「ねぇ、ヒッキーヒッキー!こんなのどうかな!」
「ん、あぁ…そだな、似合ってるんじゃねーの?」
「じゃあじゃあ、こっち!」
「あ?んー…落ち着いた感じのは似合わねぇな…」
「むぅっ…これは!」
「あぁ、そのポワポワしてんの似合ってんぞ」
「えへへ〜……ってポワポワしてるってどういう意味!?」
「……気にすんな」
「なんで目逸らすの!?」
いやだって…アホっぽいというかアホって言ったら怒られそうだし…。しょうがないよね!
俺と由比ヶ浜は今遊びに来ている。千葉の駅前ってなんでもあって便利ね。人もそこまでいないし。東京に住もうとしてる皆さん!千葉の駅前の方がいいですよ!なんでもあるよ!(ダイレクトマーケティング)
おっと…俺の千葉愛が出てしまった。千葉は俺にお金を払った方がいい。……千葉を宣伝しまくってお金貰って、それで暮らす……。これいけますね。八幡、千葉と結婚する!
俺の婚活(成功)は置いておいて、俺が由比ヶ浜と遊びに来ることになった経緯を説明しなければならない。
キラークイーン!第3の爆弾!BITH THE DUST!負けて死ね!
いや、今は負けじゃだめだ。待てよ…俺の人生は負けだらけ、戻り放題…?人生やり直せる……?八幡ぼっち回避ワンチャン?よーし、これは行ける!八幡の冒険はこれからだ!次回作にご期待ください!
そんなしょうもないことで戻れるわけもなく、ぼっちのままなのでした。ほら、ぼっちじゃない俺とか俺じゃないから。サイヤ人じゃないベジータ的な?つまり俺は強い。(慢心)
今度こそ本当に戻りまして、時は放課後。下校時間が近くなってはいるが夏のせいでまだ日は明るい。そんな中、奉仕部の部室で由比ヶ浜と二人きり。昔の俺なら確実に惚れて、告白して、爆死する未来が見えるシチュエーションだろう。フラれるのまでは確定なので。
そんな由比ヶ浜は俺に好きだよ、と言った。さらに付き合いたいとも言った。
まずこいつは何を言っているんだと思った。どうして、なぜ、俺なのか。お前に釣り合うのは、俺なんかじゃない。俺みたいなクズじゃなくて、もっと葉山とか、トップカーストの連中らの方がいい。それがお前のためにもなるはずなのに、お前もわかってるはずなのに。なぜ。
次に由比ヶ浜の顔を見て思った。こいつは本気だ。本気で俺のことを思って、気持ちを言葉にしてぶつけてきた。なら俺も本気でぶつかって、砕けなくては失礼だろう。砕けるな、俺。
「俺は…分からない。俺には好きっつー感情がわからない…でも、それでも…お前といるのは、それなりに…楽しいとは思ってる。だから…なんつーか…と、とりあえずお友達とかいうやつから…?」
自分でも小っ恥ずかしい事を言っていると思う。何を言っているんだ、俺は。なんだよ好きっつー感情がわからないって、俺はロボットか。由比ヶ浜がこれが愛なら愛なんかいらないっ、って言ってもおかしくないぞ、俺!いや、ケン!はい自重します、まる。
「つ、つまり…?」
由比ヶ浜は目をキョトンしたまま俺に問いてくる。
これくらい分かれ、このアホの子が…。
「だからあれだ…とりあえず試しに、付き合うみたいな…?」
「……えと、ヒッキーは…私のこと好きなの…?」
なんでこの子はこんな恥ずかしいこと普通に聞けるの…最近の子って怖いわね、おくさん。俺は最近の子じゃないので関係ないです。
俺はどうでもいいことを考えながら(いつも)たどたどしく由比ヶ浜の問いに答える。
「え、えっとだな…あれだ、嫌いとは思ってない、うん」
「え、ちょっ…好きって言ってくれないの!?」
由比ヶ浜は顔を真っ赤に染め、あたふたしながら答える。なんで俺が好きって言わなくちゃいけないんですかね、えぇ。
「ヒッキーのバァァカ!」
由比ヶ浜はドアを吹っ飛ばしてその場から走り去っていく。
その…あの…ドア直すのもしかして俺…?
その後俺はドアを一人で、一人で直し帰宅したのでした。めでたしめでたし。
何もめでたくねぇよ!はい、まだ続くからね、これ。
その日の夜、基本鳴らない俺の携帯が鳴った。久しぶりのお仕事お疲れ様です。
相手は由比ヶ浜結衣、まぁ…予想してた。
出るか出ないか悩んでいたが言い訳が特に思いつかない。「寝てた」とか「充電無かった」だとあいつにはバレそうだからなぁ…。
「……もしもし」
自分でも低い声が出たと思う、だって緊張してるんだもん…。
「ひゃあ!?間違えましたごめんなさいっ!!」
ツーツーツー……無残にもその音は俺の耳に響いてくる。
いや…あの…間違えてない……。
俺が軽くわー、俺の声そんなに低かったのかへー。や、別に気にしてるとか?そんなんじゃなくて?なんつーの?とかふざけてたらまた由比ヶ浜から電話がかかってきた。
「も、もしも〜し…」
「お、おう…」
今度は普通の声だな、うん。大丈夫。き、緊張なんてしてないんだから!
「ひ、ヒッキー?」
「おう…というかその呼び方やめろって言ったろ…」
「え、だって他の呼び方ないし…」
「…ほら、あれだ。八幡でいいぞ、ユイユイ」
「名前呼びとか恥ずいしっ…、というかユイユイ止めてって言ったじゃん!!」
「……お、俺も結衣って呼ぶからよ」
「………へ?」
「だから…なんだ、あー…部室での話?」
「あー…うん、あれねー……って忘れてよ!」
っと…うるせぇな、こいつ。電話で騒ぐんじゃねぇよ……。八幡おこだよ!
「うるせぇ、電話で騒ぐな。切るぞ。で、その返事なんだが…」
「あ、ごめん……って返事!?いい!聞きたくない!」
このアマ…だから電話では以下略。
「あ、そ。じゃ切るわ」
「ちょっ!?切るなしー!」
「…なに」
「え、えと…その…返事を……」
電話先の由比ヶ浜の声がどんどん萎んでいくのが分かる。
あのですね、そういう反応をされると俺としてもすごい返しにくくてですね。恥ずかしい!八幡すごい恥ずかしい!
「…部室でも言ったけどよ、お前のこと嫌いではない…だから、とりあえず…お友達から…?」
「……ヒッキーとあたしって友達じゃなかったの!?」
あちゃー、そうきますか。でもね、ユイユイ。友達の定義って曖昧じゃん?顔知ってるなら友達、毎日会うなら兄弟とかじゃないでしょ?
ホント、早く交友関係を文字にできる機械を作ってください。生きづらいです。
「あー…うん…まぁ、そうだな」
「友達じゃなかったんだ……ってえ!?付き合うの!?」
だから電話で以下略。
「え?なに、付き合いたくないの?」
うそ、俺だけちょっとその気になってたの?やだ、恥ずかしい。確実に黒歴史。死にたい。いっそ殺してくれ!
「違う違う!オッケーもらえると思わなくて……」
あ、そういうこと…。よかった、まだ生きていける。
「そ、そか…」
しかしこういう事を言われると恥ずかしいものだ。多分俺の顔は赤くなっているに違いない。心臓の鼓動は早く、手からは汗が止まる事なく出ている。
それは多分向こう…由比ヶ浜も同じだろう。
「ほ、ほらヒッキーってそういう事興味なさそうだし…なんと言うか、近づいてくる人全員に対して裏ありそうだなーっ、とかなんか企んでないかなー思ってそうだから…」
…こいつ……、由比ヶ浜の言っている事は間違ってない。俺は近づいてくる女に対してはこれは罠だ、乗るななどの事を思っている。男だってそうだ。なにか仕事を押し付ける気じゃないか、恥をかかせる気ではないのか…といった考えばかりが浮いてくる。だってあいつらじゃんけんで負けたらクラスのあまり可愛くない子(良心)に告白な!とか言うんだもん……。
これは俺の体験、さらに親父からの教えをもとにこうなっている。恨むなら親父を恨め!
「まぁ…そうだな…」
自分でも意外だと思っている。人と付き合うなんて。そもそもあいつら…雪ノ下、由比ヶ浜らと関係を持つ事自体が意外ですらある。
「だからさー…まさか、オッケーしてくれるなんて…思わなくて」
俺がなんて返せばいいのか分からず、無言のままでいると由比ヶ浜は慌てながら
「と、とりあえず明日からよろしく!八ま…ヒッキー!」
「お、おう…こちらこそな、ゆ……い………」
俺が最後に名前を呼ぼうとした瞬間、リビングの扉は我が最強の妹、ドン=コマチによって開かれた。
「お兄ちゃんさっきからうるさい!誰と喋ってんの!って…今……え…?」
これは非常にまずい。小町が俺と由比ヶ浜が付き合い始めた、なんて知ったらどうなるだろう。「ねぇ、ヒッキーヒッキー!こんなのどうかな!」
「ん、あぁ…そだな、似合ってるんじゃねーの?」
「じゃあじゃあ、こっち!」
「あ?んー…落ち着いた感じのは似合わねぇな…」
「むぅっ…これは!」
「あぁ、そのポワポワしてんの似合ってんぞ」
「えへへ〜……ってポワポワしてるってどういう意味!?」
「……気にすんな」
「なんで目逸らすの!?」
いやだって…アホっぽいというかアホって言ったら怒られそうだし…。しょうがないよね!
俺と由比ヶ浜は今遊びに来ている。千葉の駅前ってなんでもあって便利ね。人もそこまでいないし。東京に住もうとしてる皆さん!千葉の駅前の方がいいですよ!なんでもあるよ!(ダイレクトマーケティング)
おっと…俺の千葉愛が出てしまった。千葉は俺にお金を払った方がいい。……千葉を宣伝しまくってお金貰って、それで暮らす……。これいけますね。八幡、千葉と結婚する!
俺の婚活(成功)は置いておいて、俺が由比ヶ浜と遊びに来ることになった経緯を説明しなければならない。
キラークイーン!第3の爆弾!BITH THE DUST!負けて死ね!
いや、今は負けじゃだめだ。待てよ…俺の人生は負けだらけ、戻り放題…?人生やり直せる……?八幡ぼっち回避ワンチャン?よーし、これは行ける!八幡の冒険はこれからだ!次回作にご期待ください!
そんなしょうもないことで戻れるわけもなく、ぼっちのままなのでした。ほら、ぼっちじゃない俺とか俺じゃないから。サイヤ人じゃないベジータ的な?つまり俺は強い。(慢心)
今度こそ本当に戻りまして、時は放課後。下校時間が近くなってはいるが夏のせいでまだ日は明るい。そんな中、奉仕部の部室で由比ヶ浜と二人きり。昔の俺なら確実に惚れて、告白して、爆死する未来が見えるシチュエーションだろう。フラれるのまでは確定なので。
そんな由比ヶ浜は俺に好きだよ、と言った。さらに付き合いたいとも言った。
まずこいつは何を言っているんだと思った。どうして、なぜ、俺なのか。お前に釣り合うのは、俺なんかじゃない。俺みたいなクズじゃなくて、もっと葉山とか、トップカーストの連中らの方がいい。それがお前のためにもなるはずなのに、お前もわかってるはずなのに。なぜ。
次に由比ヶ浜の顔を見て思った。こいつは本気だ。本気で俺のことを思って、気持ちを言葉にしてぶつけてきた。なら俺も本気でぶつかって、砕けなくては失礼だろう。砕けるな、俺。
「俺は…分からない。俺には好きっつー感情がわからない…でも、それでも…お前といるのは、それなりに…楽しいとは思ってる。だから…なんつーか…と、とりあえずお友達とかいうやつから…?」
自分でも小っ恥ずかしい事を言っていると思う。何を言っているんだ、俺は。なんだよ好きっつー感情がわからないって、俺はロボットか。由比ヶ浜がこれが愛なら愛なんかいらないっ、って言ってもおかしくないぞ、俺!いや、ケン!はい自重します、まる。
「つ、つまり…?」
由比ヶ浜は目をキョトンしたまま俺に問いてくる。
これくらい分かれ、このアホの子が…。
「だからあれだ…とりあえず試しに、付き合うみたいな…?」
「……えと、ヒッキーは…私のこと好きなの…?」
なんでこの子はこんな恥ずかしいこと普通に聞けるの…最近の子って怖いわね、おくさん。俺は最近の子じゃないので関係ないです。
俺はどうでもいいことを考えながら(いつも)たどたどしく由比ヶ浜の問いに答える。
「え、えっとだな…あれだ、嫌いとは思ってない、うん」
「え、ちょっ…好きって言ってくれないの!?」
由比ヶ浜は顔を真っ赤に染め、あたふたしながら答える。なんで俺が好きって言わなくちゃいけないんですかね、えぇ。
「ヒッキーのバァァカ!」
由比ヶ浜はドアを吹っ飛ばしてその場から走り去っていく。
その…あの…ドア直すのもしかして俺…?
その後俺はドアを一人で、一人で直し帰宅したのでした。めでたしめでたし。
何もめでたくねぇよ!はい、まだ続くからね、これ。
その日の夜、基本鳴らない俺の携帯が鳴った。久しぶりのお仕事お疲れ様です。
相手は由比ヶ浜結衣、まぁ…予想してた。
出るか出ないか悩んでいたが言い訳が特に思いつかない。「寝てた」とか「充電無かった」だとあいつにはバレそうだからなぁ…。
「……もしもし」
自分でも低い声が出たと思う、だって緊張してるんだもん…。
「ひゃあ!?間違えましたごめんなさいっ!!」
ツーツーツー……無残にもその音は俺の耳に響いてくる。
いや…あの…間違えてない……。
俺が軽くわー、俺の声そんなに低かったのかへー。や、別に気にしてるとか?そんなんじゃなくて?なんつーの?とかふざけてたらまた由比ヶ浜から電話がかかってきた。
「も、もしも〜し…」
「お、おう…」
今度は普通の声だな、うん。大丈夫。き、緊張なんてしてないんだから!
「ひ、ヒッキー?」
「おう…というかその呼び方やめろって言ったろ…」
「え、だって他の呼び方ないし…」
「…ほら、あれだ。八幡でいいぞ、ユイユイ」
「名前呼びとか恥ずいしっ…、というかユイユイ止めてって言ったじゃん!!」
「……お、俺も結衣って呼ぶからよ」
「………へ?」
「だから…なんだ、あー…部室での話?」
「あー…うん、あれねー……って忘れてよ!」
っと…うるせぇな、こいつ。電話で騒ぐんじゃねぇよ……。八幡おこだよ!
「うるせぇ、電話で騒ぐな。切るぞ。で、その返事なんだが…」
「あ、ごめん……って返事!?いい!聞きたくない!」
このアマ…だから電話では以下略。
「あ、そ。じゃ切るわ」
「ちょっ!?切るなしー!」
「…なに」
「え、えと…その…返事を……」
電話先の由比ヶ浜の声がどんどん萎んでいくのが分かる。
あのですね、そういう反応をされると俺としてもすごい返しにくくてですね。恥ずかしい!八幡すごい恥ずかしい!
「…部室でも言ったけどよ、お前のこと嫌いではない…だから、とりあえず…お友達から…?」
「……ヒッキーとあたしって友達じゃなかったの!?」
あちゃー、そうきますか。でもね、ユイユイ。友達の定義って曖昧じゃん?顔知ってるなら友達、毎日会うなら兄弟とかじゃないでしょ?
ホント、早く交友関係を文字にできる機械を作ってください。生きづらいです。
「あー…うん…まぁ、そうだな」
「友達じゃなかったんだ……ってえ!?付き合うの!?」
だから電話で以下略。
「え?なに、付き合いたくないの?」
うそ、俺だけちょっとその気になってたの?やだ、恥ずかしい。確実に黒歴史。死にたい。いっそ殺してくれ!
「違う違う!オッケーもらえると思わなくて……」
あ、そういうこと…。よかった、まだ生きていける。
「そ、そか…」
しかしこういう事を言われると恥ずかしいものだ。多分俺の顔は赤くなっているに違いない。心臓の鼓動は早く、手からは汗が止まる事なく出ている。
それは多分向こう…由比ヶ浜も同じだろう。
「ほ、ほらヒッキーってそういう事興味なさそうだし…なんと言うか、近づいてくる人全員に対して裏ありそうだなーっ、とかなんか企んでないかなー思ってそうだから…」
…こいつ……、由比ヶ浜の言っている事は間違ってない。俺は近づいてくる女に対してはこれは罠だ、乗るななどの事を思っている。男だってそうだ。なにか仕事を押し付ける気じゃないか、恥をかかせる気ではないのか…といった考えばかりが浮いてくる。だってあいつらじゃんけんで負けたらクラスのあまり可愛くない子(良心)に告白な!とか言うんだもん……。
これは俺の体験、さらに親父からの教えをもとにこうなっている。恨むなら親父を恨め!
「まぁ…そうだな…」
自分でも意外だと思っている。人と付き合うなんて。そもそもあいつら…雪ノ下、由比ヶ浜らと関係を持つ事自体が意外ですらある。
「だからさー…まさか、オッケーしてくれるなんて…思わなくて」
俺がなんて返せばいいのか分からず、無言のままでいると由比ヶ浜は慌てながら
「と、とりあえず明日からよろしく!八ま…ヒッキー!」
「お、おう…こちらこそな、ゆ……い………」
俺が最後に名前を呼ぼうとした瞬間、リビングの扉は我が最強の妹、ドン=コマチによって開かれた。
「お兄ちゃんさっきからうるさい!誰と喋ってんの!って…今……え…?」
これは非常にまずい。小町が俺と由比ヶ浜が付き合い始めた、なんて知ったらどうなるのだろう。どうなるんだろ……。うーん…あ、兄離れとか?それは非常にまずい、俺的に。小町ちゃんからは離れられない!ここはなんとかして誤魔化さねば…。
「よ、よう…小町。じゃ、俺寝るから…」
俺は小町とできるだけ会話をせずに切り抜けようとしたが無理だった。小町は俺の腕をガッと掴むと
「お兄ちゃん、小町詳しくお話し聞きたいな♪」
はい、アウトー。これはもう全部しっかりつまびらかに話すしかないようだ。もうお兄ちゃん憂鬱だよ……。
「さーて、お兄ちゃん。詳しい話を聞こうか」
小町はソファに座りながら、ちびちびとお茶を飲んでいる。つーか、そのシャツ俺のだろ。着ないから別にいいけどよ…。こいつ、俺のシャツとかいつ持ってってるのかね。
「あのな、小町。俺は由比ヶ浜って言おうとしただけだ、名前を呼ぼうとしてたなんてお前の勘違いだぞ」
とりあえずそれっぽい言い訳をしてみるが、マイリルシスタには通じるだろうか。
「ふーん…へぇ…。」
小町がじろじろと俺を見回す。しっかりと見られることに慣れていないからかこう見られるとなんだか居心地が悪い。
「まぁ…小町はお兄ちゃんを信じてあげるよ、ポイント高いし」
「お、おう…そうか…」
小町は俺が呆れてるのを知ってか知らずか、そのまま話を続ける。
「でもね、お兄ちゃん。相手が本気なのに、自分は本気じゃないって失礼だよ。そこらへんちゃんとわかってるよね…?」
小町の短い言葉が心に刺さる。今の俺にはかなりきつい言葉だった。
だけどそんな事は自分でもわかっているつもりだ。
確かに今の俺の由比ヶ浜に対する気持ち、それは好意というより友情だろう。
俺は上辺だけの関係を嫌っている。それは場に合わせ、空気を読み、自分の信念さえ曲げようとする。俺はそんな上辺だけの関係が大嫌いだ。
なのに俺は…本当に成長していない、むしろ退行すらしている気がする。俺はそんな自分に吐き気を覚えながら、音を立てずに静かに部屋へ戻った。
大体こんな事があって俺と由比ヶ浜は今出かけている。付き合っているのかは分からない。俺も由比ヶ浜もあの後、確認してないからだ。
駅前は平日という事もあって大した人混みじゃない。むしろ、空いている感じがある。
そういえば川内と会った信号はここだったかもしれない。そういえばメールしてないな…。女子にメールを送るのは苦手だ。過去にしょうもない話題を作ろうとしたり、ちょっとしたやりとりをしようとして痛い目を見ている。
メールなんて送ればいいんだろう…『暑い日が続きますが貴女は如何お過ごしでしょうか』とか『一筆啓上仕り候、突然のお手紙をどーのこーの』とか書かなきゃいけないのかな。リア充(笑)の皆さんはどうやってメール送ってるんですかね、あいつらそういう事には気が効くからなんかすごいと思うわ。それぐらいしか能が無いのだろう、あいつら超うるさいし。
などと、考えいたら由比ヶ浜から声をかけられているのに全く気付かず無視する形となっていた。
「ッキー……ヒッキーってばー!」
「…ん?あー、なに?」
「なにじゃないっ!さっきから無視してたでしょ!」
「い、いや…わざとじゃないから…で、どうした?帰るの?」
「またそれ…というか帰らないしっ」
また、というのは恐らく夏祭りの時を示しているのだろう。確かあの時も同じような事をした記憶がある。記憶力がよくていろいろな事を覚えていたらストーカー扱いされた俺、比企谷八幡に死角などない!資格もついでにない。持ってたら女性が養ってくれる資格とかねーのかよ、国よ早く作ってくれ。
「おー、じゃあどこ行く?俺ん家?」
「そんな帰りたいんだ…」
「嘘だよ。で、どうすんの」
「んー…そうだなぁ…」
由比ヶ浜の頭の中には色々と案が出ているらしいが口には出さない。俺に合うものではないと考えたのだろう。俺に合わないもの……あれだ、出かける事自体俺に合ってないからな、仕方ない。恨むならクーラーさんでも恨んどいてくれ。
「…やっぱ家かな…」
あ、由比ヶ浜さん諦めましたよ。まぁ、しょうがないな。付いて来いって言われれば何処にでも行くんだけど。
「あ、課題出てたでしょ!課題!」
「あー、そいやー……嘘、出てたっけ?」
え、なにそれ俺聞いてない。もしかして俺って先生からもハブられてるの?先生もいじめに参加してるからいじめなんて存在してませんって言っちゃうの?八幡君を取り囲む環境、もしかしてかなりブラック?やだ生きてる八幡君すごい!
「で、出てたよ多分。数学が」
「あー、数学なー…」
数学数学…確か3時間目か。ふむ…寝てたな。そりゃ宿題出てるの知らなくて当然だわ。よかった!八幡君いじめられてなんかなかったよ!
「でも俺らじゃマトモにできないだろ。俺は数学できねーし、お前はアホだし」
「あぁぁ…確かにヒッキー数学できないし…あたしも苦手かも…」
あれ…アホな子は否定しないのかな?由比ヶ浜さん?大丈夫かしら、この子。
由比ヶ浜は俺のそんな心中を察せずに話を続けていく。
「あ!ゆきのんに教えてもらおうよ!提出まで少し時間あるしっ!」
「それもそうだな…ただ少しはやっとけよ、雪ノ下の事だから絶対怒る」
「うっ…それもそうだね…じゃ、じゃあヒッキー!また明日ねっ!」
「お、おー…気をつけて帰れよー」
由比ヶ浜は遊ぶ事から勉強に切り替わったのかかせっせかせっせか走って帰っていく。あいつの頭、1ビットくらいしかないんじゃないかな。次の目的見つけたらすぐ前の事忘れちゃうし。ファミコンより記憶力ないんじゃないの?
俺はどうでもいい事を考えながら由比ヶ浜が見えなくなるまでその場に立って由比ヶ浜の後ろを見続けていた。………この、心にあるもやもやのようなものは一体なんなのか、俺にはそれがまだ分からないでいた。
時は流れて放課後の奉仕部の教室、俺はいつもの場所でぼーっと本を読んでいた。これ面白いな、やっぱり高校生活に出会いを求めるのは間違っているのだろうか。否、間違っている。出会いなんかねぇよ、会ったらこんな所にいないし、ぼっちじゃないし…。俺も神様に仕えたい…。
対して反対側では雪ノ下が由比ヶ浜に数学の課題を説明している。最初の方は俺も聞いていて雪ノ下が「(sinx)´=cosxが公式の一つなのだけど…」とか「他にもx^2を微分すると2xなるのだけど、それはx=3の地点でのy=x^2のグラフの傾きは2xにx=3を代入して6になるということね」とか言ってたけどもう無理諦めた。追試頑張ります、受験に使わないしね!私立文系最高!バカ文系って言われても気にしない!
「んぁー!もう無理っ!きゅーけいっ!!」
「由比ヶ浜さん…まだなに一つ終わってないのだけれど…」
「だってなに言ってるかわかんないもん!」
どうやら俺が神様に仕えてダンジョンで活躍する夢を見ていたら終わったらしい、由比ヶ浜の頭が。お疲れ、雪ノ下。よくこのアホに付き合ったな。偉い偉い。
「はぁ…まぁ、いいわ…」
「大丈夫だぞ、由比ヶ浜。微分積分なんて使わなくても生きていける。微分積分を勉強しなきゃいけないなんて幻想は俺がぶち壊す」
「だ、だよね!微分積分なんて使わなーい!」
あちゃー、乗っちゃったかー。このアホの子、大丈夫かしら。まぁ、俺もやらないんだけどね。
「あなた達はなにを言っているのかしら…」
「大丈夫だ、雪ノ下。私立文系に数学なんて必要ないからな。クラスの中での俺レベルに」
「あら、それは存在してない、ということかしら?」
「まぁ、間違ってないな」
「肯定してしまうのね…あなたらしい…」
だって実際そうだし…俺存在してないような感じだし…いてもいなくても変わらない、って結構楽なんだけどなぁ。
「というかやっぱ微分積分とかやる意味ないだろ。あれ、日常生活のどこで使うの?なんか見て『この微分は…』とか言うのかよ、馬鹿だろ」
「そ、そうだよ!ゆきのん!ぜーったい使わないよ!」
「もう好きにしなさい…」
雪ノ下はこめかみに手を当てやれやれ、といった感じの態度をとる。もう諦めたのだろうか。俺はやる気ないから別にいいんだけどね。
「あ、わたし優美子に呼ばれてたんだ。ちょっと行ってくるね〜」
「えぇ、いってらっしゃい」
勉強を切り上げ、由比ヶ浜が携帯を見た直後にそう言って部室をあとにする。よくしゃべる由比ヶ浜がいなくなった部室には静寂が訪れる。時計が秒針を刻む音すら俺の耳には届いてくる。
「…比企谷…くん…少し、いいかしら」
雪ノ下がその静寂を切り裂く。彼女の事を知っている人なら驚く事だろう。俺も急に話しかけられポカンとしていたら雪ノ下はそのまま話を続けていく。
「比企谷くんは…由比ヶ浜さんと付き合っているの?」
何を言われるのかと思えば雪ノ下の口から出たのはそんな事だった。彼女にしては珍しいというか…彼女が聞く事ではないと思った。彼女自身、他人の恋愛事情に首を突っ込む事…突っ込まれる事を嫌っていたからだ。ただ、今この場で俺にできる事は喋る、これのただひとつだ。
「あぁ…由比ヶ浜から聞いたのか?つーか付き合うってちゃんと決めたっつーか、なんつーの?そういうのはねぇんだけど…」
結構雑というか…テキトーな説明になってしまったが、これが事実、だと思う。雪ノ下は何を思っているのか、顎に手を当てたまま動かない。
俺がどうする事もできず、読み終わった本をただ眺めているだけだった。
「あなた……本当に変わらないのね」
雪ノ下は何かを諦めたような、悲しんでいるような声でそう呟いた。
「上辺だけの関係は嫌いではなかったの?確かに由比ヶ浜さんはあなたのことをす、す…好いているけれど、あなたはどうなの?」
雪ノ下は変わらない、真っ直ぐにぶつかって、真実を突きつけてくる。俺は何も反論できない。してはいけない、そう思う。
「私は…あなたは由比ヶ浜さんのことを好いていないと思ってる…他に好いているような人があなたにはいるんじゃないの…?」
「例えば…あの夏祭りの時に一緒にいた女性、とか」
雪ノ下はどんどん言葉を紡いでいく。俺に反論の余地を与えないためだろうか。そして、核心を突いてきている。俺がどうすればいいのか迷って口を開けずにいると、奉仕部の扉を誰かが開いた。
「いろはちゃん連れてきたんだけど…」
扉を開いたのは由比ヶ浜だった、その後ろには一色もいる。何の用だろうか…絶対めんどくさいことって事は分かるんだけど…。
「こんにちは〜、せぇんぱいっ♪」
「お、おう…」
「今日はちょっと用があって来たんですけどぉ…」
「ふーん、そか。じゃ、帰ってね?」
「ちょっ!?それは酷くないですか!?」
いや酷いって言われてもねぇ…そろそろ1人、というか生徒会で仕事して欲しいんだけど。なんで俺の仕事増やすかなぁ。
「あはは…まぁ、話だけ聞いてあげれば?」
「そうね…話だけならいいんじゃないかしら」
「わぁー!結衣先輩も雪ノ下先輩も優しーっ!」
女子2人を仲間に付けたんだ。これは俺も話を聞くしかないだろう。雪ノ下さん本当に女子には甘いですねぇ…。
「はぁ…分かったよ。話聞くだけだからな、言ったらすぐ帰れよ」
「やったーっ。ありがとうございます、先輩♪」
「それでは…早速話してもらっていいかしら」
「あ、はーい。えっとですね…」
「うんうん…」
俺が話を聞くことを了承したからか、女子3人は話始めた。俺に決定権があるわけじゃないと思うんだけどなぁ。まぁいいか、仕事増えるだけだし。
一色が部室に来て雪ノ下が俺に対して言いたいこと、ぶつけたい不満は恐らく全て言えていない。だが俺の心には最初の一言だけでも十分刺さっている。俺は本当に由比ヶ浜が好きなのか、好きではないのか。俺は上辺だけの…俺自身の気持ちに嘘をつくのは嫌いではなかったのか。そんなことを考えていても結論は出ない、ふと眺めた部室の外を眺めるとまだ太陽がまぶしいくらい輝いていた。
彼女、川内は今何をしているのだろうか------
静かな夜の海に6人の影が動く。彼女らは艦娘と呼ばれ、人類のために戦う兵器である。
彼女らの敵は深海凄艦と呼ばれている。深海凄艦の事はほとんど分かっていない。どうやって生まれたのか、なぜ攻撃をするのか、どうやって生命活動を維持するのか、いずれも不明である。また人型のものから全く違うものいる、より人型に近づく深海凄艦ほど戦闘力が高いとされている。
そして彼女ら6人、川内、神通、那珂、吹雪、睦月、夕立の第三水雷戦隊、通称三水戦の任務は敵の偵察及びそれの撃滅、だった。
彼女ら6人は敵を発見する事ができず、現在帰投している最中だ。
「あー、また夜戦できなかった…」
戦闘にいる川内が呟く。彼女の夜戦好きは鎮守府内で有名であり、夜に騒ぎ出すのは当たり前とされていた。
「姉さん、そう言わないでください。戦闘を行わなかったのです、それでいいではありませんか」
川内の呟きに答えたのは妹の神通だ。二番艦であるが姉の川内よりも落ち着いていて、駆逐艦の間では「鬼教官」と恐れられている。
「まー、平和なのに越した事はないよねー」
川内は神通の意見に納得したのかそう言った。
彼女、川内の心の中にはまだ誰にも言ってない秘密があった、それは彼女自身に想い人がいる事。
そのため、彼女は何としても生きて、帰らなければならない。生きて帰るためなら夜戦ができないくらい受け入れよう、川内はそう考えていた。
鎮守府に戻る頃には夜はほとんど明けていた、地平線には太陽が半分ほど見えている。
川内は報告を妹の神通に任せ、高台からボーッと飲み物を飲みながら太陽を眺めていた。彼は今どうしているだろうか、あの後引かれはしなかっただろうか。そして彼は彼女が兵器である事などどうでもいいと言ってくれた、それが彼女に取ってはとてもありがたかった。
少し昔のことを思い出とするなんて自分は年寄りみたいだな、と軽くショックを受けながら太陽に背を向け自らの部屋に向かう。その手に警戒色に包まれたスチール缶を持っているのは言うまでもないだろう。