俺とリーナは月に一回くらい公園で会って練習したり、雑談をして楽しい時間を過ごしていた。
デート、とは少し違う気もする。
なんと言うか放課後の小学生みたいな気分だ。
初めはにわか、としか言えないリーナだったけど、最近は随分知識がついたんじゃないかと思う。元々真面目な性格だったんだろうと思うし、吸収も早いから教える側としてはすごく楽しい。
それでもまだまだ強がったりする部分はあるし、知らないことも多いけれど、そこもまた彼女の魅力だ。
第一知識が無いと好きって言ったらダメなんてことは断じてない。あることが好きだからこそそのことについてたくさん知りたくなって、さらに好きになっていく、と俺は考えてる。そして、知ることの手助けが出来ることは幸せだ。
そんなことをしてるうちに今年も終わりに近づいてきた。あと何日も経たないうちに年が明け、いつの間にか学年も変わるんだろう。
そんなことを考えてた日、梓から着信があった。
『もしもし?遊?』
「おう、どうした?」
『大晦日の予定は?』
「普段通り家族と過ごすかな。」
『ならさ、私達夜にライブ出るんだけど見に来ない?』
「えっマジ?行く行く。」
『オッケー。詳しい事はメールするね。』
「サンキュー。じゃあまた。」
『うん。』
どうやら梓たちのライブが聞けるらしい。女子高の部活だから今まで聞く機会がなかったけれど梓が良い演奏をするって褒めるくらいだから期待していいだろう。
あ、リーナも暇かな?こないだライブ行きたいって言ってたし誘ってみるといいかも。
『大晦日の夜に俺の知り合いがライブやるらしいんだけど、良かったら一緒に行きませんか?』
と、送信。電話する勇気はない。
『行きたい!
けど、私曲知らないよ?大丈夫かな?』
『大丈夫。俺も知らないし。高校生のライブだから観客も友達とか他のバンドやってる人とか呼んで楽しくやろうって感じだよ。』
『ホントに?なら行ってみようかな。』
『良かった。』
『楽しみにしてるね!あ、なら昼間ご飯食べに行かない?』
『了解しました。また連絡します。』
うん、リーナにとっては初めての体験だし誘えてよかった。
…これはデートなのかな?
──────────────────────
「あっ、こんにちはリーナ。」
「よっ。今日は楽しみだなぁ!」
「そうだな。俺も初めて聞くし。さて、何食べたい?」
「ここはロックに牛丼とか!」
「スマン、牛丼がロックは俺にもわからない。」
「ええー?ダメ?」
「いや、そんなことはない…」
断れないんだよなあ…。
まあ女の子だけで牛丼屋ってあんまり行かないのかな?それならロックなのかもしれない、うん。
「よし!早速出発!」
「はいよ。」
チェーン店は結構好きだ。つまんないって言う人もいるけど安定した味だし値段も手頃、そして入りやすい。
一人なら初めての店も挑戦できるけど人と行く時は味の好みがあるからなあ。
リーナは並、俺は大と軽く付け合わせを頼んだ。
「よくそんなに食べれるね。」
「男子高校生ですからね。」
「遊けっこう細身なのにね。」
「リーナに言われたくありません。俺より30キロくらい軽いでしょ。」
「基準を知りたくないからノーコメントで。」
「基準は─「やめて。」はい。」
ミスったか?いや、このくらいじゃ怒んないか。
その後コンビニによってパンを買食いした俺にリーナは呆れていた。
「なんであんなに食べるのに痩せてるんだろ…、男はいいなあ…」
──────────────────────
「へえー、こんなとこでやるんだ。」
「ああ、ライブハウスはじめてか?」
「うん。ロックな見た目してるじゃん?」
「そっか、演奏者とキョリ近くて楽しいんだよな。」
「ふーん。さ、入ろ!」
「おう。」
『〜♪』
「楽しいね!ロックだね!テンション上がるね!」
「そうだな、今の人たち上手かったな。」
「あ、次の人たち来た。みんなかわいい…」
「おっ、梓たちだ。」
「どの子?」
「ギターのちっちゃい方。」
「うわっ、かわいい!」
「そうか?」
リーナのほうがだいぶかわいいと思うけどな。
『こんばんわ、放課後ティータイムです!えっと、こういうライブは始めてたけどギー太と一緒に頑張ります!あ、ギー太はこの子ね!』
そういってギターを見せびらかす女の子。きっと梓が言ってた唯先輩だろう。色々言ってたけれど梓の大好きな先輩。
そこから4曲披露してくれた。
テンポの早い曲。
ゆっくりした曲、ベースの黒髪の子、澪先輩だったか、の声がすごく耳に残る。
ちょっとタイトル変わってる曲。
そして唯先輩と澪先輩のかけあいが特徴的な曲。
どれもいい演奏してた。なるほど、梓が褒めるわけだ。
ドラムの律さんの元気さが伝わってくるしキーボードの紬先輩は本当に幸せそうに弾いててこっちまでニヤけてくる。澪先輩はカッコイイし唯先輩は盛り上げるのが上手い。時折ものすごく上手い演奏をするのはなんなんだろう。そして梓。アイツが俺以外の人とこんなに楽しそうに弾くのは初めて見た。
「よかったな、梓。」
「なんか言った?」
「いや、楽しいよな。リーナも楽しかったか?」
「うん!こっちまで元気になるよね。憧れるな…」
「ああ。」
「…私も、楽しませたい。遊を。」
最後にリーナがなんか言ってたみたいだけど次の人たちの音に消されて聞こえなかった。
──────────────────────
「梓。おつかれ。」
「あっ、遊。良かったでしょ!」
「ああ。想像以上だよ。」
「でしょ?その人が李衣菜さん?遊から話しだけは聞いてるよ。」
「うん、初めまして!多田 李衣菜です。すっごく楽しかったよ!ロックだった!」
「そ、そう?ロックだった?まあ楽しんでくれたなら良かった。」
「あずにゃーん、誰この人たち?」
あっちの方で喋ってた唯先輩が来る。そして梓に抱きついた。後ろから他の方々も来てる。
「もうっ、抱きつかないでください!こないだ話した知り合いです!」
「ああー、この人たちがー。」
「ども、藤堂 遊です。」
「多田 李衣菜です。」
「よろしくー。私平沢 唯。」
「ワタシは田井中 律。よろしくな!」
「琴吹 紬です。むぎって呼ばれてます。」
「あ、秋山 澪…よろしく。」
放課後ティータイムのみなさんも挨拶をしてくれた。澪先輩意外と内気だな…
「で?遊くんはなんか楽器やってるの?」
「ギターやってますね。といってもコピーバンドですけど。」
「へえ、梓の影響?」
「まあそんなとこです。」
「李衣菜ちゃんは?」
「わ、私もギターやってます…?」
「ほほー、なるほどなるほど?」
「な、なんですか?」
「いや?大変だな梓?」
「な、何がですか!?からかわないでください律先輩!」
「おやー?心当たりでも?」
「もう!知りません!」
「怒るなってー。」
ホント楽しそうだな。
「ああ、楽しかった。…みんなと演奏出来て、さわちゃん、和ちゃんも憂も純ちゃんも、遊君も李衣菜ちゃんも来てくれて。」
唯先輩が語る。その目は他のバンドを見ていた。たくさんファンがいて、その人たちに囲まれてる。
「そうだな。」
「私も、楽しかったよ。軽音部でよかった。」
もちろんファンがつくこともすごいけれど俺たちや放課後ティータイムみたいに仲間うちでワイワイやるのも音楽のなんだろう。楽しみ方は人それぞれだ。
──────────────────────
年越しパーティーをするという梓たちと別れて李衣菜を送っていく。
今日は完全にデートだったな。
「そういや律先輩に聞かれた時ギターって答えてたな。」
「い、いいでしょ?少しは弾けるようになったし。」
「そうだな。まあ、まだまだだけど。」
「わかってるよ。だから、来年も教えてね!今年はありがとう!」
全く、ドキドキさせてくるやつだ。でも、このドキドキをまだ恋愛とは認めたくないな。
─乙女か俺は。気色悪い。
「ああ、来年もよろしくな。リーナ。」
願わくは、来年はもっと親しくなれますように。
梓のタメ語が難しい…
こうしたらいいとかありましたら教えてください!
読んでくださりありがとうございます!