少女はその身に魅惑の果実と赤き龍帝を宿す   作:夜叉猫

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―――――俺が望むのはアイツの『コウフク』だけだ……それ以外は、何も、いらない……


by.ドライグ


〜Episode Three〜

 

「イッセー……腕は大丈夫か……?」

 

今にも泣き出しそうな表情で私の腕を見つめるドラゴンさん。

そんな表情をさせたくなくて、私は笑って答える。

 

「だ、大丈夫っ!

こんなのへっちゃらだよ!」

 

「…………」

 

ドラゴンさんは無言で抉られた私の腕を掴んだ。

 

「〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!」

 

「……強がるなイッセー……。

そんな状態で大丈夫な筈がないだろう……?」

 

言って、苦しそうな表情を浮かべてしまう。

私はそんな表情を見たくなくて、俯く。

 

「……やむなし……か……」

 

ドラゴンさんは小さく呟くと私の腕を掴んでいる方とは別の手に炎を出現させた。

 

「……え……??」

 

「大丈夫だイッセー痛くない」

 

炎を出現させた手を私の抉られた腕に近づけようとするドラゴンさん。

ま、まさか、私の傷を焼いて塞ぐつもりなの?!!

私はその思考に至った途端にドラゴンさんから逃げ出そうとする。

 

「あ、暴れるなイッセー!」

 

「い、いや……っ!!

そんな炎で焼かなくても大丈夫だもん……っ!!

そんな事されたら逆に死んじゃうよ……っ!!」

 

まさかこんな事をされそうになるなんて……。

優しいドラゴンさんだと思っていたのに……私の頬に涙が伝う。

 

「や、焼く……っ?!

ち、違うぞイッセー!俺はそんな事をしようとしているんじゃない!

……この炎はイッセーを焼いたりしない。

むしろ血肉の一部として、その傷を再生してくれる。

……信じてくれイッセー。俺はお前を傷つけたり、痛みを感じるような事は絶対にしない……」

 

その声が優しくて、表情が必死で、ドラゴンさんの言葉が嘘なんかじゃないんだと感じる。

 

「……ほ、本当……?」

 

「あぁ……もし嘘なら、俺を好きなようにすればいい……。

ただ、今は……イッセーのその腕を治させてくれ……」

 

私は逃げ出そうとするのを止めて、ドラゴンさんを見つめて口を開いた。

 

 

 

 

 

「―――――痛く……しないで……??」

 

びくびくしながらも腕をドラゴンさんに任せる。

 

「わ、わかった……任せろ」

 

口ごもりながら、何処か頬を染めたように見えるドラゴンさんは炎を出現させた手を私の腕にゆっくりと押し付けた。

押し付けられた炎は熱いなんて事はなく、ただただ心地良い。

 

「……これで大丈夫だろう」

 

その呟きに反応して腕を見てみれば、抉られた傷はどこにも見当たらず、綺麗に治っていた。

しかし、流石に服は戻せなかったらしく、腕は露出している。

 

「す、すごい……っ!

すごいよドラゴンさんっ!!

ありがとうっ!全然痛くないっ!!

ほらほら!こんなにしてももう痛くないよ!!!」

 

私は腕を振り回してもう大丈夫だとドラゴンさんにアピールした。

 

「凄くなんて……ないさ……」

 

「ど、ドラゴンさん……??」

 

私の言葉に表情を曇らせるドラゴンさん。

なんでそんな表情をするんだろう……??

ドラゴンさんの服の裾を掴みながらその表情を見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――紅髪の悪魔の娘。

一体いつまで隠れているつもりだ?」

 

突然、ドラゴンさんは表情を真剣なものに変化させて公園脇の林を睨みながら言う。

いきなりの変化に私は驚いてしまった。

一体何を言っているんだろう……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――やっぱり気がついていたのね……」

 

誰もいないと思っていた場所から声が響く。

ドラゴンさんが睨んでいた林の方から姿を表したのは、私の通う駒王学園の制服を身に纏った女の人。

 

「あ、あなたは……!」

 

その人の姿に目を見開く。

彼女は駒王学園でも有名人で、ほとんどの生徒がその存在を知っている。

風に揺れる紅い髪の毛がその証拠だろう。

 

 

 

「―――――ぐ、グレモリー先輩……?」

 

名前はリアス・グレモリー。

学年は私よりも1つ上の3年生。

駒王学園では『二大お姉様』の1人と呼ばれて皆に慕われている。

そんな有名人の先輩が何故こんな所に……??

 

「初めまして……といえばいいのかしら?兵藤さん?」

 

微笑みを浮かべるグレモリー先輩は、私にそう言うと、ドラゴンさんの方へ視線を向けた。

 

「……あなたもそんなに威嚇しないで頂戴……」

 

「……ふん。

イッセーが襲われているのに黙って見ていた奴がよく言う。

……これでもし何かあればお前を始末していたところだぞ……??」

 

ドラゴンさんは不機嫌そうに鼻を鳴らし、グレモリー先輩を睨みつける。

……え?グレモリー先輩って私が殺されそうになってたのを見てたの?!

私がその事実に驚き、グレモリー先輩を凝視してしまう。

 

「ち、違うのよ?

彼が出てこなければ私が助けるつもりだったわ!」

 

「……本当ですか?」

 

「えぇ、もちろんよ」

 

私の視線に気が付いたグレモリー先輩は慌てたように弁解をする。

しかし、今となってはそれが本当だったのかも判断しかねる所だ。

 

「何はともあれ悪魔の娘。

明日にでも話し合いの場を設けろ。

大まかなことは俺からイッセーに伝えてはおくが……お前も話を聞きたいだろう?」

 

「えぇ。

そうしてもらえると助かるわ」

 

グレモリーはそう言って笑った。

一方ドラゴンさんはそんなグレモリー先輩の様子にふんと鼻を鳴らすだけ。

 

「兵藤さん、明日の放課後に使いを出すからその子の案内で私たちの部室に来てくれるかしら?」

 

「は、はい……。

放課後ですね?わかりました」

 

私はグレモリー先輩からの言葉にそう返事をした。ドラゴンさんが口を挟まないのを見ると危険なことはないのだと思える。

 

「それじゃぁ今日は帰らせてもらうわね?

また明日会いましょう?兵藤さん」

 

グレモリー先輩はそう言って、魔法陣を出現させるとその姿を消した。

しばしの間、私とドラゴンさんは無言で立ちぼうけていたけれどそれはドラゴンさんの咳払いで終わりを告げる。

 

「イッセー。

そろそろ帰るとしよう。

時間ももう遅いことだし、親御が心配しているだろうからな」

 

「うん。帰ろっか、ドラゴンさん」

 

私の言葉を聞いたドラゴンさんは柔らかな微笑みを見せて、私の頭をぽんぽんと優しく撫でると、その姿を赤いオーラへと変化させ、私の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

―――――余談だけれども、家に着いた私はお父さんとお母さんに泣きながら抱きしめられた。

連絡もせずに遅い帰宅だったから心配をかけてしまったみたいだ……。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

―――――次の日。

 

いつも通り学校をつつがなく終えて、私は放課後を迎えていた。

 

 

 

「―――――兵藤一誠さんはいるかな?」

 

カバンの中身を整理していると、前方の教室のドアが開かれ、私の名前を呼ぶ声が聞こえて来る。

視線を向ければ、そこにいたのは1人の男子生徒。

 

「此処にいるよ」

 

淡白にそう言ってあげれば、男子生徒はこちらを向いてニコリと微笑み近付いてくる。

その微笑みに教室はもちろん、廊下などからも黄色い歓声が湧いていた。

 

「木場くん……だよね?」

 

「そうだよ。

僕は木場祐斗。

―――――リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」

 

「グレモリー先輩の……。

えっと、私はどうしたらいいの?」

 

首を傾げて、男子生徒―――――木場くんに質問する。

 

「僕についてきて貰えるかな?」

 

「わかったよ。

それじゃぁ、案内お願いします」

 

私はぺこりと頭を下げた。

 

 

 

 

 

木場くんの先導のもと、私が案内されたのは校舎の裏手。

木々に囲まれた場所には旧校舎と呼ばれる、現在は使用されていない建物がある。

つまり、ここにグレモリー先輩がいるのだろう。

二階建て木造校舎を進み、階段を上る。さらに二階の奥の部屋まで歩を進めると、木場くんの足が止まった。

 

「此処に部長がいるんだ」

 

その部屋の戸にはひとつのプレートがかけられていた。

 

「お、オカルト……研究部……?」

 

「えっと……言いたいことはわからないでもないけど……ひとまず入ろうか?」

 

私の表情を見たであろう木場くんが苦笑いを浮かべながらもそういう。

私ってそんなにわかりやすいのかな……?

 

「部長、兵藤一誠さんをお連れしました」

 

えらく謙った物言いに私は感心してしまう。まるで従者のようだ。

 

『ありがとう。

入ってもらえるかしら?』

 

中からはグレモリー先輩の声が聞こえてくる。

 

「どうぞ」

 

木場くんが部屋の戸を開けて、私を中へと促す。それにしたがって中に入った私を迎えたのは―――――独特な装飾が施された室内。

至るところに謎の文字が書き込まれており、1番特徴的なのは中央の魔法陣のようなものだろう。

 

 

 

―――――それはさておき、私の目の前には3人の人物がいた。

 

1人は言わずもがな―――――グレモリー先輩。

一番奥の椅子から立ち上がってこちらに笑みを向けている。

 

そして、その隣に侍るようにする黒髪をポニーテールにした大和撫子という言葉が良く似合う女子生徒―――――姫島朱乃先輩。

 

さらにその隣には小柄な体型をした白髪の女子生徒―――――塔城小猫さん。

 

この駒王学園では知らぬ人などいないと言わせる3名が揃って私を迎えていたのだ。

このオカルト研究部には有名人しかいないのかな……?

 

「来てくれてありがとう兵藤さん」

 

「昨日約束しましたから」

 

「それでもよ。

さぁ、座ってちょうだい?

立ち話をさせるわけには行かないわ」

 

グレモリー先輩はソファーの方へ座るようにすすめてくれる。

私はその言葉に甘えて、明らかに私用に用意された場所へと座り、その対面にあるソファーにグレモリー先輩たちが来るのを待った。

 

「粗茶ですがどうぞ」

 

いつの間に容れたのか、お茶の入った湯呑を私の前に出してくれる姫島先輩。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ふふふ……リラックスしてちょうだい?

危害を加えようなんて気は全くないわ。

むしろ歓迎しているのよ?」

 

グレモリー先輩はキョロキョロと周りを見回す私にそう言ってソファーに腰掛けた。

まぁ、勘違いなわけだけれど。

 

「歓迎ですか?」

 

首を傾げながらつぶやくと、グレモリー先輩は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「えぇ。

―――――悪魔としてね」

 

言って、周りにいるグレモリー先輩、姫島先輩、木場くん、塔城さんの背から黒い翼が出現した。

 

―――――なるほど、この翼が『悪魔』の象徴なんだ。

 

私はその翼を瞳に焼き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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