―――――お前には……使って欲しくなかった
by.ドライグ
「あら、思ったより細いのねイッセー」
「ぐ、グレモリー先輩……っ?!」
修行後の温泉でのんびりとしていると背後から近づいてきたグレモリー先輩に腰周りをペタペタと触られる。
「でもこっちは立派ですわ」
「ひ、ひひひ、姫島先輩……っ??!!」
今度は姫島先輩が正面から近付いて、私の胸を触れるか触れないかという具合で触ってきた。
「いつもはサラシで潰してるのね?
そんなことしてたら形が崩れちゃうわよ?」
「せっかく可愛らしいのに勿体ない」
グレモリー先輩は置いておいて、姫島先輩はそう言って手を休めることはなく―――――私は身の危険を感じ立ち上がって逃げ出した。
「あら、逃げられてしまいましたわ」
ニコニコと笑う姫島先輩の表情に背筋が寒くなるのを感じる。
「……安心してくださいイッセー先輩。
良くあるお巫山戯です」
逃げ出した先にいた小猫ちゃんが水面でブクブクさせながらそう言う。
それが本当かどうかは分からないけど、今後は不用意に近づかないようにしようと固く誓うことにしよう……。
私はバクバクと鳴る心臓を落ち着かせながら湯船に身体を沈める。
「―――――イッセー。
今日1日修行してみてどうだったかしら?」
一息ついた様子のグレモリー先輩が真面目な声音でそう言う。
私は今日1日の出来事を思い出してみる。
「そう、ですね……。
まず根本的な問題として私が自分自身の身体能力に振り回されてると思います」
純粋な人間だった時とは比べ物にならない身体能力に私はまだ慣れていない。
細やかな力加減による技を使いきれていないから。
「それは仕方ないわ。
まだあなたは悪魔になりたてなのだから」
優しい言葉を掛けてくれるグレモリー先輩だけれどそれに甘えているわけにはいかない。
私は―――――『赤龍帝』だから。
嫌でも私の周りには『力』が集まってくる。……『善』と『悪』関係なく。
弱いままでは居られない。絶対に。
「……それとこれは個人的になんですけど」
「何かしら?」
私は自分の身体を見つめて口を開く。
「―――――筋肉、欲しいです。
……あと胸が邪魔です」
「「「「…………」」」」
そんな私の言葉に空いた口が塞がらない様子のグレモリー先輩たち。
どうかしたのだろうか?
「あ、あなたがマッチョになる姿は想像したくないわね……」
「そ、そうですわ……。
イッセーちゃんは可愛らしいのですから考え直したらどうかしら……?」
「イッセーさんはそのままが良いですよっ!」
「……い、イッセー先輩早まらないでください」
グレモリー先輩たちの慌て様に私は首を傾げて、言葉通りの私を想像して……全力で首を横に振った。
「ち、違います違います!!
そこまで筋肉欲しくないですからっ!
ただ、今のままだと一撃貰っただけで私の身体は耐えきれないだろうからある程度の筋肉が欲しいって意味ですからっ!!」
私だって女の子なんだから自分の見た目を気にする。
唯でさえ女の子扱いしてくれる人が少ないというのに筋肉を付けすぎたら今度こそ私の女の子としての人生は終わってしまう。
……私はただ―――――『フツウ』の『コイ』がしたいだけなんだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
皆で温泉を堪能した後、食事を楽しく終えた私は部屋のベッドに座って精神統一をしていた。
残りの日程を考えて、今のままでは確実に敗けてしまう。
その自信が今日の修行で付いてしまった。
―――――私には『才能』が一つも無い。
今までだって、私は他の人に追い付くために『努力』してきた。
才人が1回でやることを普通の人が10回でやるのなら、私は出来るようになって更に100回こなす。
勉強も、スポーツも、知識も、『努力』でその差を埋めてきた。
……それでも、本当の才人から見れば私は『2流』で『滑稽』なんだろう。
―――――だけど。
『才能』が無いからこその強みが私にはある。
才人には分からないことが私にはわかる。
「―――――私は……『
自分の弱さを知っているから、私はまだまだ成長出来る。
ふぅ〜……と、ゆっくり息を吐き出してから瞳を開く。
「……ドライグ」
呟きに呼応するかのように私の目の前に1人の男性の姿が現れる。
「……なんだ?イッセー」
その表情は暗い。
私が何をしようとしているのかを知っているからだろう。
「―――――『
ドライグの表情は今にも泣き出しそうだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―――――その樹木は禁忌の果実を実らせる。
―――――実る果実の数は『達成』を意味する10。
―――――十顆の中のひとつ、『漆黒』の果実。
―――――■■■は『理解』と訳される。
―――――第3の■■■■であり、宝石は『真珠』。
―――――■属は『鉛』、惑■は『■星』を象徴する。
―――――至高の■と呼ばれ、■■原理を象徴する。
―――――■名は■■■■。
―――――絶対的力を持つ守護■■は■■■■■。
『ワタクシニウチカチナサイ、イ■セ■』
―――――その姿は誇り高く気高い女性。
―――――味方には癒しと安らぎを。
―――――敵には苦痛と絶望を。