―――――『シアワセ』と『フコウ』の定義ってなんだと思う?
by.一誠
〜Prologue〜
いつの間にか私の中にソレは在った。
私のモノであって私のモノでない。
息を呑むほどの美しさと、
決してそれに触れてはいけないという恐怖。
その2つが混ざりあって感じる官能的な感覚。
―――――その樹木には果実がなっていた。
―――――『純白』。
―――――『鈍色』。
―――――『漆黒』。
―――――『天色』。
―――――『紅色』。
―――――『山吹色』。
―――――『常磐色』。
―――――『橙色』。
―――――『紫紺色』。
―――――『四色混合』。
十顆の果実は私を魅せる。
―――――魅せ続けてしまう。
遂に私は―――――ソレに近づいてしまう。
手を伸ばせば届く距離に。
近づけばソレは一層美しく、
私はそれに陶酔する。
ナニカが私を惑わす。
恐怖なんてもうなくなっていた。
ただその官能的な感覚をしっかりと味わいたくて……。
実っている果実が美味しそうで……。
私は―――――無意識のうちに手を伸ばす。
その禁忌の果実へと―――――
―――――『■ッ■ー、お前にはまだ早い』
しかし、それは誰かに止められた。
―――――『いつか、いつの日かコレが必要な時が必ず来る』
顔はぼやけていて見えない。
―――――『それまでコレはお預けだ』
優しい声音。
心が安らぎ、とても安心する。
―――――『まだお前は知らなくていい』
大きな手が私の頭を優しく撫でた。
―――――『コイツの力は俺が抑えておく』
そう言った声の主は私から離れ、樹木の前に立つ。
―――――『赤■帝■・ド■イグ・■ッ■の名にかけて』
ノイズが走ったようにしっかりと聞き取れない。
―――――『お前だけは守ってやる』
その言葉を合図に、声の主は姿を変える。
巨大な、巨大な体躯を持った―――――
―――――赤いドラゴンだった。
―――――『俺の、俺だけの■ッ■ー』
赤いドラゴンは愛しい者を呼ぶように言う。
―――――『傷つけさせはしない』
煌々と燃える炎を身に纏わせてその体躯を持ち上げる。
―――――『俺はお前の中に必ず
その言葉が私の中で反響する。
こんなドラゴンが私の中に……。
それならきっと―――――
―――――寂しくなんてない。
―――――『目を覚ませばココの記憶は失われる』
その言葉に私は狼狽える。
忘れてしまうのは悲しい。
―――――『安心しろ、■ッ■ー』
―――――『お前が俺と出会うのはそう遠くはないだろう』
―――――『俺とお前はそういう運命■■■』
激しいノイズが混じり始める。
―――――『■た■お■俺の■し■■ッ■ー』
もうほとんど聞こえない声。
だけど、それでも、私には心地よかった。
私の味方はすぐ傍に居たのがわかったから。
さよなら、私のドラゴンさん―――――。
―――――また、会う日まで。