吹く風は身を切るように寒くて痛い、それは俺が今臨海部に属するデスティニーランドに来ているからだろう。海から吹く風寒い、痛い。ちばこわい。
別にデスティニーランドに住んでいるわけではない、俺は人間だからな、ハハッ。
遊びに来ているだ、この俺比企谷八幡が、リア充(笑)の巣窟冬のデスティニーランドに。俺の愛しの妹、小町ちゃんに頼まれたから仕方ない。妹の言うことが聞けない兄は出荷よ〜。ま、その小町とははぐれちゃったんだけどね。帰っていい?
俺がそんなしょうもないことを考えてると誰かにぶつかって転んでしまった。
「っと…すみませんね…」
「あはは…、私の方こそ。前見てなかったから」
俺がぶつかった相手は女性だった。髪の色は黒で髪の長さは肩ほど、少し高めの位置で髪を結んでいる。ツーサイドアップとかいうやつだろう。小町のバカっぽい雑誌で見た気がする。あの雑誌、本当バカっぽい。顔は少しつり目、年は中学生か高校生だろう。あー、うん、結構かわいいな。食パンをくわえてたら恋に落ちているところだった。とりあえず立とうとするとぶつかった女性が手を差し出してくれた、優しいです。感謝感謝。
「っと、大丈夫?どこか怪我とかしてない?」
「お、おう。大丈夫だ、ありがとな」
ふぅ…久しぶりに女性の手を握っ…女性に触れた気がする。手汗大丈夫かな、出てないかな。気持ち悪がられたりしてないかな、気持ち悪がられたら死にたくなる。
つーかさっきからめっちゃこっち見てんな、なに?なんか付いてる?私、気になりますっ!
「そ、その…なんすか…?」
「んー?あぁ、1人で来てるのかなーって思ってさ。さすがに連れ、いるでしょ?」
え?デスティニーランドに1人で来るやついんの?勇者?勇者だよね?俺はルイーダの酒場で待ってるぜ…勇者よ…
「あ、あぁ…そりゃな。そういうお前はどうなんだ?」
「私?私は妹たちと来てんだけどさー、はぐれちゃってね」
「ふぅん……似たようなもんか」
「へぇー、あなたも妹いるんだー。あ、ちょうどいいし、一緒に探さない?1人で歩くとナンパがうざくてさー」
「あー…おう、いいぞ」
この時俺は安直にその案に乗ってしまった…この時はあんなことが起きるなんて思わなかったんだ……なんてセリフを心の中で言ってみるが別になにも起きないだろう、デスティニーランドだし。あって小町がナンパされるくらい、それはいかん、全力で防がねばなるまい。待っていろ!小町!
「とりあえず、さ!あのすごそうなジェットコースターみたいの!乗ろ乗ろ!」
女性がグイグイ俺の手を引っ張ってジェットコースターに向かおうとする。あのっ…小町を探すのはどこにっ……
「ちょっ…引っぱんな引っぱんな。ちゃんと付いてくから!」
うん…無理だ…ごめんよ、小町。ナンパには付いて行かないでくれよ……。
「うっぷ…気持ち悪っ…なんだあのジェットコースター……」
普通にやばいぞ、あれ。何がやばいってもうやばい…吐きそう。
「いやー、すごかったねー。超楽しかった」
なんでそんなに元気なの?頭グワングワンして気持ち悪いんだけど。
「悪い…ちょっと休憩させてくれ…」
「ん…気持ち悪そうだね。大丈夫?」
「あぁ…休めば大丈夫だ…」
「そっか。ほれ、お水」
「サンキュ…」
うん…水超うまい、こういう時の水って美味しいよね。
「あ、私にもお水ちょうだい」
「あー…おー」
そう言うと女性は俺の手からペットボトルを取り口にした……口にした……飲んだ!?今、それ、飲んだよね?うん…一旦落ち着こう、素数を数えよう。1…2…3…4…5…6…全然落ち着けてねぇ…。どうやら俺は女性を見つめていたらしく
「ん?なに?どうかした?」
「いや…なんでもないっす…」
意識してるのは俺だけでした、まる。うん…知ってたよ?八幡、なにも期待してない。意識してないから飲めるんだよね、知ってる。
「次はお化け屋敷行こ!お化け屋敷!」
「お、おう…お化け屋敷か…」
「ん?怖いの苦手なの?」
「あー…まぁ、少しな…」
「ふーん…じゃあ私が先行くよ!」
女性は俺の手を引っ張って入り口へと進む。先に行くだけなんですね、入らないって選択肢はないんですね。
「うわぁ…雰囲気出てるなぁ、怖い怖い」
「そうだなぁ…」
………今怖いって言ったよね?大丈夫だよね?先走っていかないよね?
「怖いなら入んなよ…」
「えぇー?怖いのは嫌だけど好きだからねー」
嫌なのに好きってどういうこと?矛盾してますよ?ヤラセではないです。
そんな時、急に角からお化け(人です)が飛び出してきた。
「うわぁっ!?」
「うぉぉ……」
女性は相当ビックリしたのか転んでしまったようだ。
「大丈夫か?怪我とかしてねーよな?」
「う、うん。大丈夫、ありがと」
女性は俺の差し出した手を握ったので優しく立たせてあげる。さすが俺、女性には優しい。伊達に専業主婦目指してない。
「さて……進むか」
俺が一歩前に出ると女性は俺の服の袖を掴んできた。ははん、怖くなっちゃったんだな。だがジェントルマン俺、ここは見なかったことにして進もう。でもね、あまり強く引っ張らないでね、伸びちゃうからね。
そこに追い打ちをかけるよう、さらにお化け(人……かな?)が出てくる。泣きっ面に蜂、という言葉もあるようにそういう設計なのだろう。
「いやぁぁぁぁ!!」
ビビった。まじビビった。何にビビったって女性の悲鳴に一番ビビった。
で、その女性は俺の服の袖を掴んでいたわけで、女性は俺の腕を引き寄せて抱きついたわけで、自然に体の距離も縮まるわけでですね?
お互いの体の距離が縮まり、耳を澄ませば彼女の吐息が聞こえそうだ。あ、まつげ長いですね。
端的に言うと彼女の鼻と俺の鼻がくっ付きかけるくらい、近づいている。
たっぷり見つめること5秒間、多分チョコたっぷりよりも甘さ多めだと思う俺は何を言っているんだ。
「…………ご、ごめんっ!!」
「お、おう……」
女性がバッと顔を離した。袖は掴んだままだけど、そんなに怖かったのかな?というか顔赤くすんな、さっきは別に意識してなかっただろチラチラこっちを見ないで恥ずかしい!
「ほ、ほら…とりあえずここから出るぞ…」
こんな時でも相手のことを考える!さすがジェントルマン俺!正直色々な意味で怖いので早く出たいです。
「う、うん…!」
結論から言うと俺は女性とデスティニーランドを遊んで回った、と聞くとデートっぽく聞こえるかも知れないが実際は違う。連れ回されただけだ。べ、別に楽しくなかったんだからね!いや…楽しかったけどさ……。
時間はもう夜、辺りが暗くなり、吹く風がさらに寒く、鋭くなってくる。
「寒っ…あー、寒い寒い寒い…!!」
あー、もう寒い寒いうるさいですね…ここは俺史(17年)の中で最も素晴らしいと確約される飲み物、MAXコーヒーの出番だな!
「っせぇな…ちょっと待ってろ」
「え?あ?どこ行くのさー!」
「飲み物だよ、飲み物。あったかいの買ってくるから待ってろ」
ふふふ…MAXコーヒーの恐ろしさを味わうがいい!…ってたけぇ!デスティニーランドのMAXコーヒーたけぇ!
「……ほれ」
俺が買ったMAXコーヒーを差し出すと女性はじーっと缶を見つめている。初見さんなのかな、その警戒色は怖いもんね。
「……なにこれ」
「MAXコーヒーだ、最も素晴らしい飲み物と言っても過言ではない」
「ふーん……」
そう言うと女性はプルタブを開け、一気に飲み干した。大胆ですね…。
「うっま!なにこれ!甘くて超うまい!」
どうやらお気に召してくれたようだ、さすが俺史の中でもっとも素晴らしいと認定された飲み物だけはある。
「これで少しは寒くなくなんだろ」
「うんうん、ありがとう」
「なに、気にするな。隣で寒い寒いうるさいと迷惑だからな」
「むー…すみませんねー」
女性は少し拗ねた感じでそっぽを向いてしまった。うん…俺が悪いですね、これは。申し訳ない申し訳ない、いやでもうるさいのは嫌だし…。
「わ、悪い。普通に温まって欲しかっただけなんだ…」
「そっか……もうその事はいいよ、また色々見たりしよ!」
「へいへい……」
まだ回るんですか。元気ですね、この女。
なんだかんだ言ってこの後しっかり回って楽しんでしまった。悔しい!でも感じちゃう!(楽しみを)
「今日はありがとうねー」
「あー…おう、気にすんな。何もしちゃいねぇよ」
そう、俺は何もしていない。小町探してないし、大丈夫かな。小町ちゃん。
「あっはは…ごめんごめん、迷惑だったかな…?」
「いや…んな事ねぇけど…?」
うん、普通に楽しかった。その…うん…デートみたいだったし…?この人の名前知らないけど。
「そっかそっか…なら良かったよ」
「姉さーん」「川内ちゃーん」
そんな声が女性の後ろから聞こえる。恐らくこの女性の妹というやつだろう。片方は賢そうな見た目ですね、もう片方はなに?すごくアホっぽい。
「ありゃ、妹たちだ。じゃあ…私は行くね?」
「あぁ…そのなに、今日はあんがとさん」
半日ほど一緒に遊んだんだ、礼は言っておくべきだろう。それに俺は養われて生きていく人間だ、日々奥さんへの感謝は忘れちゃいけないからね!稼いでくれてありがとう!
「うんうん、私の方こそ。…あ、名前聞いていいかな…?」
「あー…そいや言ってなかったな…。八幡、比企谷八幡だ」
「八幡、ね…ありがと。それじゃ、バイバイ」
その女性は走って妹たちの方に行く。あのね、俺の名前は言ったけど、俺はあなたの名前聞いてないよ?まぁ、いいけどさ。アホっぽい子が呼んでたから分かったし。
「あー!お兄ちゃんやっと見つけた!」俺がぼーっとしてたら(特技)妹の小町に見つかったようだ。おぉ、小町よ生きていたか。
「おー、小町。どした」
「どした、じゃないよ!お兄ちゃん迷子だったんだよ!迷子!特に探してないけど!」
探してないんですか…小町ちゃん……俺は探そうとしたのに…結局探してないけど。
「あー…すまんすまん。1人で大丈夫だったか?ナンパとかされてないよな?」
「うわぁ…さすがのシスコン…気持ち悪っ…」
妹思いだと言え、お前の場合だとほいほいついて行きそうだし。
「小町はお兄ちゃんの妹だよ?1人でも大丈夫!生き生きしてるよ!」
理由が悲しいですね……間違ってないけど、1人最高。
「お兄ちゃんは?1人で回ってたの?死んでない?」
「うっせぇな…死なねーよ、この程度じゃ。つーか、1人で回ってねーし」
「うっそ、誰と回ってたの?小町すごい気になるんだけど」
「別に誰でもいいだろ。ほら、帰んぞ」
「いや…帰るけどさ。ねーねー、だーれー!」
多分、俺がネズミの国を小町以外の女性と回るのはこれが最初でこれが最後だろう。あの女性とは今後、会わないかもしれない。そう考えると…未だに少し温もりを残している右腕がむず痒くなるのを感じた気がする。
「ねぇねぇ、川内ちゃん。一緒にいた男の人だーれ?あと何飲んでるの?」
「別に…那珂には関係ない人だよ」
「えー…でも気になるよぉー」
「那珂ちゃん…?姉さんが男の人といても別にいいでしょう…?」
「えー!神通ちゃんは気にならないのー?」
神通と那珂がそんなことを話しているのを軽く聞き流しながら星を眺めていた。初めて会った人、だけどあの人とはこれからも関われる気がする。そんな事を考えながら、彼に教えてもらったMAXコーヒーを飲む。先ほどよりも甘い気がするのはきっと気のせいだろう。
pixivに投稿していたものをこちらにも、という形です。
一年前に書き上げたものなので少し古いのですが。
あと初投稿ゆえあらすじとか前書きとか全くわかっておりません、よろしければご教授を。