少女はその身に魅惑の果実と赤き龍帝を宿す   作:夜叉猫

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―――――『ジンセイ』なんて何があるかわからない


by.一誠


〜Episode Four〜

 

 

 

 

 

「はい。

それについてはドラゴンさん―――――【ドライグ】に聞きました」

 

従容たる態度で私は告げる。

グレモリー先輩はそれについては予想していたようでさして驚いた様子は見れない。

 

「あら、そうなの?

……ところでそのドラゴンさんは今日は出てきてくれないのかしら?」

 

私の右腕を見つめながらグレモリー先輩は口角を少し上げる。

この様子だと私に宿っているドラゴンさんが一体何者なのかは見当がついているんだろうなぁ……。

 

 

 

 

 

『―――――心配するなグレモリーの娘。

約束を違えはしないさ』

 

その声と同時に私の左腕に暖かな感覚を覚えた。

そこにあったのは昨日、ドライグの腕に出現した美しい赤い籠手。

 

「今日は声だけなのね?

―――――【赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)】さん?」

 

探るような、含みを持った微笑でグレモリー先輩は私の左腕を見る。

 

『……ほぅ?俺の正体に気が付いたか。

まぁ、及第点と言ったところだが……少なくともあのカラスよりかはマシなようだな』

 

ドライグがそういった後、籠手の手の甲の部分についていたドライグの瞳と同じ色をした翡翠の宝玉の色が一瞬だけ常磐色に染まったように見えた―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――『Incarnation(インカーネーション)

 

 

 

今まで聞いたドライグものとは全く違う、女性の声が混じった音声が流れる。

それと同時に私の左腕から籠手が無くなり、その代わりに私の傍らに1人の男性が現れた。

その姿は昨日と全く変わらず、ついつい見つめてしまう。

見惚れていたというのが正しいだろうか?

 

「イッセー、隣に座るぞ?」

 

優しい表情とその声に、私の心が落ち着くのを感じる。

隣に座るくらいなら確認なんて取らなくていいのに……律儀な性格をしているんだなぁ……。

 

「うん。いいよ?」

 

私の返事を聞いたドライグは私の直ぐ隣に腰を下ろす。

それは、腕と腕が引っ付くくらいに……。

その近さに私は顔が熱くなるのを感じた。

 

「さて……お前は何が聞きたい?グレモリーの娘」

 

そんな私とは打って変わって、ドライグはグレモリー先輩をしっかりと見つめて相手を探るような目を向けている。

先程まで私の左腕を見ていたグレモリー先輩の目よりも、さらに深みすら見透かされそうな、翡翠の宝石のような瞳―――――。

 

「今一番聞きたいのは―――――あなたのその状態よ」

 

ドライグから視線をそらさず、じっと見つめるグレモリー先輩が言ったのはそれ。

一体どういう意味なのかな……?

 

「何故、神器に封印されているはずのあなたが人の姿をとってこの場にいれるのかしら?」

 

「さぁ?一体何故だろうな?

……仮に理由を知っていたとして、大した信用も勝ち取っていない貴様如きに教えるはずがないだろう?」

 

無表情のドライグは淡々と言葉を並べていく。何処と無くピリピリとした雰囲気を感じる。

 

「……それもそうね。

じゃぁ、こういった質問はもっと互いを知ってからさせてもらうわ」

 

「ほう?イヤに素直に引くな」

 

「これから長い付き合いになるんだから、そんなに焦ることじゃないわ。

そうでしょう?赤い龍さん?」

 

グレモリー先輩はそう言って、私とドライグに向かって微笑みを見せた。

長い付き合いというのは、ドライグに聞いたあの話に関係しているんだろうなぁ……。

 

「グレモリー先輩」

 

「何かしら?兵藤さん」

 

「ドライグに聞いたんですけど―――――私はあなたの『眷属』になったんですよね?」

 

ドライグは言った。

私はあの『堕天使』にお腹を貫かれて、あのままでは死んでしまうのは免れなかったから、泣く泣く『悪魔』に生まれ変わらせることで助けたのだと。

そして、私を『悪魔』に生まれ変わらせてくれたのはグレモリー先輩なのだとも教えてくれた。

 

「私が『悪魔』になったというのはドライグに聞きました。

そして、『悪魔』に転生した者は転生させた者を【(キング)】と呼び従者のようにならなければならないのだとも」

 

「……私が説明しないといけないことがほとんどなくなってしまったわね……」

 

私の言葉にグレモリー先輩は苦笑いを浮かべて頷く。

 

「えぇ。そうよ。

あなたは私の『眷属』として『悪魔』に生まれ変わったの」

 

「……つまり、私はグレモリー先輩に『服従』しないといけない……と?」

 

眉をひそめながら私が口を開けば、グレモリー先輩は優雅にお茶を一口飲んで笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

「―――――違うわ」

 

「……ほぇ?ち、違う……?」

 

私が考えていたこととは違う返答に私は間抜けな声を上げてしまった。

あ、あれ??

私、ドライグの話を間違って理解しちゃったのかな……?

 

「確かに自分の『眷属』をそれこそ捨て駒のように扱う者がいるのも否定出来ない事実よ。

―――――だけどね?私は『眷属』は『家族』だと思っているの」

 

「か、家族ですか……?」

 

「えぇ。

だから、私の『眷属』になったからって服従しないといけないなんて思わなくていいわ。

ただ、私の力になって、私を助けてくれると嬉しいのだけれど……」

 

心配そうに私を見つめるグレモリー先輩。

私はその姿についつい笑ってしまった。

 

「ふふふ……わかりました。

命を助けて貰ったという恩もありますしね」

 

私は立ち上がると、グレモリー先輩に近づき、それらしく跪く。

私の中の知識で間違っていないなら、騎士がこんな風に誓っていたはずだ。

 

 

 

 

 

「―――――不肖、この兵藤一誠。

命を助けられたというご恩に報いるため、時にはあなたの剣となり敵を薙ぎ払い、時にはあなたの盾となり身を守りましょう」

 

顔を上げて笑顔を見せる。

正しいやり方なんて私は知らない。

だけど、今はこれでいいんだと、私は思えた。

グレモリー先輩も嬉しそうな表情をしていたのだから。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「そういえばきちんとした自己紹介がまだだったわね」

 

グレモリー先輩が思い出したかのように手を叩くと、その場にいた全員が立ち上がって口を開いた。

 

「僕は木場祐斗。

兵藤一誠さんと同じ2年生だってことはわかってるよね?

たまに剣道部で顔も合わせていたし、剣も交えたしね??

これからは同じ仲間としてよろしくお願いするよ」

 

爽やかなスマイルで木場くんが言う。

確かに前から彼の事は知っていたけれど、こうして面と向かって自己紹介されたのは初めてだ。

 

「……1年生。……塔城小猫です。

よろしくお願いします。……悪魔です」

 

塔城さんは小さく頭を下げてくれる。

でも、まだよそよそしいのがちょっと残念だなぁ……。

やっぱり知り合ってまもなさすぎるからかな??

 

「3年生、姫島朱乃ですわ。

一応、研究部の副部長も兼任しております。

今後とも宜しくお願いします。

これでも悪魔ですわ。うふふ……」

 

姫島先輩は礼儀正しく、そして美しくお辞儀をすると笑顔を浮かべていた。

常識人って感じがするなぁ……。

 

「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。

家の爵位は公爵となっているわ」

 

最後に、グレモリー先輩が紅い髪を揺らしながら堂々とそう言った。

私もこの流れに乗るべきなのかな……?

少々悩んだ後に、私も口を開く。

 

「えっと……兵藤一誠です。

男の子みたいな名前だけどちゃんと女の子ですっ!

後は……えっと……私も悪魔になりました!

これからどうぞよろしくお願いしますっ!」

 

そんな、私の自己紹介に、みんなは暖かな笑顔で返してくれた。

なんだ……悪魔って聞いてたより良い人ばかりじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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