気持ちがわいてきた。でもキモがられたりするだろうしそんな勇気は無い。
さっき売店で買った音楽雑誌を読むふりをしてチラチラ彼女を見てしまう。なんでこんなに気になるんだろう。
と、向こうもこっちを見てる気がしてきた。
自意識過剰、じゃないと思う。明らかにこっちを見てる。でも目は合わない、少し目線がずれてる。後ろには何も無い。なんでこっちを見てる?
─もしかして、雑誌を見てるのか?
その考えに至った。ああ、いいヘッドフォンをしてるくらいだし彼女は音楽が好きなんだろう。表紙のバンドに興味があるのかな?俺の好きなバンド。
ここまで頭で考えて声が出てしまった。
「もしかして、雑誌読みたい?」
「…私?」
「う、うん、さっきから見てる気がしたから。」
ああ、なんでどもっちゃうかなあ。
「あー、私ロックが好きなんだよね。だから少し見てたんだ。ゴメンね。」
「いや、全然大丈夫。よかったら少し話さない?俺このバンド好きなんだって。」
表紙を指しながら誘ってみる。
「うっ……い、いいよ?ちょっと君の好みとか聞いてみようかな?」
よっしゃ!少し考えられたのはつらいけどこの子と話せるのが無性に嬉しい。
「俺、友達とこのバンドのコピーやってるんだ。」
「へえ!すっごいね!」
「下手くそだけどな。君は楽器は?」
「……ぎ、ギターが弾けるよ?」
「おお!一緒じゃん!そっかー、でさ、俺の好みは…」
──────────────────────
『○○○番の方、いらっしゃいますかー?』
「あ、私だ…ゴメンね、楽しかった!」
「う、うん!俺ばっか話しちゃってゴメンな…」
「そんなことないって!話面白かったし、君すごいロックだった!私、リーナ、多田李衣菜。また会えたらいいね。」
「俺、藤堂 遊。縁があったらぜひ!」
リーナ、か。名前を教えてくれたってことは少しは楽しんでくれたんだろう。俺はこれまで感じたことのない心地よさを持って病室に帰った。
──────────────────────
印象に残るリーナとの出会いから数ヶ月。また会いたいと思っているけれどそう簡単には会えるはずもなく、良い思い出となるのかなと思ってたある日、立ち寄った楽器店で彼女を見つけた。
どうやらギターをみてるらしい。なかなか集中してる。
少し見つめて、ナンパっぽくて普段はそんなことしないのにリーナに声をかけてみた。
「久しぶり、俺のこと覚えてるかな?」
「?…あ!藤堂君だ!…藤堂君でいいよね?」
「うん。縁があったね。」
「調度良かったよー。ねえ、私ギター欲しいんだけどオススメとかある?」
「うん?俺でいいならアドバイスするけど。エレキでいいのかな?」
「う、うん!」
「そうだなー、俺はこれと同じやつ使ってる。値段も学生が買えるくらいだし軽くていいんだよね。」
「軽いほうがいいの?藤堂君結構力ありそうだけど。」
「持ち運びが楽でさ…まあそんなに違わないってよく言われるんだけど。」
「あー、なるほどね。私も軽いやつがいいかなー。」
「そこら辺は人の好みだしな。ちょっと試してみたら?」
「うん…あ、持ちやすいね。」
おう?なんか違和感あるな?
「持ち方独特だな?」
「うっ!へ、変だった…?」
「変ってほどでもないけど、まあいいや、なんか弾いてみてよ。」
「はぅっ…で、では…」
「うん。」
「………」
「………」
「ゴメン、私ギター弾けません…」
「えっ、マジ?」
「かっこつけました…コード少し知ってるくらいです…」
「ハハハッ、道理で違和感あるはずだ。」
「うう…馬鹿にされた…」
「アハハ…、馬鹿にしてないしする気もないよ。嫌に思ったらゴメンゴメン。」
「いや、嘘ついてたのは私だし…ああー!恥ずかしい…」
顔が真っ赤になってるリーナ、その容姿のせいもあって、どうしよう、すっごいかわいい。
「そっかー、なら俺がギター教えてあげようか?」
親切四割、下心半分で提案する。もう一割はよくわからない。
「えっホント!?」
「うん。ぜひ教えさせてください。」
「やったあー、私他の人にも見栄はっちゃってて教えてくれる人いなかったんだ…ねえ、今から暇?」
「い、今から?予定はないけど。」
「やった!ギターあるのは本当だからさ!どっかできるとこないかな?」
「そうだな…公園でも行ってみる?」
「おっいいね!ロックだね!」
「ハハッ、リーナにとってのロックは幅広いな。」
「私がロックって思ったらロックなんだよ!」
つい名前で読んでしまった。
でも、それ以上に彼女の台詞が心に残った。
「そうだね、ホントにそう思う。」
「へへっ、私、家近いからギター取ってくるね!公園も心当たりあるよ!」
「そっか。なら俺はここで待ってるわ。」
「うん!」
これが俺と彼女の出会い。リーナはこの先俺なんかには想像もつかない世界に飛び出すだろう。その手助けが出来たらいいと思う。
つい書いてしまった、楽しんでもらえたら嬉しいです。
けいおん!要素はもう少し先になります、すいません。