正直に言おう。
恋をした。
そして散った。
おまけで命は助かった。
大声を出して通信室に飛び込んだボクが見たものはかしこまった室員達、そして一人の美しい
長く艶やかな緑の髪、気の強そうなツリ目がちの瞳。
下手な知恵を働かせていたボクの頭は真っ白になり、ただその人に見とれていた。
「おい!……おい?」
そんなボクをルーナシさんが心配そうに見ていたらしいがよく覚えていない。
「キミは、確かレイディッシュだね。何があったんだ?」
かっこいい話し方だなぁと、少し低めでよく通る声に聴き惚れながらも聞かれたことには応えなければと隣部屋の画面を指差した。
「えっと、あの、名前が、あの、弟が似てて、画面がいっぱいで、ええっと、き、綺麗ですね!じゃ、なくって、えっと……」
その人は困ったように笑うと僕の頰にそっと手を当てた。
「寝ぼけてるのか?空調管理がしてあるから心地いいのはわかるがデータ室で寝るのは許可できない」
「は、はい。すみませんでした……」
「キミには通信室での仕事が向いているんじゃないかと通信室長から連絡を聞いている。成人すれば試験を受けられるから頑張って勉強するように」
「は、はい!!」
そして最後に室長の方を向き、
「こちらの勘違いだったようだ。仕事の邪魔をしてすまない」
と、頭を下げて出て行った。
ドアが閉まった途端に部屋の皆が一斉に息を吐き、いつも通りに仕事をし始める。
「んで、何がどうなったと?」
ルーナシさんに声をかけられてハッと何をしようとしていたのかを思い出した。寝てるうちに画面をたくさん開いてしまったという設定だ。
「なんか寝てたらしくて、気づいたらたくさんファイルが開かれててウイルスにでも感染したんじゃないかって驚いたんだ。でも多分寝てるうちに勝手に開いちゃっただけだと思う。騒がせてごめんなさい」
頭を下げるとポンポンと手が置かれた。
「そっか、どうしても分からなかったら呼ぶんだぞ?」
「はーい。ところでさっきの女の人は誰ですか?」
名前だけでも覚えておきたいと思っての質問だった。聞かなければきっと、綺麗な思い出として胸にしまわれただろうに……
「ああ、情報総括のザーボン様だよ、フリーザ様の右腕の。名前だけなら聞いたことあるだろ?」
「ザーボン様、って、ことは、お、男!!?」
「あー……。うん、れっきとした男の方だ、諦めろ」
「あんなに綺麗なのに!?」
「それ以上言うと数少ない女性船員を敵に回すからやめておけ」
「はい」
こうして、ボクの初恋は芽吹いたと同時に散ったのだった。
それからしばらくなぜか夕食に唐揚げがよく出てきたのは、ラディ兄ちゃんがどこかでこの話を耳にしたからだと思う。何も聞いてこなかったけど。