超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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記憶の価値は重さで決まる

(行ける……!このまま、次は体を切り裂く!)

 

慎重にタイミングを伺いながら、しかし怯えはせずに大胆な動きをする。

ユニの援護射撃も正確で気を配らなければ当たってしまうものなので、リグ・コンティオの意識は分散している。

 

「………ふうっ」

 

ユニが短く息を吐いた。

全身の筋肉に意識を張り巡らせて肉体を思考の通りにコントロールする。

 

(ここっ!)

 

リグ・コンティオとユニのビームの動きが完全に同調した。吸い込まれるか、引き寄せられるようにビームはリグ・コンティオの軌道上に完全に重なった。

 

《⁉︎》

 

咄嗟にビームシールドで受けたので致命傷にはならなかったが、大きく体勢を崩してしまう。

 

「今ですっ!はああっ!」

 

《………》

 

ネプギアがその隙をついて急接近、武器を振りかぶった。

しかしリグ・コンティオもただ止まっているわけではない。ユニのビームの衝撃を利用してネプギアからほんの数センチ距離を取る。

 

(ダメ!届かない!)

 

ネプギアはその数センチの距離のせいで刃が届ききらないことを瞬時に感じた。

 

(でも……!)

 

このチャンスを無駄には出来ない。

 

(その大砲を貰います!)

 

標的をリグ・コンティオ本体ではなく右肩のヴァリアブルビームキャノンに一瞬で変更する。

予定していた軌道をほんの少し曲げて逆手に持ったM.P.B.Lが肩に届く寸前に、

 

「っ!」

 

ヴァリアブルビームキャノンがパージされた。

ネプギアの手は宙を空振ってしまう。

 

(くっ、離脱を……!)

 

ネプギアが離れようとした瞬間、ネプギアの脳裏に脈動が走った。

 

「っ⁉︎」

 

あのパージされたヴァリアブルビームキャノン、何か危険だ。

何故かはわからないが、直感がそう告げている。

 

今、ここで後退すべきではない!

 

「まだっ!」

「ネプギア⁉︎」

 

《⁉︎》

 

ネプギアが前に出ると、ヴァリアブルビームキャノンからビームが発射された。

もしネプギアが後退していたら間違いなく直撃していただろう。

逆に不意を突かれる形になったリグ・コンティオは苦し紛れに残った最後の射撃武器である胸部のビーム砲を光らせる。

 

「くっ!」

「切り札行くわ!ネプギア、そのまま真っ直ぐよ!」

「う、うん!」

 

ユニのX.M.Bから大きなミサイルのような弾頭が発射された。

それは2人から少し離れたところで破裂し、周りにキラキラと粒子を撒き散らす。

 

「これは……⁉︎」

「ここで決めなさい、ネプギア!」

 

その粒子にビームが当たった瞬間、ビームは霧散して弾け飛んでしまった。

そう、ユニが撃ち出したのはビーム撹乱幕。これを使ってしまえばユニもネプギアも射撃をすることができなくなってしまう。

だが、ユニはここでネプギアが決めると信じて敢えてこの弾を撃ち出したのだ。

 

「その信頼……応えてみせます!はああっ!」

 

《…………!》

 

リグ・コンティオへと肉薄したネプギア。ビームサーベルを振られるが、あまりにも遅い、遅すぎる。

ネプギアは振り下ろす前からその驚異を感じていた!

 

「スパローの速さなら!」

 

リグ・コンティオのビームサーベルを持った手が手首から切断された。

 

「ミラージュ・ダンスッ!」

 

目にも留まらぬ斬撃。

それがリグ・コンティオの体を一瞬のうちに細切れにした。

 

《⁉︎⁉︎⁉︎》

 

そして大爆発を起こす。

その光を浴びながらネプギアは不敵に微笑んだ。

 

「さすがね、ネプギア。また強くなってる」

「ユニちゃんこそ、あの時の弾がなかったら私どうなってたか……」

「そうね。さあ、リベンジするわよ、ネプギア。もう1度私と……」

 

「こらぁ〜っ!」

 

「ふぁいっ⁉︎」

「あんたら何やってんのよ!こっちも手伝いなさい、よっ!オラァ!」

「危なっ⁉︎」

 

ユニのところにシャッコーの首がぶん投げられて来た。

危なく避けたが、投げた主はアイエフだ。目が赤く光っている。

 

「うざったらしいのよ、バリアでガードして……っ!」

 

アイエフがシャッコーの肩を掴んで引き裂いた。そのまま頭突きをかまして、蹴り倒す。

 

「邪魔だっつってんのよ!」

 

掴んだ肩を後ろのシャッコーにぶん投げる。

怯んだシャッコーを背負い投げしてジャイアントスイングして他のシャッコーにぶつけて……。

 

「なに、あれ。プロレス?」

「アイエフさん、目が赤くなると荒っぽくなるんだよ……。本当に大変みたいだし、とりあえずあっち援護しよう?」

「……そうね」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ギラーガとザンネックが空中で死闘を繰り広げる。

しかし、ザンネックは5pb.の歌に引き寄せられて上へ飛ぶことができない。その移動の制約は確実にザンネックの不利になっていた。

 

すると、5pb.の周りにたくさんの人が寄ってきた。

 

「……?」

 

5pb.は歌いながらその人達を振り返って見る。

まあ当然か。

空中であれだけ目立つ戦いをしててその上大人気アイドルの歌声が聞こえてきたとなれば人も寄るというもの。

 

《人が……?》

 

しかし、上空で戦っているのはわけのわからない人型の機械。しかも5pb.はこれ以上なく頑張ってこんなところで歌を歌っている。

野次馬には何が何だかわからないだろう。

 

《巻き込まないように注意しなきゃ……!射撃はやめて、接近戦で!》

 

ザンネックのミサイルを避けてギラーガスピアで切りつける。

しかし、やはりビームシールドでガードされた。

 

《さすがに強化人間……!反応が早い!》

 

2人が火花を散らす様子を野次馬達は下から見つめて歓声を漏らす。どちらが味方か、あるいは両方とも敵かもわからないが、自分達の認識を超えた戦いだというのはわかるのだろう。

 

(そうだ……!このまま!)

 

5pb.がギターを鳴らしながら野次馬へと振り返る。

 

「みんな〜!熱くなってるかい!」

 

5pb.の声に野次馬は釘付けになった。

 

「みんな!あの赤いのは敵じゃない!犯罪組織と戦ってくれる、ボク達の仲間だ!」

 

5pb.の言葉に野次馬がざわめく。それからまた空中の戦いへと目が動いた。

 

《くっ……!》

 

ザンネックキャノンがギラーガを掠めかける。掠めかけただけでもギラーガは強大な熱を感じる。

 

《まずは近寄らないことにはどうにもならない……!ビットを!》

 

ビットが射出され、ザンネックへと向かっていくがザンネックの素早い横方向への動きで避けられる。

 

《接近すれば勝ちなんだ……!一か八か!》

 

ギラーガの周りを大量のビットが周回し覆い始めた。その姿はまるで光り輝く球体だ。

 

《捨て身でいく!》

 

そのままギラーガは急接近。ザンネックが後退しながら撃つビームをひらりひらりと避けながら接近する。

しかし、距離が縮まっていくにつれてビームはだんだんとギラーガへと近づいていく。

 

《…………》

 

《くっそ……!僕は……!負けられないんだ!うわっ!》

 

ついにザンネックキャノンのビームがビットの球体を掠めた。ギラーガは少し体勢を崩しながらもすぐに立て直す。

 

《5pb.が……僕のことを覚えている!それだけで僕は、いつも以上に……!》

 

5pb.の歌声が体に震えとなって伝わる。耳でも聞こえる。心に染みる。

なら!恐れることも、負けることもない!

 

《…………》

 

ザンネックの三日月型の粒子加速器が円形に広がる。

必中の確信があるのだろう。次の射撃で僕を仕留めるつもりだ!

けれど、こちらにも必勝の確信はある!

 

《負荷はいくらかかってもいい……!ビット!》

 

ギラーガの体の節々が光り輝いて夥しい量のビットが現れる。

 

《うぐっ……!?もっと、もっと……!ここでやれなきゃ、いつやるのッ!?》

 

だがそれだけのビットを制御するミズキの脳にはとてつもない負担がかかる。激しい頭痛に苛まれながらもミズキはそれでもビットの射出をやめない。

全てのビットを機体の前面に集中させ、バリアとして張る。ギラーガの目の前はザンネックキャノンを防ぐためのビットに覆い尽くされた!

 

《…………》

 

ザンネックキャノンが唸りをあげた。

そこから放たれる真っ赤なビームは……!

 

《ンッ………ッ!》

 

ギラーガのビットへと直撃した!

もはや壁ではなく円柱ほどの厚みを持ったビットを持ってしてもザンネックキャノンの破壊力の前では劣勢に陥ってしまう。

 

(ミズキ………!)

 

5pb.が必死に歌いながら空を見る。

巨大な敵と戦うミズキに私ができることは……一か八かの賭けに出たミズキに私ができることは、歌うことだけ!

 

「っ……頑張れっ!」

 

ザンネックキャノンに当たる面のビットが次々と焼かれていく。

次第に薄くなるビットの壁をギラーガは補い続ける。

それでもビットが増えるスピードよりも減るスピードの方が早い。

 

《諦めない……!絶対に、負けられない……!そうだ!僕はァッ!》

 

瞬間、ビットの壁は破壊し尽くされた。

ギラーガの目の前に赤い閃光が瞬いた。

避ける暇も、何かを思う暇もなくザンネックキャノンのビームはギラーガへと直撃してしまう。

 

「っ……!」

 

ギラーガへとビームが当たった証の煙が空に広がる。

5pb.は声を失い、ギターを演奏する手が止まる。

一瞬シンとなった空間、ザンネックすらも命中の確信に油断した、その瞬間!

 

《みんなを……!助けるんだァァッ!》

 

《!?》

 

煙の中からギラーガが飛び出す!

ギラーガの両手には何も握られていない。

ギラーガスピアの回転と自らの腕から発生させた電磁装甲、さらにビームバスターによる相殺という3重の防御璧でギラーガは自らの身を守り切ったのだ!

 

《!?》

 

ギラーガの手から放たれたビームバルカンがザンネックキャノンへと当たり、爆散させる。

そのままビームサーベルを発生させ、切りかかる。

 

《らあッ!》

 

両手で振り下ろしたビームサーベルはザンネックが咄嗟に振り上げたビームサーベルに阻まれる。

しかし、ギラーガの武器はこれだけではない!

 

《!?》

 

ギラーガが腰を捻ってギラーガテイルをザンネックに叩きつける。

体勢を崩したザンネックにギラーガはすかさず連撃を加える。

 

《気絶、させるッ!》

 

ビームサーベルがザンネックの両腕と両足を切断する。

胴体だけになったザンネックをギラーガはひらりと飛び上がって見据える。

 

《墜ち……ッ、ろォッ!》

 

ギラーガの流星キックがザンネックに向かう。

悪あがきのミサイルもすべて流星キックの前に砕け散り、胴体へと命中する。

 

《!?!?!?!?》

 

凄まじい勢いでザンネックが吹き飛んで地面へとたたきつけられた。

 

《…………》

 

少し火花を散らしてザンネックの目の光は消えた。

 

《やった……。やった、けど……》

 

それを上から見据えるギラーガの体がよろめいた。

 

《久々だ……こんな、無茶したの……。頭が、重い……》

 

ギラーガもフラフラと空中を頼りなく浮遊し、やがて完全に落下してしまう。

 

「っ、ミズキ!」

 

砂埃をあげて地面に落ちたギラーガの元へと5pb.が駆け寄る。

事の一部始終を見ていた人達も5pb.に続く。

 

「ミズキ、大丈夫!?」

《あぁ、5pb.……。大丈夫、疲れただけだから……》

 

倒れたギラーガの枕元に5pb.がしゃがみこむ。その周りを遠巻きに民衆が囲む。

 

「また、無茶して……!」

《そうしないと、勝てなかった……。助けられない、から……》

「だからって、いつも見てる側の身にもなってよ……!」

《うん……ごめん……》

 

少し5pb.が涙ぐむ。

ギラーガはゆっくりと立ち上がろうとするが、5pb.がそれを抑える。

 

「ダメ、休まなきゃ……」

《……わかった。それじゃ、みんなが来たら伝えて……》

 

ザンネックは無力化されたこと。あれにもきっと人の脳が埋め込まれていること。疲れはしたものの、怪我はないこと。

 

「わかった……。絶対伝える」

《うん。……あ、あと最後に……》

 

ギラーガの体が光になって消えていく。半透明になった体は次第にその場から存在を隠していく。

 

《君が、思い出してくれて……覚えててくれて、本当に嬉しかったよ》

 

最後にそれだけ言い残してギラーガはその場から完全に消えた。

民衆のどよめきだけ残してその場には何も残らない。

けれど、5pb.の胸には決して消えることのない温かみが残って、締め付けた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「はあ、チカさんに教えて貰って……?」

「うん。だから、教祖様が言ってた助っ人はボク。あんまり、助けにならなかったかもしれないけど……」

 

野次馬は教会の関係者によって締め出され、静かになった草原で5pb.が事態を説明していた。

既にザンネックの体は回収され、教会で細心の注意を払った解析が行われているはずだ。

 

「なんだか、歌に磨きがかかった気がしたですよ?」

「それは……ボクもこの数年間、頑張ってたから」

「それだけ……ってわけじゃなさそうね?」

「まあ……うん。それは、教会に着いてから教祖様と話そう?」

 

頷くアイエフとコンパを女神候補生は不思議そうに見ていた。

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