戦国の世の各所を制圧し、統一を進めている六天軍は、
その行進による被害は国に広がっており、六天軍が本気で天下統一を目指している事は誰の眼にも明白である。
だが、その進行から逃げ延びた者、そして傍観しつつその脅威に気づいた者達は残った力をかき集め、ある者達の元へ集う。
源氏八騎派。
かつて、六天軍と対を成す一大勢力であり、兵力は互角以上とも謳われていた。そして、六天軍の進行に合わせるかのように源氏八騎派に新たな旗印が現れたと戦国の世に知れ渡る。
六天軍と敵対する者達は、かの旗印へ集い始めた。
その席には、多くの英雄たちが集っていた。
「ひょっひょっひょ。これほどの面子が揃うとはのぅ」
黄の席に座る妖戒衆、古老――ドンぬらりひょんは、眼を細めながら目の前の席に座る者達の存在を強く感じ取っていた。
「六天軍の中核を担うのは陰陽領の主、陰陽皇リクドウぞ。奴の黄泉返りは、無限の軍と同義。いくら頭数を揃えるためとはいえ、烏合の衆では勝ち目は皆無ぞ」
紫の席に座る霊獣軍、王霊――神霊王アメホシノミコトは元陰陽領の在軍である。此度は陰陽領を外側から変えるべく、この場の席に座っていた。
「なるほど。状況は厳しい……と言う事でしょうか?」
青の席に座る明王組織『
「いくらの決起しようとも! 所詮は寄せ集めの軍に過ぎぬ! そこに偽り無き“心”が無ければどれほど兵力で上回っていようとも、勝つことは不可能だ!!」
緑の席に座るヤイバノカミ軍、総長――大名獣ヤイバノカミは質実剛健の武将であった。例え、万の軍が相手でも彼は背を見せて逃げる事など考えていない。
「もはや、これはただの戦ではない。文字通り全てにおいて
白の席に座る源氏八騎衆――源氏八騎、薄金ストライカーは腕を組みながら、これからの戦いは今まで以上の大戦になると感じ取っている。
「して、その我らが総大将はいつほど見えるのかのぅ」
ドンぬらりひょんは、髭をいじりながら未だ空席の“上座”と“赤の席”を見ながら呟く。
「あの源氏八騎頭目、八龍が選んだ者だと耳に入れている。ヤイバノカミ軍は何か聞いているか?」
神霊王アメホシノミコトは長きにわたって、炎武の国と盟約にある緑葉の国の代表者に問う。
「若い! ただそれに尽きる! だが、その内には何者にも左右されない強靭な心を持っている!!」
「なるほど。しかし……我らを束ね、そして率いて行くほどの器があるのですか?」
大名獣ヤイバノカミの言葉に蓮華王センジュはこれほどの大物たちを前に、ソレを引っ張って行くだけの存在はかつての天下人と同等かそれ以上の器でなければ成り立たないと見ていた。
「ある」
代わりに答えたのは源氏八騎、薄金ストライカーである。彼は八龍が選んだ者ならば間違いないと確信しているのだ。
その時、大きく空間が揺らぎ、その場所へ侵入してくる気配を全員が感じ取った。
「来たか」
現れた影は三対。
一人目はこの場の発起人である源氏八騎頭目、八龍。
二人目は戦国の世に知れずと武勇を轟かせる『天の部隊』大将軍――剣豪龍サムライ・ドラゴン・
そして、その二人を左右に置く中心の者こそが――
「此度より源氏八騎派の総大将を務める戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴンだ。ここはまるで英雄の博覧会場だな」
若き龍皇にして、自軍の旗印――戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴンであった。
「
戦国龍皇バーニング・ソウルドラゴンは万の軍の大将達を前に自分を見失う事はしていなかった。
彼は根本的に他とは考え方が違っていた。だからこそ、この面子を前に自分を失うなどと考えられないのだ。
「言いたい事は多々あると思う。だが、その前にオレから一言、質問をさせてくれ」
この場に集まった者達。それは誰が天下を統一してもおかしくなかった者達。それが今回一丸となって最も強大な敵に挑むのだ。
そして、この戦いが終わった時が戦乱の終わりである。だから今聞いておきたい。
「天下統一とはなんだ? 各々の持つ志を聞かせてほしい」
天下統一。この時代だからこそ実現可能な
国を、領地を持つ者なら誰もがこの戦国の世に夢を見る。だが、その夢を叶えるためには、思想の違う他国に受け入れられなければならない。
無論、他国にも自国の思想がある。そこに相違が生まれ争いになるのだ。
だが、その争いを、自らの思想を、相手に一方的に押し付ける事が出来る時代が来た。
六統幕府の権威が失墜し、枷の外れた六国はジパングを統括する為に戦国の世に酔う事を決めたのだ。
そして、多くの時と戦いを得て、ジパングは二分する。
六天軍派と源氏八騎派。
決定的な亀裂。膨れ上がる両軍は8万の兵力を持つ、まさに戦国時代最後の大決戦にふさわしいモノとして戦史に語られる事となる。
そんな中、彼は呟いたのだ。
“天下統一とはなんだ?”
自国同士を二つに分けた戦い。両軍に自国の戦士達が居るこの戦いの終わりで決まる――天下統一とは、各々にとって何の意味があるのか? と――
次は六天軍の視点かも