ジャックとイストワール
「どういう……こと、なんですか……」
プラネテューヌの教会のミズキの部屋。そこでミズキはベッドに寝ていた。
その脇には戦いを終えた女神と女神候補生。それに、アイエフとコンパとイストワール、ジャック。
「どうして!ミズキさんは起きないんですかっ⁉︎」
ネプギアが声を荒げる。
だが誰も答えられない。
唯一、答えられるのは……。
「ジャックさん、どういうことなんですか……!」
「…………」
「ミズキさんは、どうなったんですかっ⁉︎」
「…………死んだんだよ」
「…………!」
「肉体は死んでいない。だが……」
「……説明してくれない?ジャック」
「…………」
「私達、ミズキに……」
「……わかっている」
ネプテューヌが説得しようとするとジャックはそれを抑えて前に出た。
「ミズキは……そうだな、精神エネルギーを使い切ったといえばわかりやすいか」
「精神エネルギー……ですって?」
「そうだ。お前達も見たはずだ。あの暖かな緑色の光を」
ノワールの疑問に答える。
あの時、ミズキの体から発していた光、あれはミズキの心の光だったのだろうか。
「アレはミズキだけの光ではない……。次元を超え、死を超えて届いた友人達の光でもある」
「つまり……ミズキがいた次元の人達が助けに来たということ……?」
「そうだ」
「そ、それなら私達見たですぅ。みずみずの後ろに子供達が集まるのを……」
「それがミズキの友人達だ。崩壊した次元のな」
「それじゃあ、あの子供達は死んだ後もミズキを………?」
「そう言っている。あいつらが力を貸してくれたからこそ、みんなはこうして生きているのだ」
コンパとアイエフはミズキの後ろに立つ子供を見ていた。まるで新しい遊びが始まったかのように集まる子供達を……。
「ちょっと待って。じゃあミズキはオバケの力を借りて私達を助けたってわけ?」
「信じられないだろうな。だが、それがニュータイプだ」
ノワールの疑問も無理はない。ミズキ達の次元では何億年という時間をかけても人類の多くが信じられなかった力なのだから。
「本来ならミズキの体ごと光に融けて消えていたはずだ。だが不幸中の幸いと言うべきか、融けたのは心だけだ」
「どうして、体は融けなかったのですか?」
「………ミズキの体の90%以上はミズキのものではない。人工物で出来ているからだろう」
「………どういう、ことですの?」
「そもそもミズキに親と呼べる人物はいない。いくつものDNAを掛け合わせ、肉も骨も人工。唯一ミズキのものだと言えるのは、その心だけだ」
「ミズキ様は、あちらの次元で何があったのですか……⁉︎そんなの……!」
「………もういいだろう。俺はミズキの心を再び取り戻す方法を探す」
ジャックはふわりと飛んで部屋から出て行ってしまった。
「ジャックさん……」
それをイストワールが追いかけた。
残された人達はみんなミズキの顔を見ていた。安らかな寝顔。心が死んでいるなんて今でも信じられない。ふと目を覚まして、クスクスと笑ってくれそうで……。
「……ネプギア、大丈夫だよ。きっと助ける方法が見つかるって!」
「お姉ちゃん……」
「ミズキだって、私達を助けてくれたんだもん!私達に出来ないことないよ!」
「………うん……」
ネプギアはゆっくりと立ち上がった。
そして自分の右手の甲を撫でる。その炎のマークは既に消えていた。
「私達はとりあえず国に帰りましょう。少なからずシェアが低下しているはずよ」
「そうね……。しばらくは、仕事が手につかないでしょうけど……」
「……ミズキ様を、任せましたわよ」
「任せてよ!」
「じゃあね、ネプギア」
「大丈夫!きっと執事さん起きるよ!」
「信じるのが、大事……!」
「みんな……」
そう言って他国の女神と女神候補生は帰って行った。
残されたのはネプテューヌ、ネプギア、アイエフ、コンパ。
「ネプ子、アンタ頼まれたんでしょ、ミズキに」
「うん。助けてって言われた。だから、助けるよ。ミズキがしたように、諦めないよ」
「私も、頑張ります。この手の炎は消えても、まだミズキさんの力はこの胸にありますから……」
「……頑張るです!みずみずだって、みんなががっかりしてるのは嫌なはずですぅ!」
「……そうね。まずは仕事よ。シェアを取り戻して力をあげなさい、ネプ子」
「うん!行くよ、ネプギア!腕試しにモンスター退治だよ!」
「うん!お姉ちゃん!」
ーーーーーーーー
「ジャックさん」
「……イストワールか」
ジャックは屋上で空を見つめていた。そこにイストワールがやってくる。
「……俺は、謝るのがまだだったな。すまない、イストワール」
「構いません。約束通り、こうして帰ってきてくださったのですから」
「……だが、こんな帰還は誰も望んではいない」
「ジャックさん……」
「本当なら、アンチクリスタルはすぐに見つかって俺が解析し、その方法で破壊していたはずだ。だが……こうなってしまった」
「……誰が、間違えてしまったのでしょうね」
「誰も間違ってなどいない。相手のために動こうとして、それが拗れてこうなった。それが人の悲しいところだ」
ジャックはイストワールとすれ違って屋上から教会の中に戻ろうとした。だが、イストワールはその行く手を塞いだ。
「ジャックさん……アテは、あるのですか?」
「そんなものはない。だが必ず見つける」
「どうするつもりですか」
「手当たり次第にこの世界中のデータを見させてもらう。データがなければ俺が研究を始めよう」
「ですが」
「諦められないんだよ」
「……………」
「悪いがそこを通してくれ。ハッキングにも目をつぶってくれると助かる」
「ジャックさん、待ってください」
「…………」
「ミズキさんは1人で戦ってきたのでしょう?ずっと孤独なまま、ネプテューヌさん達を助けるために」
「そうだ」
「ですが、ミズキさんも最後にネプテューヌさん達を頼ったと聞きます」
「……何が言いたい」
「ジャックさんも、私を頼ってはくれませんか?私なら……」
「………」
イストワールの情報収集能力なら確かに手がかりも見つかるかもしれなかった。
だが、ジャックは頷かない。
「お願いします。ジャックさんがミズキさんを助けたいように、私もジャックさんを助けたいのです」
「………だが」
「ジャックさんも辛かったのでしょう?ミズキさんも、ジャックさんも、全然私達を頼ろうとしないから……。全部自分達でやろうとして、辛い気持ちだけを背負うではありませんか」
「…………」
「頼っていいのですよ。何もかも分け合いたいと思うから友達なのではありませんか?私も感じたいのです。ジャックさんの辛さを、悲しみを」
「………わかった。頼らせてもらう」
「ジャックさん………」
「イストワール、力を貸してくれ」
「………はい」
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ネプテューヌとネプギアは変身してモンスター退治をしていた。
だが、ネプテューヌはネプギアの様子に違和感を抱く。まるで、何かに焦っているような、そんな苛立ちを感じる。
「……今日はこんなものかしらね。そろそろ帰りましょう」
「待って、お姉ちゃん。あと少しだけ……!」
「ダメよ、ネプギア。焦るのはわかるけど無茶をしちゃ」
「………うん……」
ギリリとネプギアはM.P.B.Lを握りしめた。
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「それでは……」
イストワールはその頭の中から情報を引き出そうとする、がジャックに止められた。
「いや、今回に限っては徹底的に探す。イストワールの頭の中の本を全てひっくり返してな」
「そんな、それでは時間がかかります。私の頭の中の全ての情報をあたるなんて、3年はかかります」
「だから力を貸してくれと言った。力を貸すということはイストワールだけが頑張るということではない」
ジャックはイストワールの手をとった。
「イストワールの頭の中を漁らせてもらう。無遠慮にな。イヤならイヤと言え」
「……大丈夫です。私の中の何を見られても構いません」
「イストワールは俺の中を少なからず見ることになる。……イヤならイヤと言え」
「……大丈夫です。ジャックさんの何を見ても、私は動じません」
ジャックはイストワールの目をじっと見る。イストワールは決意を込めた目でそれを見つめ返した。
「………ならば、イストワール。その本棚を荒らそう」
「どれくらいかかりそうですか?」
「3日でやる」
ジャックはイストワールの額に額を付けた。
お互いに意志を持ったロボットだからこそ出来る情報の共有。
イストワールの中の情報が全てジャックの中に流れ込んでくる。
それはまるで雨のように降り注ぐ本の情報を全て閲覧し、取捨選択するようなもの。
ジャックの本領はその圧倒的な情報処理能力。イストワールの中の何もかもをジャックは見る。
(この、圧倒的な知識量は……!)
ジャックの体が熱を持つ。情報処理がだんだんと粗くなりかける。それをジャックは意志の力で堪えた。
何としても、ミズキを助けるために。
イストワールはジャックの頭の中の様々なものを断片的に見た。
戦火、戦火、戦火。
そして光る笑顔。子供達。ガンダム。
(ジャックさんを、癒してあげたい……)
イストワールはそう思った。
何だか、ジャックは無理をしている。いや、ジャック“だって”無理をしている。このままではジャックもミズキのような結末を迎えてしまえそうでイストワールは怖かった。
(どうか、ジャックさんが……)
私達を頼ってくれますように。
ニュータイプの考え方って人それぞれあるみたいな感じで説明が難しいんですよね。作品によってやってることが違いますし。
皆さんはニュータイプについてどう考えますかね…。聞かせてくれると参考になります。