【悲報】知らない間に幼馴染がジムリーダーになっていた件について【まさかの裏切り】   作:海と鐘と

13 / 18
第二章 Flaming Snow
第十一話


 肝試しが終わったからというわけでもないだろうが、うだるような暑さが抜け、穏やかな涼しさを感じるようになってきた。

 風の匂いも変わり、焼けつくような暑さを持った空気とはうって変わって、適度な湿気と心地よい温度をもった秋の風が肌を撫でるようになってきた。

 

 もう少し経てば紅葉が見えたり、秋の花が咲き始めたりするのだろうが、まだまだそこまで季節は進んでいない。

 

 つまり、夏の自然と秋の空気が織り交ざった季節の変わり目というわけである。

 俺が最も好きな時期だった。

 

 クーラーの吐き出す人工的な空気の中をじっと耐え忍んでいた真夏とは違って、外の空気を吸うだけでどうにも心がざわついてきて、自然自然にテンションが上がってくるのだ。

 体の奥底から荒波が押し寄せてくるような、あるいはマグマがせり上がってくるかのような、落ち着かない、されども決して嫌いではない気持ちにさせられる。

 

 

 どうしても何かをしたいような、誰かに会いたいような、どこかに行きたいような。

 何をしたいのかも、誰に会いたいのかも、どこに行きたいのかも分からないけれど、それでも何かをどうにかしたい。

 

 そんな、にっちもさっちもいかないような気分になる。

 

 

 そんな時期である。

 こういう気持ちは、本当に、嫌いではない。

 しかし落ち着かないので、この時期はいつも、誰かと一緒にいるか、何かに没頭しに行くのである。

 

 

 正式にポケモントレーナーになった今年は、その気持ちをポケモンバトルで晴らしていた。

 

 

『ブーバー、戦闘不能!ハッサムの勝利!よってこの勝負、ヒワダタウンのクヌギの勝利!』

 

 

 例によって例のごとく、バトルの大会である。

 今回はエンジュシティで開かれた大会で、優勝者には賞金だけでなく、特別な賞品も用意しているとのことだった。

 だから、というわけでもないが、季節の変わり目で上がりに上がったテンションを解消するためにも、少し遠出してエンジュシティまで来たわけである。

 

 

『さぁ、まさかの大番狂わせです!前大会優勝者、エリートトレーナーとして経験を積んだほのおタイプのスペシャリストであるバサラ選手が、準決勝で今大会初参加の無名の少年に敗北するなど、いったい誰が予想したでしょうか!』

 

 

 司会のこういう口上も、いい加減聞き飽きた感がある。

 前大会優勝者が云々。ダークホースが云々。まだ10歳の少年が云々。他に言うことはないのだろうか。

 

 

『と、言いたいところですが』

 

 

 そんなことを思っていると、いつもとはちょっと違ったフレーズが出てきた。

 お、いったい何を言うつもりなのだろうか。

 

 

『人気ウェブサイト、ポケネットの視聴者ならお分かり頂けるでしょうか。ヒワダタウンのクヌギ選手、彼は先日から、ある動画で有名になった少年であります!何を隠そうこのわたくしも、その動画で彼のことを知った口であります!四天王カリンとの名勝負!恥ずかしながらわたくし、この大会に彼が出ると知って若干興奮した夜を過ごした昨夜でありました!』

 

 

 カリンさんとの勝負の余波が、こんなところに出ていた。

 

 

『探ってみればこの少年、この夏にトレーナーデビューを果たしてからわずか数か月!この間に各地の大会を荒らしまわった賞金稼ぎ(ハンター)であります!ジョウト地方でのバッジ取得は皆無でありながらも、その実力の程は只今皆さんが見た通り!はたして、このまま彼が優勝カップを掻っ攫うのか!それとも誰かが待ったをかけるのか!彼の決勝相手を決める戦いが、もう間もなく始まります!』

 

 

 明らかに興業のだしに使われていた。

 大会の司会というのも中々に頭を使う仕事だが、これだけ喋れれば十二分に役割をこなせるんだろうなと思いながら、選手控室に戻った。

 

 控室に戻るまでの通路。

 昼間だから明かりをつけないのだろうか、陰になって暗い通路を歩いていると、途中で誰かが立っていた。

 スタッフか誰かだろうと思って横切った時。

 

 その人が言った。

 

 

「……うん、君は、いいな」

 

 

 横目で見る。

 暗くて顔はよく分からなかったが、頷いていたのが見えた。

 気持ち悪かったので、足早に控室に向かった。

 

 

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 

 

「ハッサム!つるぎのまい!」

 

 

 指示に答えて、赤い鎧をまとったようなポケモン、ハッサムが力を貯める。

 これで二回目の『つるぎのまい』だった。

 

 

「くっそぉ!グランブル!かみくだけ!」

 

 

 トレーナーの指示に従って、大きな体躯をした二足歩行のブルドックのようなポケモン、グランブルがハッサムに肉薄し、肩に思い切り噛み付いた。

 金属を擦るような音が聞こえる。

 可哀そうに。鋼の強度を誇るハッサムの体に噛み付いて、あのグランブルの口の中は大丈夫だろうかと考えながらも指示はやめない。

 

 準備は完了したのである。

 

 

「ハッサム!しっかり捕まえてろよ」

 

 

 声を聴くと、ハッサムは左腕でグランブルの首をがっしりと挟み込んだ。

 そして、右腕を構える。

 

 

「バレットパンチ、連打だ!」

 

 

 答えるように大きく鳴くと、ハッサムの右腕が光りだす。技のためのエネルギーが貯められているのが分かった。本来バレットパンチは超高速の打撃で相手を先制攻撃する技だが、相手を確実に固定している今、もっとえげつない技にグレードアップする。

 

 ハッサムが、今更逃れようとあがくグランブルの首を掴み、ぐい、と持ち上げた。

 

 そして炸裂する、連続したバレットパンチ。

 銃弾のような速度で放たれる鋼の拳。

 普段でも細い木ならば一発で砕いてしまうようなそれが、『つるぎのまい』で強化され、さらに連打される。

 

 ハッサムから解放された瞬間、グランブルは声もなく崩れ落ちた。

 

 

『グランブル、戦闘不能!ハッサムの勝利!』

 

 

 相手は残り二体だったが、よっぽどの切り札がない限り、いまのハッサムは止められない。

 

 

『ケンタロス、戦闘不能!ハッサムの勝利!』

 

『ミルタンク、戦闘不能!ハッサムの勝利!』

 

 

 予定調和だった。

 

 

『この勝負、ヒワダタウンのクヌギの勝利!よって、今大会優勝者は、クヌギ選手!』

 

 

 優勝優勝、万事ことも無し。ちょっとは上がりに上がったテンションも、解消されただろうか。

 変なことがあった肝試し大会なんて早く忘れて、いつもの状態に戻りたいものである。

 

 

『力で押して押して押しまくる!なんという勝負でしょうか!準決勝のようなサイクル戦とはうって変わったバトルスタイル!変幻自在の戦闘についていけなかったか!クヌギ、さすがに『鬼畜ショタ』の二つ名は伊達ではなかった!』

 

「……へーいへいへい!ちょっと待て!その二つ名は了承してないぞー!訂正しろー!」

 

『それでは授与式に移りますので、準備が整うまでもう少々お待ちください!』

 

「聞けや!」

 

 

 完全にスルーして進める司会の人。

 さすがにプロだった。

 

 選手一同集まって待っていると、入賞者の立ち台やマイクなどが手早く用意されていった。

 その様子をどうすることもなく眺めていると、一人の少女が目に入った。

 

 俺より幾分か年上だろうか、役員の人間が準備しているのを所在なさげに見ていて、時折手伝おうと動くのだが、断られて元の場所に戻るのだった。うろうろと何か手伝うことがないか探しているが、役員の方が恐縮した様子で首を横に振るのだった。

 

 しょんぼりした様子で元いた場所に戻る彼女は、なかなかにいい子のようだった。

 俺なら最初から手伝おうとしないだろう。

 

 明るい茶髪を腰まで伸ばし、かつ頭の両側で縛って角のような形をつくる独特の髪型である。

 白いワンピースが良く似合うような、儚げな容姿をしていた。

 

 

『長らくお待たせいたしました。準備が整いましたので、これより授与式を行います』

 

 

 アナウンスが流れた。促されて、立ち台の真ん中に上がる。

 両隣は大人だった。身長の差で、もっとも高い立ち台にいるはずの俺が、一番低いところに頭があった。

 谷みたいになっていた。

 三位から順にメダルを渡されていく。 

 最後は俺の番だった。

 

 

『優勝は、ヒワダタウンのクヌギ選手!素晴らしいバトルを見せてくれました!優勝カップの贈呈です!』

 

 

 持ってきたのは、さっきうろうろしょんぼりしていた少女だった。

 遠目からではよく分からなかったが、近くで見れば、見覚えがある少女だった。

 雑誌やテレビで見たことがある。

 

 

『優勝カップを渡すのは、アサギシティジムリーダー、鉄壁ガードの女の子!ミカンさんです!』

 

「おめでとうございます!」

 

 

 確実に俺よりも緊張しているであろうがちがちになったような声で祝ってくれた。

 

 なぜエンジュシティの大会で隣の町のジムリーダーがこんな仕事をしているのだろうかと疑問だった。

 内心首を傾げていると、ミカンさんが小さな声で言った。

 

 

「……このあと、お時間もらっても、よろしいですか……?場所は、もうとってあるので……」

 

 

 驚いて彼女の顔を見ると、言ってやった!というような安心した顔になっていた。一仕事終えたような満足感がそこにはあった。

 安心。満足感。仕事。

 

 誰かに頼まれてやっているのだろうか。

 

 

「……場所と時間は、チケットに書いてあります……」

 

 

 そういって離れていった。

 特別賞の優勝賞品は、高級懐石料理のタダ飯チケットだった。マイコさんの踊りもセットで見ることが出来るようだった。

 場所は、エンジュ踊り場。時間は、今夜。

 

 ……ガキにこんなもん渡すなよ、と思った俺は多分、間違っていない。

 

 

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 

 

「……お、お待ちしていました」

 

 

 エンジュシティ、踊り場の前だった。

 頭を下げてくるミカンさんに笑顔で手を振ってみた。

 俺につられるようにしてか、ちょっとほっとしたような顔で小さく笑ってくれた。

 笑ったまま聞いてみた。

 

 

「誰に頼まれてあんなことやってたんですか?」

 

「……え」

 

「あ、っと自己紹介がまだでしたね。ヒワダタウンの、クヌギ・ソウタロウといいます。10歳です。好きなことは幼馴染と散歩すること、嫌いなことは面倒な事です」

 

「あ、わ、私は、ミカンと言います。えっと……」

 

「アサギシティのジムリーダーの、ミカンさんですよね。知ってますよ。最近、いわタイプからはがねタイプにポケモンが変わったんですよね。鉄壁ガードの女の子、ってかっこいい二つ名だと思います」

 

「あ、ありがとうございます。でも、あれは、周りの人が決めたものなので、私には選択権がなかったといいますか、そのう……」

 

「あー、分かります。僕なんて『鬼畜ショタ』なんて呼ばれるようになっちゃって、失礼しちゃいますよね、本当に」

 

「そ、そうですよね!周りに決められると、本当に困っちゃうっていうか……」

 

「それで、いったい誰に頼まれてたんですか?」

 

「はうっ」

 

 

 やばい、なんだこの子。可愛い上に反応が面白いぞ。

 自然自然に頬が吊り上っていくのが分かった。

 

 

「アサギシティはエンジュの隣街ではありますが、わざわざ隣街のジムリーダーがアマチュアも参加可能な規模の大会になんて関わりますか?あまつさえ、一参加者を呼び出しますか?さらに言えば、こんな風にわざわざご丁寧にお出迎えなんてしますか?」

 

「……あ、あのう、それは……」

 

「僕だったら頼まれてもやりませんが、優しそうなミカンさんなら誰かに頼まれたらやっちゃいそうですよね。加えて、可愛らしい女の子のミカンさんにあんな風に誘われたら、どんな人間でも行ってみようかって気になりますもんね」

 

「……え、えっと……」

 

「誰かに頼まれたんでしょう?」

 

 

 困ったように視線を右往左往させるミカンさん。

 

 

 超楽しかった。

 そうだよ、この感じだよ!

 見透かしたようなことを言って他人を困らせて悦に入る、この姿こそがクヌギ・ソウタロウである。

 最近はカリンさんの襲来だったり肝試しだったりなんだりで自分を見失っていた。

 綺麗なお姉さんに手玉に取られたり、お化けに怖がったり、そんなんじゃまるっきり普通の子供である。

 俺は俺らしく生きねばならぬのだ!

 

 

「ありがとうございます」

 

「へ……?」

 

「ミカンさんのおかげで自分を思い出しました」

 

「……?えっと、どういたしまして……?」

 

 

 唐突な感謝にとまどいながらも返してくれるミカンさんはいい子だった。

 

 そんなやり取りをしていると、誰かが近づいてきた。

 見ると、こちらも見知った姿だった。

 紺色のヘッドバンドに、同色のマフラーをつけていた。

 金髪に、黒いセーター。白いだぼっとしたチノパン。

 

 

「やぁやぁ!彼は来ているね?ミカンちゃん、ありがとう。今日は心ゆくまでエンジュ自慢の懐石料理、食べてってよ」

 

「マツバさん……っ!ほ、本当にいいんですか?懐石料理って、その、高いんでしょう?アサギシティの食堂の、何倍かはするって聞いたことがあるんですけど……」

 

「お仕事の正当な報酬だからね。それに、この後もやることはあるんだから、おいしいもの食べて、力つけとかないとね」

 

「はい……っ!ありがとうございますっ!」

 

 

 びっくりするほど蚊帳の外だった。

 しかし、これで分かった。

 俺を呼び出したかったのはこの人で、ミカンさんは懐石料理につられて動いていたわけだ。

 

 エンジュシティ、ジムリーダーのマツバ。ゴーストタイプのスペシャリスト。

 可愛い女の子を料理でつるとは、なかなか恐ろしい奴だった。

 

 

「さぁ、そして、はじめまして!君がクヌギ君だね?」

 

「そういうあなたは、マツバさん」

 

「そう、僕がマツバだ。来てくれてありがとう。とりあえずは、中に入ろうか」

 

 

 マツバさんに促されて踊り場の中に入っていった。

 ミカンさんは隣で、今にも涎を垂らしそうな、幸せそうな顔をしていた。はらぺこ美少女だった。

 

 

 踊り場には既に何人か人が集まっていた。

 純粋にマイコさんの踊りを楽しむ人たちなのだろう、踊り場に近い前の方で楽しそうに談笑していた。

 俺たちが案内されたのは、二階のお座敷だった。

 こっちの方は、料理を楽しみながらマイコさんの踊りも楽しめるようになっているようで、吹き抜けから、下の階を一望できるような作りになっていた。

 

 畳の上で胡坐をかいて、荷物を下した。

 俺の正面にはマツバさんが同じように胡坐をかき、マツバさんの隣ではミカンさんがきっちりと正座して目をつぶっていた。料理が来る前の精神統一のようだった。

 

 

「今日のために特別に席を取っておいてもらったんだ。ジムリーダーでもなかなか入れない、特別な場所なんだぜ?って言っても、あの大会の優勝者に渡されるチケットに便乗しただけなんだけどね」

 

 

 そういって、マツバさんは笑った。

 周りには誰もいない。俺たちだけのようだった。

 

 

「ってことは、マツバさんの用がなければ、俺は一人寂しくここで飯食ってたってことですか?」

 

 

 感謝すべきなんですかね、と言おうとしていたところで、何が琴線にふれたのか、ミカンさんがぐわっと目を見開いてこっちを見てきた。

 

 

「クヌギ君!」

 

「は、はい……?」

 

「飯食う、なんて言い方をしちゃダメです!」

 

 

 すごい迫力だった。

 さすがにジムリーダーというだけのことはあるのか、一言一言に鋼の意思が感じられた。

 この子に率いられる鋼ポケモンたちはさぞや精強なのだろうなと思わせられる姿だった。

 

 しかし、飯の話である。

 

 

「え、えっと……?」

 

「こんな立派な場所でいただくお懐石料理ですよ!?私たちの方もそれ相応の態度をとらなければなりません!まだ子供だからと言って無礼が許されるものではないのです!」

 

「は、はぁ、すんませんでした……」

 

「分かればいいんです!」

 

 

 鼻息荒くも、元の不動の姿に戻るミカンさんだった。

 マツバさんの方をみると、あちゃー、というように苦笑していた。

 

 気を取り直して。

 

 

「えーと、つまり、マツバさんの用が無ければ、俺はここで一人寂しくお懐石料理を頂いていたということでよろしいのでしょうか……?」

 

 

 目をつぶりながらうんうんと頷くミカンさんを確認してから話を続けた。

 

 

「それはつまり、マツバさんは特別俺に、というわけでもなく、あの大会の優勝者に、要件があったってことですよね?」

 

「うん、話が早いね!僕もまさか10歳の子に頼むことになるとは思わなくて、ちょっと驚いているところだよ」

 

「ミカンさんは?」

 

「彼女にも僕が声をかけたんだ。本当ならもう一人、ジムリーダーにお願いをしたかったんだけれど、生憎ハヤトくんもヤナギさんもアカネちゃんも、忙しくて断られてしまってね。それならと、ちょうど開かれる大会の優勝者に依頼しようかなと決めたのさ」

 

「ジムリーダーが三人必要な仕事ですか……?」

 

「ツクシくんには既に現地に向かってもらっているから、実際は四人だね」

 

 

 あいつお仕事中だったのか。通りでジムにも家にもいなかったわけだ。

 しかし、ジムリーダーの半数が必要な仕事?

 面倒事の香りしかしない。

 

 

「お、料理が運ばれてきたね。じゃあ、後は食べながら話そうか」

 

「お食事しながら話すんですか……?」

 

「ミカンちゃん、君には悪いけど、お仕事の話だから勘弁してくれ。僕だって本当は料理を楽しみたいし、マイコさんの踊りを楽しみたいよ」

 

 

 マツバさんの言葉を聞いて階下の踊り場を見た。

 五人のマイコさんが踊りを始めていた。

 あれだけ楽しそうに談笑していた観客の人々が、魅了されたようにしんと静まり返っていた。

 

 そして、マイコさんたちとともに踊る五匹のポケモン。

 

 目が吸い寄せられるように、その中の一匹に向かった。

 帯電した金色の毛。四足歩行。獣型。

 

 

「……ちっ」

 

 

 自分の眉間に皺がよるのが分かったので、目を離してマツバさんを見た。

 

 

「それで?俺に何を依頼しようってんですか?」

 

「……うん、君は、グリーンフィールド、って街を知っているかな?」

 

 

 グリーンフィールド。小さな街だ。ポケモンジムが無いくらいの規模でヒワダタウンよりも田舎だと言っていいくらいの小さな街。もはや村である。

 

 ヒワダとコガネの間。ウバメの森を東に抜けると見えてくるそこは、小さいが、それなりに有名な場所である。

 

 

「……女性トレーナーが行ってみたい場所ランキングの常連っすよね?古びた風車が回って、花畑が広大に広がってる、綺麗な場所ですけど」

 

「さすがにヒワダタウン出身なら知っているか。なら、そこに、スノードンという学者が屋敷を構えていることは?」

 

「……知ってますよ。シュリー・スノードン。論文をいくつか読みました。考古携帯獣学の専門家で、アンノーンについての研究を行っているはずです」

 

「へぇ、そこまで知っているならもうほとんど説明はいらないかな」

 

 

 いつの間にか運ばれてきていた酒を料理と一緒に口に放り込んでから、マツバさんは言った。

 

 

「スノードン邸でね。出たらしいんだ。エンテイが」

 

 

 自分の眉根が寄っていくのが分かった。




詞葉様、誤字報告ありがとうございました。

読了ありがとうございます。
感想、誤字脱字等ありましたら書き込んでくれると嬉しいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。