【悲報】知らない間に幼馴染がジムリーダーになっていた件について【まさかの裏切り】   作:海と鐘と

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第十四話

 研究チームと護衛チームが、玄関ホールに集まっていた。

 玄関ホール。つまり、スノードン邸の中で最もスペースのある場所である。

 真ん中には机が一つ置かれ、皆その周りに集まっていた。

 

 机を遠巻きにするように各種機材が並べられ、現象を観測する準備も整っていた。

 ビデオカメラや音響機器などのオーソドックスなものから、パッと見ではなんに使うのか分からない奇妙な機材までが揃っていた。

 

 地面に伏せられたパラボラアンテナのようなものや、金属板とボールが交互に食い合ったようなもの、螺旋状に連なった棒、等々。

 

 さすがにこんな大きな屋敷を構えるだけのことはあり、シュリー博士は潤沢な資金を使って様々な機器を買い集めたようだった。

 

 中心に置かれた机の上には、博士が遺跡で発見したという古びた箱と、その中に入った、アンノーン文字が刻まれたたくさんの小さい石板が置かれている。ミーちゃんがアンノーンを呼び起こした引き金になったと考えられている品である。

 

 機材確認や設置のために動いていた作業員たちが、玄関ホールから出て行った。万一のことがあった場合に備えて、参加する人間は最小限にしたいというシュリー博士の意思である。

 博士の横で作業の様子を見ていたミーちゃんも、名残惜しそうに何度もこちらを振り返りながら、ぽてぽてと出口へ歩いて行った。心配そうに、胸の前で両手をぎゅっと握っていた。

 

 

 机の周りにいるのは、六人。

 

 シュリー博士、アイン博士、ツクシ。そして、護衛のマツバさん、ミカンさん、俺。

 

 全員を見渡してから、カメラに向かってシュリー博士が言った。

 

 

「では、これよりアンノーンの召喚及び改変事象の観測実験を開始する。参加者は六人。私、シュリー・スノードン。助手のアイン・アントヒルさん。文字の解読補佐として、ツクシ君。そして、それぞれに一人づつの護衛チーム。マツバ君、ミカンちゃん、クヌギ君。以上の人員で実験を行う」

 

 

 わざわざ馬鹿丁寧に名前まで紹介しているのは、実験の記録のための証拠映像を撮っているからである。

 そこら辺をきっちり行うあたり、さすがに著名な学者であるシュリー博士だった。

 

 

「改変事象を起こすうえで必要となるのは、遺跡で発掘された石板とアンノーンを呼び出すための強い感情、だと仮説を立てている。細かい部分は後日作成予定の論文に記載するので熟読されたし。では始める」

 

 

 シュリー博士は石板を手に取り、並べていった。

 事前に文を作っていたのだろうか、淀みない動きで次々とアンノーン文字の列が重なっていく。

 使った石板は、25枚。ミーちゃんの時は八枚だった。その倍以上の枚数を使って、そして恐らく、文脈も正しい並べ方のはずだった。

 

 後の問題は、人の感情だったが。

 とりあえず最低限度以上の条件は満たしたようだった。

 

 

「……第一段階の成功を確認。分かるだろうか。これが、アンノーンだ」

 

 

 カメラに向かって言うシュリー博士の声は、興奮で震えていた。

 25枚が並べ終わったその時、ちらっと石板が光ったような気がした。

 

 そして、アンノーンが現れた。

 

 一匹だけのようだった。

 横から見ても分からないような薄い体に、大きな一つの目。

 石板に刻まれた文字と同じような形のその体は、I、の文字だった。

 

 虚空から唐突に現れたそれは、きょろきょろと周りを見渡していた。

 周りにいる俺たち六人をそれぞれじっと観察しているようでもあり、かつ、どこか困ったような雰囲気を感じられるようでもあった。

 ふよふよと辺りを飛び回り、結局は石板の上に滞空するようにして留まった。

 

 

「……で、このあとは?」

 

 

 シュリー博士に聞いた。

 博士は悩んでいるように眉をひそめていた。

 アンノーンの呼び出しには成功したが、現状、ただそれだけだった。

 出現したアンノーンも、たった一匹。小さく震えて、こっちを見ているだけだった。

 

 

「……アンノーンの召喚には成功した。文字の並びも、問題はないはずだ。ならばあとは、感情の強さが足りないということなのか、それとも、まだ他に現象を起こす引き金があるということなのか……?」

 

「アンノーン文字についてはその解読方法はほとんど解明したと言っていいでしょうけれど、アンノーンそのものについての研究はまだほとんど手付かずですし、その生態や能力を完璧に把握しているという学者は存在しません。アンノーンを呼び出せただけでも、まずは一歩前進、ということでいいんじゃないでしょうか」

 

「アイン博士……」

 

 

 手に持ったバインダーに何事かを書き込みながら、アイン博士が言った。

 午前中に見せたようなどこか抜けた様子は消え失せ、確かな知性を感じさせる表情でシュリー博士に提言をしていた。

 

 

 

 考え込むシュリー博士をよそに、アイン博士が一歩、歩を進めた。

 視線の先には、アンノーンがいる。

 

 

「……記念すべき、第一歩です。歴史に刻まれる、第一歩になるかもしれません。アンノーン。もし、この子たちの力を完全に制御できて、そしてもしも、この子たちが創造する世界を現実に残せたのならば……」

 

 

 ゆっくりと、アンノーンに向かって手を伸ばした。

 

 

 

 ぐるん、と。

 アンノーンの一つ目が、アイン博士の姿を捉えた。

 

 

 アンノーンとアイン博士が、数瞬、見つめあった。

 

 にっこりと、アンノーンの目が笑ったのが分かった。

 困った雰囲気を出していた薄っぺらい小さな生き物が、歓喜の感情をあらわにしたのが分かった。

 

 そして、歌い始めた。

 

 すうっ、とその場に浮かび上がり、アイン博士が伸ばした手の上に留まるように滞空したアンノーンは、高い澄んだ鳴き声を上げ始めたのだ。それはまるで、喜びの歌を歌ってでもいるかのような光景だった。

 くるくると回転し。

 朗々と声を上げ。

 アンノーンは歌っていた。

 

 

「……わ、なんか、可愛いですね……」

 

 

 ミカンさんが呟いた通り、それはなんだか可愛らしかった。

 一つ目の薄っぺらい体という、少し不気味な容貌をしたアンノーンが、愛らしく見えた

 

 自分の手の上のアンノーンをみて、アイン博士はどうすればいいか分からないというような感じで固まっていた。

 思わず手を出したら、なんだか妙に懐かれてしまった小動物を見るような目でアンノーンを見ていた。

 マツバさんも、ツクシも、ミカンさんも、そして恐らく俺も、歌って踊る小さなアンノーンを微笑ましそうな顔で見ていたのではないかと思う。

 

 

 たった一人、アンノーンに連れ去られたことのあるシュリー博士を除いて。

 

 

「……いかん!早くアンノーンから離れるんだ!」

 

「……え?」

 

 

 え?、という声だけを残して、アイン博士は消えた。

 

 

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 

 

 アイン博士が消えて数秒、誰も声を出せなかった。

 目の前にいた人間の唐突な消滅。

 まるで見えない大きな怪物に飲み込まれてしまったかのような、脈絡ない消え方だった。

 アイン博士とともに、アンノーンも消えていた。

 

 呆けたようにアイン博士がいた虚空を眺めている俺たちをよそに、シュリー博士は言った。

 

 

「……そうか、そういうことか!データ量だ!なぜ私は気付かなかった!一度飲まれているというのに!」

 

「……データ量……?どういうことです?」

 

「私はアンノーン達が大量に巣食っている空間を見た。地面も空もない、アンノーン達だけの空虚な空間だ。恐らく、複数のアンノーン達が呼び出されてこの世界に渡ってくる時、その大量のアンノーン達に見合うだけの情報を持つ存在が、代わりにアンノーン達の世界に渡って行ってしまうということだろう。最初に出てきた一匹は、その、向こうの世界に行く『生贄』とでも呼ぶべき存在を見定める役割を持つもの、ということだ」

 

 

 質量保存則と似たようなものだ、と博士は言った。

 世界にある物質の情報量は常に一定を保っているのだという。

 そんな中で、別の世界にいるアンノーンがこの世界に入ってくると、その分だけこちらの世界の情報量が多くなる。情報の均衡を保つために、入ってくるアンノーンの分だけに見合う存在、今回はアイン博士が、向こうの世界に行ってしまったということだ。

 

 

「……つまり、アイン博士は今、アンノーン達の世界に迷い込んでしまった、ということですか」

 

「……なんてこった、なんのための護衛だよ、僕達は」

 

 

 マツバさんが頭を抱えた。

 シュリー博士は全員を見渡してから、机の上にある石板を見た。

 

 

「アイン博士が居なくなっただけではない。今、この世界はアイン博士の分だけ情報が減少している状態にある。つまりは、もうすぐ……」

 

 

 言葉の途中で、上を見上げた。

 博士の視線の先を見る。

 

 

 虚空に穴が開いていた。

 渦潮のように螺旋を描く空気が、どこかにつながっていた。

 

 

 その穴から、ふっ、とアンノーンが飛び出してきた。形は、W。空気を震わせるような、高周波の声を上げていた。歓喜の歌を歌っているようだった。

 

 その一匹に続くようにして、虚空の穴から濁流のように大量のアンノーンが流れ出てくる。

 様々な文字の形をした黒い薄っぺらい体。

 一字一字がポケモンで、一匹一匹が文字だった。

 

 

「……まずはアイン博士を助けなきゃ。アンノーン達が力を発揮するその前に何とかしたいけど……」

 

「とりあえずぶちのめせばなんとかならんかな」

 

「え、ちょっと……」

 

 

 ツクシに何かを言われる前にモンスターボールを投げた。

 出てきたのはミロカロスである。

 大量のアンノーンを見てちょっと驚いている様子だったが、こっちを振り向いて一声鳴いてくれた。

 

 

「ミロカロス、冷凍ビーム!」

 

「ゲンガー、気合玉!」

 

「レアコイル、10万ボルト!」

 

 

 声が重なった。

 横を見ると、マツバさんとミカンさんが同じようにポケモンに指示を出していた。

 分からないけどとりあえず倒してみよう、というところで考えが重なったようだった。

 

 いまだに穴の中から押し寄せているアンノーンの群れへ向けて、3匹の技が迫る。

 

 極寒の冷気の束が。

 凝縮されたエネルギーの塊が。

 超高電圧の電流が。

 

 同時にアンノーン達に衝突した。

 

 

 

 

 

「……おいおい」

 

 

 技の余波で巻き上がった煙が晴れた時、目を疑った。

 あの小さなアンノーンの、たった一匹でさえ、倒れている様子がなかったからである。

 虚空に空いた穴は消え失せ、アンノーン達は頭上で一塊になっていた。

 技が効いている様子は一切なかった。

 

 

「効いていないのか……!?」

 

「あれ、なにか、バリアーみたいなものが張られてます」

 

 

 ミカンさんの言葉通り、アンノーン達が密集している空間一帯に見えない膜があるようだった。

 続けて攻撃してみても、その膜に沿って弾かれるようにして霧散してしまうようだった。

 

 

「ばかな……。まさか、既に改変現象が始まっているというのか……!しかし、もし既に始まっているというのならば、トリガーになった私の願望を映し出す世界になるはずだが……」

 

 

 アンノーン達は、回転を始めていた。

 そこかしこでそれぞれ円を作り、いくつかのグループで好き勝手に回っているようにも見えるが、やはり規則性が有るようだった。

 一つ一つは意味を持たない文字が、複数集まって始めて言葉を作り出すように、一体では力を持たない彼らは多くの個体が寄り添いあうことで力を発揮していた。文章を作り出していた。

 

 

「ツクシ、分かるか?」

 

「ちょっと待って。今読んでるとこ……」

 

 

 ツクシに問いかけた矢先、ふわりと、白いなにかが降ってきた。

 掴んでみると、手の中で、ふっ、と燃えるように湧き上がり消えていった。

 

 燃え上がる雪のような、何か。

 

 上を見上げると、それが雪崩のように落ちてくるところだった。

 

 

 周り全てを、雪崩が呑み込んだ。

 一瞬で、辺りが真っ白になった。

 

 

 

 

 

   

   ◆

 

 

 

 

 

 

 雪道を歩いていた。

 高く高く積もった雪が、道の両側に壁のようになっていた。

 どこまでも続く雪道を、延々と、延々と、進み続ける。

 

 寒さはない。

 雪のように見えるそれらは、温度がなかった。

 積もる端から湧き上がり、燃え立つように消えていく雪。道の周りにある壁となったものの他は、白い炎のようにゆらりゆらりと揺れながら虚空に消えて行ってしまうのだった。

 

 道の先を見れば、雪壁から湧き上がるように白い炎が出ているのが分かった。

 どこまでも続く一本道の先を、白い炎が覆い隠していた。

 

 ため息を吐いて、横を見る。

 隣には、ここまでずっと一緒に歩いてきた相棒がいた。

 立ち止った自分を見つめていた。

 

 心配そうに見ているようにも見えるし、なぜ立ち止っているのかと責めているようにも見えた。

 彼は自分とは違い、鋼の体に、鉄の顎。表情が変わらないから、何を思っているのか分からないことがあるのだった。

 

 六本の足を器用に動かして、彼は周りを歩いて見せた。

 まだまだ元気だという表現だろうか。

 

 相棒が、これまでと同じように歩き続けると言っているようだ。

 ため息を吐いて、止まっていた足を再び動かし始めた。

 

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、辺りは白一色だった。

 空から降ってくる雪崩のようなものに押し流されたところまでは覚えている。

 それからどうなったかなと、体を起こしながら考えた。

 視界に入ったのは、鋼鉄の殻に囲われた丸い体。

 フォレトスが、心配そうに俺を見ていた。

 

 

「……勝手に出てきたのか、うん?」

 

 

 聞くと申し訳なさそうに俯いたので、その体をがしがしと撫でてやった。

 鋼を纏うフォレトスに、軽く触るくらいじゃ撫でたことにはならない。10歳の弱い体では、思いっきり力を籠めなければ、フォレトスに気持ちを伝えらえれなかった。

 

 

「よーしよしよし。俺を守っててくれたんだな?いい子いい子。ありがとう、フォレトス」

 

 

 感謝の言葉を伝えると、嬉しそうに体を震わせた。

 

 

 ひとしきりフォレトスを撫でた後、辺りを見渡した。

 見える範囲には、誰もいないようだった。

 

 雪崩に押し流された時、確かに落ちた(・・・)感覚があった。宙に放り出されたような、地面が無くなったような感覚だ。スノードン邸の玄関ホールの下が、こんな空間になっているわけがない。

 既に、アンノーン達が作り出した世界の中にいるようだった。

 

 先が見えなくなるほどに長く続く一本道。

 道の両側には高く高く積もった白い雪のようなものが壁となっていて、向こう側を伺うことは出来なかった。

 

 と、なれば。

 

 フォレトスをモンスターボールの中に戻して、フライゴンを出した。

 翼をばたばたさせるフライゴンに頼んで、背中に乗せてもらう。

 空の上からなら、ここから出る方法を探すことも、人を探すことも、やりやすいだろうということである。

 

 3、4mほどの白い雪壁もフライゴンなら一羽ばたきで飛び越えられる。

 解決策を探すにしろ、アイン博士を助けるにしろ、どちらでもとにかく動かなければ始まらない。

 

 

 軽やかに宙に浮かんで、フライゴンが飛び立つ。

 

 雪壁を越えて飛んで行こうとしたその時。

 

 

 壁が伸びた。

 

 

「……は?」

 

 

 フライゴンが高く飛べば飛ぶほど、フライゴンを越す高さまで伸びていく白い壁。

 フライゴンはぎょっとしたように体をびくつかせた後、スピードを上げて壁の外に出ようとする。

 しかし、いくらスピードを上げても、どこまで高く飛んでも、フライゴンの頭が壁より高くなることはなかった。

 

 いったん諦めて、地面まで戻る。

 すると、壁は何事もなかったかのように元の高さに戻った。

 

 地面に立って、白い壁を睨みつけた。高さは、元に戻って3、4mほど。しかしいくら高く飛ぼうとも壁を超えることは出来ない。

 

 ファンタジーか。伸びる壁など聞いたこともない。やはりここは、アンノーンが作り出した幻想空間のようだった。

 

 

 越えられない壁。無性にイラついてたまらなくなったので、ぶっ壊していくことにした。既に、普通に雪道を歩いてみるという選択肢はなかった。

 

 

 モンスターボールからポケモンを全て出す。

 

 

 フォレトスの突進。

 重い鋼の体が、雪の壁に衝突する。ずもりと体の半分ほどまで埋まった後、ずりずりと後退した。

 フォレトスが出た瞬間に、雪が内側から押し出されて元に戻った。

 

 ミロカロスの水弾。

 圧縮された水が何度も何度も連続して壁にぶつかる。大きなクレーターがいくつもできるが、雪から白い炎が燃え上がったと思うと、その後はきれいに消えていた。 

 

 ハッサムの鉄拳。

 並のポケモンが食らえばミンチ状になってしまうのではないかというほどの猛烈なラッシュ。

 殴り続けて奥へ奥へと進んでいくハッサムだったが、息継ぎをした一瞬で戻った雪壁にはじき出された。

 

 アブソルの業火。

 雪なら炎だと、アブソルに最近覚えさせた大文字を使わせた。練度が不安だったが、問題なく大火力を放ってくれた。なぜか雪壁が爆発炎上した。持ち前の危機察知能力がなければ、アブソルは危なかったかもしれない。後にはなんら変わりのない白い壁があった。

 

 フライゴンの地震。

 渾身の一撃で放った地震は、雪壁全体を大きく震わせ、上からは雪がどさどさと落ちてきた。

 雪まみれになっただけだった。

 

 

 

 

 

「……ぬわぁああああああっ!」

 

 

 

 壁はまだ、崩れない。

 

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

 

 ミーは一人、小さい両手を握りしめていた。

 この大きな扉の向こう側に、父と、その仲間たちが居るはずだった。

 

 扉は開け放たれていたが、誰も中には入れなかった。

 部屋の中にいなかった父の助手たちは、慌てたように右往左往して、時折白い雪のようなものを小さな瓶に詰めたり、写真に撮っていたりした。

 

 それしかすることがなかったと言ってもいい。

 玄関ホールへと続く扉は、白い雪のようなもので埋まっていた。

 

 内側から溢れ出すようにして出現したそれは、瞬く間に部屋全体を覆い尽くした。

 中にいた六人がどうなっているのかは、外からでは分からない。

 

 

 ミーは一人、小さい両手をそっと開いて、握りしめていた物を見つめた。

 手の中には、文字が刻まれた小さい石板が7枚。

 机の上に有った箱の中からくすねてきたものだった。

 あれだけいっぱいあるのだから、これくらいいいでしょ、と、思っていた。

 自分勝手に、我がままに。やりたいことを。

 

 

「……私、いけないことやっちゃったのかな、魔法使いさん……」

 

 

 雪に埋もれた扉を見つめ、ミーは小さく呟いた。

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。
感想、誤字脱字等ありましたら書き込んでくれると嬉しいです。

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