今日ある世界を創ってきたのは、誰なのだろう?
それは、過去の時代を生き抜いてきた人々とその先に立っていた『英雄』だろう…
…ブリテン国の円卓の騎士を従えた騎士王こと、アーサー王
…暴君と言われつつも華のローマ皇帝、ネロ・クラウディウス
…祖国フランスの救国のために立ち上がった戦乙女、ジャンヌ・ダルク
他にも幾つもの英雄の逸話と名が現代の人々の中に言の葉、書物の中、記憶の中に息づいている。そして、これからもそれらは人の世が続く限り、未来へと受け継がれていくだろう……親から子へ…師から弟子へ…
でも、ふと思った。
「現代に『英雄』はいないのでしょうか?」
可愛らしい少女の眼鏡越しに向けられた素朴な疑問。あまりの不意打ちな問に青年は思わず『えっ?』ズラリと本が並ぶ書斎を整理する手を止めた。途端、雪崩を起こしそうになるのを抑えながら彼はウニのような黒髪をぽりぽりとかく…さて、自分の後輩はたまに突拍子のないことしたり口にしたりはあったが今回はなにがトリガーになったのか?
「マシュ、どうしたんだ急に?」
「あ、いえ…特に深い理由はないのですが…」
マシュ・キリエライトは青年から目をそらす……うっかり自分の主を困らせてしまったことを申し訳なさそうにしている様子。取り敢えず、理由はなんであろうと耳を傾けようとすると、安心したように少女は言葉を続ける…
「私、思うんです。このカルデアには様々な時代のサーヴァントがいます…神代から近代に至るまで多くの英霊たちが私たちに手を貸してくれています。でも、『現代』のサーヴァントは1人としていない…それが気になって……もしかして、現代には過去の英雄に連なるような偉人はもしかしていないのかなと…」
ふむ、言われてみればと青年は気がついた。聖人、神、偉人、妖、怨霊に至るまで様々な仲間がいるが確かに自分と同じ時代を生きていたであろう者はまず、いない。加えて魔術サイドはともかく、世界中の情報がシェアしやすくなった今だが名が一時話題になるものなどギネス記録に載るスポーツ選手くらいのものでこれらはあっという間に人々の記憶から摩耗していってしまう。果たしてこれらをアーサー王やジャンヌと並べるには方向が違いすぎる。
「うん、確かに…この現代は神秘の時代でも英雄の時代でも無いしね。」
「そうですか……少し、残念です。」
仕方ない。もう紡がれる神話の神秘も、英雄たちが戦場や為政で名を世界に刻み込む偉業の機会もこの『現代』では失せてしまっているのだから。されど、後輩を失望させたままではいかがなものだろう…せめて、何か気分転換にもなれば…
「…マスター、マシュ、どうしたのですか?」
丁度、良いタイミングで現れたのは金髪の凛々しき少女剣士・騎士王《アーサー王》ことアリトリア・ペンドラゴン……が、理解不能な紆余曲折があってイモ青ジャージアサシンに変貌してしまった謎のヒロインX。うん、本人はばれていないと思い込んでいるが割と正体が周知の事実というのはもう誰も気にしない。アホ毛が突き出る帽子を室内だというのに被っており、その手にあるのは羊皮紙らしき本…ということは何処かで読書をたしなんだ後、これを書斎に返却にきたのだろう。
「ああ、X。実は…」
丁度良い、こんなナリで腐ってもあのブリテンのアーサー王…人生経験の豊富さと相談事といえば下手なサーヴァントよりかはよっぽどアテになる。青年は先の件を彼女に簡潔に説明すると、自分より遥かに素晴らしい答を導きだしてくれることを期待して待つ…。
すると、フム…彼女は顎に手をあてると本棚に寄りかかり、口を開いた…。
「そうですか……マシュ、貴女が言う英雄とは『英霊』にたる人物のことと解釈してもよろしいですね?」
「は、はい…」
「では、英雄はなぜ英雄となり、そして…何故、英霊となるか解りますか?」
「勿論です。歴史に名を刻む偉業を成した者は英雄となり、その死後…世界へと召喚された魂が理から外れて英霊の座につく…そして、それぞれの側面を降霊させ受肉させた存在がサーヴァントです。」
「間違ってはいませんね。では、偉業とはどのように認められるものだと思います?」
ここで、『そっ、それは…』とマシュは詰まってしまう。『偉業』とは何か…国を治めたり、戦で華々しい戦果をあげたり……具体例は幾つもある。されど、一体その基準とは何なのか…それを認否する物差しは何なのか……彼女には難しすぎる問題であった。
すると、埒があかなさそうだと見かねたXが早々と解答を用意した。
「答えは英雄よりあとの時代を生きていく人々が認めるか否かです。民たちは自らの進む未来への礎となった者たちを讃え…その生き様が『偉業』とされ英雄と昇華されるのですよ。ある意味で英雄を創るのは後へ続く多くの人々ともいえますね。」
「あとに続く人々…ですか…」
後の時代と人々が英雄を創る…このXの理論だとしたら現在の讃えられる者は未来において英雄になるかもしれないが少なくとも、自分たちが求める形として今に巡り合えるようなものではないということ。確かに正しいであろうが…この事実はマシュにとっては少し残念なものだった。オルレアン、ローマ、オケアノスと時代を駆け…本物の英雄たちと過ごしたからこそ彼女は現代にもジャンヌやネロといった者たちに連なる者はいないのかと……
もしかしたら、誰も預かり知らぬところに偉業を成しえようとしている者がいるかもしれない………しかし、それが逸話と昇華されるのはもっと時が過ぎた後のこと。となれば、英雄になりえる者に出会うなど余程の縁が無くては関わることも無いだろう。
「なら、その逸話もまだ出来ていない…そもそも居るかすら分らない誰かに会おうなんて土台、無理な話ですよね…」
「落ち込むことはありませんよ、マシュ。英雄と呼ばれた者たちはただひたすらに己の生を謳歌し、それが結果的に逸話や偉業になっただけにすぎません。むしろ、人類史の再生のために尽力するあなたたちこそ英雄ではないでしょうか?」
「Xさん……」
何とかきれいに話は纏まりそうだ……しかし、このままではXに頼ってばかりで青年の主としての示しがつかない。せめて、自分も彼女を元気づけられることを……………
そうだ!
「マシュ、『仮面ライダー』って知ってる?」
実に唐突だったなと、彼自身も思う。あまりにも不意だったものでマシュどころかXすらキョトンとする始末…
まあ、もう口にしてしまったからには引き下がれない。
「都市伝説のひとつなんだけど、世界には悪の秘密結社が幾つもあって、ある時代から仮面をつけてそれらと戦う正義のヒーローが現れた…それが、仮面ライダー!」
「ええ、それなら私も知っています。でも、それって根も葉も無い都市伝説じゃ…」
あら…。知っていましたのね。ぐぬぬ、無知系後輩キャラでと思っていささか浅はかに話を出しすぎたか…いや、ここで折れてはマスターの面目丸つぶれである。ここは食い下がらねば…
「いやまぁ、ホラ……さぁ、実際に都市伝説のサーヴァントもいるじゃない?果物ナイフ持ったマンションの管理人さんとか…」
実に特定の一個人のこと指していること丸わかりで、Xは遠くで自分が苦手とする大家さんが盛大に遠くでくしゃみをするのを耳にした…。うん、出来ればあの人の『もう一人の』人格とは関わりたくない。
「もし、本当にいるとしたらさ、仮面ライダーが最も英雄に近い存在だと俺は思う。人知れず戦い、人々の平和を守る…それってヒーローみたいじゃん?」
「確かに、そんな正義の味方が存在するならその通りですね…先輩。ふふ…」
「あれ?もしかして、信じてない?」
「いえ、先輩が私を落胆させないようにして頑張ってくれているのが嬉しくて…。ありがとうございます。」
気が付いたらノロケ臭くなってしまった空気。これは邪魔だろうとXは気を使い、その場を意識されぬように本を棚に戻して去っていく…。あの2人を見ていると懐かしくなる…かつて、自分もああやって言葉を交わし…笑顔になれたマスターが過去にいた。ふと、振り返れば遠い過去のようで……この世界の本来ある時間からすれば10年になるかならないか………
……自分を『セイバー』と呼んでくれたあの正義の味方を目指した少年は……存在すべき時間でどうしているのだろう?
「士郎…………」
☆ ★ ☆
体は剣で出来ている
血潮は鉄で、心は硝子
幾たびの戦場を越えて不敗
ただの一度も敗走はなく
ただの一度も理解されない
彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う
故に、その生涯に意味はなく
……………………その体は、きっと剣で出来ていた
「始リタル正義ノ飛翔蹴《ライダーキック・オルタナティブ》。」
ドゴオオッッッ!!!!!!!
死すれば、敗走することは無い。この心臓を抉る直前の飛蝗の足が教える…。
血潮が噴き出すその身に刻むのは敗北。まるで、ミサイルを素手で受け止め損なった…それと同格な一撃が赤の弓兵の肉体を襲っている。展開し損なった贋作の盾が鋼に砕け、魔力の粒子と還っていき………龍の踏みつけが如き衝撃が肋骨をへし折り、臓腑と肉身を八つ裂きにしていく。
剣で出来ていたはずの体はあっけなく砕かれていった…
「かはっ」
…まさか、自分が幾多もの悪を討ってきた伝説の技を受けるとは夢にも思っていなかった。
まるで、ポイ捨てされた空き缶のように転がる我が身。黒のボディスーツはもう大半は紅に染まっている…その彼はエミヤ。無銘の弓兵《アーチャー》にて贋作造りの英雄。いや、正しい英霊かといえば語弊があるだろうがここではさしたる重要な事ではない…問題はこの弓兵が追い詰められていることである。
目の前に立つ敵は…胸部に蟲殻のよな胸装甲の漆黒のバイクスーツ纏う飛蝗の仮面…複眼と腕・脚の2本のラインが血走るように禍々しく不気味に光を帯び、風に揺られて尖った襟とスカーフが揺れていた…。この風貌は明らかに神代でも、近代でもない……『現代』の英霊のサーヴァントであることは間違いない。
…そして、その真名もすぐに気が付いた…いや、気が付いてしまったと言うほうが正しい。
だが、認めたくなかった。相対する姿は…あまりにあの『正義の味方』と同じであったから…………そんな想いが何処かにあってエミヤの動きと判断を鈍らせたのか…
「ぐっ……詠唱すらさせないとは…容赦が無いな。ゴフっ!!」
そんなことなど、感情を表さぬ仮面には無意味。つい先まで死闘を繰り広げていた相手にトドメをさせるというのに、微塵の高揚感も相手に対する敬意も無い。ただ、まとわりつく蠅を叩き潰した掌を眺めるような…まるで、関心の欠片すらも失せていく立ち姿は他人事のよう。
「…」
終わった………もうこの自己血でまみれた弓兵は立ち上がることすらままならない。ならば、もう十分。彼を放置して漆黒の背となびくスカーフが別れを告げる…
「待て!貴様、やはり………っ!!!!」
「…」
「お前の…名は……!!!!!」
最後……鉄臭い液体で濡れた足を止めさせたのは苦しみを含む弓兵の声。これだけは絶対に確かめなくてはと…強い意志が静寂のような意識を引いたのか…………せめてもの手向けと彼は振り向かず答えた。
「1号………いや、『タケシ』と呼ばれている。」
その時、古びた街並みに不吉な風が通り過ぎた……
Fate/Grand Order
vs
オールライダー
《仮面系譜戦争 風都篇(仮)》
聖杯探索の旅と仮面の歴史が交わるとき……未来を託された者たちは何を見る?
To be continued≫
※キャメロット篇から未プレイ
※スマホお陀仏、引き継ぎコードなし(絶望)
つまり、
夏 イ ベ が で き な い (血涙)
もう、泣いても良いよね?こんなわけのわからんもの書いても、怒らないでね?
あんまり細かい型月世界の追及をされると正直、私の手には負えません。ハイ。
もう普通のお祭りもの小説としてみてくれればおkですので、感想とかお願いしますのじゃ。
あと、今後も予告編を数話、投下していきます。