少女はその身に魅惑の果実と赤き龍帝を宿す   作:夜叉猫

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―――――俺はお前にとっての『サイアク』だから……



by.ドライグ


〜Episode IV〜

 

 

 

山籠り修行も順調に進み、その後無事に終わりを告げた私たちはそれぞれに()()()()を身につけてフェニックスさんとの決戦当日を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――よし」

 

私は自室のベッドで気合いを入れ直していた。

 

―――――ビナーとの会話の後、私はそれ相応の対価をドライグに支払うことで禁手(バランス・ブレイカー)に至ることは出来た。

残った修行期間で最低限の知識と、そして能力の確認も行った。

身体能力も、悪魔の力にもなれることが出来た。

 

私に出来る準備はしっかりとやったと胸を張って言えるはずだ。

そう、()()()()()なのに……。

 

「……っ!」

 

震える肩を抱きしめる。

これは『恐怖』……??

―――――チガウ。

 

ビナーが宿る漆黒の果実を触ってから、ドライグに『対価』を支払ってから、私の中にある『ナニカ』がずっと刺激されている感覚が身体を襲っている。

特に、これから何かと戦う前というのが1番刺激されるのだ。

 

さらにぎゅっと、力強く自分の肩を抱き締める。

 

「……私は、私……っ!

それ以上でもそれ以下でもない……っ!」

 

()()がドクンドクンと脈打つかのような感覚に襲われる。

まるで()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

―――――コレハ『恐怖』デハナイ。

 

―――――コノミヲコガス『疼き』ダ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――イッセー……」

 

私の身体が暖かな何かで包まれた。

優しい声。優しい温もり。優しい香り。

何もかもが心地よい。そんな、何かに。

 

「どら……いぐ……」

 

「……すまない、イッセー……。

……()()()()()宿()()()()()()()()()()()()……」

 

……違う、ドライグのせいじゃない。

……そんなことを言わないでドライグ……。

 

「お前はただの『普通』の『少女』でいれたはずなのに……お前は誰よりも『普通』を望んでいたのに……俺の『チカラ』と『存在』がそれを許さない……っ!」

 

私を抱き締める、ドライグの腕に力が籠る。

そんなドライグの手を握って私は上手く動かない口を必死で動かした。

 

「……ちが、うよ……どらい、ぐ……。

わた、しは……こうかい、も……うら、んでも……ない、から……」

 

此処に私がいるのはドライグのお陰。

()()()()()()()()()()()()

 

「イッセー……」

 

弱々しく私の名前を呟くドライグの方へ私は顔を向ける。私を抱き締めていた腕には力が込められず、向き合うように互いを見つめ合う。

 

―――――『タイセツ』なヒト。

―――――『ソバ』に居て欲しいヒト。

―――――『リカイ』してくれるヒト。

―――――『イトシイ』ヒト。

 

きっとこの気持ちは伝わっている。

私とドライグは一心同体だから。

 

私はドライグの頬を両手で包んで顔を近づける。

ドライグは驚いた表情を浮かべるものの拒絶することは無い。

 

私はこのヒトのことが―――――。

 

少しづつ近づいていく私とドライグの顔。

そして私たちは遂に唇を―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――イッセー。そろそろ時間よ……あら……」

 

「り、りあす……せんぱい……っ?!」

 

―――――触れ合わせることは無かった。

入ってきたのはなかなか来ない私を呼びにきたであろう()()()先輩。

その顔には面白いものを見たと言わばかりの微笑みが浮かんでいた。

 

「ごめんなさい?イッセー。

邪魔してしまったようね……良いわ、もう少し待っててあげるから。

―――――続きを、どうぞ?」

 

そう言って、リアス先輩は部屋の扉を閉じた。

 

 

 

「―――――で、出来るわけ無いでしょーーーーッ!!!!」

 

私は顔から火が出るかと思うほどの羞恥心を覚えたのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

深夜十一時四十分頃―――――。

 

グレモリー先輩率いる私たち眷属は旧校舎の部室に集まっていた。

それぞれにリラックスできる方法で待機しているようで、アーシアが出会った頃のシスター服を着ている以外は基本的に皆学生服だ。

 

()()くんは手甲を装備して、手には黒い手袋。そして脛当てを付けると言った程の軽装。剣は壁に立てかけている。

()()ちゃんは椅子に座って本を読んでいた。その手にはオープンフィンガーグローブと両腕に細身の籠手を付けていた。

リアス先輩と()()先輩はソファに座り、優雅にお茶を口にしていた。

私とアーシアもそれに倣って椅子に座って時間が来るのを待つ。

 

 

 

―――――開始十分前になった頃、部室の魔法陣が光だし、ルキフグスさんが現れる。

 

「皆さん、準備はお済みになられましたか?」

 

確認の言葉の後、私たちは立ち上がる。

全員の表情は緊張ではなく、やる気で引き締まっていた。

 

「それでは皆さま、魔法陣の方へ」

 

ルキフグスさんに促され、私たちは魔法陣に集結する。

 

「なお、一度あちらへ移動しますと終了するまで魔法陣での転移は不可能となります」

 

つまり、此処へ帰ってくる時には勝敗が決しているということ……。

私は改めて気合いを入れる。

 

魔法陣の紋様がグレモリー家のものから見知らぬものへと変わり、光を発した。

私たちの身体を光が包み込み、転移が始まるのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

目を開けると、そこに広がっていたのは見慣れた部室の風景。

先程の話を思い出してみるに、此処は部室を模したゲームフィールドなんだろう。

 

 

 

 

 

『―――――皆様。この度グレモリー家、フェニックス家の【レーティングゲーム】の審判(アビーター)役を担うこととなりました、グレモリー家の使用人グレイフィア・ルキフグスでございます』

 

突然の校内放送のチャイムの後に流れてきたのはルキフグスさんのの声。凛としたその声はよく通り、響いていく。

 

『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを公平に見守らせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。

……早速ですが今回のバトルフィールドについてのご説明をさせて頂きます。

フィールドはライザーさま、リアスさまのご意見を参考にし、リアスさまが通う人間界の学び舎【駒王学園】のレプリカを異空間にご用意致しました』

 

駒王学園のレプリカ……私は部室の窓から外を見てみるとそこにも見慣れた風景が広がっていた。ただ、違うところをあげるとするなら、空が白い。

今の時間は深夜のはずなのに空は暗くは無かったのだ。

 

『両陣営、転移された場所が【本陣】でございます。

リアスさまの本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザーさまの本陣は新校舎の生徒会室。『兵士(ポーン)』の方は【プロモーション】をする際、相手の本陣の周囲まで赴いて下さい』

 

ルキフグスさんの放送で流れた【プロモーション】の言葉に私は気を引き締める。

リアス先輩にレーティングゲームについて聞いていた時に教えて貰ったルールのひとつ。チェスのルールと同様、【兵士】が相手陣地の最新部に駒を進めた時に発動できる特殊なものだ。『(キング)』以外の駒である、『騎士(ナイト)』、『僧侶(ビショップ)』、『戦車(ルーク)』、『女王(クイーン)』のいずれかの駒の特性を得ることができる、言わば戦略の要となるものだと私は認識している。

 

「全員、この通信機器を耳につけてください」

 

朱乃先輩はイヤホンマイクタイプの通信機器を配る。

私たちはそれを受け取るといち早く耳に取り付けてリアス先輩の方を向いた。

 

『―――――開始の時間となりました。

なお、今回のゲームの制限時間は人間界の夜明けまでとします。

それでは、ゲームスタートです』

 

―――――キンコンカンコーン。

聞き慣れた私たちの学校のチャイム。

私はリアス先輩に片膝を付けて頭を下げる。

 

 

 

「―――――我が主(ミ・ロード)、ご指示を」

 

戦いは始まった。

 

―――――私は剣。敵を薙ぎ払う剣。

 

―――――私は盾。主を守り通す盾。

 

準備は、覚悟は出来ている。

私にはドライグがいるから。

 

心が、暖かくなるのを感じた。

 

 

 

「―――――絶対に勝つわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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