超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

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トリックの立ち位置が1番考えるのに苦労するんだよ!死んだ、ないし倒されたはずだろうがォォん!?


助けて執事さん

「さあ、早く、ヤツらが来ちまいますぜ」

「うむ、わかっている。だが慌てずに、だ!」

 

ラムを起こさぬように小声で会話を交わした2人。

窓の外に控えるのはふんわりぼよんぼよんな黄色の怪物。マジェコンヌ四天王が1人、トリック・ザ・ハードだ。

おぞましい顔と牙でギョロギョロと目を動かしてロムを見つめるものの、二頭身なのでいまいち威厳がない。いや、むしろそれが逆に歪な不安感を感じさせているのかもしれない。

 

とにかく、トリックは窓を潜ろうと体を窓に沈み込めるが、

 

「う、うむ?あれあれ?し、尻が……」

「あ〜……体大きいですもんね〜……。ていうか、なんでそんな体で潜入任務なんて買って出たんすか?」

「アクククク……そんなことは知れたこと……」

 

尻を窓にグイグイ入れながらトリックが意味ありげに笑う。

 

「ここに……この部屋に、幼女が眠っていると聞いたからだ!」

「……まあ、たしかに眠ってますけどね」

「なに、それは真か!?くぅ、見たい!今すぐ見たい!こんなことなら、もっと図体を小さくして蘇らせてもらえれば……!」

「蘇る?」

「ああ、いや、なんでもない。お前には関係のないことだ」

 

怪訝な表情で聞き返すリンダをあしらい、限界まで体を縮めて窓を潜ろうとするトリック。だが、まあ、上手くいくわけがない。

 

「……これ、絶対人選ミスだよな」

 

案外上層部って大したことないのかもしれない。

マジック様ならすると通り抜けられただろうし。いや、確かに他の3人は図体がデカすぎるが。トリックはまだマシな方かもしれないが。

 

「ぬぅ、こんな窓など!えぇ〜いっ!」

「え、ちょ、タンマ……!」

 

バリバリバリバリ、ドカーーーン!

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「もう〜!ミナちゃん遅い!早く早く〜!」

「あ、慌てないで……。もうできるから」

 

クリスタルは少しずつ少しずつ形になっていき、もうほとんど完成したと言ってもいい。

だが、焦って手元が狂ってしまえばそれまでのこと。慎重になって損はないのか、ミナは完成を急ぎはするものの焦りはしない。

 

 

バリバリバリバリドカーーーン!

 

 

「えっ!?」

「なんの音よ、これ……」

「壁か何かが壊れたです?」

 

3人は突如響いた音に不思議がって周りを見渡す。

まさか、教会の壁や天井がいきなり割れるなんてこともあるまい。

つまり、今の音は異常だということだ。

 

「あっちから……あっち、ロムちゃんの部屋よ!」

「まさか……ロムちゃんに何か!?」

 

ネプギアとラムの顔から血の気が引いていく。

もし、何かが起こっていれば……!

 

「ま、待ってください!……えいっ」

 

駆け出そうとした2人をミナが引き止める。

その手には精製したばかりの小さなシェアクリスタルが握られていた。

 

「ロムになにかあったら、これを」

「わ、わかったわミナちゃん!」

 

全員がロムの部屋に向かって駆け出した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「わ、ちょ、何してくれてるんすか!こんな音立てたらバレちまいますよ!」

「アクク、幼女の前の小事だ!ああ、なんと愛くるしい……。この愛くるしさが、またこの手に……うう、生きててよかった〜っ!」

「は、はあ……」

 

もうリンダはドン引きしている。

それを気にもせずにトリックは寝ていたロムを抱き上げてジロジロと舐め回すように見つめる。

 

「め、愛でちゃってもいいかな?な、舐め回しちゃっても!?」

「と、トリック様!まずは目的を果たしてからにしましょうよ!」

「おお、そうだな……。うっかり、我を忘れてしまっていた。幼女はもうこの手にあるのだから、焦ることはないのだ……」

 

トリックが深呼吸をしながらハァハァと荒かった呼吸を整える。

口が大きいので呼吸量も尋常ではなく、吐いた息がロムにかかる。

 

「ぅ、うぅ……?誰……?」

「げっ!」

 

その感触でロムが目を覚ます。

うろたえたリンダだったが、トリックはうろたえない。

 

「ぅ……!頭が……!」

「久しぶりだな、幼女よ。また会えて嬉しいぞ、アクククク!」

「だ、誰……!?」

「アクク、怖がらなくてもいい。さあ、この目を見て……じ〜っと見て……」

 

突如訪れた頭痛にロムが頭を抑える。

しかし、トリックの目が妖しく光った。ついその目を見てしまったロムは光に釘付けになっていく。

まるで、目を離したくても離せないような、そんな感覚がロムを襲った瞬間にロムの目がオレンジに染まった。

 

「ロムちゃん!」

 

その時、ラムが部屋のドアを乱暴に開いて入り込んできた。

その先には見覚えのある下っ端と、黄色い怪物。

 

「うっ、あうっ!」

「ラムちゃん!?」

 

ラムがトリックを見た瞬間、ラムも頭を抑える。

あとから入り込んできたネプギア達も部屋の中に入り込んでいる不審者に気づいた。

 

「うっ、頭が……!」

「あいつ……!」

「あの時のですか!?」

 

「ほう。だが、今はまだその時ではない!俺は姿を消すぞ!準備もあることだしな!」

「と、トリック様!?」

「後は任せたぞ、リンダ!必ず私の元へ幼女を連れてくるのだ!いいな!?」

 

トリックがぼよよーんと跳ねて壁に開いた穴から脱出する。

 

「いい人なんだけどな。……あの性格、なんとかなんねえのかな」

「くっ、ロムちゃんを返しなさいよ!」

 

リンダの元に目を虚ろにして立っているロムがラムの方を向いた。

 

「返す?……まあ、アタシは返してもいいんだけどよ。コイツが帰りたくねえみたいだぜ?」

「はあ!?そんなわけが……!」

 

「………」

 

ロムが杖を手に取り、ラムに向けた。

 

「ろ、ロムちゃん?」

「…………」

 

杖の先に氷の塊が作られる。

 

「危ない!」

 

ネプギアが咄嗟に飛び出してラムを押し飛ばす。

するとさっきまでラムがいた場所に氷の塊が投げつけられた。

氷の塊は壁にぶつかって砕け、バラバラと床へ落ちる。

 

「ろ、ロムちゃん!?」

「ロムちゃんが……私に……攻撃を……?」

 

ラムは揺れる瞳でロムを見る。

唯一無二の絆で結ばれたはずのロムが私を攻撃した?本気で?

目で訴えても帰ってくるのは無感情な冷たい視線。まるで興味がないような、路傍の石を見るような瞳。

今のだって、ロムにとっては足元のアリを踏み潰すような感覚だったのだろう。

 

「信仰がないとこうも簡単に洗脳できるなんてな……。さあ、行くぞ!アタシについてこい!」

「……はい。ご主人様」

 

ロムの体が光に包まれて変身した。

ラムを何の感情もこもっていない無機質な瞳で見つめ、執着もなく振り返ってリンダと共に夜空へと姿を消す。

 

「待ってロムちゃん!ロムちゃーーーん!」

 

「な、何事ですか!?」

 

遅れてミナが入ってきた。

そして夜空に消えていくロムを見る。

 

「っ!」

「ま、待ちなさい、ラム!」

「は、離してよ、離してミナちゃん!」

「それは、わかりますけど!今アナタが行ったってどうにもならないでしょう!?」

 

ラムの体を掴んで肩を両手で掴み、怒鳴り込む。けれど、目は真摯にラムの方を見つめて、ラムもその瞳を跳ね返せない。

 

「ど、どうすれば……!」

「そんなの、私にもわからないわよ」

 

ネプギアが狼狽えるが、誰にだって答えは出せない。

 

「……アイツ、洗脳って言ってたわよね」

「洗脳……?」

「信仰がないと簡単に洗脳できるって……だったら」

 

アイエフがさっきのことを思い出すと、リンダのつぶやきが気になる。

 

「そうです!シェアクリスタルなら……!」

「ええ。そう簡単には洗脳に屈しないはず」

「今は信仰がなくて弱ってるから、だから洗脳なんてされちゃったってことですね!」

 

幸い、今ここにはシェアクリスタルがある。

なんとかロムを見つけてシェアクリスタルの光を届ければ……!

 

「私、行く!」

「そうね、今から追いかければ間に合うかも」

「そうと決まれば、行きましょう!」

 

4人が部屋を飛び出してルウィーの街へと消えていく。

 

「あ、ラム……」

「大丈夫、絶対連れ戻してくるから!」

 

決意に満ちた目は、なんだかいつの間にか成長したことを感じさせられてミナは引き留めようとした手を下ろす。

 

……しかし、だからといってラムに全てを任せっきりという訳にはいかない。

私だって、ロムを助けたい。前線に取り戻しにいけなくても、今は……。

 

ふと、電話へと目を下ろす。

もし、もし彼に電話をすれば……きっと、大きな助けとなるはずだ。

 

受話器をとってとある番号へかける。

ほんの少しのコール音の後、受話器から声が聞こえた。

 

《はい、こちらプラネテューヌ教会ーーー》

 

「イストワールさん」

 

食い気味に声を遮る。

実際、ミナはそこにはいないイストワールへ詰め寄るような形で受話器を握っていた。

 

「頼みがあります。……ミズキさんを」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ロムが飛んでいった方向を中心に4人はロムを捜索していた。

近いうちに行動を起こすだろうし、騒ぎが起こればすぐわかる。

どうせ考えることなんてロムを操って被害を起こし、シェアを下げることだ。だったら……。

 

 

キャアアア!

 

 

「っ、あっちか!」

「ロムちゃん!」

 

悲鳴がした方向へ駆け出す。次第に物音も聞こえてきた。何かを壊す音だ。

 

「いいぞ!もっと壊して壊して壊しまくれ!」

「……はい。壊して壊して壊しまくります」

 

ロムが杖の先に作った氷が建物にぶつかり、砕け、人々を傷つけていく。看板は倒れて、木は折れ、子供が泣き叫ぶ。

 

「あっはっは、いいぞ、もっとやれ!女神が自分の国を壊してやがる、いい見世物だぜ!」

「やめなさい!」

 

そこへラム達が駆けつけた。

 

「ロムちゃんを返しなさいよ!」

「お、力尽くかあ?いいぜ、やってみろよ。ソイツがその気になったらな」

 

ロムがリンダを守るように立ちはだかった。

ラムは杖を向け、これ以上近づけば撃つの構えをとる。

 

「言われなくても、してやるわよ!」

 

ラムがポーチから取り出したのは小さなシェアクリスタル。

 

「光って!」

 

ラムがそれを掲げて叫ぶと眩く白い光がクリスタルから発せられ、その場にいる全員に降り注ぐ。

不思議なことにその光を浴びた木はみるみるうちに成長し、傷を受けたものは回復が進んで壊れた建物は元通りになっていく。

 

「お願いロムちゃん、元に戻って……!」

 

光は降り注ぎ、やがて段々とその光量は減っていく。

ラムが手を下ろした頃にはシェアクリスタルの半分ほどは薄汚れた色になってしまっていた。

 

「ロムちゃん……!」

「バカが、今更そんなもんが効くわけが……!」

「……ぅ、あ、あぅぅ……!」

 

ロムが突如頭を抱えてうなり出した。

 

「お、おい!何苦しんでやがりますか!?まさか、本当に洗脳が解けて……!」

「ぅ…………!」

「チッ!」

 

リンダが強引にロムの手を掴む。

頭を抱えるのも無視して連れ去っていく。

 

「一旦退却だ……!あいつら、洗脳を解く手段を持ってやがるなんて……!」

「あぅ、う、うぅ〜……っ」

「テメエもいつまでも唸ってないで走れ!オラ、早くしろ!」

「あ、待ちなさいよ!」

 

連れ去られてしまうロムの頭に浮かぶのは見たことのない風景。

洗脳された意識か、されていない意識か、両方がせめぎあっている中、ロムはその景色を見つめる。

 

「トリック……お姉ちゃん……ガン……ダム………!」

「ああ?何喚いてやがる!?」

「執事さん……助けて………!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

《ダメだ、許せん!今ギラーガなんぞ渡せば、確実に無茶をするだろう!》

《ならデルタプラスでもいい!いいから早く助けに行かなきゃいけないだろっ!?》

 

プラネテューヌの教会は喧々諤々としていた。

ミナから受け取った連絡、助けを求める連絡には間違いないのだが、今の状態でギラーガを渡せないと揉めているのだ。

 

「お待ちください、あと少し待てば新しい機体が……」

《待てないよっ!》

《待てと言っているだろう!今そこへ行ったとて、ロムに勝てるというのか、お前が!》

《勝負する気なんてないよ!取り戻してくればいいんだろっ!?》

《ミズキにはなくともあちらにはある!敵がロムを洗脳した以上、戦いは避けられん!》

《だからって……!》

《何を焦っているお前らしくもない!少し冷静になれ!》

 

そこで2人は息を荒げ、お互いの口撃が止まる。

普段ではありえないほどに焦燥しきっているミズキは懇願するように崩れ落ちた。

 

《頼むよ……っ、もう、何も出来ないのは嫌なんだ……っ!》

 

力になれないかもしれない、まったくの足でまといになるかもしれない。けれど、行かないなんてことはあっちゃいけないのだ。

あの時と同じようなことが起これば、今度は……!

 

「あ〜、はいはい。わかったわかったわよ」

 

するとドアが開いてアブネスが現れた。

呆れたように頭をポリポリと掻いて地下を指さす。

 

「新しい機体を用意してあるわ。行ってきなさい」

《おい、アブネス!》

「リミッターはかけといたわよ。確かにその状態でもとんでもない機体であることは確かだけど、そこまで無茶な仕様にはなってないはずよ」

《助かる!地下だね!?》

《おい、待て、ミズキ!》

 

引き止めるがその場からミズキはシュンと消える。

それを見てからジャックは頭を横に振ってアブネスを見た。

 

「何よ。アイツの言うことにも一理あるでしょ?」

《俺の言うことにも一理あるはずだ》

「まあ確かにそれはそうね。普通なら私だってあんなアホみたいな機体渡さないわよ」

「なら、何故?」

「風の噂で聞いたことがあるわ。マジェコンヌ四天王の中には洗脳を得意とする者がいるって」

《マジェコンヌ四天王だと……?》

「それが本当だとしたら、普通の機体で行かせる方が危ないでしょ?」

「それは……確かに……。仮にも、女神達を圧倒した存在ですから……」

 

アブネスが地下に向けて歩き出す。直々に発進させるためだ。

 

「この戦い、辛いものになるかもしれないわね」




アニメではサクッと倒されていたトリック君はここに来て大躍進。
四天王だし、強くなきゃね。
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