ただ、ひどく曖昧な空間にその魂は浮かんでいた。
あまりに薄く儚い輝きのそれに、この空間の主が語りかけていた。
「さっきから何度も説明させてもらってるけど分かってる?もー、返事しないのならこれが最後だかんね?」
すでに被っていた猫は剝がれ落ち、ほぼ素の状態で話しかけるも相変わらずの無反応。主は、神はそのまま話し続けた。
「君が死んじゃったのはぼくの手違いだったから、お詫びとして君をとある世界に転生させてあげるよ。転生、言ってることわかる?あれだよ、あれ、大出血サービスでドラゴンボールの世界にしてあげる。日本の男の子なら誰だって大喜びだろう?……少しくらい喜べっての。ならさ、サイヤ人にしてあげるよ!それもあの孫悟空の兄だ!!……っち、もういい、とっとと行け」
神が投げやりに手を振るとされるがままに魂は押しやられ、世界の間に消えていった。
「あーぁ、つまんないの。あんなやつもう知らない!」
それきり、興味をなくした神はどこかへと姿を消した。
一方、地球の日本と呼ばれる国ではテレビでとあるニュースを流していた。
『本日未明、愛知県豊明市にある民家に小さな隕石が落下しました。隕石は長谷川孝太郎ちゃん生後二ヶ月の命を奪い……』
おれの名前はラディッツ、父と母の三人家族だ。だけど今、家には父とおれしか居ない。
父は椅子に腰掛けて平静を装ってはいるものの、さっきからずっと組んだ腕を指先で叩き続けている。
おれはと言えば、そんな父をチラチラと伺いながら、特に用事も無いのに家中をウロウロしていた。
突然、テーブルの上に置いてあったスカウターに通信が入った。
「バーダックさーん、じきに産まれますのでおヒマでしたら病院へ……」
「すぐ行く。ラディ、行くぞ?」
「うん!」
おれは未だ速く飛べないので、父に抱えられるままに母のいる病院へと向かった。
病室へついた時にはもう弟は産まれていて、母に抱かれて眠っていた。
「遅かったね、二人とも」
「お、お前が早すぎるんだ……」
なぜかがくりと肩を落として父はつぶやき、母はあははと笑っていた。
「母さん!おれの弟見して!?」
「はいはい、男の子だったからね、名前はレイディッシュよ?」
レイディッシュ、レイは寝てたけど髪は母に、つまりはおれに似てる。どんな目をしているんだろう?
「ねえ、レイいつ起きるの?」
「んー、今寝たばっかりだからね、そのうち起きるでしょ」
ほおをつついたら顔をしかめて横を向く。
「こおら、お兄ちゃんでしょ、いじめないの」
「はあい」
この日から、おれは四人家族になった