バトルスピリッツ~戦国演武伝~   作:真将

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烈火伝第四章『戦歴600年:千鬼ヶ原の戦い』
一の戦 戦国龍皇


 戦歴582年。この年は天下統一にかけて大きな楔が打たれた年だった。

 六天軍、頭目――ゴッド・ゼクスの死である。

 飛ぶ鳥を落とす勢いを誇っていた六天軍は、まさに天下統一に最も近き勢力であり、六統幕府も彼らの勢いを止める事は出来なかった。

 向かうところに敵はいない。

 ゴッド・ゼクスのカリスマ性に引き寄せられるかのように、才のある武が彼の元に集った。その六天軍の前に、炎武の国、最大派閥を持つ戦国覇王ギュウモンジは敗走。そのカリスマに引き寄せられてか、戦国六武将センリュウカクと戦国六武将ムドウと言う二大勢力も過の力を認め、その軍門に下っていた。

 だが、戦歴582年――梵能寺にて、忠臣の裏切りに合い六天軍の本隊が叩かれ、多くの者達が命を落とす事となった。その中には六天軍頭目――ゴッド・ゼクスの姿もあり、その天下人は焼け落ちる梵能寺と運命を共にし戦国の世から姿を消した。

 これは後に『梵能寺の変』と呼ばれ、歴史的節目の一つと数えられる事となる戦国の分岐点ともなる事柄だった。

 圧倒的なカリスマを失った六天軍であったが精強な勢力である事は変わりなかった。

 統率者を失った事による暴走。それが唯一の懸念だったのだが、『機巧の国』は、過の軍を吸収する事で勢力の立て直しを図る。

 その時、全軍を掌握したのは古くより『機巧の国』にて名を連ねる名臣――機巧大将軍タイクーンであった。

 しかし、戦歴598年に機巧大将軍タイクーンは死去。それがきっかけで『機巧の国』は兼ねてより溝の存在していた“源氏八騎派”と“六天軍派”の二派の関係が悪化した。

 亡き主君へ忠義を貫く“六天軍派”は主君――ゴッド・ゼクスの死に“源氏八騎派”が関わっていると知り、和睦も不可能な程に決定的な対立を宣言。

 他国では、この派閥争いに便乗する形で、各勢力の対立が表面化して行った。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「だから、だ。貴殿に源氏八騎派の総大将になってほしい」

 白き鎧にマントをなびかせる一体の機巧者――源氏八騎衆頭目、八龍は目の前で鍛練に勤しむ者へ、そのような事を進言していた。

 「オレは構わないが……納得しない者の方が多いんじゃないか? 現に獣覇軍は納得していなかった」

 彼はこの国――炎武の国で一大派閥であった獣覇軍が、自分が主君になった事を機に去っていた事を今も懸念していた。そして、他国の密偵から六天軍に合流したと聞いている。

 「恐らく、君はまだ気づいていない。君のその魂――ソウルコアは何者にも絶やす事の出来ない炎だ。かつて戦乱統一間近まで歩いたゴッド・ゼクスに匹敵する輝きを持っている」

 使い慣れた槍を更に自在に使いこなすために、彼は振り続ける。目の前には吊るされた縄。その先端は結ばれており、彼は精神を研ぎ澄ませると踏み込んだ。

 「買いかぶり過ぎだ。この通り、オレは武術ガキでね。この槍がどこまで届くかにしか興味がない。主君を継いだのも仕方なく、だったんだ」

 吊るされた縄の先端は全て解けていた。彼が通り過ぎる際に槍を使って結び目を解いたのである。

 「それに、ゴッド・ゼクスは知ってるよ。彼はオレの憧れでね。実際に会った事は無いが……よく親父から寝物語にその武勇を聞かされたモノだ」

 その殆どが炎武の国が負ける話だったが、それでも父は敬意を称していた。だから、彼も天下人の足跡に憧れているのである。

 「それにアンタは直にゴッド・ゼクスに使えてたんだろ? アンタこそ六天軍に合流しなくていいのか?」

 「……私もその事で色々な所から非難を受けている。だが、選んだ道は間違いでは無かったと源氏八騎衆は後悔していない」

 「そうかい。なら、その志を見せてもらおう」

 「どのように?」

 彼と会う為に全ての武器は預けて来てある。その為、八龍は丸腰であった。その時、八龍の目の前に一本の剣が突き刺さる。

 「獅子王。名士が打った業物だ」

 二、三度、槍を回すと彼は構えを取った。熱を帯びる程に、その構えからは気迫が溢れ出る。

 「使え。ここからは無礼講だ」

 「…………」

 八龍は、眼前に突き立つ獅子王を掴み抜き放った。手に取っただけで凄まじい力を感じる。名刀、と言っても何の遜色のないほどの刀だ。

 「証明すればいいのか?」

 「できれば、だ」

 その瞬間、彼は八龍の後ろへ抜けていた。いつ、どのように? と考える間もない。ただ目の前で起こった事を八龍は事実として受け入れるしかなかった。

 「……ソウルコアを使ったのか?」

 「いや、いつも通りに動いただけだ」

 八龍は全く反応できなかった。それどころか影さえも捉える事の出来ない動きに、自分の眼に狂いは無かったと確信する。

 「あんたの申し出を受けよう」

 すると、彼からそんな事を聞き取る。先ほどまで乗り気ではなかった様子だったと言うのに、どう言った心境の変化だろうか。

 「源氏八騎衆は、ゴッド・ゼクスの次に憧れだった。だが、もう追いついたらしい」

 だから……と彼は告げる。

 「対等に戦乱を終わらせよう。ゴッド・ゼクスが目指した天下布武を」

 「よろしく頼む。いや、共に戦乱を駆けましょうぞ。お屋形様」

 八龍は跪き、こうべを垂れて新たな主君へ忠誠を誓う。

 「やめてくれ。“お屋形様”なん呼ばれ方はガラじゃない。対等で、と言っただろう?」

 「ならば、何とお呼びすれば?」

 修練用の槍を置き、彼は鎧を見に纏いながら告げた。

 「戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴン」

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