彼と猫の世界   作:ノスタルジー

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SAOやってみてーな


彼と猫が再び出会う話

 2022/12/8 ―第二層 ウルバス―

 

 アインクラッド第二層主街区ウルバス。一層の転移門からここに転移してきた俺たちはさっそく節約のために格安の宿をとり、行動を開始していた。

今日も街を歩き、フィールドへと向かう。

 街中は一層がクリアされたことで活気にあふれ、プレイヤーたちはクリアへの期待で胸がいっぱいなのだろう。彼らの話はその喜びを表すものや次なる層への気概を示すものもあれば、卑怯な≪ビーター≫を謗るものもあった。

 ≪ビーター≫という呼称は≪キリト≫というプレイヤー名といまだ結びついてはいないようだった。とは言っても、元テスターたちを救うためにキリトが行ったことは確実にキリトの首を絞めることになるだろう。助けられた元テスターとしては少しでもキリトの助けになりたい。だが、何もできない。

 すまない―また心の中で謝罪して、俺にできることをしようとフィールドへ出た。

 

 

「ふっ!」

 手に持った槍が≪トレンブリング・オックス≫の胴体を貫く。

「ブモォォ…」

 小さく鳴いて、大きな牛は消えて行った。入れ替わるように取得経験値やコルを表示するシステムウィンドウが出現した。俺はそれをちらっと見て、時間を確認してから傍に立つアオイに声を掛けた。

「そろそろ昼だ。帰ろう」

「うん」

 SAOは仮想世界といえど、食欲も睡眠欲もある。今は昼前。街に戻れば、昼食にちょうどいい時間になっているに違いない。

 

 二層に着いてから、βテスターとしての知識を活かし、レべリングに勤しんでいた。ボス戦で莫大な経験値を得たからか、すぐにレベルを一つ上げることに成功していた。

フィールドを歩きながら、遭遇したMobを狩っていく。もうすぐ次のレベルアップをするだろう。そう期待しながらMobを倒し、街に向かった。

 

 数十分歩くと≪ウルバス≫に着いた。適当なNPCレストランで昼食をとり、またレべリングに行こうと思っていた俺たちの耳に聞いたことのある絶叫が侵入してきた。

「待って待って待ってーーーー!!」

 金髪を揺らし、アオイを比べると随分と遅いスピードで猛然とこちらに向かってくる影。

 レストランの店先に立っていた俺たちの目に映ったのは見覚えのある人物だった。

「……アーネ?」

 数日前に遭遇したラッキー少女、アーネだ。

「タマだ」

 そう言ってアオイが指さした先には小さな金色の子猫がアーネから逃げるように走っている。

「チャンス?」

 まだタマを諦めてなかったのか…

 猫が獲物を狙う時のうずうずとした様子で走るタマを目で追うアオイ。

「待ってー!待ってってばー!」

 必死な顔でタマを追うアーネ。通りを全速力で走っているからいろんな人と肩を接触させている。そのたび「ご、ごめんなさい」と人だけでなく、街の街灯にまで律儀に頭を下げ謝罪をしている。あの様子を見ているとさっきラッキー少女と名付けたのが失敗だったかという疑問がふつふつと頭に浮かんできた。

「うわーん!待っでぇーダマー!!」

 もはや泣きながらだ。タマを追うアーネだが、敏捷値が低いのと身に着けた装備が重いのだろう、タマとアーネの距離は縮まらない。

 道のど真ん中を走る少女と子猫。子猫が俺たちの前を素早く通り過ぎ、少し遅れて少女が――

「ま…待って…タマ…」

 そう言い残し、死んだ。

 

 

「死んでなーい!!」

 倒れたはずのアーネは急に起き上がり、こちらに詰め寄ってきた。

「見てたんなら助けてよ!何で!?何で助けてくれないの!?私のこと嫌い!?嫌いなの!?なんかごめん!!」

 うざい、と思った。

「いや……鬼ごっこでもしてるのかなと」

 何と返すのが正解か判断に困った俺は適当に言葉を濁して返しておいた。

「そんなわけないじゃない!私を誰だと思ってるのよ!?」

 彼女が誰か。まさかアーネではなく、違うプレイヤーだったのか?他人のそら似?生き別れの双子?

「えっと…アーネじゃないのか?」

「え?ああ、うん。私はアーネよ」

 何だよ…大丈夫なのだろうか…この子は。

「久しぶりだな」

 もしかして俺たちのことを忘れているのかという危惧はあったが、俺がそう言うとアーネはパァっと顔を輝かせた。

「そうね!久しぶりね!ユート!!アオイ!!」

 笑顔で挨拶を交わしてくるアーネはなんだか憎めない。明るく活発。少し頭が心配だが、愛すべきキャラだろう。それはそれとして―

「タマはいいのか?外に出てったぞ?」

「…へ?」

 先ほど門を潜り抜け、フィールドに冒険しに行った子猫。

 テイムモンスターがテイマーの手を離れ、一人でフィールドに出ていけるというのは知らなかった。

「タマがMobを倒したらアーネに経験値が入るのか?もしそうなら便利だな」

 このデスゲームで自身に危険が及ぶことなく強くなれる。それはとんでもないメリットだろう。

「……へ?」

「あの子強いの?」

 いや、弱いだろうな。だが。

「もしかしたら強力な能力が秘められているという可能性も…なんたってテイマーが放置しているんだからな」

「なるほど。やっぱり欲しい。ユート、私もペット欲しい」

「テイムか…とりあえず餌を常備しとけ」

「うん」

「よし、じゃあ餌を買ってからレべリング行くか」

「うん」

「………へ?」

 アーネの間抜けな声が街のBGMの中にテンポよく響いた。

 

 

「えーっとね…こっち!あれ?こっちかな?まぁたぶんこっちね!おーい!早く!!」

 不安だ。非常に不安だ。

 広大なフィールドをアーネの先導で歩く。不安だ。これ以上に不安なことなんて今までの16年間の人生の中では経験した覚えがない。

「なによもーわかりにくい地図ねー」

 テイマーはテイムモンスターの居場所がわかるらしい。テイムモンスター専用の≪索敵≫スキルのようなイメージだろう。

 だが、アーネは表示される地図を読めない。

「…大丈夫なんだろうな」

「だいじょーぶよ!私に任せなさい!」

 その自信はどこから来るのか…理解に苦しむ。なぜなら

「目の前は壁なんだが……」

 そびえたつテーブルマウンテンの岩壁が見える。というか、それ以外見えない。

「えーと……ここらへんのはず…」

 そう言ってきょろきょろと辺りを見回すアーネ。

 俺たちもそれに倣って、体を動かしてみる。

「いた」

 するとアオイが声を上げて、地面を指さした。

「まじか…」

 その指の先を見れば、爪とぎでもしてるかのように岩壁をよじ登ろうとする金色の子猫がいた。正直、アーネがしっかりとタマのいる場所にたどり着いたことに驚きを隠せない。

「あー!全く!何してんのよ!もう!」

 アーネはタマに近づき、拾い上げた。

「にゃー」

「え?上?」

 おい待て。

「…まさかとは思うがアーネ…タマの言葉がわかるなんて言わないよな?」

 おバカ+電波。それは…何としてでも距離を置きたいキャラだ。

「わからないけど…なんて言うの?チャーミング?考えるんじゃなくて、感じるのよ!!あれ?私、今いいこと言ったんじゃない?」

 フィーリングな。魅力は関係ない。そして、判定は灰色。加えて、黙れ。

「ねぇ」

 アオイがクイクイと俺の装備を引っ張る。

「何だ?」

「あれ」

 上を見上げれば、岩壁に小さな穴が開いている。人一人なら余裕で入れそうなサイズだ。

「にゃー」

 俺が上を向き、穴を認識した瞬間、タマが鳴いた。

「おい…アーネ…タマをくれないか?」

 アーネの馬鹿には不必要だろう。

 

 

 岩壁をよじ登り、穴に入った。少し進むと広い洞窟のような場所に出た。冷たい岩肌が露出し、奥に続く大きめの穴が一つあるだけで他には何もない。

「ううむ…」

 期待外れだ。何かあると思っていたんだが…

 落胆しかけた俺の≪索敵≫スキルが接近するMobの存在を知らした。

「敵だ」

 その言葉に反応して、素早く短剣を取り出すアオイ。そして、アーネは―

「ふふん。私の剣の錆にしてくれるわ」

 ゆっくりと大剣を抜いた。そういえばアーネが戦闘しているのを見たことがない。初めて会ったときは街に戻るまでアーネは逃げ続けていた。

「アーネ…お前戦えるのか?」

 心配になって尋ねると、アーネは両手に握った大剣をガシャンと鳴らし、自信満々の表情で答えた。

「ユート、アオイ……この前はありがとう…戦いで受けた恩は戦いで返せ、これが我が家の家訓なの!!」

 一瞬シリアスさを含んだセリフを言ったかと思えば、馬鹿丸出しの家訓を発表するアーネ。奥の穴から現れたカエル型のモンスター二体を視界に入れると「あんたたちはそこで見てなさい!私の活躍をね!!」と言いながらカエルに向かって走り出した。

 

「そりゃー!」

 アーネは大剣を横なぎに振るい、一体のカエルの横っ腹に一撃をお見舞いした。大剣や斧など重量のある武器は一撃のダメージが大きい代わりに、隙も大きい。まだ使い慣れていないのか筋力値が低いのか、アーネは大剣を振るったあと、剣の重さに引っ張られバランスを崩した。その隙を狙って背後に控えていたもう一体のカエルがアーネに向かって飛び上がり、体当たりを仕掛けた。

「うお…おっとっと」

 当たる――そう思ってカバーに入ろうとした俺の目に映ったのは、大剣の攻撃でバランスを崩したアーネがその勢いのまま前方へ体を移動させ、カエルの攻撃を「回避した」姿だった。

「は?」

 俺は予想外の光景に間抜けな声を上げてしまった。

「あれ?何でそんなとこで寝てるの?」

 まぁいいか、という言葉と共に、攻撃が回避されたことで全身を地面に叩き付け、ひるんだカエルにアーネは剣を振るう。

 両手用大剣ソードスキル≪アッパー≫―黄色い刀身が地面に伏したカエルを救い上げるように振るわれた。

 バァァァァァンという弾けるような音と煌びやかなライトエフェクトがクリティカルを示した。本来クリティカル率が高いのは、攻撃力の低い短剣や細剣で攻撃力の高い大剣ではほとんど出ないのだが…

 宙に浮かんだカエルが洞窟の天井に勢いよくぶち当たり、落下。そのダメージでポリゴンとなって消えていった。

「よっしゃー!」

 それを見て戦闘がもう終わったと思ったのか、声を上げて、持っていた大剣を両手で上に掲げるアーネ。だが、こちらには馬鹿面を下げて喜びのポーズをするアーネの背後で飛び上がった影が見えた。

「おい!まだ一体残って――」

 アーネの大剣に体当たり攻撃を仕掛けようとしてきたカエルが突き刺さった。

 

「ね?ね?どうだった?かっこよかった?」

 さすがにあの一撃では倒せなかったカエルに止めを刺したあと、俺たちのもとに駆けてきたアーネは、笑顔でそう尋ねてきた。

 その笑顔が何故かすごくむかついた。

 

 

 洞窟の奥に進むと何回かの戦闘はあったものの、特別なMobやアイテムなどは出現せず最奥まで来てしまった。ドーム状の洞窟の真ん中を横切るように流れの速い川があることだけが今までと違う点だ。

「何もないな…」

 ここが最奥のはずだが、何もないし、何も起こらない。

「う~ん…そうね…」

 頭に子猫を乗せて、川に近づいていくアーネ。嫌な予感しかしない…

「うおぁ!?」

 足を滑らせたアーネは、バシャーン!!と盛大な音を立てて、川にダイブした。

 予想通りだ。

「ぶはぁ!あぶ!えっぷ!ちょ…助け…助けてー!!」

 川に流されていくアーネ。その金髪が水面から出たり沈んだり。手をバシャバシャと音を立てながら忙しなく動かし、その緊急性をアピールする。一方でタマは優雅に遊泳している。あいつ泳げるのか…

「はぁ…ほらこれに掴まれ」

 SAOに溺死はないが、その無様な姿をアオイのようにただ眺めているだけでは人としてどうか、と思った俺は、走って追いかけながら槍を流されるアーネに向かって差し出す。

「あ、ありが――ぎゃーーー!?」

「は?」

 槍に捕まることができず、アーネは川に流されて消えて行った。川は下に続いていたのだ。陸から見る限りでは、高低差があったためか、壁にぶつかって途切れているように見えたのだが、アーネの絶叫が今も下から響いてくるから気づいた。

 アーネの柔らかい微笑みが急に絶望の表情に変わっていく瞬間が頭から離れない。何てものを見せてくれるんだ、あいつ。

「あー」

「どうするの?」

 いつの間にか隣に立っていたアオイが口を開いた。

「……俺たちも行くか」

 アーネなら自力で何とかしそうなんだが…

 あまりテンションの上がらないまま、俺たちも急流すべりを体験した。

 

 

 

「ぐすぐす…怖かったよー」

 スリル体験をした俺たちを待ち受けていたのは、唐突に後ろ向きでウォータースライダーに挑戦させられたアーネだった。

 湖のような場所に放り出され、泳いで陸に上がった。俺たちより前にここに来ていたアーネは子猫を抱き、ぐすぐすと泣いていた。

「あー…はいはい…怖かったな」

 そう言ってアーネの金髪を撫でる。何故そんなことをしたのかと聞かれれば、座り込むアーネの頭が撫でやすい位置にあったのと俺が自称面倒見のいい兄貴キャラだからと言うだろう。

「ぐす……えへ…えへへへ」

 すぐに泣き止み気持ちの悪い声を出し始めたアーネ。無性に嫌になったのでもうやめようと思い、撫でていた手をひっこめる寸前。

「ダメ」

「あぶぁ!!」

 アオイの華麗なとび蹴りがアーネに突き刺さった。

 その蹴りを脇腹にもろに食らったアーネはバッシャーンと水音を立てて、再び湖にダイブした。

「生まれ変わってもあいつだけにはなりたくないな……」

 

 

 

 湖からアーネを救出し、少し歩くと外へと続いていた。石の壁に囲まれたそこは綺麗な水と一本の木、大きな岩が並び、奥には小さな小屋がぽつんとあった。

「あれ何かしら?」

 アーネが小屋を指さして尋ねてくるが、全くわからない。βの時でもこんなところは来たことがなかったが、おそらく何かのクエストではないかと思う。

「行ってみるか」

 クエストだとすればその始まりに関係するのはおそらくあの小屋だろうと予測し、小屋に向かって足を進めた。

 

 しかし、小屋に近づいても何も起こらなければ、誰もいない。となると

「中か」

「よーし!入ろう!」

 言うと同時、勢いよくドアを開け放ち、中に踏み込んでいくアーネ。

 あいつは臆病なのか勇敢なのかよくわからない。

「誰?あのおじさん」

 小屋の中をのぞくと座禅を組み、ボロボロの胴着を身に纏った髭面の男がいた。その頭上には「!」マークが表示されている―クエストの証だ。

「クエストだな」

「クエストって何?」

「…あれだ、依頼とかお願いとか宿題みたいな感じだ」

「宿題!?うわ!蕁麻疹出てきた…二度とその言葉を私の前で口にしないで!!」

「…なんかすまん」

 こいつ…現実世界でもこのままだったのか…?

 

 気を取り直して、クエスト始めようとNPCに話しかけることにした。

「お前もするのか?」

「うん」

 一人用かパーティ用かはわからないが、アオイもやる気のようだ。

 俺たちがNPCの前に立つとこちらを力強い目で睨み、言った。

「入門希望者か?」

「ああ」

「うん」

「修行の道は長く険しいぞ?」

「大丈夫だ」

「わかってる」

 NPCの頭上の「!」マークが「?」マークに変化した。無事クエストを受領したようだ。内容はまだ不明だ。修行というからには討伐系クエストだろうか?

「ではついて来い」

 疑問を抱く俺をよそにNPCは立ち上がり、俺たちを外に連れ出した。

 

 

 

 

 

「何でこんなことに……」

「とんだ…ぷっく…災難ね…ぶっ」

 イラッ。アーネの笑いをこらえた受け答えがこの上なく神経を逆なでする。

「似合ってるよ?」

「…お前の方が似合ってるよ」

「そう?」

 アオイの猫の髭が書かれた顔。こいつはコスプレとでも言えば何とかなる可愛さはある。だが、俺は自分の顔を見れないのでどんなペイントが書かれているのかはわからないが、さぞかし愉快なペイントが書かれているに違いない。

「私やらなくて正解だった…ぶふぅ」

 絶対泣かす。

 

 俺たちに課せられたクエストは「岩を素手で割る」という単純なものだ。こう聞けばなんだが簡単な気がするが、高さ二メートルほどあろう巨大な岩を拳で割れというのはかなり無茶だろう。

 しかもこの岩、素晴らしく固い。破壊不可能一歩手前の硬度だ。

 そして、初回を失敗した場合、師匠NPCによって顔に落書きをされる。この落書き、クエストをクリアするまで取れないらしい。初回を失敗した俺たちの顔にはすでに落書きがなされていた。

 

「どうすんだ?これ…」

 何が必要なのだろうか…やはりSTR値か?もしそうならAGIメインのステータスの俺たちはクリアできるのだろうか?ヤバくないか、これ。

 不安に思い、隣で同じく岩と睨めっこしているアオイを見てみると、華奢な手を振り上げ、固い岩に振り下ろしたところだった。

 ピシッ。

「は?」

 岩が音を立てて、真っ二つに割れた。

「おおー!アオイすごーい!!」

「うむ、よくやった弟子よ」

 一人高みの見物に勤しんでいたアーネといつの間にか現れた師匠NPCがアオイの功績をほめたたえる。

 アオイは持っていたハンカチを取り出し、顔を拭った。そうすると、アオイの顔にあった猫髭ペイントは消え去った。

「この修行は汝の糧になったであろう」

 NPCはそう言うといまだ岩を割ることの出来ない俺を見ることなく、小屋へ戻っていった。

「え?それだけ?なんもなし?」

「あ、≪体術≫だって」

「体重2?何それ?体重が二倍になるの?――うぼぅ!?」

「おおー」

 アオイの貫手がアーネの腹部に突き刺さった。その時のアオイの手が光っていたということは…

「スキルか!しかもエクストラ!」

 エクストラスキル―クエストや特殊な行動でしか手に入らないスキル。今まで取得法や効果が判明していたものは≪瞑想≫という使えないスキルだけだ。

「うん。そうみたい」

 それは何としてでも欲しいな。エクストラスキルはスキルスロットを圧迫しないし、見たところ≪体術≫スキルは徒手空拳での戦闘を可能にするスキルのようだ。持っておいて損はない。

「アオイ、どうやったんだ?」

 問題はクリア方法がよくわからないということだが、クリア経験者がここにいるのだからそれも解決するだろう。

「たぶん、岩が壊れる一点がある」

「そこを殴ればいいと…」

「うん」

 よし。じっと岩を見つめる。

「―――見えた!!」

 槍のように腕を真っ直ぐに岩へ突き刺した。

 

 

 俺が≪体術≫をゲットしたのはそれから二日後のことだった。

 




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