刀を振るう。それは敵からすれば多少遅いという速度だ。避けられるであろうギリギリの速度で刀を振るっていく。単に当たらないのではなく当てない。勝つ必要はなく俺の仕事はこいつをある場所へと誘導することにあるからだ。
こういう仕事は面倒だなぁと思いつつも動きを止めない。体を魔法で強化しつつ接近する。しかし敵も黙ってはいない。魔力による弾丸を打ち出し迎撃してくる。
それを刀で全て切り落としす。その間も動きは止めない。
「こういう現場に出ると分かるけどさ。本当にブラックな職場で働いてるよな俺たち。」
手に持つ刀身が二メートルはある刀を降り下ろしながら独り言のようにボソッと呟く。敵が此方の攻撃を回避したのを確認すると大きく後ろに跳躍する。
『それには全面的に同意するよ。全く僕らはなんでこんなことしてるんだろうね。』
頭のなかに直接声が響いたと同時に敵が倒れる。痙攣しているところを見ると魔力による麻痺だというのが見てとれる。
刀を、デバイスを待機状態へと戻して隣を見るとオレンジ頭の青年がたっていた。彼は手に大型のライフル型のデバイスを握っており得意気に肩を銃身で叩きながらドヤ顔を決めている。
「殴ってやろうか?シスコンスナイパーさんよぉ。」
「ティアナを溺愛するのの何が悪いんだよ。あぁ?」
一通りコントを済ませたところで敵、テロリストの魔導師にバインドをかけ捕縛を完了する。
辺りは徐々に明るくなってきている。戦い始めたのが夜中だったためかなりの時間がたっている。
「ったく、逃げの一手のテロリストってのはそれに特化してやがるから本当に面倒だよな。」
そうだね、と頷きながらオレンジ頭の青年ティーダ・ランスターはバインドを掴みながら男を持ち上げる。やって来た護送用の車両に男を投げ入れながらティーダが話しかけてくる。
「じゃあ、これでお仕事終了だね。お疲れ、カルラ・クーフォ。」
「何故にフルネームで・・、まぁいいや。お疲れティーダ・ランスター。」
互いにハイタッチを決めた。
俺、カルラ・クーフォはベルカの騎士である。と言っても名前だけの半分は飾りのような物だ。ベルカでは良く見る赤髪を短く切り揃えており、普段は次元管理局の制服を着崩している。詳細にいるとネクタイを中途半端なところで止めておりシャツのボタンの上二つは開けている。さらに腕捲りをしているためか自分で見ても管理局員には見えない。
「ほら、そろそろお偉いさんに挨拶なんだから服装ただしなよ。」
そんなことを言うティーダはとてもきちっとしている。模範のような制服の着方をしている。具体的にいうと突っ込みどころがなくて面白くない。
此方がジト目を向けていることに気づいてかティーダが少し肩を落としつつ呟くように言う。
「はぁ、僕はこれでも執務官志望なんだよ?服装とか言葉遣いとかはキチンとておかないと後が面倒だからね。あと僕のパートナーなんだからその辺はちゃんとしてくれないかな?僕のイメージダウンだろ?」
はいはい、分かりましたよ。と言いながらくしゃくしゃになっているシャツをある程度ただしなから廊下を歩いていく。
廊下の一番端にたどり着くとティーダがネクタイを締め直す。それを見てここが目的地だと結論付け俺もネクタイを締め直す。
「じゃあ、入るからね。」
ティーダがこちらに一声かけてから扉をノックして中へと入っていった。
「ティーダ・ランスター一等陸尉であります。お呼びに預り参上いたしました。」
「同じく、聖王教会所属騎士、カルラ・クーフォ一等陸尉であります。」
敬礼をしながら部屋を見渡す。なんだったか。そうそうと思考しつつティーダへと念話を送る。
『この部屋の感じ知ってると思ったら地球方式じゃん。ほら、そこ段差になってるだろ?そこで靴を脱ぐんだよ。』
イラッとした顔を此方に向けるティーダを見ていると別の声が此方にかけられる。
「あら?もう約束の時間だったかしら?ごめんなさいね。まだお茶の用意が出来ていないのよ。」
パタパタとスリッパから音をたてつつ現れたのは緑色の髪をポニーテールに纏めている女性。
「あ、そうそうカルラ君は始めましてね。リンディ・ハラオウンです。」
此方に微笑みかけるように目を向けるリンディを見ながら俺は敬礼を崩さないまま言葉を続けていく。
「は!リンディ提督にお目にかかることが出来まして大変ありがたく思っております。」
『気持ち悪!』
『黙れシスコンが!』
念話で罵倒しあいがらも俺とティーダの笑みは絶えない。割りと何時もの事なので慣れている。
リンディが此方に気づく様子もなく笑みを浮かべながらお茶の準備を横目で見ながら休めの姿勢で立ち続けている。
『なぁ、シスコン。俺たちいつまでたってるんだ?』
『さぁ?僕もリンディ提督には数回しかあったことないからね。ほとんど彼女の性格は知らないんだ。』
それじゃあ仕方ないかと諦めつつリンディを見る。本当に凄い良いからだをしてるよなあ。あの胸のでかさもそうだけどなんと言っても尻がたまらんよなぁ。
『ほんとだよね。あれで40代の未亡人って言うんだからミッドチルダの未来は明るいよね。』
シスコンの冷静な言葉に頷きながらしばらくその姿を眺めて彼女のいないことを忘れる。
それから数十分後にリンディはようやく俺たちが立っているままだと気づいたらしくソファへと勧めてくれた。お茶の入った湯飲みを此方におきながら自らは反対側の席に座る。
「今日お二人に来ていただいたのには少しお願いがあってね。」
リンディが角砂糖を取りだし湯飲みの中へと山盛りに入れているのを横目で見つつ戦慄する。
しかしリンディは気づいていないようで話を続けていく。
「ジェイル・スカリエッティという名前に聞き覚えはあるかしら。」
「指名手配中の次元犯罪者ですね。」
「スカリエッティとは俺たち少し因縁がありましてね。」
ティーダの言葉を引き継ぐようにそう答えるとリンディは幾分か安心した様子を見せつつ話を続ける。
「私の娘がお友達二人ととある部隊を立ち上げることになったの。そこで貴方達二人にはその部隊に所属してほしいのよ。」
リンディの娘、フェイト・テスタロッサ。管理局の中では有名人でファンクラブまで存在するという噂を持つ。魔導師ランクS+の実力者で容姿端麗、成績優秀というまさに絵にかいた人物である。
ついでに言うとティーダの目指す執務官である。さらにその友達となれば、
「高町なのは、八神はやて。こんな管理局オールスターの部隊に僕たちは必要ないんじゃないでしょうか?」
ティーダの言葉を肯定する。高町なのは、若干14歳にて魔導師ランクSを取得。驚くべき速さで強くなっている。最近では教官になっており、さらに活躍の幅を広げている。
八神はやて、彼女はロストロギアである夜天の書をデバイスとしており魔力は底知れずと言われている。また固有戦力として守護騎士という存在を保有しておりその誰もがSランクオーバーの魔導師だ。
この事でわかる通り確実に部隊に保有できる魔導師ランクは上限を越えている。彼女たちにリミッターが着くのはもう確定的なのに何故ここまで戦力を集中させてたがるのかが疑問だった。
「俺たちは部隊のランク制限のために魔導師ランクは両方がAAAでとどめています。少なくともSオーバーの俺たちがその部隊に加わる利点が見つかりません。」
俺の言葉でリンディが少し嬉しそうに笑う。何がそんなに嬉しいのかはわからない。ただ、その部隊に召集されれば面倒に巻き込まれるのは目に見えている。
リンディはその色っぽい体を少しくねらしながら頬に手をおきながら言葉を放つ。
「そう?せっかくティアナちゃんと同じ部隊に配属になるのにねぇ。」
「全てを投げ捨ててでも行かせていただきます。」
やられた。そう思い肩を落とす俺を見てリンディは静かに笑った。
「で、お前らは言い合いに負けて引き抜きになったってか?」
陸士301部隊の隊長室に呼ばれた俺とティーダは怒られていた。ティーダに対して恨みの視線を向けてみるがティーダはそれに気づかない。それどころか隊長の話をも無視してマルチタスクの4分の3を使用してティアナとの生活を妄想している。
「てめぇ、ティーダ!聞いてんのか?お前らがいなくなったらこの部隊は糞雑魚になっちまうだろうが!」
自分の部隊を糞雑魚と表現するこの隊長の名はゲンヤ・ナカジマ。二等陸佐であり管理局内ではかなりのベテランである。
「ゲンヤさん、こいつに何言っても無駄ですよ。ティアナのことしか頭にないんすから。」
未だに妄想から復帰しない親友を蹴り飛ばしつつゲンヤの方へと顔を向ける。当のゲンヤは苦虫を食ったような顔をしている。
「本当にお前らは面倒に巻き込まれるのが好きだよなぁ!」
半分怒り、半分呆れつつ俺たちに声をかける。その声にへらへらと笑うことしかできない。
「もう怒る気も失せてきやがった。とりあえず異動の準備始めてろ。」
ゲンヤの怒気の籠った声を聞きつつ退室する。隣のシスコンスナイパーは未だに妄想の中。
「あぁ、もう嫌だなぁ。」
弱気な事を言いながらシスコンを蹴り飛ばしつつ異動の準備を始めるため廊下を歩き始めた。
もうわかると思うけどティーダはかなりの改造具合ですわ。
ちなみに二人ともデバイスはアームドデバイスだったりする。