少女はその身に魅惑の果実と赤き龍帝を宿す   作:夜叉猫

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―――――信じているから、ずっと、ずっと。


by.一誠


〜Epilogue〜

 

 

―――――結局、あの後ふーくんを助けに向かったのだけれど、あの廃教会はおろか、町の何処にもふーくんの姿は無かった。

初めは殺されたのではないかとグレモリー先輩に言われたものの、いつまで待てどもアーシアを攫いに堕天使たちは現れず、結果、相討ちになったのだと言い聞かされ、捜索はやむなく諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハァ……」

 

時間はまだ午前5時。

何故か目が覚めてしまい、二度寝する気にもなれず顔を洗いながら溜息を吐く。

 

「これは……酷いなぁ……」

 

昨晩、泣き腫らした目はまだ完全には引いておらず、赤みが残っていた。

せっかく会えたのに……ふーくん……。

 

「……生きてるよね……」

 

私は相討ちで死んでしまったなんて信じない。

 

「……散歩でも行こうかな……」

 

外はまだ薄暗いけれど気分転換にはなるだろう。

私は自分の部屋に戻りパジャマからジャージに着替えて家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ん〜〜〜……っ」

 

何処に行くわけでもなく、ただ歩みを進めていると、いつの間にか公園にやって来ていた。

ベンチに座って背伸びをしてみる。

周りを見てみれば、ちらほらと走っていたり、ウォーキングをする人たちの姿が目に入った。

 

「……ハァ……」

 

起きてから溜息が止まらない。

私の中でモヤモヤとした気持ちの悪い気持ちが膨らんでいくから。

 

「……ふーくん……」

 

―――――名前を呟く。

別に恋愛感情があるだとかの色恋の混じった思いではない。

だけれど、幼い頃に出会った彼の顔と、あの日の弱った姿が頭から離れないんだ。

それに、彼が死んだとは全く思っていない。

ただ、別れの言葉くらい、言いに来てくれてもいいのに―――――そう、思ってしまう。

 

「ハァ〜〜〜……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――溜息ばっかりだと幸せが逃げますぜぇ〜?」

 

その言葉とともに、ぐにぃーっと背後から私は頬を摘まれた。

いきなりの事に私はビクリと肩を震わせて、頬をつまむ手を叩き落とし、背後へ振り向く。

 

「ふ、ふーくんっ?!!」

 

そこに居たのは紛れもなく、私の考えていた人。

いつか会えると、そう思っていたのに、そのいつかはこんなにも早くやって来た。

 

「全く……カッコよく去ろうと思ってたのにいーちゃんが落ち込んでるから会いに来ちゃったよ」

 

ふーくんは右手をキツネの形にすると、そのまま私のおでこをつつく。

自然と、涙が出てきてしまう。

 

「おろろ……泣かない泣かない!

俺っちに会えてそんなに嬉しかったの?」

 

私の頭を撫でるふーくんの手つきは何処かぎこちなくて、だけれど優しかった。

 

「……良かった……生きてて、くれた……」

 

下から、ふーくんの顔を見上げる。

 

「……死ぬわけないっしょ?

まだやり残してることいっぱいあるし」

 

にししと笑うふーくん。

私もその笑顔につられて笑った。

 

 

 

 

 

「さてと……俺はそろそろ行くよ。

最後にいーちゃんに会えたからしばらくは頑張れそうだ」

 

涙を拭いながら、ふーくんの言葉を聞く。

何となく、長い間は会えないんだろうとは思っていたから、取り乱しはしなかった。

 

「―――――また絶対に、会いに来るから」

 

ふーくんはそう言うと、私のことを強く抱き締める。

 

「……待ってるからね……?」

 

「うん……約束だね……」

 

しばらくの間抱きしめ合った私たちは、離れると同時に気恥しい気分を味わう。

 

「じゃ、じゃあ行くよいーちゃん!」

 

「う、うん!」

 

ふーくんはそれだけ言い残すと、名残惜しそうな雰囲気を残しながら、足早に去って行った。

 

 

 

 

 

「―――――またね、ふーくん」

 

聞こえるはずのない呟き。

待ってるから、ふーくん。

悪魔になった私だけれど、だからこそいつまでも。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

散歩から帰宅した私は急いで制服の袖に腕を通した。

今日は朝の内に部室に来るようにとグレモリー先輩に言われているのだ。

朝ごはんにトーストとコーヒーを食べた私は、しっかりと身嗜みを整えて、部室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――あら、ちゃんと来たわね」

 

部室に辿り着くと、そこにはグレモリー先輩しかいなかった。

グレモリー先輩はソファーに座り、優雅にお茶を飲んでいる。

 

「おはようございます、グレモリー先輩」

 

「えぇ、おはよう。

……調子は良さそうね?」

 

私の顔をじっと見つめて、安心したように言うグレモリー先輩。

昨日の事で引きずっていないか心配だったらしい。

 

「はい。

もう、大丈夫です」

 

何せ朝、会うことが出来たから。

これ以上暗い顔をしていては本当に幸せが逃げてしまいそうだ。

その時、部室の入口が開かれる。

どうやら私たちの他にもやって来たようだ。

 

「―――――お、おはようございますっ!」

 

現れたのは此処駒王学園の女子の制服に身を包んだ金髪の少女。

見間違うことなく、その姿はアーシアのものだった。

私はその姿に目を丸くして口を開く。

 

「あ、アーシア……その格好……」

 

「い、イッセーさん!

……に、似合いますか……?」

 

不安そうに、恥ずかしそうに訊ねてくる。

 

「凄く似合ってるよアーシア」

 

駒王学園の制服を着ているということは此処に通うということだろう。

アーシアなら直ぐに人気者になること間違いなしだ。

 

「アーシア、アレも見せてあげたらどうかしら?」

 

「は、はい!リアス部長!」

 

私が何のことかと首を傾げていると、アーシアはえ、えいっ!と言って―――――()()()()()()()()()()()()()()

 

「……っ?!」

 

私は目の前で起こった出来事に一瞬思考が止まり、次の瞬間にはグレモリー先輩に非難の眼差しを向けた。

 

「か、勘違いしないでねイッセー?

アーシアが自分から『悪魔』になりたいと言ったら私は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を渡したのよ?」

 

「……本当?アーシア」

 

「そ、そうですよイッセーさん!

部長さんは何にも悪くないんです!

……私のわがままなんです……」

 

しゅんとした様子を見せるアーシア。

この様子だとグレモリー先輩が口車に乗せてアーシアを悪魔にしたという最悪の展開ではないようだ。

私はグレモリー先輩に頭を下げる。

 

「すみません、疑ったりなんかして」

 

「大丈夫よ気にしていないわ。

確かに根っからの信徒のアーシアが悪魔になっていたらそう思ってしまうものね」

 

苦笑い気味にグレモリー先輩は言う。

そしてその後に場の空気を変えるように手を叩いた。

 

「多分、あなたも気付いているとは思うけれど、アーシアにもこの学園へ通ってもらうことになったわ。

あなたと同い年みたいだから、2年生ね。

クラスもあなたのところにしたわ。

今日が転校初日ということになっているから、彼女のフォローよろしくね?」

 

「よ、よろしくお願いします、イッセーさん」

 

ぺこりと頭を下げるアーシア。

確かに此処に通うのだろうとは予想していたがクラスまで一緒になるのは予想していなかった。

 

「うん、よろしくね?アーシア。

此処は良い人ばっかりだから直ぐに友達が出来ると思うよ?」

 

何にせよ、これからの学園生活も楽しくなりそうだ。

そんなことを考えていると、部室に木場くん、塔城さん、姫島先輩が入ってくる。

 

「おはようございます、部長、イッセーさん、アーシアさん」

 

「……おはようございます、部長、イッセー先輩、アーシア先輩」

 

「ごきげんよう、部長、イッセーちゃん、アーシアちゃん」

 

それぞれが挨拶をしてくれる。

そして、いつの間にか私のことを『イッセー』と呼んでくれている。

何処か気恥ずかしくて、でも暖かな気持ちになった。

 

 

 

 

 

『―――――良かったなイッセー』

 

柔らかな声音で、ドライグの声も聞こえてくる。

何故か人の姿にはなって出てきてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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